CHAPTER−43 
      ここでひとつ問題があった。 
        それはみんな水に濡れて服がビショビショってこと。 
        でも4人のうち3人は、さほど問題ない。 
        だってただ服が濡れてるだけやもん。 
        1人困った顔をしているのがオカ。 
        なぜならオカはパンツ一丁やから。 
        ジーパンは履いていなかった。 
        濡れたパンツの上から履くと湿ってしまうからという理由で。 
      止めた車からゲストハウスの入り口までは少し距離がある。 
        その途中には現地人がたくさん集まって井戸端会議をしている。 
        だからオカは入り口まで猛ダッシュで走り抜けることにした。 
        いくら旅の恥はかき捨てと言っても、やっぱ街中をパンツ一丁で堂々とは歩きづらい。 
        そして、できるならば「日本人に対するイメージ」を壊したくなかったというのもある。 
        ま、遠いといっても5mかそこらだ。 
        ダッシュで走ればほとんど現地人の目にも止まらんだろう…と思ったが… 
      しかし… 
        とんでもないことが起こった! 
        なんとオカが走っている途中で宙を舞ったのだ!!! 
      〜事件再現〜 
         ・オカは足元にはサンダルを履いていた。 
         ・そのサンダルは濡れた地面の上で非常によく滑るシロモノだった。 
         ・外は先ほどのスコールの影響で濡れていた。 
         ・入り口付近はタイル張りになっており、それはそれはよく滑る環境が整っていた… 
      ということである。 
        現地人の目を盗むように颯爽と駆け抜けるはずだったオカ。 
        しかし水浸しのタイルに阻まれ、宙を舞うようにスッテンコロリン。 
        両手には荷物満載で受け身など取れなかった。 
        地面に激突した瞬間、すさまじい音が辺りに鳴り響く。 
        「ズドーン!!」 
        その衝撃音に、意に反して現地人が一斉にこちらを振り向く。 
        「あぁ、見ないで…(恥)」 
        パンツ一丁でマヌケに転んでいる変な日本人一丁あがり! 
        「何やってんねん、あの日本人!?」みたいな現地人の冷たい視線… 
        「大丈夫か、あの転倒してる日本人!?」みたいな現地人の哀れみの視線… 
        恥ずかしい…恥ずかしい… 
        こんなことなら安全第一でゆっくり踏みしめるように歩けばよかった。 
        すべては後の祭り。 
        背後ではイリコ・カガ・ゴローが大爆笑。 
        ネイさんはちょうどその瞬間は目撃していなかった。 
      人間は土壇場になると、凄い力を発揮するものだ。 
        この時オカも「早くこの場を去らねば!」という思いが強く働いた。 
        その瞬間オカは世界記録並みの瞬発力で起き上がり、逃げるように入り口へと入っていった。 
        そう、「恥ずかしさ」も立派なエネルギーなんだ!と実感。 
        なんのこっちゃ。 
      いまだに他の3人はゲラゲラ笑ってる。 
        おまえらもう笑うのやめろ! 
        こちらは顔から火が出るぐらい恥ずかしいのに… 
        でもその気持ちは分からんでもない。 
        なんでって、冷静になんて思い返してみると、あんなに無様な格好は他にないもん。 
        こうしてオカのブルネイスッテンコロリン事件は大爆笑のうちに幕を閉じた。 
        (というか幕を閉じてくれ、頼むから!という感じだった。) 
      その後着替えを済ませ、再び午前中にケーキを食った部屋に戻ってきた。 
        そこでお茶しながらヤキソバをごちそうになる。 
        話の中心はやはりオカの先ほどの大失態。 
        特にイリコはめちゃめちゃツボにはまったらしく、ひぃひぃ笑い泣きしながら話してる。 
        ま、これだけ人に「お笑い」を提供したんやから、意味もあったっちゅうこっちゃ。 
        オカの右すねは、先ほどの打ち身で今でもジンジンうずいていた… 
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