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8.3 不適合製品の管理
組織は、製品要求事項に適合しない製品が誤って使用されたり、または引き渡されることを防ぐために、それらを識別し、管理することを確実にすること。不適合製品の処理に関する管理及びそれに関連する責任及び権限を”文書化された手順”に規定すること。
組織は、次のいずれかの方法で、不適合製品を処理すること。
a) 発見された不適合を除去するための処置をとる。
b) 当該の権限を持つ者、及び該当する場合に顧客が、特別採用によって、その使用、リリース(次工程への引渡し)もしくは出荷、または合格と判定することを正式に許可する。
c) 本来の意図された使用または適用ができないような処置をとる。
(参考) ”c)本来の意図された使用または適用ができないような処置をとる”とは”廃棄すること”を含む。
不適合の性質の記録及び、不適合に対してとられた特別採用を含む処理の記録を維持すること(4.2.4参照)。
不適合製品に修正を施した場合には、要求事項への適合性を実証するための再検証を行うこと。
引渡し後または使用開始後に不適合製品が検出された場合には、組織は、その不適合による影響または起こりうる影響に対して適切な処置をとること。
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1. 不適合製品とは?
製造中に発生した、あるいは顧客に納入してしまった不適合製品(製品要求事項を満たしていない製品)の管理について規定しています。
ここでいう製品とは、購入部品・材料、外注委託した作業・役務、工程内にある仕掛り品・半製品など、顧客向けの製品になっていくものすべてが該当します。
不適合製品の例としては、
・ 検査などの監視・測定で不合格と判定された製品
・ 設計・開発の過程で不適合を含んだまま実現された製品
・ その製品に関連するプロセスに製品要求事項を満たさないことが存在する製品
・ 苦情その他により不適合が判明した製品
などが挙げられますが、不適合製品の定義付けは組織自ら行っておく必要があります。
2. 不適合製品への処置
まず、不適合製品が発生した場合にどう対応するのか、例えば、
・ どこへ連絡するのか
・ 帳票は発行するのか
・ 処置方法は誰が決定するのか
といった事項を決定しておかなければ対処のしようがありません。とくに“誰が決定するのか”をはっきりさせておかないと処置判断が曖昧なままになってしまう危険性があります。
発生した不適合製品への処置には次のようなことが挙げられます。
・ タグ、看板、場所の指定などにより合格品と混ざらないように識別する
・ 不適合・不具合を直して適合・合格の状態にする(手直し)
・ 適合状態になるまで製品ランク・等級を下げる、あるいは仕様・製品要求事項を変更する(再格付け)
・ そのまま採用、使用、次工程送り、出荷、サービス提供できるような許可を得る(特別採用)
・ 適合状態にまではできないが使用には支障がなく受入れてもらえる状態にする(修理)
・ 破壊したりリサイクルに回して使用できないようにする(スクラップ)
これらを大きく分ければ“手直し”と“スクラップ”に分けることができ、手直しした製品は再検査(検証)によって製品要求事項を満たしていることを確認しなければなりません。
また、手直しに関する作業がある程度固定的である場合には、手直し方法の標準化も検討しておくとよいでしょう。
3. 特別採用には両者の承認を!
特別採用に関して、承認のGOサインは組織内の当該の責任を持つ者と顧客とのセット(両者の承認)で考えておくとよいでしょう。
顧客の承認を得て特別採用が認められた場合には、そのことが記録に残されている必要があります。
また、受入検査・工程内検査・最終検査のそれぞれで不適合・不合格を救済する場合もあり得ます。
4. 提供後の不適合製品への処置について
製品の引渡し・出荷、サービス提供、使用開始後に不適合が判明した場合の処置(クレーム処理を含む)の例としては、
・ 対象になり得るものはすべて回収し、手直しあるいは修理する
・ 良好な代物(代替品)の提供、あるいはサービスの再提供をする
・ 顧客に報告し、顧客の指示・要求に応じた対応をする
・ 処置の着手基準と方法を決めておき、その基準に達するまで様子見(監視・測定)とする
・ 製品に対する処置はせず、記録に残すだけとする
などがあり、実施した処置を示せる必要があります。
処置内容の程度については、「発見された不適合の持つ影響に見合うものであること(8.5.2 是正処置)」「問題の大きさに対して適切な程度とし、遭遇するリスクに釣り合う程度とすること(94年版)」と共通の意図を持っており、例えば、不具合のランク付けのような考え方の導入が該当するでしょう。
5. 不適合製品の管理の記録
記録としては、不適合の性質および特別採用、手直し後の再検査とその結果を含む処置(不適合の性質・内容、処置の指示、処置結果)について残しておく必要があります。が、すべての不適合製品の記録が要求されているのではなく、同じような不具合があったり、対策を検討する場合に必要な性質を記録しておくことが要求されています。
「不適合の性質」の原語は“nature”となっており、物事の背景・主旨を重要視するISOの精神からも言えることです。
また、トレーサビリティをも意識しています。
6. 要約すると・・・
以上、不適合製品の管理を要約すると次のようになります。
不適合製品(=製品要求事項に適合しない製品)の定義
↓
識別・管理
(タグ、看板、場所など、合格品と混ざらない方法)
↓
不適合製品に対する処置方法の決定
(責任・権限、連絡ルート、帳票の発行)
↓
不適合製品への処置 a)〜c)
(基本は“手直し”と“廃棄”)
↓
不適合の性質の記録
とられた処置の記録
7. 不適合・改善要望事例と考察
不適合・改善要望事例 | 考察 |
品質マニュアルでは、原材料の受入検査で不適合が発見された場合、「品質異常連絡書」を発行することになっていますが、2005年6月27日リンテック(株)からの受入不適合について同連絡書が発行されていません。 |
顧客クレームに対しては必ず「品質異常連絡書」が発行されているが、社内での受入における不適合についてはメーカーとの口頭連絡でのやり取りのみで処置されていた。 |
製版Gで発見した不適合品については、「異常発見と処理」に記録されているが、品質マニュアルで定められた「品質異常連絡書」で品質管理Gへ報告されていない。物流G(製品管理)の「出荷事故連絡・確認書」も同様。 |
組織は、製品要求事項に・・・確実にすること。不適合製品の処理に・・・に規定すること。 |
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