CHAPTER−12
みんな疲れのピークを迎えていた。
しかしまだまだへこたれるわけにはいかない。
目の前にはシンガポールの象徴「マーライオン」が待っているのだから。
無理やり笑顔と元気な声を作りながら、4人はトボトボと歩いていった。
そのうち大きな橋に差し掛かった。
「もうすぐ見えてくるで」
その言葉にオカの胸は躍った。
でも、どこを見てもあのテレビや本で見るマーライオンはいない。
なぜだ?
「あ〜、もう電気が消えてるわ!!」
やっぱり。
こんなオチがついてるような気がしててん。
このクソ暑くて、極限の疲労状態の中、無理やり歩いて見に来たのに・・・ひどすぎる。
でも更に歩いていくと、うっすらとシルエットは見えるようになってきた。
「お、結構見えるやんけ!」
オカは強がって元気を振り絞った。
でも他の人は「あ〜ぁ」って顔してる。
とにかく橋の上で記念撮影をすることに。
パシャ
写んのかな?
まったくライトアップもされていないものを撮るのは無謀のような気がする。
でもここまで来といて、写真の一枚も撮らんかったらもったいないっしょ。
オカは続けざまにシャッターを押した。
そこにマーライオンが写るかどうかもわからず・・・
しかしヘボい。
マーライオンってこんなに小規模のものやったんや。
なんかもっとスゴイのを期待してたのに。
そんな失望感も手伝って、帰る頃には更に疲労は重なった。
「さ、帰ろか?」
誰ともなくつぶやいた。
「そうやな。帰ろ」
みんながいま来た道をゆっくりと戻っていく。
マーライオンは期待外れだったが、目的を一つ達成したオカは小さな満足感を抱いていた。
しかし疲労のピークであることには変わりはない。
現地時間でおそらく夜中の1時ごろ。
もう真夜中やん。
今日だけですでに何度も通った同じ道を4人は引き返していた。
だんだんと言葉少なになっていく。
そう、これはホステで山に登っている時と同じ状態だ。なぜかそんなことを思い出した。
しばらく歩いてようやく宿へ。
しかしここでじゃんけんをして飲み物を買いに行くことにした。
負けた二人が買い出しに行く。
みんなすごく嫌そうやった。
結局じゃんけんで負けたのはカガ。
もう一人を決めようとしたとき、オカが名乗り出た。
「オレが行くわ!」
なんていい奴なんやろ、オカって!!
これがせめてものみんなへの恩返し。
疲れ果てた中で、オカのためにマーライオンを見に行ってくれた4人に心から感謝していた。
オカとカガはセブンイレブンへ歩いた。
今度は逆向きにどんどん歩く。
しかし世界中どこでもセブンイレブンはたくさんあるな、と感じた。
ほんまにセブンイレブンさまさまやわ。
疲れた。さすがに疲れた。くじけそう。
とりあえず水のペットボトルを買ってホテルへと戻る。
帰ったらイリコとゴローは風呂に入っていた。
とりあえずほんまはすぐにでも寝たいけど、この暑さではすごい汗をかいている。
だから入らないわけにはいかない。
オカが先に風呂に入る。
あんまりきれいじゃないけど、安いから仕方ないか。
早々に体を洗って出て、ベッドに転がり込んだ。
明日は朝が早い。
5時半起きだ。
みんなの目覚ましを総動員して、寝坊をふせぐ。
とりあえず寝た。電気を消して1分もしないうちに。
ぐっすり寝た。
その時、オカは夢でブルネイに思いを馳せていた・・・
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