CHAPTER−53
ようやくバスがロータリーに入ってきた。
「あれか!?」
周りにいるひと全員が注目する。
しかしどうやら違うバスのよう。
「あ〜マジでやばいで…」
この時のふたりの所持金は信じられないぐらい低額…
日本円にしてオカが約500円ぐらい。
カガはそれより少なかった。
自由に飲み食いもできない。
だからもちろん帰りにタクシーを拾うなどの荒技はできない。
「こんなことやったらもうちょっと金を残しとくんやったな…」
オカとカガは心からそう思った。
それからまたしばらく待ちつづけた。
そこへようやく、ようやく、念願のバスが来た。
「とりあえずこれ乗ったら帰れるわ」
ふたりして安堵のため息。
はっきりいってセントーサ島は面白かったんか面白くなかったんか、よう分からんかった。
満喫したような、してないような…
すべてはこの金欠のせいだ(と、決め付けるふたり)!
バスがゆっくりと発進する。
このバスは直接空港には行かない。
だからラッフルズ付近で一度降りて、改めて空港行きのバスに乗らなければならない。
「だいじょうぶ。帰りのバス停はちゃんと下調べをしたから」
どことなく余裕の表情を見せるカガ。
ところが…
バスが進むに連れて乗客も減ってきた。
オカとカガは「バスに乗れた」という安堵感から少し油断していた。
どこで降りていいのかをしっかりと見極めていなかったのだ。
「なぁカガ、俺らどこで降りたらええの?」
「………」
すでにバスは街中に突入している。
目的地はもっと先なのか?
それともすでに通り過ぎてしまったのか?
窓から見える景色は見たことのない風景ばかりだった…
「あ!俺ら降りなヤバイんちゃう?」
突然外を見ていたカガが叫ぶ。
「え、そうなん?俺はここらへんの地理に詳しくないからようわからんけど…」
「そうや、絶対そうや!もう通り過ぎたんちゃう?」カガが自信ありげに応える。
「うそ!?まじで??ヤバ…」絶句するオカ。
時間もギリギリ、お金もギリギリ。
典型的貧乏バックパッカーのお手本のよう。
とりあえず次のバス停で車を降りることに。
バスが止まり、ふたりは一目散に降りる。
でも降りたところで全然場所がわからない。
「頼むでカガ〜…」
「とりあえず空港行きのバス停さがそ!」
ふたりは手当たり次第にバス停を回る。
そのなかになんとか空港行きのバス乗り場を見つけることができた。
「今度こそこれに乗れれば日本に帰れる!」
ここでは案外すんなりバスが来た。
ふたりはバスに乗り込み、お金を払って席につく。
そして今度こそバスは空港へと一直線に走る。
「ゴローはちゃんと来てるかなぁ」
ゴローとは空港で待ち合わせをしていた。
とりあえずイミグレーションの前で待ち合わせの予定にしている。
でもどう考えても予定時刻には間に合わない。
「間にあわんかったら先に入っててって言っといたから大丈夫やろ。」
そんな会話を交わしているうちにバスは空港へと到着した。
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