ヤクザが経営する不動産会社

もう、随分昔の話です。
その会社はとっくにありません。

フロント企業

まだ暴対法が整備される前だったと思います。
首都圏郊外にヤクザが経営する不動産会社がありました。
表向きは普通の不動産会社となんら変わりはありませんでした。

その会社は、自社物件の建売住宅を販売していました。
建物はお世辞にも良いと言える仕様ではありませんでした。
というより安普請でした。

現場もあまり良い立地の物件はありませんでした。
駅から遠いのは勿論の事、
農家を壊した跡地で、裏が藪だったり、
無理やり開発した様な現場だったり、
造成もかなり荒かった記憶があります。

価格は特別安くはありませんでした。
むしろ割高だった記憶があります。
それでも売れ残る事は無く、
全て綺麗に売れていたのが不思議でした。

その業界の人から聞いたのですが、
その不動産会社は、
いわゆるフロント企業というもので、
表向きは普通の不動産会社でしたが、
経営していたのは反社会的団体でした。

ヤクザと不動産と言えば思いつくのは地上げ屋ですが、
当時、ヤクザの地上げ屋が問題になっていましたから、
警察の手が入る事を嫌って、
建売の販売をしたのでは無いかと思われます。

実質のオーナーである組長は、
そこそこの大学を卒業している、
いわゆるインテリヤクザだったのだそうです。
それもうなづける気がします。

その会社がオープンした時は、
初日は取引先などの堅気のお客様を呼び、
二日目は会社の前に
黒塗りの高級車がズラリと並んでいたのだそうです。

客層

ヤクザ不動産会社の物件を購入していたのは、
ごく一般の方々でした。
ただちょっと違うのは、
他の不動産会社では、住宅ローンが通らない人たちだったのです。

他の不動産会社で住宅ローンが通らなかったのに、
ヤクザ不動産会社で住宅ローンが通ったとは、
金融機関に太いパイプでもあったのでしょうか?

異変

ヤクザ不動産会社が出来て3年程経った頃、
その会社で販売した住宅が、
中古住宅として複数販売される様になりました。
まだ3年程しか経っていないのに、
一体どういう事なのでしょう。

からくり

ヤクザ不動産会社が現場を仕入れる方法は、
地主をギャンブルや歓楽街などで陥れて借金を作らせ、
無理やり安い値段で土地を買い取っていたのだそうで、
建売一軒当たりの利益は、
軽く1千万円を超えていたのだそうです。

ヤクザ不動産会社の物件を購入した人たちは、
よその不動産会社で住宅ローンが通らなかった人たちでした。
住宅ローンは、
ヤクザ不動産会社の関連金融会社が、
高い金利で住宅ローンを貸し出していたのだそうです。

よそで住宅ローンを否決され、
マイホームを持つ事をあきらめていた所、
マイホームが持てるとあって、
住宅ローンを否決された人たちは喜んで購入していたそうです。

当時は景気が良かった時代ですから、
購入した人も金利は高いものの、
それほど心配はしていなかったのだと思います。

ところがバブル崩壊の波が首都圏郊外にも及び、
支払いが苦しくなった人が破たんし始めたのです。

ヤクザ不動産会社は、
支払いができなくなった人の物件を
無理やり私的に差し押さえて所有者を追い出し、
今度は中古住宅として販売をしていたのでした。

住宅ローンも高い金利でしたし、
仕入れもかなり安く仕入れていた様で、
物権の利益と合わせればかなりの利益で、
購入者が3年でパンクしても、
損をする事は無かったのだそうです。
むしろ3年でパンクしてくれた方が儲かった様です。

もしかしたら、
住宅ローンが通らなかった人を対象に物件を売っていたのは、
狙いがあったのかも知れません。
中古物件として再び売れば、
また利益が稼げるという寸法だった様です。

いつのまにか無くなっていた

しかしその様な事が長続きする訳もなく、
いつの間にかヤクザ不動産会社は無くなっていました。
警察の手が入ったのか、
それとも稼ぐだけ稼いだので、訴えらる前に手を引いたのか、
定かではありません。
ただ、相当な利益を上げていたのは間違えありません。

今は暴対法と条例でできない

昔はそんなむちゃくちゃな会社があちこちにありました。
今は暴対法と条例によって、
反社会的団体が不動産会社を経営する事はできません。

また、昔は不動産業界と反社会的団体とのつながりが
時折見受けられましたが、
条例が施行されて以来、すっかり見なくなりました。

なので不動産会社にヤクザはいませんら、
ご安心ください。

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2018年07月11日