CHAPTER−10
ナイトサファリに来たはいいが、実はそんなに時間的余裕がなかった。
早くしないと帰りの電車やバスも心配な時間だ。
そりゃそうやな、なんてったって、シンガポールに着いたのが夕方の6時頃やもん。
とりあえず急いで中を見て回ることに。
入園料は結構高かったような気がする。(いくらかは忘れた)
みんな別々の受付でチケットを買う。
なぜかゴローだけが日本語の案内パンフレットをもらえなかった。
そのことに怒ったゴローは、受付のおばちゃんに猛抗議!
その甲斐あって、なんとか日本語パンフレットをもらえたようだ。
みんなは小走りに先を急ぐ。
でも、トイレに行きたくなったので、みんなでツレション。
(ただしイリコだけは別!当たり前か!)
本当なら日本語アナウンスのサファリカーもあるのだが、遅くなるから乗れない。
ま、簡単な英語なら分かるやろ、と考えて英語のサファリカーに乗る。
しかしそれが甘かった。
ナイトサファリは夜行性の動物を見て回るもので、ガイドの声がめ〜ちゃ静か。
たとえ日本語でも聞き取れるか聞き取れないかぐらいのきわどい声の大きさ。
「あ〜、まったく聞こえん、まったく分からん」
オカは少しだけ後悔の念を抱きつつ動物を観察した。
しかもオカにはもう一つの落とし穴があった。
それは「目が悪い」こと。
おかげで暗闇の中で動物を探すのは困難を極めた。
「あ、見える見える!」そんなイリコの声が腹立たしい。
俺はどこに動物がおるのかすら分からんのに…
小さなガイドの声にも、イリコはなぜかよく順応していた。
「あ、この動物は○○って言って、滅多に見られへんねんて」などと、いろいろと教えてくれる。
やっぱイリコは英語ができるなぁ、と少しだけ感心。
鹿とかサイとかアリクイとかいろいろ見たけど、なんでこいつら逃げ出さへんねやろ?
こんなにボーダーレスなのに、どうして同じ場所ばかりにとどまっているのかが不思議だった。
しばらく進むと、駅のようなものが現れる。
そこでまた何人かがサファリカーに乗車してきた。
その瞬間「ガオガオガオーッ!!」と、すさまじい雄叫びが辺りに響く。
みんな思わずビビる!
なんと車の後ろのほうで熊がケンカをはじめた。
凄まじいパンチを浴びせかける熊同士…おっかね〜…
しかしびっくりした。
そして車は再び動き出した。
しかし見ているものは、さっきと一緒でいまいち面白くない。
なんだか眠くなってきた。
そりゃそうや、日本から飛行機で着いたばかりで、しかも周りがこんなに暗いんやから。
もう眠たくなって当然。
まぶたが何度も閉じそうになる。
しかし、せっかくシンガポールまで来て寝るなんてもったいない。
起きねば、起きねば、と自らに言い聞かす。
そんなしょうもない戦いを繰り返しているうちに、いつのまにか園内を一周してしまった。
こんなもんか、というのが正直な感想かな。
何とも言えない脱力感がみんなを包む。
確かに面白かったんやけど・・・なんかパンチがないねんな。
ま、こんなもんでしょ!・・・と納得した。
帰りに売店でサファリグッズを見る。
どれも欲しくない。
ただ一つだけ、オカの目を釘付けにするぬいぐるみがあった。
それは…オランウータン!!
そう、オカは森の人オランウータンに会うために今回の旅を企画したのだ。
明日からのブルネイ突入に胸を躍らせるオカ。
とりあえずサファリの看板の前で写真をパチリ!
今回の旅で初めてのシャッター。
こうして3人のナイトサファリは終った。
まだこれから遠くまで帰らねばならない。
それだけが憂鬱だった。
帰ったらいったい何時になるんやろ?
3人は到着したバスに乗り、ナイトサファリを後にした。
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