『魔界転生』    

 山田風太郎の小説。別名『おぼろ忍法帖』『忍法魔界転生』。
 忍法「魔界転生」で蘇った宮本武蔵ら剣豪たち(転生衆)を相手に、柳生十兵衛が死闘を繰り広げる伝奇小説の傑作です。強引な展開で7人の転生衆と1対1のバトルが連続するストーリーは、マンガに似ているのではなく、マンガが似ているのです。こちらが元祖なのです。
 この「転生衆」の作り方を紹介しましょう。森宗意軒というキャラクターは、忍法と西洋魔術をミックスしてこの「魔界転生」の術を編み出したということになっています。

1 人生を後悔していたり、憤激のうちに殺される直前だったりで、生まれ変わりへの妄執が強い男を捜す。術師自身も可。
2 この男は、術に耐えるだけの強靭な体力の持ち主でなければいけない。
3 この男が恋着している女、またはそのそっくりさんを探す。
4 この女は、処女でなくてはならない。
5 術師は自分の手の指を1本切る。切った指で女をどうにかこうにかして、術をかける。つまり生涯10回しか術は使えない。
6 男は死ぬ間際に、術をかけた女と交合する。直後に男は死ぬ。
7 1ヶ月以上待って、女の皮膚に切れ目を入れる。すると蛹が羽化するように、卵の殻が割れるように女の皮を破って問題の男が出てくる。
8 出てきた男は交合したときと同じ年齢で、病気や怪我は治っている。
9 出てきた男は生前よりパワーアップしており、年もとらない。

 ただしこの転生衆、凄絶な術で蘇ったわりには、ただ柳生十兵衛と勝負するだけ、という実害の少ないモンスターたちでした。

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『魔界転生』    
Samurai Reincarnation

 同名小説を深作欣二が映画化。千葉真一、沢田研二ほか豪華キャスト。
 森宗意軒は登場せず、天草四郎はベルゼブブを奉じて転生の術を得ます。相変わらず転生衆は柳生十兵衛とバトルするだけですが、四郎は一応徳川幕府への復讐を考えているらしく、一揆を扇動して江戸まで上り、江戸城を焼いて家綱を殺すところまでいきます。しかし四郎と幕府も、転生衆と十兵衛も、結局どっちが善でどっちが悪だかわらず、お互い単に暴れたかっただけではないかとの疑問以外は何も残さずに物語はさくっと終わります。娯楽映画かくあれかし。

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『魔界転生』    

 山田風太郎の小説を石川賢がマンガ化。アンデッド色はかなり後退して、代わりにサタンだの何だのというダイナミックな二元論が展開しております。
 九鬼一族というのが登場するのですが、いかにも石川賢なモトリークルー趣味です。

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『魔界転生』    

 とみ新蔵が劇画化したもの。
 原作のストーリーをほぼ忠実に再現(転生衆7人がフル出場!)。個々のバトルシーンはディティールが強化されています。逆に陰謀プロットの描写は端折り気味ですが、全体的に良いアレンジなんじゃないでしょうか。

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『魔界転生』    

 平山秀幸監督で映画化。
 森宗意軒などは登場せず、天草四郎がラスボス。四郎はあまり計画性がなく、頼宣と家光、徳川同士を殺し合わせるつもりが、上手くいかなくなって家康まで転生させる始末。転生シーンはCGでグロく見せますが、準備プロセスは不明でエロ度は低くなっています。また、原作や前の映画で支配的だったバトル・ムードはかなり後退し、「なんだかすごいキャラが次々登場する」だけの映画になっています。ストーリーもあって無きが如し。東映の映画ですね。
 ほぼ全シーンに登場してヌゥッと立ってる天草四郎(窪塚洋介)、家康を生んだ抜け殻のまま蠢くクララお品(麻生久美子)、登場シーンだけおどろおどろしい荒木又右衛門(加藤雅也)などが見所ですが、柳生十兵衛(佐藤浩市)ら剣豪は影が薄いです。

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『魔界転生 聖者の行進』    

 九後奈緒子によるマンガ化。原作とは全く異なるスピリットを持つ作品ですが、これぞ日本文化の深奥という気がしますね。
 十兵衛に関しては、無頼の剣士を表現したらこうなったということで納得できますが、時貞のキャラクターは明らかに違います。結局は宗意に騙されて怪物にされた風で、十兵衛を転生衆にすることに子供っぽく執着して徳川への復讐がお留守になっています。

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『魔性のしたたり 屍ガールズ』    
the Revenge of the Living Dead Girls
/ la Revanche des Mortes Vivantes

 父と子と聖霊の御名において先に言っときますが、この作品に登場するゾンビ(屍ガールズ)はアンデッドではありません。「早すぎた埋葬」ものと言えなくもないですが、いずれにせよ脚本は不備だらけです。以下にあげつらいましょう。
 まず、少女たちが倒れてから埋葬されるまでの間、生きていると気付かれなかったのは不自然です。偽の死亡診断書を書いた医者か、ゾンビパウダーのようなものを登場させる必要があります。
 次に、墓地に廃棄物が不法投棄された意味がわかりません。社長秘書は墓地が投棄場所とは知らなかったので、誰かに墓を出るところを目撃される必要があったというのは理由になりません。廃棄物を浴びた少女たちにはいずれにせよ科学者や妻のような運命が待ち受けている、と言いたいなら、ラストで彼女たちを焼き殺してはいけません。
 牛乳に廃棄物が混入された理由がわかりません。混入の現場は誰も見ていないので、牛乳を飲んだ直後の変死を廃棄物と結び付けて考える人はいないはずです。
 ゾンビたちが銃で撃たれたりしなかったのは、ラッキーだったということにしましょう。
 以上です。一覧してわかるのは、全てのシーンは観客を欺くために挿入されており、犯罪計画の合理性など無視されているということです。
 さて、この映画の魅力はやはり、洪水のようなエロ&グロ映像にあります。話の本筋(と呼べるものがあると仮定して)とはほとんど関係ないセックスと殺しがシーンの大半を占めています。特に科学者の妻の流産シーンは、無意味さと残酷さにおいて一級品と言えるでしょう。
 ピエール・B・ラインハルト(ピーター・B・ハーソン名義)監督。

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『魔処女』    
Karmina

 邦題からは想像もつかないラブコメ作品。ガブリエル・ペルティエ監督。カナダのフランス語映画。
 トランシルヴァニアに住む吸血鬼のカルミーナは、政略結婚を押し付けられそうになって家出し、モントリオールに住む叔母エスメラルダを訪ねた。エスメラルダの秘薬で人間になったカルミーナは昼の町に繰り出し、人間としての感情を経験し、やがて売れないミュージシャンのフィリップと恋に落ちる。だが彼女を追って婚約者ヴラドもカナダに現れ、騒動を巻き起こしていた。
 世間知らずのお嬢様が騒動を起こす類のラブコメ(『ローマの休日』など)の系譜につながる作品ですが、全体的に地味な上、笑いのセンスもぴんと来ません。邦題はその路線でのセールスを断念した証拠でしょうけれども、ホラーを期待した人は大失望したに違いありません。あと、ブリュッセルのファンタで何か賞を貰ってるらしいですが、映画祭受けするんですよね。こういう作品は。
 この映画の吸血鬼は結婚して子供が生まれます。血を吸われた人間は吸血鬼になるようですが、全員そうなるかどうかは不明です。秘薬を飲むと一定時間人間になり、日光や十字架が平気になりますが、長命、飛行など吸血鬼の利点はなくならないようです。都合の良い話ですな。

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『魔女伝説ヴィー』    
Viy / Вий

 『妖婆 死棺の呪い』のビデオ発売時の邦題です。

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『魔人ドラキュラ』    
Dracula

 トッド・ブラウニング監督。最初期のドラキュラ映画。ベラ・ルゴシ演じるドラキュラはその後の吸血鬼映画に大きな影響を与えました。
 ミナがセワードの娘になっていたりと、多少のアレンジがあります。ストーリーを映画にあわせて簡略化するためでしょう。

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『マミー・ザ・リベンジ』    
Ancient Evil: Scream of the Mummy

 デヴィッド・デコトー。見せ場や盛り上がりが全くないです。故意にやっていることとしか思えません。
 とある大学(民家にしか見えない)。アステカの遺跡から発見されたミイラが、雨神トラロックの神官の末裔と称する学生の呪文で動き出した。彼をいじめ、無視していた学生らが次々とミイラに殺される。さらに処女の血を使った儀式により、この世の終末が招来されようとしていた。
 シーンは1軒の家屋から出ることはなく、人間が総勢8人とミイラが1人出てきます。でぶでぶと太ったらしからぬミイラは、非常にゆっくり歩いて、背後からナイフで人を襲います。ただし切られる瞬間は必ず画面外です。

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『マヤ』    
Maya

 マルチェロ・アヴァローネ監督。『エクソシスト』の雰囲気にイタリア風のエログロを放り込んだ感じの映画。退屈とミステリアスの瀬戸際を縫うように進む意味不明な物語。血糊は控えめです。
 「死の儀礼」祭を控えたメキシコの村。アメリカ人考古学者を手始めに、観光客や村人が次々と殺されていく。かつて暴君ジバルバイは死神と結託して諸国と戦ったが、敗戦して死者の世界に逃亡した。その暴君が現世に戻って生贄の儀式を始めたのだ、という噂だが真相は…。
 ジバルバイはアンデッドというよりも人間がデーモン化したものと考えた方が良いのかもしれません。

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