CHAPTER−26
走りに走った。
ほんとは少しぐらい遅れても問題ないと思うのだが、良心がそれを許さなかった。
リュックの中身が大きく左右に揺れるほどに走った。
ブルネイは小さい国だから余裕で帰れるだろう、という考えが甘かった。
ここらへんは意外と道が縦横無尽にいろんな方向へ伸びている。
だからオカはホテルへの道を見失ってしまった。
そうこうしているうちに時間だけが過ぎていく。
少し先に行くと緑の芝生豊かな公園のようなところに出た。
そういえばホテルの前にこんなホテルがあったような気がする。
とりあえず公園に足を踏み入れ先を急ぐ。
そしたら運良くテラスホテルの建物が見えた。
「よっしゃ!ついた!」
車の行き交う道路を無理やり横切ってホテルへ。
ホテルの前には一台のタクシーが止まっている。
そしてその横には見慣れた顔が3つ並んでいた。
みんなちゃんと時間どおりに来てたんや!
「おそいぞ!!」
「はよ行くで!」
オカはそんな言葉のシャワーを浴びながら部屋へと向かった。
とりあえず部屋に入って荷物を入れ替え、遊園地へ行くための準備をダッシュでする。
時計を見ると19:00を少しすぎたぐらい。
なんや、ほとんど間に合ってるやん!なんて自分で言い聞かせながら急いで準備。
しかしホテルの部屋が無事ということはセキュリティーボックスは爆発せんかったんや。
よかったよかった。
オカはカギを閉めてロビーへと降りる。
みんなが待ち遠しそうにオカを待つ。
「ごめんごめん」
タクシーの運転手らしき温和な顔の男性が手招きする。「さぁ行こう!」
4人は車に乗り込み、タクシーはゆっくりと出発した。
あまりに全力で走ってきたオカは汗だくだった。
だから助手席の一番よくクーラーのあたる席にすわらせてもらった。
運転手のおじさんは本当にいい笑顔だった。
和代さんが「すごくいい人」と表現するのがよくわかる。
イリコは積極的に英語で話しかけていた。
おじさんも訛りはあるが自由に英語は使えるようで話はスムーズだ。
顔はチャイニーズ系。
そしてどうやらブルネイ人にしては珍しく仏教徒らしい。
さぞかしイスラム教の国では肩身狭いんちゃうかなと思ったが全然そんな事ないらしい。
むしろ国王のことはすごく尊敬している、と言っていた。
それもそのはず、いろいろ話を聞いていたら嘘みたいな本当の現実がここにあった。
まずブルネイ人は補助金が出るから非常に安く車を買える。
だからみんな車に乗って移動する。
今日町中を人が歩いてなかったのは、これもひとつ影響しているようだ。
また政府関係の人間は一軒家を借りれるが家賃は格安。
しかもそれをずっと払い続けていれば、いずれは自分のものになるらしい。
そしてブルネイでは非常に犯罪が少なく、税金も医療費もタダ。
つまり非常に住みやすいのだ。
うさぎの家にすむ日本人にとっては何とも羨ましい限りだ。
ジェルドンパークは結構遠いと聞いていたが本当に遠かった。
これじゃ自分たちの足では歩いていけないな。と思った。
そういえばイリコ&ゴローと話をしていると面白いエピソードがあった。
やつらは関空快足で切り離される車両に乗っていたらしく和歌山へ行ってしまったらしい。
まさか本当にこんなやつがいるとは!
そんな話をしているといつのまにやら時間は過ぎ、辺りは次第に暗くなってきた。
しばらく行くと遊園地のタワーらしき光の塔が見えてきた。
「おっ、到着やな!」
車はいよいよジェルドンパークの敷地へと突入した。
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