NPO法人ぐんま緑のインタープリター協会紙

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夏季号 第68号 2020年7月13日


ぐんま森林インストラクター会の紹介

 会長 塩田 政一

 森林インストラクターは、平成3年に農林水産、環境省により登録事業として指定された制度で、「全国森林レクリエーション協会」(会長 三浦雄一郎氏)が認定する資格です。登山、トレッキング、自然観察、自然環境教育、森づくり等幅広い活動の指導者、いわゆる「森の案内人」として全国約3,200人が活躍しています。ぐんま森林インストラクター会は、群馬県内の有資格者及び、会の活動趣旨に賛同する人たちで、平成16年に設立されました。

 活動は、森林公園を中心にして会員の親睦と資質向上を図るため、各自が有する体験、知識、技術情報を共有し、協力し合って活動しています。県民をはじめとした一般市民の方々に、森林や林業の重要度、維持管理の大切さ、難しさ、自然の素晴らしさを積極的にアピールし、それに対する理解度への増進に寄与すると共に持っている知識、体験、技術、情報を共有して、より活動を発展させています。

 具体的活動は、群馬県内の森林公園を中心にして、自然観察会、森のめぐみ体験、森づくり体験など、本年は、14のテーマで行っています。
研修観察会の写真  自然観察会は、尾瀬、玉原高原、谷川岳、榛名山、赤城山、小根山森林公園、草津を主なフィールドとして樹木・野草観察会、山菜教室、野鳥観察会、スノーシューでの冬芽観察会等を行っています。 森のめぐみ体験は、ファミリー向けに植物観察と併せツリーイング(木登り)、ネイチャークラフト、丸太切り体験を実施し、他に森づくり体験とし て雑木林やスギ人工林の間伐、下草刈りをしています。また赤城自然塾会員としての活動、県森連イベント等への講師派遣、群馬県や市町村からの依頼による講師派遣等、幅広い活動をしています。

 ・会員募集随時、入会金なし、年会費3,000円
 ・ホームページ(ぐんま森林インストラクター会ブログ)
   http://blog.goo.ne.jp/sinringu

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校庭の樹木M 〜枝葉が火炎状になるカイヅカイブキ〜

 顧問 亀井 健一

 カイヅカイブキ(貝塚伊吹)は、学校や民家の生垣や境界木などとしてよく使われている常緑樹です。
カイヅカイブキの写真  低木に仕立てることができ、細かい鱗状の葉が密生し、視界を完全に遮るなど重宝されています。また強い剪定にたえるので、動物などの形に刈り込むトピアリーに使われることもあります。とはいえ、剪定しないでおくと枝葉がねじれて火炎状に成長し、イメージとしてゴッホが描いた糸杉のようになります。そういえば、彼が好んで描いた糸杉は、ヒノキ科の常緑針葉高木で、槍の穂先のような樹形になるそうです。ゴッホは、名状し難い心の内を表現しようと、糸杉を燃え盛る炎のように描いたのかもしれません。

 学校では手入れが行き届き、よく刈り込まれているために自然の樹形が想像できないかもしれません。なお、剪定が強いと写真のように、鱗状の葉に針状の葉が混じってくることがあります。この現象は先祖であるビャクシンの特徴が現れたので、先祖返りと呼ばれています。このカイヅカイブキはヒノキ科ビャクシン属の常緑小高木で、ビャクシンの園芸品種と考えられています。樹高は通常6〜7m(まれに10m)になりますが、低く刈りこまれていることが多いようです。葉は細かく鱗状になります。
カイヅカイブキの写真  ビャクシンの葉は針状にとがりますが、突然変異で産まれた葉が鱗状になったものを、園芸品種カイヅカイブキとして選抜したのしょう。土質を選ばず痩せ地で育ち、乾燥にたえるので、庭木や生垣などに適しています。なお、もとになったビャクシンは、本州(岩手県以南の太平洋側)、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、中国に分布します。花期は4月、雌雄異株です。花も球果も小さいつぶつぶで、だれも気がつかないほどまったく目立ちません。
 ビャクシンやカイヅカイブキは、ナシの木に感染する赤星病を媒介するので、梨畑の近くではこれらを植えることを禁止している地域もあります。

 和名カイヅカイブキのカイヅカの名は、この木が大阪府貝塚市付近で作出されたからではないかとの説がありますが、証拠があるわけではなく、定かではないようです。なお、カイヅカイブキは貝塚市の木に制定されていますが、この説に基づいているものと思われます。

写真 上:学校のカイヅカイブキ
写真 下:針状の葉と鱗状の葉

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<協会活動のトピック>

●観音山ファミリーパーク園内樹木調査
  3月上旬、群馬県立観音山ファミリーパークより公園内に植栽され植生台帳に記載された樹木について、毎木の実態調査(樹高、幹周り、枝幅などの測定と記録)を行ってほしいとの依頼がありました。
 新型コロナウイルスの影響で大幅に開始が遅れましたが、原則として月1度の観察会下見を兼ねた植生調査の日の午後、園内樹木調査として16時までの予定で行い、寒くなる前に終了させたいと考えています。数名が1組になり、できれば3組が平行して、測定・記録を実施すれば早期完了が可能かと思います。協会員の皆さんのご協力をお願いします。

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<緑の窓> わたしと草木染め

 第10期生 茂木 清美

 私が草木染めと出会ったのは、20年前くらいだと思います。最初は絹を使った織物体験が始まりだったかもしれません。
 私が小学校に上がる頃に母親が内職で大きな機械で機織りの仕事をしていました。祖父は縦糸をはる職人だったそうです。物心着いた頃からガチャコン、ガチャコンという大きな音を毎日聞いて育ち、小学校の帰り道ではだいぶ遠くから響いていました。近所迷惑だったのではないかと今は思います。なので、テキスタイルとやらは身近にあったのもあり、すぐ夢中になりました。その延長で草木染めに入りました。

草木染めの写真  身近にある色々な樹木や雑草としか思えないものなどから煮出した染液から人工の色では決して出せないなんとも言えない色の不思議さに惹かれました。染料植物園では何年にも渡り色々な体験をさせて頂きました。自分でデザインをおこし、型紙も作り、煮だした染液で絹を染める半年近いコースで学んだことは今でも貴重な体験です。そこで知り合った友達と一緒に習ったことを一通りやってみたり夢中で楽しみました。

 その当時作った型紙は宝物です。今では、年に数回インプリ仲間と楽しませて頂いてます。自分のために染めるよりは、誰かにプレゼントするほうが楽しいですね。なにせ、今まで染めたストール等はコレクションであって、身に付けてお出かけしたことがないのですから。

 同じ染料であっても2度と同じ色にはならない草木染めは、いつでも始められる身近で楽しい趣味であることは間違いありません。機会があったらやってみてください。お勧めします!

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<豆知識> 雑草の話19 ヤブカラシ

  理事長 関端 孝雄

 6月下旬、土手下に畑を仕切る高さ1mほどの金網があり、向う側が見えない程つる植物が茂っていました。そこには、アオツヅラフジ、ツルウメモドキ(つる性木本)、ノブドウ、ヤブカラシ、ヘクソカズラ、ヤブマメ、マルバアサガオ、それにカナムグラなどが競って重なり合っていました。正に熾烈な生存競争です。つる植物は、幹を太らせて自力で体を支えることをせず、そのエネルギーは細く長くつるを伸ばすことに使われ、他の物に頼っていち早くその上部に這い上がって葉を広げ、光を独占することです。

 つるを伸ばし他の物に頼る方法に幾つかあります。1つは、上記のツルウメモドキ、ヘクソカズラ、ヤブマメなどは巻きつき型で、左か右に茎を他の物に巻きながら成長します。2番目に、カナムグラなどは引掛け型で刺や爪状のもので引掛けながら伸長します(観察中、カナムグラにサッと腕を捕られました。後刻痛さに気がついて見たら赤くミミズ腫れでした)。3つ目は、ヤブカラシやノブドウなどで茎の変化した巻きひげを出し、他の物にからみ付いて成長します。もう1つは、上記の植物にはないのですが、テイカカズラやツタなどで茎から気根や吸盤を出して他の物に付着する付着型です。こうした茎は引っ張りに強くなくてはならないので、縦方向の繊維が多く、茎の太さの割に道管を太くしています。森の近くではマント群落の構成員にもなります。

ヤブカラシの写真  ヤブカラシ(藪枯らし・ブドウ科ヤブカラシ属)は、多年草で日向を好み藪をも枯ら すほどの勢いで茎を伸ばし、他の植物などをおおいながら抜きん出て光を獲得します (図1)。1本のつるは途中から2分し、しっかりとコイルのように巻き付きます。時にそのらせん状態は途中から逆に巻いたりして引っ張りに強い構造も作ります。このような植物に家屋が覆われたら大分貧相に見えるかもしれません。それでビンボウカズラとも言われるのでしょう。体のあちらこちらに球形の美しく可愛い「真珠体」で飾ってはいるのですが。

 細くて長い地下茎は所々から芽生えてクローンを成し、根は利尿などの生薬として利用されるようですが、簡単には抜けず駆除には往生します。葉は、鋸歯辺のある5枚の小葉から成り、独特な形をした鳥足状複葉(図2)で互生です。芽吹いた頃の茎葉は赤紫色をしていて茎の先をだらりと下げています。その茎には稜があり(充分なあく抜きと水づけをすれば)食べられるそうです。

 花の付き方は葉と対生に集散花序を付けます。夏になると1つの花序にあるたくさんの蕾は順番に咲かず、可愛らしい花を三々五々咲かせます。萼は低くて目立たず、花弁は薄緑色で4枚、雄しべは4本、雌しべが1個です。しかし、昼過ぎに眺めてみると、ほとんどの花は花弁と雄しべを落としてしまいます(何故,花弁までも?)。花の真ん中にロウソクを立てたような雌しべが橙色の大きな花盤から延びています(図3)。
 花盤は多量の蜜を分泌して、虫たちはそれを背負わず受粉の駄賃に密を提供してもらいます。でも、この辺(関東以北)の株はヒガンバナと同様に三倍体なので結実しません。その分、体が大振りになりますが、何故か蜜を虫たちに大奉仕します。
ヤブカラシの葉の写真 ヤブカラシの花の写真
写真
上:図1.ヤブカラシ
下左:図2.ヤブカラシの葉
下右:図3.ヤブカラシの花

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<巨樹・history F>地蔵峠の麓にある「シナノキの巨木」

 第7期生 浦野 安孫

 国道145号線は、羽根尾の「国道3起点の信号」で、国道144号と146号に分岐する。144号を進むと鳥居峠から上田市に出るが、途中、田代の信号から鹿沢温泉に向かうと地蔵峠を越え、長野県東御町に出る。この道は江戸時代、草津温泉に通じたので「湯道」とも呼ばれた。地蔵峠から湯道を4q程下ると、シナノキの巨木に出会える。古代、「長野はシナノキが多かったので信濃と呼ばれた」のだから長野にシナノキは珍しくはないが、これは樹齢約300年、幹周3.7m、林野庁の「森の巨人たち百選」にも選ばれた銘木である。この木の横に、見事な馬頭観音が安置されている。

馬頭観音の写真  シナノキと言えば、夏の軽井沢のホテルでの朝散歩ガイドを依頼される折、「まずは・・」と、最初ホテルの庭のシナノキを扱う事にしている。都会からお見えのお客様が果序を投げ、「ヘリコプターみたい・!」と喜ぶ姿が微笑ましく、「スタートは、やはりこれだな・・」と自己満足している。その後でシナノキの名の由来や花や実、樹皮から布やロープが取れる話、鎌原集落では被災後荒地に、繊維を取るためのシナノキも植栽した話等も紹介し、最後は「長野訪問を機に、シナノキは覚えて下さいね」とまとめる。

 この街道を、鹿沢温泉から東御町新張(ミハリ)までの約11kmを車で走ると、面白い事に気付く。次々と観音様が出迎え、その数約100体。江戸から明治にかけての農閑期、長野側から地蔵峠を越え、群馬側に向かう湯治客や旅人は多かったと言う。冬は雪で道も消え、旅人の中には、途中凍死する者もいたらしい。そこで旅人や湯治客のために、1丁(約109m)毎に観音像を設置し、道標にしたのだと言う。これが、「地蔵峠の道標地蔵観音」或は「丁杭型観音」と呼ばれる、1番の東御町新張の信号の近くにある如意輪観音、100番の鹿沢温泉紅葉館前の千手観音、そして『50番の馬頭観音』等の観音様群である。地蔵峠には地蔵尊の隣に、80番十一面観音がある。

 群馬に向かう旅人や湯治客は、新張と鹿沢の中間点にあるシナノキの木陰で休息し、近くを流れる湯尻川の水で喉を潤し、馬頭観音に旅の安全や湯治の効能を祈願し、再び歩みを進めたのだろう。

 5月にシナノキの巨木を訪ねると、道路の向かい側にワラビが群生していた。二つかみ程頂き、馬頭観音に手を合わせ、新張へ向かった。
写真
 50番 馬頭観音

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<協会員の声> 鹿食害対策アミ巻きに参加して

 第17期生 松島 理香

 8月9日は、曇り時々小雨の涼しく活動しやすい気温でした。小沼をノコギリや剪定鋏を持ち、黒いアミを抱えたインプリ軍団(?)は、散策中の観光客に「ご苦労様です!」と声を掛けられながら、ズンズン進みます。私は掛けられる挨拶に、ちょっとドキドキしながら後ろをついて歩きました。

写真  アミ巻き初体験の私はどれが食害に合いやすい樹木なのか、見てもわからない!困った!どうしよう・・・。作業方法を教えていただき、初アミ巻き。見るとヤルでは大違い。真っ直ぐでアミの巻きやすい樹は無いんですね(笑)。皆さんのアミ巻を見て、五枚葉の樹がサラサドウダンなのかな?と。いつの間にか集団はばらけて、右の斜面、左の道端、湖のほとりで、ごそごそ枝が動く。でも人影は見えない。手持ちのインシュロックが無くなり、数枚のアミを残して12時に作業終了となりました。

 アサギマダラに誘われて森に入ると、木肌が生々しく黄色になっている樹を発見。近づくとサラサドウダンの幹の半分ほど皮が剥がされていました。幹の少し曲がった部分が赤くなり、まるで人が肘を怪我したように見えて、なんとも痛々しい。
 鹿は生きるためだが、アミ巻は樹木を守るために続ける事が重要なんだと、この時に実感しました。

 インプリ活動のお陰で、見る側から守る側になれた鹿食害対策アミ巻き。次回も参加させていただきたいです。

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<編集後記>

 いまだコロナウイルス禍中ですが、対策を十分に取りインタ−プリターの活動を開始しました。一般からも会員からもたくさんの応募があり、ネイチャーインタープリターの意義を再確認しました。(櫻井陽子)

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<pdf版>

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2010年11月1日更新