『ボイス』    
Phone

 アン・ビョンギ監督。『リング』の流れを汲む日本風ホラーですが、要素盛り込みすぎで話がちょっとごちゃごちゃしてます。
 ジャーナリストのジウォンは援助交際の暴露記事で恨みを買い、ストーカーから狙われる。親友ホジョンの家に匿われ、携帯の番号も変えたが、その携帯が怪音波を受信し始める。ホジョンの娘ヨンジュがうっかりそれを聞いてしまい、何者かの霊に憑依された。以後ヨンジュは奇怪な行動をとり、母ホジョンに敵愾心を持つようになる。どうやら以前の携帯番号の持ち主である女子高生ジニが霊の正体であるらしい。ジニの霊がジウォンの前にたびたび姿を現し、ストーカーから助けたのは、自分の死の真相を伝えるためなのか。
 ホジョンの夫チャンフンはジニと不倫していたのだ。妊娠を機に別れようとするチャンフンに電話やメールを何度も送るジニ。ホジョンが不倫に気づいてジニと談判するが、話がこじれて結局ジニを殺してしまう。ホジョンが不妊症でヨンジュもジウォンの卵子をもらってできた子供なのに対し、ジニは自分とチャンフンの子を妊娠している。ホジョンはそのことを言われて逆上したのだ。ジウォンが真相に迫り、家の壁に塗り込められたジニの死体を発見すると、ホジョンは口封じにチャンフンを殺し、ついでジウォンを殺そうとする。だが突如ジニの死体が動き出し、それを阻むのだった。
 子役ウン・ソウの怪演が拾い物。岸壁のラストシーンは日本人から見ると今風じゃないですね。

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『亡霊学級』    

 つのだじろうのマンガ。中学生を主人公にした「学校の怪談」集。どのエピソードにも幽霊が登場します。
 1974年の出版で、さすがに今では古臭い感じがします。汲み取り式便所の話題である第四話『手』や、猫屋敷や猫ばあさんの出てくる第五話『猫』などです。他は現在でも通用する怪談で、第一話『ともだち』は90年代のサイコホラー、第二話『虫』はミミズバーガーを先取りしているとも言えるでしょう。疑問に思ったのは、「終戦直後の貧困期」という設定が今の子供にどんな印象を与えるのか、という点です。「我々の今の繁栄の下には、戦中戦後の暗い時代に死んでいった人々のパトスが堆積し、踏みつけにされている」という意識がなければさして怖くない設定のはずですが、どうなのでしょうか。
 他に『赤い海』という作品も収録されています。香港から日本へ向かう航路で船員を襲う海の吸血鬼の物語です。

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『ボクらの太陽』    

 コナミのゲームボーイアドバンス用アクションRPG。「小島秀夫監督作品」だそうです。
 このゲームの特徴は、カートリッジ先端についた紫外線センサーで太陽光の強さを測定することです。日中屋外で起動して「太陽エネルギー」を蓄え、光線銃で様々なアンデッドモンスターを倒していくのです。蓄えが十分あれば屋内や夜でも遊べますが、ボス敵は直接陽光で倒さなければなりません。
 登場するモンスターは、グール(下僕。通称「ボク」)、マミー、ヴァンパイアロード、レディヴァンパイア・カーミラ(ラミア風)。あとはゴーレム、コカトリスなどの非アンデッド系です。細かいことですが、カーミラが棺ではなく鋼鉄の処女に入ってるのが印象的でした。

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『ポゼスト 狂血』    
Besat / Possessed

 アナス・ロノウ・クラーロン監督。
 1999年のコペンハーゲン。ルーマニアから来た男が怪死した。症状はエボラに似ているが病原体は見つからない。新ウイルス発見の功にはやる医師ソーレン(オーレ・レメケ)は、恋人サラ(キアスティ・エリーネ・トアハウグ)と共にブカレストへ飛んだ。一方デンマーク警察は、ルーマニアから来た別の男(ウド・キアー)を連続放火犯とにらんで追っていた。だが彼の正体は修道士で、人から人へと感染する悪魔を追っているのだった。
 吸血鬼現象が起きた場合の医療や警察の対応をリアルなタッチで描きます。中盤ルーマニアのシーンのバッドトリップ感はなかなかのものですが、後半のバトル場面は地味で盛り下がります。
 悪魔の実体は不明ですが、1人から1人へのり移るだけで吸血鬼のような増殖はしません。咬むのではなく、手の爪で刺された傷から感染するようです。

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『墓地裏の家』    
the House by the Cemetary
/ Quella Villa accanto al Cimetro

 ルチオ・フルチ監督作品にしては筋書きがしっかりしていますが、どことなく地味な印象があります。
 歴史家ノーマンと妻子は研究のため、ボストン郊外の「墓地裏の家」に引っ越した。先任者は愛人を惨殺した上で自殺したというが、それは家の中に葬られたフロイドステイン博士の呪いではないかと考えるようになる。地下室から聞こえるうめき声、息子ボブにしか見えない謎の少女。そして不動産屋、ベビーシッターが謎の死を遂げる。
 19世紀末の医師フロイドステイン(フロイトシュタイン)博士は人体実験を繰り返した末医師の資格を剥奪され、自宅に葬られました。以後屋敷に来る人を襲い、その血によって腐った体を維持しています。素晴らしい造形(怪しい顔つきと手術着)、名前を持つこと、一体しか出てこないこと、などなどキャラクター性が高く、ゾンビの範疇から外れています。アメリカ人が撮ったらシリーズ化されていたでしょう。
 謎の少女など他のアンデッドらしき存在も登場しますが、正体は不詳です。

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『ボーデロ・オブ・ブラッド 血まみれの売春宿』    
Bordello of Blood

 ギルバート・アドラー監督。『テイルズ・フロム・ザ・クリプト』の劇場版その2。テレビでは(やりたいのに)できなかった売春婦&ゴア話をのびのびと撮っています。カス映画には稀有の屈託のなさがポイントかと。
 フエゴ島で発掘された吸血鬼の母リリス(アンジー・エバーハート)が、なぜかアメリカのド田舎で売春宿をやっている。ジャンキーのカレブ(コリー・フェルドマン)が入ったきり姿を消し、宗教家の姉キャサリン(エリカ・レニアック)と私立探偵レイフ(デニス・ミラー)は調査を始めた。キャサリンの上司カレント師(クリス・サランドン)が一枚噛んでいるようなのだが…。
 半裸の女吸血鬼たちを水鉄砲(聖水)で退治するテレビ伝道師の楽しげな表情。未来に遺したい20世紀の映像ですな。

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『ポーの一族』    
the Poe Clan

 萩尾望都の傑作吸血鬼マンガ。
 14歳の姿のまま永遠の時を過ごす吸血鬼(バンパネラ、ポーと呼ばれる)のエドガー、妹のメリーベル、友人(?)のアランの物語。アランがエドガーに出会い、メリーベルが死ぬ(消滅する)第1話(19世紀末)を中心に、200年間にわたる物語を断片的に、ランダムな順番で綴っています。
 この作品の吸血鬼は、他の吸血鬼から血を分け与えられることで「一族」のメンバーになります。吸血鬼は時々血を吸い、バラのエッセンスを飲む以外の食事は必要ありません。心臓に杭を打たれると塵になって消滅しますが、十字架、聖書、ニンニクなどは致命的ではありません。
 日本の吸血鬼作品の特徴として、絶対的善悪の概念が欠落していることが挙げられます。加えて、主人公エドガーらは半ば強制的に吸血鬼にされているので「先天的」吸血鬼に近く、作品全体にアンデッド特有の退廃はありません。代わりにあるのは「怪物として生まれたものの悲哀」であり、特にライフスパンの差異ゆえに人と交流できない不死者の孤独が強調されています。あと、ポーの村という霧に閉ざされた幻の吸血鬼の住む村落が出てきますが、これは中国の桃源郷の伝説そのものであり、だとすればこの作品の吸血鬼はむしろ仙人のような存在と捉えた方が良いのかもしれません。
 何十年経っても主人公に精神的成長が見られないことから、この作品の吸血鬼が「永遠に老いない少年」なのだとわかります。単に死なないだけではありません。これが読者少女(少年)一般の「大人になりたくない」という気持ちを代弁しており、それ故に多くの人に指示され人気を博したのでしょう。
 大人になるとは、子供の自分が死ぬということです。自分は死にたくないから大人になりたくないのですが、大人にならなければ社会とまともに関わっていけません。いつまでも子供のままでいると、大人になっていく周囲の人々とは話が合わなくなっていきます。この「いつまでも子供ではいられない」ことを「怪物の悲哀」として見事に表現した作品ですが、「大人になること」を肯定的に捉える方法までは見出せていません。もっとも、これは戦後日本社会全体が抱えた大問題なので、作品の欠点と考えるべきではないでしょう。むしろ、少女マンガなのに「女性性」に関する描写がまるでないことの方が気になりますが、他の萩尾望都作品ではきちんと扱われているようです。

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『仄暗い水の底から』    

 鈴木光司原作、中田秀夫監督は『リング』のコンビ。黒木瞳主演。
 離婚係争中の淑美は、娘と古い団地に引っ越してきた。そこで彼女は天井から滴る水や、幼女の幽霊に悩まされる。幽霊の正体は上の階の元住人で、貯水槽に落ちて死んだのに誰も気付かず、失踪事件として処理されていたのだった。
 テーマは「こぶ付き離婚」です。主人公は幼児の頃両親の離婚を経験しており、その頃の辛さを娘には感じさせまいと努力しますが、上手くいきません。また、上の階の元住人も父子家庭です。親の勝手で離婚などしたら子供が迷惑だろう、という大人の罪悪感を衝いているのでしょうが、「親はなくとも子は育つ」と思っている人間にはなんにも怖くありませんでした。親が幽霊ぐらいで取り乱していたら子供は大変ですね。

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『仄暗い水の底から』    

 同名小説(よりむしろ映画か?)をMEIMUが短編マンガに。ただし、マンガ読者層には離婚云々のテーマは伝わらないと思ったのでしょうか、仕事などのストレスから幼児虐待に走りかける主人公を幼女の幽霊が止める、という小話にまとめられています。この人のマンガは長編より短編の方が面白いのでこのアレンジは成功でしょう。
 幼児の溺死体がプレジャーボートを立ち往生させる『夢の島クルーズ』と非アンデッド話『漂流船』『海に沈む森』の合計4作を掲載。いずれも水に絡んだ怪談話です。

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『ホワイト・ゾンビ』    
White Zombie

 旧邦題『恐怖城』。ヴィクター・ホルペリン監督、ベラ・ルゴシ主演。記念すべき世界初のゾンビ映画。1932年製作。
 結婚式を挙げにハイチにやってきたアメリカ人カップル。だが花嫁に横恋慕した男が怪しい農場主(ルゴシ)の手を借り、花嫁は急死してしまう。農場主は敵をゾンビにしては奴隷として働かせる呪術師だったのだ。花嫁も仮死状態になっただけで、心を持たない人形のような状態で生き残っていた。
 ルゴシ演じる呪術師が何を企んでいたか不明だとか、セットが全然ハイチに見えないとか、多少問題はありますが、後に乱造されるカスのようなゾンビ映画に比べればよっぽどまともな作品だと思います。当時はアメリカがハイチを軍事支配しており、アメリカ人にも様々なハイチの風習が伝わったのでしょう。最も耳目を引くゾンビをモチーフに映画を作ろうというのも当然であります。ゾンビは仮死状態で埋葬されたロボトミー奴隷という風に(正しく)捉えられていますが、具体的にどうやって製造しどう使役するかなどなどは不明だったようで、随分適当に描かれています。

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『ホワイト・ナイトメア』    
the Turn of the Screw

 ラスティ・レモランデ(レモランド?)監督。ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』の3度目の映画化。
 ストーリーは原作に忠実ですが、作品全体の味付けの面ではホラー度が低くなっています。美しい庭園と城館の装飾やふんだんに使われるアンティーク玩具で、素敵にピクチャレスクな映画。いかにもイギリス人が撮った作品です。幽霊が出るシーンも怖いというより、絵画を見ているかのようです。
 主人公の家庭教師ジェニーは厳格な牧師の娘という設定なのですが、パッツィ・ケンジットは若い頃の印象が強すぎてピンと来ませんでした。演技は悪くないとは思いますけれども。

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『ボーンズ』    
Bones

 アーネスト・R・ディッカーソン監督。スヌープ・ドッグ、パム・グリアーほか。
 70年代、黒人街の顔役ジミー・ボーンズが自宅で謀殺された。そして現代、何も知らないパトリックと弟たちは、空き家になっていたボーンズ邸を買い取ってクラブに改造する。だが屋敷にはボーンズの幽霊が巣食っていた。その化身(使い魔?)の黒犬が人を襲って食うたびに、ボーンズの遺骨に血肉が戻っていく。クラブ開店の日に完全復活したボーンズは、自分を殺した者への復讐を開始した。
 80年代の若者向けホラーが現代に蘇った感じです。話は平凡な死者の復讐劇ですが、今風のスタイリッシュなカメラワークと目の覚めるような特殊効果で現代の観客にも訴求。加えて古いホラーファンには、様々な映画から引用した(と思われる)残虐シーンを探す楽しみもあります。
 単なるノミ屋の元締めだったとは思えぬボーンズの凄まじい魔力が見どころ。彼が自分の死と無関係な人々まで冷酷に眉一つ動かさず殺すのは、彼の愛した街をスラムに変えてしまった責任は現在の住人にあるということでしょう(スヌープ・ドッグの演技力のせいだという噂もありますが)。最期は彼の血の染みた服を焼却されて消滅しました。

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『ホーンティング』    
the Haunting

 シャーリイ・ジャクスンの『たたり』をヤン・デ・ボンが2度目の映画化。
 最新の技術を使って、悪夢や霊現象を見事に視覚化しています。その方が現代的だと思ったのでしょうが、原作の「霊がいるのかいないのか最後までわからない」曖昧さをさっぱり捨て去り、「霊はいる」という前提で序盤から驚かしていきます。前の映画『たたり』と比べてどちらが良いとも言いかねますが、今作のほうが頭が悪い印象があります。

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『ホーンティング・オブ・ヘルハウス』    
the Haunting of Hell House

 ミッチ・マーカス監督。ロジャー・コーマン製作。
 1900年頃の米ポーツマス。大学生ジェームズは恋人サラに堕胎させたが、その結果サラは死んでしまった。以後サラの亡霊を見るようになったジェームズは、幽霊屋敷の所有者アンブローズ教授を訪ねる。教授は娘ルーシーの結婚に反対したが、和解せぬまま娘は死んでしまった。以後ルーシーの幽霊が屋敷に住み着いて教授を苛むのだという。
 どこかで聞いたような酷いタイトルですが、原作はヘンリー・ジェイムズの短編『幽霊の家賃』"the ghostly rental"で、文芸作品の映画化としては至極まともです。面白くはないですけど。

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『ホーンテッド・ハウス』    
the Haunted

 実話を元に作られたテレビ映画。ロバート・マンデル監督。
 中古の家に引っ越してきたスマール家の人々が、ポルターガイストに悩まされるようになる。悪魔と3人の幽霊の仕業のようだが、教会はなかなか悪魔祓いをしてくれない。
 家族愛とか信仰とかが大切です、という話。つまらないです。

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『ホーンテッド・マンション』    
the Haunted Mansion

 ロブ・ミンコフ監督。エディ・マーフィー、テレンス・スタンプほか。『パイレーツ・オブ・カリビアン』に次ぐディズニーランド由来の映画第2弾。今回はファミリーものです。
 舞台はルイジアナ。不動産屋のジムは妻サラ、二人の子供と共に顧客の城館を訪ねる。だがそこは何百もの死者が巣食う幽霊屋敷だった。館の主グレイシーは、サラのことを自殺した花嫁エリザベスの生まれ変わりと信じて彼らを呼び寄せたのだ。
 エリザベスは本当は執事に毒殺されたのです。その真相をグレイシーに伝えることで館の呪いは解け、死者たちは一斉に昇天しました。どっちかというと、幽霊より納骨堂に出てくるゾンビの映像の方に魅力を感じましたね。特殊メイクはリック・ベイカーでした。

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