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カニグズバーグについて、E.L. カニグズバーグの作品、E.L.About EL KONIGSBURG

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「冒険」ニュース― 11/30号
これまでの経過のご報告
* * *
12/01 更新




*  2003年 11月18日 朝、E.L. カニグズバーグから長文のメールが届きました。

  岩波書店は、11/17付けで、彼女と、エージェント、及びNYの出版社「サイモン&シュスター」の担当者に宛てて、陳謝の手紙を送ったのだそうです。


* ご指摘を謙虚に受け止め、将来二度と同じような見落としを繰り返えさぬよう、全力を尽くします。どうか我々の誠意と一層の努力を信じていただきたく. . . . . .  etc.

* 岩波書店のあなたの作品は人々から高い評価を得ていて、実際に何度も版を重ねていますし. . . . . .   いくつかのミス(詳細はこちら)については深くお詫びし改めなければなりませんが. . . . . .  私たちは、我々のすべての翻訳者たちを信頼して. . . etc.

* 優秀で十分な資質をそなえた翻訳家が、それぞれの作品や、原作者の文体や言外の含蓄に深遠な理解を持っていて. . . . . .   また、ヨーロッパの言語をアジアの言語に一語一語翻訳することは、文法的に不可能であり. . . etc.

といった意味のことが、延々と綴られていたとか。そして、作家に対しては大変丁重に謝罪しているけれど、「日本のあなたの読者である子どもたちに申し訳なかった」というような言葉は見当たらなかったそう. . . 。今更ですが、残念です。


  また、その手紙には、

*We also received a letter of the same content from Ms. Shibuya. As soon as the letters reached us, we held a meeting
― あなたが送ってくれた 渋谷さんの手紙のコピーと、"同じ内容の手紙" を彼女からも受け取り. . .  ただちにスタッフで会議を開きました。

*We will write Ms. Shibuya as well with our responses to the list of revisions she suggested us.
― 私たちは、渋谷さんにも同様に、彼女の提案した改訂のリストに対するお返事を書くでしょう。

と、記されていたとのこと。

  あれれ?
  同じ内容だって !  
  8/13 に私が岩波書店に郵送した手紙は、原作者に宛てた「一例」よりも、ずっと長く詳細なものだったのですが . . . 。

  それに As soon as "the letters" reached us . . . ?  二通が届くやいなや?
  カニグズバーグの手紙が着いたのは、9月末で、私のは8月中旬。 かなりの時間差があるはずだけれど . . . ?

  そして、この「作者への謝罪」のニュースを聞いてから10日以上経ちますが、私宛てには、具体的な連絡はまだ何もありません。(注 1



  何だか、こんがらがって来ちゃったので、少し整理させてくださいね。


ELKをめぐる冒険 ― 2003年の備忘録
 8/07 * 簡単な訂正依頼と問い合わせのメールを 岩波書店の「愛読者の窓」 へ。
 8/12 * お返事がなかったので書面を作り、翌13日、岩波書店・児童書編集部宛てに郵送。
 8/12
* 同日、E.L. カニグズバーグへの「第一の手紙」を書きあげ、翌日NYのサイモン&シュスター社に宛て、航空便で送る。
 9/12
WEB公開。「カニグズバーグをめぐる冒険」 の始まり♪
 9/23
*カニグズバーグより。 8/12のエアメールに対するお返事のメール。
  (同日、彼女は私の手紙のコピーをエージェントと岩波書店へ郵送)
10/01

*岩波書店より、初めてのメール。
8/7のメールに対するお返事(らしい)。お返事が遅れて申し訳ありません、具体的なお返事はもうしばらくお待ちください、とのこと。(8/13に投函した手紙については言及されていない。)
10/02


*岩波書店に、前日のメールのお礼と、郵送した手紙は届いているかの質問。及び、『ティーパーティーの謎』 のページができたことを報告。(11/30現在、このメールに対するお返事もまだです)

* この間に、各作品についてカニグズバーグと何度か連絡を取り合う。
11/05 * 『エリコの丘から』 のページ作成の報告と、この作品の再翻訳のお願いを岩波書店へメール。
11/11
*岩波書店よりメール。
ただ今、『800番への旅』 について検討中です、具体的なお返事はもうしばらくお待ちください、との由。
11/18
* カニグズバーグより。岩波書店からの回答について詳細なお知らせ。
12/01 *岩波書店よりメール。詳細はこちら
備考 11/27 Special Thanks   11/30  「冒険」 ニュース(このページ) 作成。




  8月からの様々な出来事を振り返ると、空しくなります。

  もしも、たった一人の投書だったら、どんな結果になっていたのでしょう。ブリスケットのような酷い誤訳の訂正依頼さえ、黙殺されちゃったのかなぁ。
  だって、原作者やエージェントの協力があって、そして、このサイトを読んで応援してくださる方たちもいて. . .  ようやく10/1 になって、少しだけ反応があったんですものね。

  それにしても、もしもこんな風に、具体的に指摘した箇所だけが見直されるのであれば、全作品について、気づいた点はすべて書き出す方が良いことになるけれど、どうしたらいいんだろう. . . 。(チェックするだけで何年も掛かかりそう。^^)

  でも、いくつかの単語やフレーズが修正されたところで、『ティーパーティーの謎』 のような作品が、子どもたちにとって、わかりやすい物語になるだろうか。作者の想いとは全く違っている 『エリコの丘から』 は、どうなっちゃうんだろう. . . 。

と、なにやら、とても心細く、泣きたくなります。


  岩波書店からの短い二通のメールにしても、不思議なんです。

* 具体的なお返事については、もうしばらくお時間いただきたく存じます。


  という感じで、返事が遅れたことに対するお詫びと、検討中です、お待ちください、という意味のことだけしかないんです。「本を買ってくれてありがとう」とも、「ご指摘ありがとう」とも書いてないの. . . 。

―  あ、けっして、お礼を言われたいわけではないんです。
でもね. . .  今回、私は、悲しいと思いながらも、岩波の本に、たくさんお金を使っちゃったわけだし、編集部へメールや手紙を書くためにだけだって、相当な時間も掛けたんだし. . . 。 で、なんとなく釈然としないの. . . 。 あはは、ケチな私。^^


   突然ですが、コーンフレークスが食べたくなっちゃいました。

  以前、某食品メーカーのシリアルの中に小さなプラスチックの欠片が混じっていて、私にとっては大したことじゃないけど、もし小さな子どもが食べたりしたら困ると思って、「お客様相談室」(というような名称だったかな? )へ連絡したことがあります。
  そうしたら、その三日後には、小包で代替の商品が届きました。係の女性の丁寧なお礼とお詫びの言葉と一緒に、工場の担当者の原因の究明に努めるという手紙が入っていて、ちょっと感激。企業戦略の一環の形式的なものだとしても、そうした迅速でまっとうな対応はやはり素敵です。

  それからまた一ヶ月半。今度は、生産責任者から、原因の調査結果と改良する行程に関するレポートが送られて来ました。で、さらに感激。(以来、シリアルはそのメーカーに決まっちゃった。^^)


  もちろん、間違いはない方がいい。だけど、人がすることだものミスもあります。たぶん、医療過誤などでも同じ. . . 。 細心の注意を払っていて起こしてしまったら、それはもう仕方がありません。取り返しはつかない。でも、だからこそ、ミスや失敗に気づいてからの対応の仕方が大切なんだと思います。その時の態度、その後の姿勢で、人々の信頼を再び得られるかどうか決まるんじゃないかなって. . . 。


  「コーンフレークス」と 「本」とは、どこが違うんだろうか? .
  なーんて、ふざけてないで、皆さんからの感想をまとめなくちゃ。 > ELK の状差し 1 (12/08 UP)



  児童書の出版に携わっている人々には、やはり読み手の子どもたちのことを最優先に考えてほしい. . . 。 これからもずっと、お願いを続けていこうと思います。

2003年11月30日
やみぃ(渋谷 由美)



*  追伸: 12/1 岩波書店の編集の方からメールが届きました。内容はこちらで


ELK をめぐる冒険 もくじへ




*  11/17付けで、岩波書店から E.L. カニグズバーグに送られた書状の中で、具体的に取りあげられていたのは、

* 『800番への旅』の中から、

* "a friend" が 「人たち」になっている (原文:p. 57),
* "made me mad" が 「取り乱した」になっている (p. 61),
* マヌエロの話の途中の、訳し忘れた部分(p. 66)、
の三カ所を、次の版で訂正し、

* 車を運転する子どもたち "kids" (p. 42)、
* 老いぼれ "old man" (p. 78),
* そして、本のカバーの説明文が物語と一致していないことについて、
より良い表現を工夫する。

" very" " bloody" " idiot" " love" 、また、セクシーが卑猥な感じになっている箇所(p. 108)などについては、すてべが不正確だとは考えないけれども、Ms. Shibuya のコメントを参考に、今後も検討を続ける。



* 『トーク・トーク』 の中から。(この作品は、清水真砂子さん訳)

* ブリスケットのくだりは、"careless oversight " (うかつな見落とし)だった。「胸」の作り方とした部分を「ユダヤの伝統的な肉料理」の作り方に、再版のときに訂正する。

と、いうものらしく、カニグズバーグへの手紙に、私が誤訳例の「見本」として添付した事例のうちの、わずか12点ほどだったそうです。


  それでも、『800番への旅』 のカバーに印刷された「あらすじ」が物語の中味と違うという悲惨や、『トーク・トーク』の中で、グリム童話の赤ずきんが「どうやって自分が胸をつくるかと同じくらい、大切な、なくてはならないもの」と書かれている意味不明が、訂正されるのですから、ため息ばかりついていないで、やっぱり少しくらいは、喜ばなくちゃ . . . ですよね♪



Special Thanks のページに、1000マイルの冒険の旅 (thousand-mile odyssey)が始まったばかり、と書きましたが、比喩でなく、ほんとうに、長い旅になりそうです。^^   どうか、末永くおつき合いください。

Much love,  やみぃ



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* 12/1 岩波書店の編集の方から、以下のようなメールが届きました。
 
----- Original Message -----
Sent: Monday, December 01, 2003 11:45 AM
Subject: 岩波書店です


渋谷由美様

前略ごめんください。
カニグズバーグ作品の翻訳についてですが、
現在、『800番への旅』について、
訳者とともにひきつづき検討しております。
必然的に全体の点検が必要となり、時間がかかっておりますが、
今月中にはお返事さしあげたく存じます。
何卒ご理解、ご容赦賜りますようお願い申し上げます。
また、ご指摘をきっかけに『エリコの丘から』についても、
全面的な見直しをはじめておりますこと、お伝え申し上げます。

草々

岩波書店児童書編集部 〈お名前〉



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