室町政権は建武政権（南朝）に対抗する上でも、全国各地に足利政権の存在価値を誇示する必要があった。南朝による国衙の再建機運を削ぐためにも、各国ごとに建造物の出現を急いだのであろう。
足利尊氏・直義兄弟は、全国66カ国と2島に一寺と一塔を建てることに暦応元年（1338）から着手したのである。この一寺と一塔は「安国寺」と「利生塔」のことである。尊氏・直義は、夢窓疎石に深く帰依していた。疎石はかねがね兄弟に、元弘以来の内乱で戦没していった死者を弔い、平和を祈願する証として、各国ごとに一寺一塔の建造を進めていたといわれる。
建造に着手して10年目を迎えた貞和年間（1345〜50）ころには、全国66ヵ所に安国寺と利生塔が竣工したようである。安国寺は京・鎌倉を代表し、夢窓疎石のある臨済宗五山派の開山とした。また、利生塔は、臨済宗でない旧仏教である宗派（真言・天台など）に属する大寺院へ建造する予定であった。
しかし大和国だけは、守護職も含め興福寺の支配が鎌倉幕府より認められていたため建造されなかった。
今日「安国寺」は相当数存在するが、「利生塔」で現存するものは京都の八坂塔として馴染みの深い法観寺五重塔のみである。
「安国寺」は、在任が許されない守護国にあって、守護人たちが軍勢催促を行なう場、すなわち寺院という広い敷地の確保を必要とする屯営基地、幕府権力の前進的な拠点にも利用された。多くの安国寺の所在地は、海や河川の水上交通及び陸上の交通要衝地に建立されており、幕府公権力の軍略上の一面が強かったのである。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　守護・戦国大名事典　　西ヶ谷恭弘　　東京堂出版より抜粋

全国にある「古代国分寺跡」を追いかけている間に、中世にも全国展開をした「安国寺」も追いかけられないものかと思った。そして地図で探したが見つけられたのはほんの2〜3箇所であり、そのため「安国寺訪問」をあきらめていた。
今年（2001）「国分寺跡を訪ねて」というホームページを開設し、同時にまた「安国寺」のリストをホームページで探したがやはり入手できなかった。

ところが、ある日図書館で何気なく手に取った「守護・戦国大名事典」を見てびっくり。「安国寺」一覧が掲載されているのです。
ただ、これも推定がまだ残されておりますので、訪問を開始すると同時にリストの完成をはかっていきたいと思い立ちました。そのため、資料からの転載、訪問せず「安国寺」よりお送りいただいた由緒書き等を基にレポートしたものなどもあります。その場合各ページでお断りとお礼を述べさせていただいております。

現「安国寺」等が複数になっていたり、他県に移動したものがありますが、どれが正当などと言うことでなく、情報として多くを記録いたします。

このページをご覧になった方で何か情報をお持ちであれば、ご一報していただけたら幸いであります。

白抜

赤色

寺名	宗派	所在地
萬年山安国寺	曹洞宗	茨城県東茨城郡市原町大足
大龍山安国寺	浄土宗	埼玉県越谷市大泊
泰平山安国寺	曹洞宗	熊本県熊本市横手
大蜂山安国寺	浄土宗	山形県鶴岡市新海町

番外編
リストに掲載されておらず、またお寺でも足利氏ゆかりと確認できない、または明らかに別の系統である安国寺

白抜

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山城

天龍寺

（天龍寺派）

京都市右京区嵯峨天竜寺