ミイラ    
mummy

 ミイラは広義には乾燥した死体のことですが、モンスターのミイラは古代エジプトの防腐処置を施された死体が動き出すもののことです。語源の話をすると、英語のmummyは元来「蝋」の意味。それの中国語の当て字が「木乃伊」。ミイラ製造に使うミルラ(没薬)をポルトガル語でmirraと言います。
 エジプトの墳墓は盗掘が横行し、ミルラ目当てに死体自体も盗まれました。これでは死者が怒らないわけがない、という発想がこのモンスターの起源かと思われます。しかし、ミイラものが大いに流行したのはビクトリア時代の英国です。ミイラというモンスターの意味を知るには歴史を見なければなりません。
 まず19世紀に「エジプト学」が発達したことで、古代エジプト人の死生観が明らかになってきたこと。それは近代ヨーロッパ人の死生観とは異質で、気持ち悪く感じられたことでしょう。そしてもう一つは19世紀後半、英国がエジプトを植民地として支配したこと。被支配者のアラブ人は古代エジプト人とは違う民族ですが、ともかくも社会全体に罪悪感が沈滞していたのは確実です。罪悪感をつくのはホラーの基本で、ミイラはイギリス人を怖がらせるためのモンスターなのです。
 また、ミイラものは定石とも呼ぶべきストーリー上の骨格が決まっています。古代エジプトの貴婦人(ミイラ)が現代に復活すべくイギリス人女性をヨリシロに選び、若者(その女性の恋人)と碩学の先生がそれを阻む、という図式です。ミイラの親玉が男の場合でも、ヒロインの前世が古代エジプトの王女とかいう設定は定番です。19世紀幻想文学の典型で、「巫女が異界と交信する」パターンを踏襲しているのでしょう。
 このミイラの王女が、案外感情移入できる人物に描かれていることが多いです。女は脱ぐか叫ぶだけ、という常套ホラーとは一線を画すことと、もともと古代エジプト自体が女性に人気のあるジャンルなのとで、ミイラものは女性にも受けるジャンルになっています。

 ミイラの登場する作品:
 『アタック・ザ・マミー』
 『ヴァンパイア』
 『鬼喰う鬼』
 『怪奇ミイラ男』
 『鬼打鬼』
 『恐怖のミイラ』
 『グレイブヤード』
 『死霊の盆踊り』
 『タロス・ザ・マミー』
 『ハムナプトラ』
 『ハムナプトラ2』
 『ピラミッド』
 『ブラム・ストーカーズ マミー』
 『ボクらの太陽』
 『マミー・ザ・リベンジ』
 『ミイラ再生』
 『ミイラ転生』
 『ミイラはなぜ魅力的か』
 『ミル・マスカラスのゴング1』
 『ミル・マスカラスのゴング2』
 『ルーヴルの怪人』

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『ミイラ再生』    
the Mummy

 カール・フロイント監督。ボリス・カーロフ主演のゴシック・ホラー。70年近くたって『ハムナプトラ』としてリメイクされました。
 神官イムホテップは「アモン・ラーの書」の禁断の呪文により、病死した愛する王女アンケセナモンを復活させようとします。しかし途中で発覚し、生き埋めの刑に処されました。3700年後、発掘されたイムホテップのミイラは「アモン・ラーの書」の呪文で動き出して逃走、怪人アーデス・ベイとして10年間潜伏し、アンケセナモン復活に向けて画策します。彼は見た目は人間、というかボリス・カーロフで、催眠術を使うほか、呪いで遠隔地から人の心臓を止めたりすることができます。最後は「アモン・ラーの書」を焼かれて、塵に帰ります。
 よくもこの映画から『ハムナプトラ』を作れたもんだ、というほど別の作品です。ジャンルはまさに「カーロフ」で、主人公の青年と碩学先生、トンデモ先生、生前のロマンスを成就すべく主人公に近づく怪人、寝室に匿われたヨリシロの美女が夢遊病者のように出歩く、という定番の嵐です。

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『ミイラ転生 死霊の墓』    
Dawn of the Mummy

 邦題に負けないぐらいの情けない原題ですが、監督・脚本は『クイーン・コング』を撮ったフランク・アグラマで、そういう方向性の人なんだと思われます。
 盗掘者に強い呪いをかけられた暴君サフィラムンの墓が暴かれた。たまたま近くに来ていたファッションモデルと撮影クルーは、いいロケ地を見つけたとばかりに墓の中で撮影を始める。やがてサフィラムンのミイラが棺から起き出し、家来のミイラも土中から次々に這い出してきて、盗掘者たち、撮影チーム、近所の村落を次々に襲う。
 家来のミイラは乾燥度も低く包帯も巻いていないので、印象としてはゾンビに近いです。ミイラたちは呪いでプログラムされたとおり、人間を見つけては手当たり次第に殺して食べていきます。なぜ食べるのかは不明。人間と同等のスピードで運動し、力はより強く、銃で撃っても死にません。王のミイラはは見せしめのためか、殺した相手の首を切って現場に放置することが多いようです。
 エジプト中にミイラがあふれ出したはずなのですが、そのうちの1体を倒した時点で終わってしまいます。その1体すら実は倒せていないような雰囲気のラスト。

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『ミイラはなぜ魅力的か』    
the Mummy Congress

 ヘザー・プリングル著。鈴木主税、東郷えりか訳。
 科学ジャーナリストである筆者が、「ミイラ会議」に集まったミイラ学者たちに会ってその研究分野を取材する。ミイラといっても古代エジプトの乾燥死体から即身仏、ボッグマン、レーニンまで、ありとあらゆる永久死体が扱われている。昔の人の生活や病気を研究する科学の問題と、人の死体を切り刻んだり展示したりして良いのかという倫理的な問題を提示する。
 邦題に騙されたわけですが、「なぜ魅力的か」という考察は一切ありません。ミイラの魅力にとりつかれた人々を追い、ミイラが大衆受けする事実をつきつけるのみです。

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『ミートマーケット ゾンビ撃滅作戦』    
Meat Market

 ビデオ映画。ブライアン・クレメント監督。
 新種のワクチンの副作用で人々がゾンビ化した。生き残った人間と女吸血鬼と覆面レスラーが解決策を求めてワクチンの開発者を捜す。
 特殊メイクはちょっといいですが、話はとてもひどい。続編もあります。

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『ミートマーケット 人類滅亡の日』    
Meat Market 2

 ブライアン・クレメント監督。
 ゾンビに占拠された地球。生き残った人類を束ねる「マーケット」の指導者ビルは、強者が弱者を支配する選民社会を築こうとしていた。感染の疑いがある者は実験台にされ、ゾンビを食料にする試みにも着手していた。
 タイトルから推測するに、2作目の内容を先に企画して、後から1作目を足したか前編後編に分けたかだと思われます。出来も多少2作目の方がいいんですが、どうせゴミなら本当にダメな1作目の方が潔いかもしれません。

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『ミル・マスカラスのゴング1』    
las Momias de Guanajuato

 グアナファト3部作の第1弾。フェデリコ・クリエル監督。
 1871年、悪魔の力でルチャの王者となったサタンは銀の仮面の聖人(サントの祖先)に敗れ、百年後の復活復讐を誓ってミイラと化した。そして現代。サタンと数体のミイラが復活して人々を絞殺していく。最初は半信半疑だったミル・マスカラスも、殺人の濡れ衣を着せられ指名手配されたブルー・エンジェルと共に真犯人サタンを追う。が、プロレス技の効かないミイラを相手に苦戦。そこへ偶然通りかかったサントが加勢し、最後はサント家秘伝の(?)火炎放射銃であっさりミイラを退治してしまった。
 百年では乾燥しきらないのか、見た目はミイラというよりゾンビに近いです。しかし、マスクマンというものは一家団欒の場でも覆面はつけたままなんですね。

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『ミル・マスカラスのゴング2』    
the Theft of the Mummies of Guanajuato
/ el Robo de las Momias de Guanajuato

 意味不明度ではどっこいながら、随分と威勢が良くなったティト・ノヴァロ監督による2作目。3作目もあるらしいですが邦訳はなし(別に見たくもありませんけれど)。
 狂人ライモンド教授は人や死体を制御する装置を発明し、これを全人類に装着すれば世界は平和になると考えた。協力者のカリオストロ伯爵(不死の妖術師)はこれに必要な鉱石エルニオを採掘するため、鉱夫のミイラ化死体を復活させる。ところが教授はいつの間にか考えを変え、世界を滅亡させるエルニオ爆弾を作り、国連事務総長を脅したりするのだった。その頃、歩く死体を目撃した少年に謎の解決を頼まれ、ミル・マスカラス、ブルー・エンジェル、エル・ラヨ・デ・ハリスコの3人が捜査を開始した。3人は伯爵の催眠術や小人(メキシコ!)戦闘員を退け、遺跡地下の秘密基地に突入。が、プロレス技の効かないミイラを相手に苦戦。そこでふと気づいたマスカラスが制御装置を壊すと、ミイラは動かなくなった。教授が自分の発明品を壊されたショックのあまり自爆装置を起動し、基地は大爆発した。世界は救われたのだ。
 要するに戦隊もので、3人のルチャドールは無意味な美女軍団を連れてオープンカー&バイクで荒野を駆け、地雷原を走り抜けます。1作目、2作目からわかることは、レスラーよりミイラの方が強いらしいということです。

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三輪三姉妹

 日本のホラー映画を支える女優姉妹。三輪ひとみ(みわひとみ)、三輪明日美(みわあすみ)、三輪恵未(みわえみ)。
 長女ひとみの代表作は『エコエコアザラク3』『D坂の殺人事件』『発狂する唇』など。次女明日美の代表作は『ラブ&ポップ』など。2人が共演しているしている映画に『ラブ&ポップ』『呪怨』『死びとの恋わずらい』『いきすだま〜生霊』があります。
 一応三姉妹としましたが、三女恵未はまだ大した出演作はありません。

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