『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』    
Queen of the Damned

 マイケル・ライマー監督。『ヴァンパイア・レスタト』『呪われし者の女王』の2作が原作。
 『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を本格文芸もの吸血鬼映画と呼ぶなら、こちらはMTV感覚アクションもの吸血鬼映画です。映画全体はしょぼくれた二流品で『ブレイド』などには比ぶべくもないのですが、さすがにアリーヤ(飛行機事故で死亡したため本作が遺作)の出てる部分は輝いて見え、アクションシーンもアカーシャの強さを強調するために存在するかのようです。
 ですが主役のスチュアート・タウンゼントはさっぱり魅力がなく、墓守は序盤で「舞の海に似ている」と思ってしまって以来、一度も彼がレスタトだとは思えませんでした。他の出演者では、マリウス役に『ザ・クロウ』のヴァンサン・ペレーズなど。音楽はKOЯN(KORN)のジョナサン・デイビス。

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『クライヴ・バーカーのホラー大全』    
Clive Barker's A-Z of Horror

 クライヴ・バーカー著、スティーヴン・ジョーンズ編。テレビ番組を編集して本として出版したもののようです。AからZまで26編集めた、ホラー(主に小説、映画)に関するエッセイ集です。バーカーのファンやホラーの好きな人は読んでて楽しいと思いますが、ホラー全体を広く浅く概観したものに過ぎず、資料としての価値はほとんどありません。墓守も毎晩寝る前に1編ずつ読んでいました。
 ただしこの本は翻訳が最低で、高校生が宿題で和訳したような文章は読んでいて苦痛でした。随筆なのだから、文芸作品として訳さないとせっかくの作品が台無しになるというものです。

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グール    
ghoul


 グールの登場する作品:
 『ヴァンパイア・イン・ブルックリン』
 『死体と遊ぶな子供たち』
 『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』
 『ブラッディ・マロリー』
 『ヘルシング』
 『ヘルシング』
 『ボクらの太陽』

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『グール』    
Dangerous Seductress

 インドネシア映画。H・チュッ・ジャリル(ジョン・ミラー名義)監督。日本で出ているビデオは英語版です。
 逃走中の宝石泥棒が事故死し、近くに落ちていた「闇の女王」のコンパクトに飛んだ血がかかる。その力で封印を解かれ、闇の女王が復活する。バラバラの白骨からほぼ生前と同じ状態まで回復するが(この途中の状態がグールか?)、墓穴の死者たち(これがグールか?)に捕われ、思うように活動できない。姉の住むジャカルタにやってきたアメリカ人女性スーザンは、うっかり魔術書を読んで闇の女王に乗り移られ、吸血鬼と化す。彼女はイケイケ・ファッションで街に繰り出しては男を漁り、殺して血を吸うのだった。あと1人分の血を吸えば不死の存在になるというところで、姉が魔術書の著者を呼び、闇の女王は倒された。
 序盤はカーアクション&人体飛び散り。中盤はお色気もの。最後は手からビームを出して戦います。どの程度本気で撮ったのかさっぱりわかりません。一番の見ものは、口に含んだ血糊をチューっと吹いて、それを逆回しにした「吸血」シーンでしょう。
 もしかしたら、インドネシアにはこのようなモンスターの伝承があるのかもしれません。

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『グレイトフルデッド』    
Grateful Dead

 久正人のマンガ。全2巻。(もう続けないよね?)
 清末上海。娼婦コリンの正体は、男の精を吸ってトランス状態でキョンシーと戦う道士だった。彼女は老道士リー・リンチュウら仲間と共に、キョンシーを大量生産する悪の組織と戦う。…西洋の吸血鬼や人間以外のキョンシーも登場。
 世界観もプロットも上々、きわめてユニークな作品。ただ、アクションやキャラについては作家が構想した全てを描写しきれていない感があります。惜しい。

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『グレイブヤード』    
Graveyard Disturbance / una Notte al Cimitero

 TV映画。監督はランベルト・バーヴァ(自身もちらっと出演)。面白くなり得る要素をいろいろ抱えつつ、どんどんつまらない方向へ話を持っていく手腕は見事としか言いようがありません。ラストのつまらなさは特筆もので、本当にがっかりします。
 万引き後、車で逃走中の5人の若者が山道に迷い込み、中世風の怪しい村にやって来た。彼らは廃墟の地下の怪しい酒場で、「一晩地下墓地で過ごせたら掛け金総取り」という賭けに乗るのだが…。
 地下墓地にはゾンビミイラのほか様々なモンスターがいますが、人を襲う態度に真剣さが見られません。たまに驚かす程度です。特殊メイクは結構良いかもしれません。

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クロウ    
crow


 ジェームズ・オバーのマンガに登場するアンデッド・ダークヒーロー。ブランドン・リー主演の映画が話題になり、続編やTV版が制作されました。
 ハロウィンの夜(重複?)、ロックミュージシャンのエリックは、暴徒に恋人を犯され殺され、自分もビルの窓から突き落とされて転落死します。しかしカラスの霊力により不死身の肉体を得て生者の世に舞い戻り、自分たちを殺した者たちに復讐をしていきます。作者ジェームズ・オバーは婚約者を酔っ払いに殺されたのがきっかけでこの作品を書いたそうです。
 シリーズ全体に共通するこのアンデッドの特徴は、非業の死を遂げた人物(エリックなど)がカラスの力で復活し、復讐を遂げるというものです。普段から連れ歩いている導き手のカラスとは一身同体で、カラスを殺されると能力(不死身で痛みも感じない)を失ってしまいます。カラスの眼が見た光景を遠隔地で見ることができるので、偵察に使うこともあります。物に触って残留思念を読み取ったり、人の頭に触って自分の記憶を見せたりする能力も持っています。
 物語の中で「クロウ」と呼ばれることはあまりありません。道化師(っていうかデスメタル)の化粧をしているのですが、これは死者であることを視覚的に表現していると同時に、彼が「悪」であることを表しています。アンデッドになるという最も邪悪な行為をいとわないほど、エリックの愛と怒りは激しいということです。それを肯定する意味で、「復讐の天使」とも呼ばれます。
 全体的に北欧神話のフギンとムニン、ケルト神話のモリガン、マッハ、バズヴあたりの印象が強く、北ヨーロッパのテイストが濃い作品なのですが、映画化に際してのエピソードがこのヒーローの性質を全く別のものに変えてしまいました。エリックを演じたブランドン・リーが中国系だったことと、彼(翌月に結婚の予定だった)の撮影中の死が事故として処理されたことに人種差別を感じている人がいることです。これによりクロウはマイノリティ人種(特にアジア系)の怨念のようなものを背負うことになりました。その半年前の日本人留学生(服部剛丈君)射殺事件の印象も記憶に新しかったからかもしれません。

 クロウの登場する作品(年代順):
 『クロウ 飛翔伝説』(マンガ)
 『クロウ 〜飛翔伝説〜』
 『ザ・クロウ』(ビデオ版邦題は『クロウ2』
 『クロウ3』(TV放送時邦題は『クロウ 天国への階段』
 『クロウ・ザ・リベンジ』(TV放送時邦題は『クロウ 天国への階段』
 『クロウ ウィッチクロウ』(TV放送時邦題は『クロウ 天国への階段』
 『クロウ 復讐の翼』
 『クロウvsクロウ』(TV放送時邦題は『クロウ 天国への階段』

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『クロウ 飛翔伝説』    
the Crow

 ジェームズ・オバーによる原作コミック。
 ダークヒーローもののアメコミは、概してストーリーがぶつ切りで心象描写が中心のポエティックなものが多いですが、これはその中でも最もメランコリックな作品ではないでしょうか。紙幅の半分は恋人シェリーの追憶に浸るエリックの鬱々とした内面を描くのに割かれています。
 物語上の映画版との違いは、エリックがミュージシャンではないこと、道端で偶然殺されただけで地上げの話などないことなど。これらは映画の脚本で追加された設定ということになります。

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『クロウ 〜飛翔伝説〜』    
the Crow

 アレックス・プロヤス監督、ブランドン・リー主演、伝説の映画。あらゆる面で続編群より抜きん出ています。
 ハロウィンの前夜、ミュージシャンのエリックは婚約者シェリーを強姦の上殺され、自分も6階の窓から突き落とされて転落死します。地上げのために雇われた暴漢たちの犯行でしたが、警察は事件を解決できませんでした。1年後、不死身の体を得て墓穴から甦ったエリックは犯人たちへの復讐を開始します。
 ストーリーは平凡ですが、気鋭プロヤスの映像に酔いしれている観客の前にはどうでもいいことでしょう。ダークでコントラストの高い映像は、90年代アメコミの雰囲気そのままです。所詮は「化粧もの」と評価の低いブランドンですが、死んでしまったことでこの映画の価値はとんでもなく重くなりました。続編は絶対に本作を超えられない運命になり、ブランドン自身は父親に匹敵する伝説となりました。

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『クロウ2』    
the Crow: City of Angels

 『ザ・クロウ』のビデオ版の邦題です。

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『クロウ3』    
the Crow: Stairway to Heaven

 マーク・ダカスコス主演のテレビドラマシリーズ『クロウ 天国への階段』の第1話をビデオ化したもの。
 ストーリーはだいたい劇場版1作目と同じですが、エリックを殺した悪党たちの黒幕が、実はやはり死者(こちらはヘビの力で甦っている)だったという設定が追加されています。また、エリックは個人的復讐だけではなく、世界中の悪と戦うために甦ったとしており、シリーズを続けるための布石になっています。この設定変更は致命的で、クロウのキャラクターが全く別物になってしまったと思います。売りだった映像美もどこかへ行ってしまったし、世間の評判は良くありません。
 ダカスコスのエリックは、ブランドンには到底及ばないものの、まあ良し、という印象です。それより、ジュリー・ドレフュスがオバちゃんだったのがショックでした。

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『クロウvsクロウ』    
the Crow: Stairway to Heaven

 エリックは秘密結社ラザロ会の死者復活の研究に協力するが、陰謀によりエリックとクロウは分離してしまった。エリックはシェリーの助けを得て、無闇に殺人を繰り返すクロウとなんとかまた融和するが、その間にラザロ会のバルサム会長は、クロウの力を借りて永遠の命を得てしまった。
 連続ドラマの一エピソードに過ぎません。比較的手が込んでいて面白いエピソードではあるかもしれませんが。

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『クロウ ウィッチクロウ』    
the Crow: Stairway to Heaven

 マーク・ダカスコス主演のテレビドラマシリーズ『クロウ 天国への階段』のうち、「ウィッチクロウ」ハンナのエピソードを集めたもの。
 ハンナは生前は女医で、娘を誘拐された上に自分共々殺されました。夫は自殺。死の1年後カラスの力で甦り、犯人たちに復讐します。
 「復讐で人殺しをすれば魂が救われなくなるぞ」と言ってハンナを止めようとするエリックに原作の魂は微塵もありません。二人で誘拐・人身売買組織を成敗するエピソードなど、冒涜としか思えません。「激しい愛と怒りの前には正義も悪もない」というテーマは明快だったと思うのですが、どうすればこんなハナクソ以下の話が作れるんでしょうか。知能がないんでしょうか。

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『クロウ・ザ・リベンジ』    
the Crow: Stairway to Heaven

 マーク・ダカスコス主演のテレビドラマシリーズ『クロウ 天国への階段』の第2話以降のいくつかのエピソードをビデオ化したもの。2巻まで発売されています。
 個人的復讐を終えてあの世に戻るはずだったエリックが、諸事情によりこの世で悪と戦い続けることになります。もうへぼへぼの勧善懲悪ものになってしまっています。あまりのくだらなさに涙が止まりません。カナダの脚本家のレベルはもうちょっと高いと思っていたのですが。
 劇場版以来クロウというキャラクターに生じた、アメリカの人種マイノリティーの問題はわりと大きく扱っています。

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『クロウ 天国への階段』    
the Crow: Stairway to Heaven

 カナダで作られたテレビドラマシリーズで、マーク・ダカスコス主演。日本では一部地域で『クロウ 天国への階段』の題で放送されたましたが、それ以外では一部のエピソードをビデオで見ることしかできません。

 ビデオ版の邦題(年代順):
 『クロウ3』
 『クロウ・ザ・リベンジ』1〜2巻
 『クロウ ウィッチクロウ』
 『クロウvsクロウ』

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『クロウ 復讐の翼』    
the Crow: Salvation

 バハラット・ナルルーリ監督。
 恋人を殺された上にその犯人にされ、電気椅子で処刑された男アレックス・コルヴィス。彼はカラスの霊力で復活し、真犯人「腕に傷を持つ男」を探す。事件の背後には警察内部の大掛かりな陰謀があった。
 謎解き要素が加わって、ある種の「幽霊探偵もの」になった今作。面白くないわけではないんですが、クロウである必要は全くない気がします。
 アレックス役のエリック・メビウスは『バイオハザード』にも出演。エリン役のキルステン・ダンストは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』や『スパイダーマン』に出演。どちらも要チェック俳優ですね。

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『クロコダイルの涙』    
the Wisdom of Crocodile

 梁晋智(レオン・ポーチ)監督。ジュード・ロウ、エリナ・レーヴェンゾーン。
 医師スティーヴン・グリルシュは、詩や絵画の才能もある美男子。だが彼は、高級アパートに女性を誘っては血を吸って殺す吸血鬼だった。ワニと同様に感情のない彼は、獲物の血から取れる結晶の形を見て初めて、相手が自分に対して「絶望」「恨み」といった感情を抱いていたと知ることができる。新たな獲物アンは彼に「愛」を与えてくれるのか。殺人課の警部の捜査も迫っている…。
 人間的感情を持たないモンスター(動物)への哀れみを描いた作品。かなりファンタスティックで判別し難いですが、体の腐敗を防ぐために血を吸っているようなのでアンデッドということにしました。全体的に難解なのか、ジュード・ロウのファンでもこの映画だけはダメ、という人も結構いるようです。深く考えずに観ればそれなりに面白いと思うのですけれども。
 フランシス・ベーコンが「ワニの知恵」の話で諭しているのは次のようなことです:ワニは獲物を食うときに涙を流すと言われるが、それは相手のためではなく、自分の罪悪感を減らそうとしてである。そのように自分勝手で他人を愛さない者は結局一番不幸なのだ。

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『黒鷺死体宅配便』    
Kurosagi Delivery Service of Corpse

 大塚英志原作、山崎峰水漫画。4巻まで出てます。
 仏教大の学生が起業した宅配会社の正体は、死者を本人の望む所へ送り届ける「死体宅配」会社だ。主人公の唐津九郎はイタコ能力の持ち主で、死体に触れて「依頼」を聞きだすことが出来る。…エピソードによっては死体が動き出して復讐を遂げますが、唐津の背後霊がそうさせる能力を持っているようです。また、反魂術を使う楡睦美というキャラも登場します。
 大塚英志原作のマンガは好きでよく読むのですが、これは比較的破綻のないものに入るでしょう。ダウザー、チャネラー、エンバーマーなどのおいしいキャラで物語を引っ張り、プロットは軽めに押さえてあります。

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『黒の怨』    
Darkness Falls

 ジョナサン・リーベスマン監督。
 伝承では歯の妖精Tooth Fairyは、抜けた乳歯を枕の下に置いておくと、子供が寝ている間に金貨に換えてくれるということになっています。それを題材にした映画ですが、論点がよくわかりません。150年前、乳歯と金貨を換えてくれる子供好きの女性がいて歯の妖精と呼ばれたのですが、事故でひどい顔になった上に子供を誘拐したとの濡れ衣でリンチにされました。死後その怨念が子供を襲い、その顔を見た者は殺されるのです。そういう設定のモンスターに母親を殺された上にその殺人容疑をかけられ矯正施設に送られ、暗所恐怖症にもなった少年が12年後すっかり大人になり、幼なじみの女の子の弟でやはり夜驚症の男の子を歯の妖精から守ろうとする話です。
 この歯の妖精、光が苦手ということで、映画全体が暗所で話が進み、なんだかよくわかりません。造形上は、普段はマスクをしていますが、素顔は焼死人ゆえフレディに似ています。

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