CHAPTER−41 
      勢いよくストリームインしたオカは慣れた手つきでクロール水かきをする。 
        そして対岸のエディー(水の逆流ポイント)をキャッチし、一休み。 
        「おぉ、なんか知らんが、これ結構燃えるな!」 
        ラフトをいろいろ経験しているオカでも、なんか新鮮に感じた。 
      「さぁそれじゃ、みんなで出発しようか!」盗賊船頭の言葉でみんなが一度岸に集まる。 
        結構距離があるから、ここからラピッドライダーで行くわけじゃないらしい。 
        「しばらく行くと川幅の広いところがあるから、そこから始めたらいいさ」とのこと。 
        しかもここから行ったら、たぶん猛烈に疲れるって。 
      再びみんながロングボートに乗り込んだ。 
        もちろんエアマットも投げ入れる。 
        どう見ても膨らましたエアマットは大きくて、邪魔になる様子だったが。 
        「おっと、やばいやばい!」 
        オカは大切なことを思い出した。 
        脱ぎっぱなしのズボンを忘れていきそうになったのだ。 
        「さすがに帰りに街中をトランクスで歩くのは恥ずかしいやろ…」 
        ズボンを置き去りにした時のことを想像して、オカは安堵のため息をつく。よかった。 
      「じゃ行くぜ〜」 
        盗賊船頭の合図で船は勢いよく走り始めた。 
        帰りは上流から下流へ向かうため、ボートはスイスイ進んだ。 
        体全体で受ける風がきもちいい。 
      ところが… 
        走り始めてしばらくたつと、急に雲行きが怪しくなってきた。 
        ゴロゴロと空が唸りだす。 
        「こりゃスコールくるな」 
        誰もがそう思った瞬間、いきなりすんごい雨が降り始めた。 
        ドババババババ、ドガガガガガ、バチバチバチバチ 
        そんぐらいすごい雨。 
        アジアに旅行したら必ずといっていいほどスコールには遭うが、今回のも強かった。 
        でもボートには屋根があるわけでもなく、乗ってる人間は濡れ放題。 
        ま、みんな濡れてもいい格好をしているから、そんなにたいした問題ではないが。 
        ただあまりに強い雨脚に、目が開けられなくて、前が見えない。 
        イリコとネイさんはさっき膨らましたマットを屋根代わりにしてる。 
        無口船頭と盗賊船頭は俺たちの荷物にブルーシートをかけてくれた。 
        「お、割と気ぃ利くやん!」 
        多少強くなったり弱くなったりはしたが、その後しばらくスコールがやむことはなかった。 
      その先に行くと川幅が少し広くなった。 
        「さぁ、みんなここからラピッドライダーだぁ!」 
        「おーす!」張り切って答える。 
        ボートからマットを下ろし、みんなが次々と流れに出て行く。 
        二人の船頭もボートのエンジンを切り、ここからは手漕ぎのパドルで進むようだ。 
        「イヤッホウ!」 
        バシャバシャバシャ! 
        「うわ、マジで楽しいコレ!」 
        オカ・カガ・ゴロー・イリコ・ネイさんは楽しげに自らの体で川を下り始めた。 
        後から考えると、ただマットに乗って川を流れただけなんやけど、めっちゃオモロかった。 
        みんなで水をかけあったり、マット同士を連結させたり、マットの上に座ってみたり… 
        ちょうど川の流れが、このアトラクションにぴったりの水量だからかな。 
        ほんと、シャレにならんぐらいおもろかった。 
        「イェ〜イ!」 
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