CHAPTER−54 
      バスから降りたオカとカガ。 
        足早にイミグレーションへと向かう。 
        やっぱりゴローはいなかった。 
        どうやら先に中に入っているようだ。 
        「しかしこれだけ金がない状態で海外の街を出歩くのは緊張するよな。」 
        「おぅ、さすがに無謀やったな。」 
        二人合わせて千円にも満たないお金でよく遠出したもんだ。 
      出国手続きが済むと、二人は搭乗ゲートへと一直線に向かう。 
        「ゴローはどこや?」 
        シンガポールのチャンギ・エアポートは広い。 
        たくさんの土産物売り場もある。 
        そう簡単にはゴローを見つけれないやろ、と思ってたが意外や意外。 
        結構すんなり見つかりましたわ。 
        「おぉ、ゴローさん!無事やったか!」 
        「あたりまえやん!」冷静に答えるゴロー。 
        どことなくゴローの顔が赤みがかっている。 
        「ラッフルズのロングバーで酒飲んでてん!」ゴローが嬉しそうに語った。 
        「ロングバーはあの‘シンガポールスリング’発祥の場所やねん」 
        「へぇ〜!」感心するオカとカガ。 
        「本場の味はなかなかうまかったわ〜!」 
        悦に浸るゴローであった。 
      搭乗までには少し時間があるので、有り金を処分するために土産物屋に行くことに。 
        「さぁ500円で何買おうかな!?」 
        いろいろと見て回るが、さすがにその値段ではほとんどの物は買えない。 
        しょうがないからお菓子を買えるだけ買うことに。 
        その他にもいろいろと見回っていると、ジャムが置いてあるのを見つけた。 
        ラッフルズのジャムではないが、うまいと評判の、あの変な緑色のジャムではないか! 
        幸いにもそんなに高くない。 
        「これ買おうっと!」オカは迷わずジャムを取り上げた。 
        しかしこれはいったい何味なんやろ??? 
      そうこうしているうちに飛行機の時間が迫ってきたのでゲートへ戻る。 
        しかしここでひとつ気になることがあった。 
        カガだけシートの番号が異常に離れている。 
        「なんで?」 
        不思議がる3人。 
        しかもカガの番号は、明らかに若い。 
        これはかなり前のほうの証だ。 
        「もしかしてエコノミーじゃなかったりして」 
      アナウンスが流れいよいよ搭乗。 
        そしたら、その「まさか」が起きてしまった。 
        なんとカガが早々に機内へと呼ばれ、ビジネスクラスへと乗り込んだではないか! 
        「なんでやーーーーー!!??」 
        「なんでカガだけビジネスクラスやね〜〜ん!!??」 
        吠えるオカとゴロー。 
        そして少し不思議がりながらも優越感に浸るカガ。 
        オカとゴローはむかついた。 
      後になってわかったことだが、オカもゴローも本当はビジネスクラスに乗れてたらしい。 
        この時期にシンガポール航空を乗り継ぎで利用したら無条件でビジネスだそうな。 
        でもオカとゴローはシンガポールで一度荷物を出したから乗り継ぎ扱いにならなかったとか。 
        「なんか損した気分〜…」 
        ま、でもシンガポール航空ならエコノミーでも快適やし、えっか! 
        滑走路へと出た機体は、徐々に速度を増し、イッキに大空へと飛び立った。 
        こうしてバラバラに座った3人の、日本へのラストフライトが始まった。 
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