CHAPTER−33 
      集合場所には西洋人の背の高い男のコーディネーターがいると聞いていた。 
        すでに名前は忘れてしまったが、トムとかマイケルとか、そんなベタな名前やったと思う。 
        やはりブルネイはマレー系の人種が多いので、白人となるとすぐに見つかりそうなもんだ。 
        でもこれがなかなか見つからない… 
        困ったもんだ。 
      いよいよキワキワになった時、誰かが船着場のほうで声をあげた。 
        「ここや、ここや!」 
        確かに背の高い白人男性がいた。 
        彼はここで俺らを船に乗せるだけの役目らしい。 
      それからしばらくすると船着場にボートがやってきた。 
        カラフルなモーターボートで、結構速そうだ。 
        現地人のお客さんに混じって4人も乗り込む。 
        なんとしてもこれに乗り遅れるわけにはいかない。 
        よく見ると周りの現地人は学生風であったり、社会人風であったりする。 
        どうやらこの船はブルネイ国民の大切な足であるらしい。 
      ボートが満杯になってまもなく、艇はゆっくり船首を回転させた。 
        そして勢いよく走り出す。 
        全体的にこのボートは乗り心地も固く、波で跳ねるたびにお尻が痛かった。 
        「イタイ、イタイ…」 
        なれない日本人4人は、ケツの肉の薄さを恨んだ。 
      小さな窓から見える景色はみるみる密林へと変わっていく。 
        ジャングルっぽく、川の水は茶色に濁っている。 
        その周りにはマングローブが鬱蒼と生い茂っている。 
        なんとなく西表島を思わせる景色ってとこだ。 
        青い空とその景色が絶妙なコントラストをなし、南国の美しさを醸し出していた。 
        みんなカメラを持ち出し、パシャパシャ写真を撮っていた。 
        周りに乗っている現地人は不思議そうな顔で4人を見ていたが… 
      どれくらい走っただろうか。 
        軽く1時間は越えていたと思う。 
        川べりの景色が少しずつ今までとは変化してきた。 
        再び街の匂いが漂ってきたのだ。 
        ボートが減速し、ひとつの船着場に接岸した。 
        「お?ここで降りるんか?」 
        「いや、ちゃうはずや」 
        ここでは現地人の女学生風の女の子がおりただけやった。 
        そして船は再び走り出す。 
        しばらく走るとまた別の船着場についた。 
        こんどは結構たくさんの人が降りていった。 
        でもまだここじゃないようだ。 
      そして次の船着場についたとき、全員が降りはじめた。 
        「終点やでぇ!」 
        運転してたおっちゃんがそれらしきことを言っていた。 
          
         
        「んじゃ、降りようか!」 
        4人は勢いよく船外へ出て、桟橋を渡って上陸した。 
      「ハーイ!こんにちは!」 
        一人の小さな女性が声をかけてきた。 
        どうやらこの人が今日のガイドらしい。 
        「ハーイ!」 
        5人は交互に握手を交わし、これから始まる旅に心弾ませた。 
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