『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』    
Night of the Living Dead

 ジョージ・A・ロメロ監督。
 「リビング・デッド3部作」の第1弾とされるゾンビ映画の古典。ところが作品中では登場するモンスターは「グール」と呼ばれているので、あえてグールに分類してみました。この作品は、ゾンビ映画の常識「噛まれるとゾンビになる」「頭を撃てば倒せる」「動きが遅い」などを決定付けたとされています。
 歴史的に見ると、ドキュメンタリータッチの徹底したリアリズム、モンスターの怖さよりもパニックに陥った人間のドラマを描いていること、黒人が主人公なこと、などが革新的だと評価できます。今ではこれらもさして珍しくありませんが、それでもラディカルな印象は衰えません。

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『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 死霊創世記』    
Night of the Living Dead

 ジョージ・A・ロメロ『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』をトム・サビーニがリメイク。ロメロは製作総指揮、脚本。
 内容は前作とほとんど同じですが、バーバラが主人公となっています。前作(68年)がブラックパワーとか公民権運動とかいう時代の作品であり、黒人のベンが主人公だったことを考えると意味ありげですが、墓守にはこのリメイクの制作意図はよくわかりません。ゾンビがあまり怖くないのがそもそも大問題ではないかと思います。
 バーバラは序盤は弱い女性として登場しますが、途中から銃を手にし、スカートをズボンに履き替えて「強い女」に変身します。ベンがクーパーとの内輪もめに倒れると、クーパーを放って一人で脱出、自警団に合流します。クーパーは保守的、反動的な人物として描かれており、最期にバーバラに射殺されます。「強い女」を主人公とするのはこの頃(90年)の流行ですが、サビーニやロメロがそれをどう考えていたのかはわかりません。自警団をどう捉えたらいいのかがわからないのと、バーバラの「ゾンビは私たちだ」という意味の発言の「私たち」が人間全体なのか自警団なのか女性なのか、その辺がわからないのが原因です。
 余談ですが、ベン役のトニー・トッドがバールを手に登場します。キャンディマンの鉤のようでした。

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『ナイトフォール』    
Buffy the Vampire Slayer

 『バッフィ 恋する十字架』のビデオ版の邦題です。

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『ナイトライフ』    
Night Life

 デビッド・アコンバ監督。スコット・グライムス、ジョン・アスティン、シェリル・ポラックほか出演。
 高校生アーチーは叔父(伯父?)の葬儀屋で死体防腐処理のバイトをしている。そのことでクラスのいじわる男女4人にいじめられているが、何の因果かその4人は交通事故で死に、アーチーが徹夜で死体の処理をすることになった。そしてその夜、死体が動き出して彼を襲う。
 ゾンビととりあえず呼んでおきますが、この映画のモンスターは4体のみ。事故の際化学薬品に犯された死体が、停電で安置所の冷蔵庫が止まって温度が上がったために動き出したようです。速さや強さは人間並みで、生前の意志をかなり残しているようです。物言わぬ死体4人が自動車に乗って追いかけてくる様は新鮮でした。人を食ったりはせず、ただ殺そうとします。頭を斧で割られたりボイラーで焼かれたりして倒されました。
 なかなかサスペンスフルな作品ですが、ホラーは後半だけで、前半は悩める若者の日々を描いています。頭は良いけれども貧乏な少年(父親がいない)が主人公で、雇用者である叔父には酷使され、学校ではいじめられ、味方は似たような境遇の少女だけ。こういうナードな少年が主人公で、金持ちでルックスが良くて頭の悪い連中が悪者として扱われていますが、これはアメリカの青春映画では80年代後半に見かけられる特徴です。それにホラー要素が加わった本作は、世間の評価「スティーヴン・キング風」の一言で片付けるのもそう乱暴とも言えません。

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『ナチス・ゾンビ 吸血機甲師団』    
Zombie Lake / les Lac des Morts Vivants

 ジャン・ローラン(J.A.レイザー名義)監督、フランス・スペイン合作の超脱力映画。日本で出ているビデオは英語版です。
 パルチザンに殺されたドイツ兵の死体が湖に投げ込まれ、数年後ゾンビになって女子バレーボールチーム一行(全裸)などを襲う。ドイツ兵の一人と村娘が愛し合い、子供があったが、その子供が父(ゾンビ)らを誘導し、火炎放射器で一網打尽に。
 この映画のゾンビは人の血を吸うだけで、肉は食いません。吸われた方も死ぬだけで感染はしません。襲うのは主に全裸の若い女性で、男や服を着た女はあまり好まないようです。日本語の副題に「吸血機甲師団」とありますが、実際の規模は中隊程度です。
 ゾンビはともかく生者までがゆっくりのんびりと演技しており、全く緊張感がありません。子供の演出はなおざり、水から上がってきたゾンビは息が荒く、絵の具も落ちています。意味のないロング、ズーム、長回しの連続で、笑い出してしまうことは必至です。

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『生首情痴事件』    

 財産目当てで結婚した男が、妊娠した妻に離婚を迫られる。愛人に唆された男は妻を毒殺して死体を処理した。警察は自殺と断定したが、なぜか死体の首だけが見つからない。そして男は生首(終盤には蛇も)の幻覚を見るようになる。一方愛人は事故で顔面を火傷して入院。妻の遺産を現金化した男は、今度はそこの病院の看護婦と通じ、愛人を殺して海外に逃げようとする。だが看護婦は医師と共謀して金を奪おうとしていた。男は最後には狂乱して関係者全員を殺し、ナイフに倒れこんで自分も死ぬ。
 四谷怪談の翻案。新鮮味がない上に幽霊のシーンも少なくて物足りません。小川欽也監督。

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『生ごみ 死体遺棄』    

 村田啓一郎監督、黒田詩織主演のビデオ映画。
 マンションに引っ越してきた若い夫婦が、前の住人が押入れに残していったゴミ袋を発見する。その中身は生ける屍。妻はそれを、事故死したかつての愛人「前田」だと思う。夫はそれを、いじめを苦に自殺した同級生「前田」だと思う。死体との愛欲に耽る妻と、死体を追い出そうとする夫。他の人には見えない死体は、2人の狂気の産んだ幻影なのか、それとも…。
 とにかくエロいエロ映画。でも、ホラーにエロは必要不可欠ですが、エロにホラーは要りません。ホラー作品として見るならば、5分に1度というセックスシーンの多さは如何なものか。と思います。特殊メイクも酷いし。実際、役者も監督もみな成人映画畑の人たちです。ただし村田啓一郎監督は『ねらわれた学園』以前はファンタスティック系の仕事をしていた人で、その持ち味を上手く出した作品だと言えるかもしれません。

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