アブラシ・プランテーション 〜 ダイジェスト版 〜 | |
緑の監獄 〜油ヤシ・プランテーション〜 <目次へもどる> |
◇日本と熱帯林とパーム油
熱帯林は“モノ”を通してみてみると、私たちとつながりの深い関係にあります。例えば「熱帯木材」。机やいすなどの家具、フローリングやコンクリートパネルを始めとする建築材などの木材は熱帯木材が使用されている割合が高いのです。例えば「エビ」。日本はアメリカに次ぐエビの大量消費量国です。大半は海外から、しかも熱帯林の一種であるマングローブを切り開き、養殖池を作って養殖、冷凍され日本にやってくるのです。他にも天然ゴム、バナナ、アルミニウム、木炭、製紙用チップ、スパイス、天然ガス、籐など、熱帯林から日本にやってきて私たちの生活を支えているのです。“モノ”を通してみると、熱帯林と私たちは密接につながっていて、熱帯林で起きているさまざまな問題も、私たちとは無関係ではない事、また、私たちにとって身近で生活に欠かせないものを生み出す熱帯林は、そこに暮らす先住民族にとってもかけがえのないものであるといえるのです。
◇増加する「見えない油」パーム油の生産量 パーム油はアブラヤシという西アフリカ原産のヤシ科の植物から採れる植物性油脂です。アブラヤシはその果肉から「パーム油」、種子から「パーム核油」という2種類の油が採れます。東南アジアには19世紀半ばに観賞用として持ち込まれました。世界的な生活水準の向上と、途上国の人口増加による食用油の消費量増加により、パーム油の生産量も増加し、現在は大豆油に次いで多い生産量があります。日本でもその輸入量はここ数年で急増しています。
◇「パーム油」の来し方で起きていること このように「見えない油」として消費されているパーム油ですが、その来し方ではどんな問題があるのか、マレーシアのサラワク州の事例です。
アブラヤシのプランテーションは、広大な面積にアブラヤシのみを植える「大規模・単一栽培」です。確かに今はパーム油の市場価格は右肩上がりですが、生産過剰や何らかの要因で市場価格が下がった場合、その生産地は大きなダメージを受けることが予想されます。
サラワクはパーム油増産に力を入れる反面、労働力不足の問題をかかえています。労働力不足を補うために、各プランテーションでは外国人労働者を雇わざるをえない状況になっています。しかしその大半が非合法で入国してきた不法滞在者です。不法労働者の労働環境は不法滞在であるという立場の弱さにつけこんだ、低賃金で劣悪なものです。彼ら・彼女らは不法滞在であるがために生活すべてをプランテーション内で過ごすのです。中には家族ぐるみで来ている場合もあり、当然子ども達は学校に通えず、収穫作業の手伝いをします。地面に落ちて散らばった実を、一つひとつ拾い集めるのです。また主に女性の仕事として農薬散布があります。高い位置に実っている実に噴霧器で農薬を散布するので、当然その農薬が自分の身に降りかかってきます。一見、アブラヤシ・プランテーションは緑豊かに見えますが、劣悪な条件で働かざるを得ない労働者が生きる「緑の監獄」といえるのではないでしょうか。
サラワク州政府はアブラヤシ増産のため、慣習地を持つ先住民族と60年間の土地の借用契約を結び、プランテーションとして開発する政策を打ち出しました。先住民族は土地を提供し、その土地に植えられたアブラヤシの管理を任されます。管理委託金や収穫益などが支払われます。安定した現金収入が得られるという事で契約を結ぶ所有者も出てきています。しかし問題がいくつかあります。提供した土地にはすべてアブラヤシが植えられるため、今まで自給していた米や野菜は買わなくてはなりません。先住民族にとって米作りは文化でもあり、米作りに関するお祭りや儀式、コミュニティでの共同作業なども多くあります。米作りをやめることは、伝統文化やコミュニティの崩壊を意味するのです。仮に60年後に契約が切れて土地が返還されたとしても、農薬や化学肥料による土地の疲弊で、再び米作りができるかどうか大きな疑問が残ります。
日本ではこれまで、熱帯林伐採に対して、さまざまな形での課題解決のための運動が展開されました。しかしパーム油を取り巻く課題に対しての活動は、熱帯林伐採のようにスムーズではありません。前述のようにパーム油が「見えない油」として消費されているため、具体的にターゲットを絞りにくいのが大きな要因です。私たちは「見えない」パーム油を取り巻く課題に対して、どう向き合えばよいのでしょうか。「パーム油を取り巻く課題を解決する九つの方法」を通していくつかの取り組みの可能性を考えました。
◇最後に〜みんなで考えてみよう〜 パーム油をめぐる問題・課題は見えにくいだけに具体的な解決策が出てきません。私たちはこの問題をもっと多くの人に知ってもらい、解決に向けての多様なアイディアが出てくることを期待して、取り組んできました。今後も出来るだけ多くの人とこの問題を考えることが、解決の糸口になることを願ってやみません。 |
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