負動産 処分できない別荘地
昔の話ですが、
地方にある別荘地を調査して欲しいと依頼がありました。
現地に行くとそこは、別荘地とは言えない状態でした。
昭和の不動産投資ブーム
昭和40年代から50年代にかけて、
不動産投資ブームがありました。
その多くは、先行投資を謳い文句にした物件が多く
「将来価値が上がる!」
と言う事で売りに出された別荘地が多かったそうです。
当時は「列島改造論」で日本中が湧きかえり、
地方産業の活性化に伴い、地価も上昇傾向にありました。
投資物件を扱う不動産業者は、
何も無い山や原野を二束三文で買い取り、
その山を分筆して別荘地として何十倍もの価格で売り出し
莫大な利益を得たのでした。
別荘地と言うと、道路や上下水道が整備されて、
木立の中に、しゃれた建物が建っているイメージですが、
投資用の別荘地ですから、
造成や整備など殆どされていなかったのでした。
現場を特定できず
依頼を受けた別荘地は、
北関東のはずれの場所にありました。
手元にある資料は、物件の所在地番だけです。
当時はまだ、ネットが発展する前の時代ですから、
全て実地で調べるしかありませんでした。
まずは所在地番だけを手掛かりに、
物件を管轄する法務局に立ち寄り、
登記簿謄本と公図を手に入れました。
測量図はありませんでした。
住宅地図のコピーも手に入れましたが、
現地は山で、大まかな所在は分かりますが、
地図から現場の特定はできませんでした。
次に役所に行って調査します。
現地は無指定で、建築はできる様ですが、
公営の水道設備は入っていない事が分かりました。
いよいよ現地へ行ってみます。
住宅地図を頼りに現地であろう付近へ行ってみると、
確かに公図にある未舗装の道があります。
道といってもそれは、
藪に覆われた山道で、
とても別荘地の道と言える代物ではありませんでした。
クルマを停めて現地を探しますが、
そこは全くの山で雑木が立ち茂り、
区画の境界など全く分かりません。
境界杭が無いか探しましたが、
見つかりませんでした。
公図の縮尺を元に、区画の角から追ってきて、
恐らくこの辺りが現地だろうと言う事は分かりましたが、
境界が判明せず、1時間程粘りましたが、
とうとう現地を特定する事はできませんでした。
タダでも売れない
現場は特定できまでんでしたが、
「ほぼここであろう。」という事は分かりました。
その場所と周辺の写真を撮って現場を引き上げる事にしました。
帰り際に、地元の不動産業者数社に立ち寄って、
相場や市場について聞きましたが、
異口同音に
「タダでも売れない。」
と言われてしまいました。
依頼者は、件の別荘地を相続で譲り受けたのですが、
マイホームを購入するにあたり別荘地を売却して
自己資金にしようとしたのでした。
ところが調べてみたら、売るに売れない物件だったのです。
負動産
不動産には固定資産税が掛かります。
件の別荘地も、年間1万円程度ではありますが、
固定資産税が課税されています。
依頼者は一人っ子で、
他に相続財産が有った為、
件の別荘地だけ相続放棄する訳に行かなかったのです。
別荘地の他にも
地方都市に投資用ワンルームマンションも相続していて、
こちらも利回りが割れていて、負担になっているとの事です。
別荘地でも、
街に近ければ居住地としての利用価値がありますが、
このケースの場合、街から離れた山だった為、
全く価値がなかったのです。
両方とも処分する事ができず、
この先も利用価値が無い、負担ばかり掛かる
「負動産」を持ち続けなければならないのです。
今再び投資ブーム
近年再び不動産投資に注目が集まっています。
中には投資に失敗して、破たんした話も仄聞しています。
我々プロでも、不動産投資は慎重に検討します。
それでも不測の事態が起きる事があるのです。
況してや一般の方ともなると、
相当な知識を持って投資物件を選ばないと、
取り返しがつかない事態に陥る事がありますから、
十分注意して下さい。