行政が受取る私道と受け取らない私道
一団の分譲地で、
その中の道路が私道(位置指定道路)の事があります。
私道ですから、
道路の維持管理は所有者がしなければなりません。
でも行政に寄付をすれば、
道路は市(区・町・村)道となって、
行政が維持管理をしてくれます。
寄付をしない手はありません。
私道所有者全員の同意が必要
分譲地などで、一本の私道に複数の宅地が面している場合、
面している宅地の所有者が持分割合で私道の所有権も持っています。
もしも私道を行政に寄付しようとするならば、
所有者全員の同意がなければ寄付ができません。
行政に寄付した方が、管理をしなくても良くなるので、
その方が得だと思うのですが、
中には、
「道路にも所有権があって財産だから手放したくない。」
とおっしゃる方もいるのです。
そうなると寄付はできません。
行政の基準と予算
私道の所有者全員の同意が得られ、
いざ私道を行政に寄付しようと相談にいった所、
行政に拒否される事があるのです。
それは行政によって、
私道の寄付を受ける道路の形態などの基準があったりするからなのです。
ある行政では私道の両端が、公道に繋がって通り抜けできないと
寄付を受け付けません。
その理由は、
住宅密集地では、道路は災害時には避難通路でもあり、
なるべく行き止まりの道路にならないように、
通り抜けにしたいのです。
そういう事から、行政や地域によっては、
行き止まりの道路の寄付を受け付けない行政があります。
もうひとつは財政の問題です。
寄付ですから、
行政が所有者に土地代を支払う事はありません。
所有者は無償で私道を行政に渡す事になります。
ではなぜ行政は寄付を受け付けないのでしょうか。
道路の寄付を受けた行政は、
その道路を維持管理しなければなりません。
万一道路が傷んだ場合は、税金で直す事になります。
行政の財政が悪ければ、
管理する道路が増えると費用負担も増えます。
管理する予算が足りないので、
私道の寄付を受け付けないのです。
中には財政難から、
一切私道の寄付を受け付けない行政もあります。
担保(抵当権)の問題
もうひとつ行政が私道の寄付を受け付けない場合があります。
それは、私道に住宅ローンなどの担保が付いている場合です。
私道に面した宅地の所有者は、大抵私道の持分も持っています。
住宅ローンを利用して土地や建物を購入した場合、
共同担保として、
私道の持分にも抵当権設定登記がされています。
抵当権設定とは、
分かりやすく言うと「借金のカタ」の事です。
万一住宅ローンが支払えなくなった時は、
「貸金の代わりに取ってしまうぞ!」
と言う事なのです。
行政が私道の寄付を受けた後、
道路に付けられた抵当権を実行されたら、
その部分は、第三者の所有になってしまうのです。
なので、
抵当権などの担保設定登記がされている私道は
行政は受け取りません。
その場合、金融機関に理由を話せば、
道路部分の抵当権を抹消してくれる金融機関もありますので、
一度相談をしてみる価値はあります。
面倒くさい
そしてなによりも、
道路の寄付をする手続きを取るのが面倒くさいと言う事です。
誰かがリーダーになって、話を取り纏めたり、
役所と交渉したり、図面を作成したりしなければなりません。
それはとてもホネが折れる作業です。
それに、
不動産業に関わっている人なら、
私道が行政に寄付できる事を知っていますが、
そもそも一般の方はそういう制度がある事すらご存じありませんし、
道路がそうそう痛む事もありませんし非課税ですから、
とりあえずは何の不自由も無い事から、
大概は私道ままになっているのです。