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◆ JIS Q 9004 品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善の指針

序文

0.1 一般

 この規格は、2000年に発行されたISO9004(Quality management systems-Guidelines for performance improvements)を翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
 なお、この規格で点線の下線を施してある箇所(当サイトでは施していない)は、原国際規格にはない事項である。
 品質マネジメントシステムを採用することは、組織のトップマネジメントによる戦略上の決定とするとよい。組織における品質マネジメントシステムの設計及び実現は、変化するニーズ、固有の目標、提供する製品、用いられているプロセス、組織の規模及び構成によって影響を受ける。 この規格は、8つの品質マネジメントの原則に基づいている。しかしながら、品質マネジメントシステムの構造の均一化または文書の画一化が、この規格の意図ではない。
 組織の目的は次の事項である。

− 顧客及びその他の利害関係者(組織内の人々、供給者、オーナ、社会)のニーズと期待とを明確にし、満足し、競争上の優位性を達成し、そして、これを効果的で効率的な方法で行なう。
− 組織の総合的なパフォーマンス及び実現能力を達成し、維持し、そして改善する。

 品質マネジメントの原則の適用は、直接の便益を提供するだけでなく、コスト及びリスクマネジメントにも重要な貢献をする。便益、コスト及びリスクマネジメントを考慮することは、組織、その顧客及びその他の利害関係者にとって重要である。組織の総合的なパフォーマンスについて、これらを考慮することは、次の事項に影響を与える。

− 顧客の愛着心
− 繰り返しの取引及び付託
− 収益及び市場占有率のような運営結果
− 市場の機会に対する柔軟で迅速な対応
− 資源を効果的で効率よく使用することを通じてのコスト及びサイクルタイム
− 求められる成果を最もよく達成するプロセスの配列
− 改善された、組織の実現能力を通じて得られる競争優位性
− 組織の到達目標及び目標に向けて継続的改善に参加するとともに、人々を理解し、動機付けすること
− 組織の有効性及び効率についての利害関係者の信頼感。これは、組織のパフォーマンス、製品のライフサイクル及び評判から得られる財務的、並びに社会的な便益で実証されること
− 市場の変化に対する合意した共同の対応の柔軟性、及び迅速性はもとより、コスト及び資源の最適化によって得られる、組織及びその供給者の価値を創造する能力

0.2 プロセスアプローチ

 この規格は、利害関係者の要求事項を満たすことによって、利害関係者の満足を向上させるために、品質マネジメントシステムを構築し、実施し、その品質マネジメントシステムの有効性と効率とを改善する際にプロセスアプローチを採用することを奨励している。
 組織が効果的で効率よく機能するためには、数多くの関連し合う活動を明確にし、運営管理する必要がある。
 インプットをアウトプットに変換することを可能にするために、資源を使って運営管理される活動は、プロセスとみなす。1つのプロセスのアウトプットは、数多くの場合、次のプロセスへの直接のインプットとなる。
 組織内において、プロセスを明確にし、その相互作用を把握し、運営管理することと合わせて、一連のプロセスをシステムとして運用することを、”プロセスアプローチ”と呼ぶ。プロセスアプローチの利点の1つは、プロセスの組み合わせ及びそれらの相互作用とともに、システムにおける個別のプロセス間のつながりについても、システムとして運用している間に管理できることである。
 品質マネジメントシステムで、このアプローチを使用するときには、次の事項の重要性が強調される。

a) 要求事項を理解し、満たす。
b) 付加価値の点でプロセスを考慮する必要性
c) プロセスのパフォーマンス及び有効性の成果を得る。
d) 客観的な測定結果に基づくプロセスの継続的改善

 図1(略)に示されるプロセスを基礎とした品質マネジメントシステムのモデルは、4.〜8.に記述したプロセスのつながりを表したものである。この図は、インプットとして要求事項を決定する上で顧客が重要な役割を担っていることを示している。利害関係者の満足の監視においては、組織が利害関係者の要求事項を満たしているか否かに関する利害関係者の受け止め方についての情報を評価することが必要となる。図1(略)に示したこのモデルは詳細なレベルでのプロセスを示すものではない。

0.3 JIS Q 9001との関係

 この規格とJIS Q 9001(品質マネジメントシステム−要求事項)は、整合性のある一対の品質マネジメントシステムとして開発されており、相互に補完し合うように作成されているが、独立して使用することもできる。
 この2つの規格は、適用範囲が異なるが、整合性のある一対として適用できるようにその構成を同じにしている。
 JIS Q 9001は、品質マネジメントシステムに関する要求事項を規定している。これらの要求事項は組織が内部で適用するため、審査登録のためまたは契約のために用いることができる。この規格は、顧客要求事項を満たすに当たっての品質マネジメントシステムの有効性に焦点を合わせている。
 この規格は、JIS Q 9001よりも広い範囲の品質マネジメントシステムの目標についての手引きであり、有効性はもとより、組織の全体としてのパフォーマンスと効率との継続的な改善のための手引きを提供している。この規格は、トップマネジメントが、JIS Q 9001で規定する要求事項の範囲を越えて組織のパフォーマンスの継続的改善を目指そうとする場合の手引きとして推奨される。 しかしながら、この規格は、審査登録または契約のために使用されることを意図したものではない。
 使用者の更なる便益のために、この規格の対応する条項に続いて、枠内の文章にJIS Q 9001の要求事項の基本的な内容が含まれている。”参考”に示した情報は、理解または明確化のための手引きである。

0.4 他のマネジメントシステムの両立性

 この規格には、環境マネジメント、労働安全衛生マネジメント、財務マネジメント、リスクマネジメントなどの他のマネジメントシステムに固有な手引きは含まれていない。しかしながら、この規格は、組織が品質マネジメントシステムを、関連するマネジメントシステムに合わせたり、統合したりできるようにしている。組織が、この規格の指針に沿った品質マネジメントシステムを構築するに当たって、既存のマネジメントシステムを適応させることも可能である。

1. 適用範囲

 この規格は、JIS Q 9001で規定されている要求事項を越えて、品質マネジメントシステムの有効性と効率との双方を考慮して、その結果、組織のパフォーマンス改善のための可能性を考慮するための指針を提供する。
 JIS Q 9001と比較すると、顧客満足及び製品品質の目標が拡大されており、利害関係者の満足及び組織のパフォーマンスを含んでいる。
 この規格は、組織のプロセスに適用可能であり、結果として、その基礎である品質マネジメントの原則を組織全体に展開することが可能である。
 この規格の焦点は、顧客及びその他の利害関係者の満足を通して測定し、たゆまぬ改善を達成することである。
 この規格は手引きと推奨とで構成されており、認証、規制または契約に用いることを意図するものではない。また、JIS Q 9001の実施のための指針とすることを意図するものでもない。

(備考)
この規格の対応国際規格を、次に示す。
なお、対応の程度を表す記号は、ISO/IEC Guide21に基づき、IDT(一致している)、MOD(修正している)、NEQ(同等でない)とする。
ISO9004:2000 Quality management systems-Guidelines for performance improvements(IDT)

2. 引用規格

 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規定の一部を構成する。この引用規格は、記載の年の版だけがこの規格を構成するものであって、その後の改正版・追補には適用しない。
 JIS Q 9000:2000 品質マネジメントシステム−基本及び用語

(備考)
ISO9000:2000(Quality management systems-Fundamentals and vocabulary)がこの規格と一致している。

3. 定義

 この規格においては、JIS Q 9000:2000に規定する用語及び定義を適用する。
 この規格では、製品の取引における当事者の名称を、次のように変更した。

供給者 ⇒ 組織 ⇒ 顧客(利害関係者)

 この規格の全体にわたって、”製品”という用語が使われた場合には、”サービス”のことも合わせて意味する。

4. 品質マネジメントシステム

4.1 システム及びプロセスの運営管理

 組織をうまく導き、運営するには、体系的で目に見えるように運営管理することが必要である。組織は、利害関係者のニーズを考慮して、自らのパフォーマンスの有効性と効率とを継続的に改善するよう設計されたマネジメントシステムを実施し、維持することで、成功を納めることができる。 組織の運営管理には、その他種々のマネジメント分野の中でも、とりわけ品質マネジメントが取り入れられている。
 トップマネジメントは、次の方法によって、顧客志向型の組織を構築するとよい。

a) システムとプロセスとを明確に定めて、それらが明瞭に理解され、運営管理され、かつ、その有効性と効率とが改善されるようにする。
b) 効果的で効率的なプロセスの運営及び管理を確実にし、組織のパフォーマンスが満足できるものであることを決定するために、測定及びデータを用いることを確実にする。

 顧客志向型の組織を構築するための活動例を次に示す。

− 組織のパフォーマンス改善に至るプロセスを定め、促進する。
− プロセスのデータと情報とを継続的に収集し、使用する。
− 継続的改善に向かって進むように方向付ける。
− 自己評価、マネジメントレビューなど、プロセスの改善を評価するために適切な方法を使用する。

 自己評価の例及び継続的改善のプロセスの例を、それぞれ附属書A及び附属書Bに示す。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
4. 品質マネジメントシステム
4.1 一般要求事項

 組織は、この規格の要求事項に従って、品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、かつ、維持すること。また、その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。
 組織は、次の事項を実施すること。

a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする(1.2参照)。
b) これらのプロセスの順序及び相互関係を明確にする。
c) これらのプロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために必要な判断基準及び方法を明確にする。
d) これらのプロセスの運用及び監視の支援をするために必要な資源及び情報を利用できることを確実にする。
e) これらのプロセスを監視、測定及び分析する。
f) これらのプロセスについて、計画どおりの結果が得られるように、かつ、継続的改善を達成するために必要な処置をとる。

 組織は、これらのプロセスを、この規格の要求事項に従って運営管理すること。
 要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が決めた場合には、組織はアウトソースしたプロセスに関して管理を確実にすること。アウトソースしたプロセスの管理について、組織の品質マネジメントシステムの中で明確にすること。

(参考1.)
品質マネジメントシステムに必要となるプロセスには、運営管理活動、資源の提供、製品実現及び測定に関わるプロセスが含まれる。

(参考2.)
ここでいう、”アウトソース”とは、あるプロセス及びその管理を外部委託することである。”アウトソースしたプロセスを確実にする”とは、外部委託したプロセスが正しく管理されていることを確実にすることである。

4.2 文書化

 管理者は、品質マネジメントシステムを構築し、実施し、維持するために、また、組織のプロセスを効果的で効率よく運営することを支援するために、必要な文書類を関連する記録を含めて定めるとよい。
 文書の種類と範囲は、契約上の要求事項、法令・規制要求事項、並びに顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とを満たし、組織に適したものとするとよい。文書類は組織の必要性に応じてどのような形式及び媒体でもよい。
 利害関係者のニーズと期待とを満たす文書類を準備するために、管理者は次の事項を考慮するとよい。

− 顧客及びその他の利害関係者からの契約上の要求事項
− 国際、国内、地域及び産業分野の規格の採用
− 関連する法令・規制要求事項
− 組織が決定した事項
− 組織の能力を開発することに関連する外部情報源
− 利害関係者のニーズと期待とに関する情報

 組織の有効性と効率の観点から、文書類の作成、使用及び管理は、次のような基準に照らして評価するとよい。

− 機能性(処理スピードなどの)
− 使いやすさ
− 必要な資源
− 方針と目標
− 知識を運用管理することに関する、現在及び将来の要求事項
− 文書システムのベンチマーキング
− 組織の顧客、供給者及びその他の利害関係者が使用するインタフェース

 組織のコミュニケーションに関する方針に基づいて、組織内の人々及びその他の利害関係者の文書利用を確実にするとよい。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
4.2 文書化に関する要求事項
4.2.1 一般

 品質マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めること。

a) 文書化した、品質方針及び品質目標の表明
b) 品質マニュアル
c) この規格が要求する”文書化された手順”
d) 組織内のプロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実に実施するために、組織が必要と判断した文書
e) この規格が要求する記録(4.2.4参照)

(参考1.)
この規格で”文書化された手順”という用語を使う場合には、その手順が確立され、文書化され、実施され、かつ、維持されていることを意味する。

(参考2.)
品質マネジメントシステムの文書化の程度は、次の理由から組織によって異なることがある。

a) 組織の規模及び活動の種類
b) プロセス及びそれらの相互関係の複雑さ
c) 要員の力量

(参考3.)
文書の様式及び媒体の種類はどのようなものでもよい。

4.2.2 品質マニュアル

 組織は、次の事項を含む品質マニュアルを作成し、維持すること。

a) 品質マネジメントシステムの適用範囲。除外がある場合には、その詳細と正当とする理由(1.2参照)。
b) 品質マネジメントシステムについて確立された”文書化された手順”またはそれらを参照できる情報
c) 品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述

4.2.3 文書管理

 品質マネジメントシステムで必要とされる文書は管理すること。ただし、記録は文書の一種ではあるが、4.2.4に規定する要求事項に従って管理すること。
 次の活動に必要な管理を規定する”文書化された手順”を確立すること。

a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
b) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。
c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。
d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
e) 文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを確実にする。
f) どれが外部で作成された文書であるかを明確にし、その配付が管理されていることを確実にする。
g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。

4.2.4 記録の管理

 記録は、要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示すために、作成し、維持すること。記録は、読みやすく、容易に識別可能で、検索可能であること。記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄に関して必要な管理を規定するために、”文書化された手順”を確立すること。

4.3 品質マネジメントの原則の使用

 組織をうまく導き、運営するには体系的で目に見える運営管理が必要である。この規格で提供しているマネジメントに対する手引きは、8つの品質マネジメントの原則に基づいたものである。
 品質マネジメントの原則は、トップマネジメントがパフォーマンスの改善に向けて、組織を導くために使用するよう開発されたものである。次に示す品質マネジメントの原則が、この規格の内容に、統合されている。

a) 顧客重視
 組織はその顧客に依存しており、そのために、現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧客要求事項を満たし、顧客の期待を越えるように努力すべきである。
b) リーダーシップ
 リーダーは、組織の目的及び方向性を一致させる。リーダーは、人々が組織の目標を達成することに十分に参画できる内部環境を創り出し、維持すべきである。
c) 人々の参画
 全ての階層の人々は組織にとって根本的要素であり、その全面的な参画によって、組織の便益のためにその能力を活用することが可能となる。
d) プロセスアプローチ
 活動及び関連する資源が1つのプロセスとして運営管理されるとき、臨まれる結果がより効率よく達成される。
e) マネジメントへのシステムアプローチ
 相互の関連するプロセスを1つのシステムとして、明確にし、理解し、運営管理することが組織の目標を効果的で効率よく達成することに寄与する。
f) 継続的改善
 組織の総合的パフォーマンスの継続的改善を組織の永遠の目標とすべきである。
g) 意思決定への事実に基づくアプローチ
 効果的な意思決定は、データ及び情報の分析に基づいている。
h) 供給者との互恵関係
 組織及びその供給者は独立しており、両者の互恵関係は両者の価値創造能力を高める。

 組織が8つのマネジメントの原則をうまく使うことによって、利害関係者に収益の改善、価値の創造、安定性の増加などの便益をもたらすであろう。

5. 経営者・管理者の責任

5.1 一般指針

5.1.1 序文

 トップマネジメントのリーダーシップ、コミットメント及び積極的な参画は、利害関係者の便益を達成するための効果的で効率的な品質マネジメントシステムを開発し、維持していく上で不可欠なものである。これらの便益を達成するために、顧客満足を確立し、持続し、向上していくことが必要である。
 トップマネジメントは、次に示す行動を考慮するとよい。

− 組織の目的と一致したビジョン、方針、及び戦略的目標を設定する。
− 組織内の人々に信頼感を生み出すために率先垂範によって組織を導く。
− 品質及び品質マネジメントシステムに関する組織としての方向性と価値観を伝える。
− 改善プロジェクトに参画し、新しい方法、解決策、及び製品を追求する。
− 品質マネジメントシステムの有効性と効率とに関するフィードバックを直接入手する。
− 組織に付加価値をもたらす製品実現のプロセスを明確にする。
− 実現のプロセスの有効性と効率とに影響を与える支援のプロセスを明確にする。
− 組織内の人々の参画と能力開発とを奨励する環境を創出する。
− 組織の戦略計画を支えるのに必要な組織体制及び資源を提供する。

 トップマネジメントは、計画目標が達成されたか否かを結論付けるために、組織のパフォーマンスを測定する方法も定めるとよい。
 この方法には、次の項目が含まれる。

− 財務の測定
− 組織全体にわたるプロセスのパフォーマンスの測定
− 外部測定、例えばベンチマーキングや第三者による評価
− 顧客、組織内の人々及びその他の利害関係者の満足の評価
− 提供した製品の出来栄えに対する顧客及びその他の利害関係者の認識の評価
− 管理者が特定した他の成功要因の測定

 また、このような測定及び評価から得られる情報は、品質マネジメントシステムの継続的改善が組織のパフォーマンス改善のための推進力であることを確実にするために、マネジメントレビューへのインプットとして考慮するとよい。

5.1.2 考慮すべき課題

 組織の品質マネジメントシステムを開発し、実施し、そして運営管理する際に、管理者は、4.3に概説した品質マネジメントの原則を考慮するとよい。
 この原則に基づき、トップマネジメントは次に掲げる活動においてリーダーシップを実証し、また、これらの活動に対するコミットメントを示すとよい。

− 要求事項に加えて、顧客の現在及び将来のニーズ、並びに期待を理解する。
− 組織内で、人々の認識、意欲及び参画を高めるために方針や目標を推進する。
− 組織のプロセスの目標として継続的改善を確立する。
− 組織の将来に対して計画し、変化を管理する。
− 利害関係者の満足を達成するための枠組みを設定し、伝達する。

 トップマネジメントは、組織のパフォーマンスを改善する方策として、地道な、または実行している継続的改善に加え、プロセスの飛躍的変更をも考慮するとよい。このような変更の実施中に、管理者は、品質マネジメントシステムの機能を維持するために必要な資源が提供され、コミュニケーションが行なわれることを確実にするように手順を踏むとよい。
 トップマネジメントは、組織の製品実現のプロセスが組織の成功に直接関係するので、これらのプロセスを明確にするとよい。さらに、トップマネジメントは、実現のプロセスの有効性と効率とに影響を与える支援のプロセス、またはその他の利害関係者のニーズと期待とに影響を与える支援のプロセスも明確にするとよい。
 管理者は、プロセスが効果的で効率的なネットワークとして作用することを確実にするとよい。管理者は、実現のプロセス及び支援のプロセスの両方を含むプロセスの相互作用を分析し、最大限に活用するとよい。
 考慮すべき点は次の事項である。

− 望まれる結果が効果的で効率よく達成されるように、プロセスのつながり及び相互作用が設計されることを確実にする。
− プロセスのインプット、活動及びアウトプットが明確に定められ、管理されることを確実にする。
− 個々のプロセスが連結し、また、効果的で効率よく機能していることを検証するために、インプット及びアウトプットを監視する。
− リスクの特定とマネジメントを行ない、パフォーマンス改善の機会を活用する。
− プロセスの継続的改善を促進するためのデータ分析を実施する。
− プロセス責任者を明確にし、彼らに十分な責任と権限を与える。
− プロセス目標を達成するために、各プロセスの運営管理を行なう。
− 利害関係者のニーズと期待

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
5. 経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント

 トップマネジメントは、品質マネジメントの構築及び実施、並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を次の事項によって示すこと。

a) 法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして、顧客要求事項を満たすことの重要性を組織内に周知する。
b) 品質方針を設定する。
c) 品質目標が設定されることを確実にする。
d) マネジメントレビューを実施する。
e) 資源が使用できることを確実にする。

5.2 利害関係者のニーズ及び期待

5.2.1 一般

 どの組織にも利害関係者があり、それぞれの利害関係者がニーズと期待とを持っている。組織の利害関係者には次の項目が含まれる。

− 顧客及びエンドユーザー
− 組織内の人々
− 供給者及びパートナ
− 組織またはその製品によって影響を受ける地域社会及び一般大衆という意味での社会

5.2.2 ニーズ及び期待

 組織の成功は、現実の顧客及び潜在的な顧客、並びにエンドユーザーの現在及び将来のニーズと期待とを理解し満たすとともに、その他の利害関係者の現在及び将来のニーズと期待とを理解し、考慮することにかかっている。
 全ての利害関係者のニーズと期待とを理解し、これに応じるために、組織は次の事項を行なうとよい。

− 利害関係者を明確にし、そのニーズと期待とに対して調和のとれた対応を維持する。
− 明確にしたニーズと期待とを要求事項に変換する。
− 組織内全てに、その要求事項を伝達する。
− 明らかにした利害関係者にとっての価値を確実にするためのプロセス改善に焦点を合わせる。

 組織の管理者は、顧客とエンドユーザーのニーズと期待とを満たすために、次の事項を行なうべきである。

− 潜在的な顧客を含む顧客のニーズと期待とを理解する。
− 顧客及びエンドユーザーにとって重要な製品特性を決定する。
− 市場における競争を明確にし、評価する。
− 市場における機会、弱点及び将来の競争優位性を明確にする。

 組織の製品に関連するものとして、顧客及びエンドユーザーのニーズと期待との例には次のものがある。

− 適合性
− ディペンダビリティ
− アベイラビリティ
− 引渡し
− 実現後の活動
− 価格及びライフサイクルコスト
− 製品安全性
− 製造物責任
− 環境影響

 組織は、表彰、業務満足度、及び能力開発に対するその人々のニーズと期待とを明確にするとよい。このような配慮は、人々の参画及び意欲を可能な限り高めることを確実にする助けとなる。
 組織は、オーナ及び投資家の明らかにされたニーズと期待とを満足する財務上の成果及びその他の成果を明確にするとよい。
 管理者は、組織及びその供給者の双方にとっての価値を創造するために、供給者とのパートナシップを確立することによる潜在的な便益を考慮するとよい。パートナシップでは、利得及び損失と同様に知識を共有し、共同戦略に基づくとよい。
 パートナシップを確立する際、組織は次の事項を行なうとよい。

− 要となる供給者、及び他の組織を潜在的なパートナとして明確にする。
− 顧客のニーズと期待とに対する明確な理解を共同で確立する。
− パートナのニーズと期待とに対する明確な理解を共同で確立する。
− パートナシップを継続する機会を確保するための到達目標を設定する。

 社会との関係を考慮するに際して、組織は次の事項を行なうとよい。

− 健康と安全に対する責任を実証する。
− エネルギーの保存及び天然資源の保護を含め、環境影響を考慮する。
− 適用される法令・規制要求事項を明確にする。
− 一般的に、社会、特に地域社会に対して、組織の製品、プロセス及び活動が現在与えている影響及び起こり得る影響を明確にする。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
5.2 顧客重視

 顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にすること(7.2.1及び8.2.1参照)。

5.2.3 法令・規制要求事項

 管理者は、組織がその製品、プロセス及び活動に適用される法令・規制要求事項に関する知識を持ち、それらの要求事項を品質マネジメントシステムの一部として含めるとよい。
 さらに、次の事項を考慮するとよい。

− 現在の及び予想される要求事項を倫理的、効果的で効率よく遵守することの推進
− 単に遵守するだけでなく、それを上回ることがもたらすことによる利害関係者に対する便益
− 地域社会の利益保護における組織の役割

5.3 品質方針

 トップマネジメントは、組織をそのパフォーマンス改善に向けて導く手段として、品質方針を使用するとよい。
 組織の品質方針は、その組織の総合的方針及び戦略の要素と同じであり、整合性のあるものとするとよい。
 品質方針を設定する際に、トップマネジメントは次の事項を考慮するとよい。

− 組織が成功するために必要な、将来の改善の水準と種類
− 顧客満足の期待される水準または望まれる水準
− 組織内の人々の能力開発
− その他の利害関係者のニーズと期待
− JIS Q 9001の要求事項だけでなく、それを越えるために必要な資源
− 供給者及びパートナの潜在的貢献

 品質方針は、次の条件を満たせば、改善のために使用できる。

− 組織の将来に関するトップマネジメントのビジョン及び戦略に沿ったものである。
− 品質目標を組織全体に理解させ、追求させ得るものである。
− 品質に対する及び目標達成のために十分な資源を提供することに対するトップマネジメントのコミットメントを実証している。
− トップマネジメントの明確なリーダーシップによって、組織の全てにわたり、品質に対するコミットメントを推進するのに役立つ。
− 顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とを満足することに関連したものとして、継続的改善を含む。
− 効果的に策定され、効率よく伝達される。

 品質方針は、他の事業方針の場合と同じく、定期的レビューするとよい。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
5.3 品質方針

 トップマネジメントは、品質方針について次の事項を確実にすること。

a) 組織の目的に対して適切である。
b) 要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。
c) 品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。
d) 組織全体に伝達され、理解される。
e) 適切性の持続のためにレビューする。

5.4 計画

5.4.1 品質目標

 組織の戦略計画及び品質方針は、品質目標を設定するための枠組みを提供する。トップマネジメントは、組織のパフォーマンスの改善につながるように、品質目標を設定するとよい。品質目標は、管理者の効果的で効率的なレビューを容易にするために、測定可能なものとするとよい。品質目標を設定するに当たり、管理者は更に次の事項を考慮するとよい。

− 組織及び対象とする市場の現在及び将来のニーズ
− マネジメントレビューの結果のうち関連するもの。
− 現在の製品及びプロセスのパフォーマンス
− 利害関係者の満足の水準
− 自己評価結果
− ベンチマーキング、競合者の分析、及び改善の機会
− 目標を達成するために必要な資源

 品質目標は、組織内の人々が目標の達成に寄与できるようなやり方で人々に伝えるとよい。品質目標を展開する責任を定めておくとよい。
 目標は、体系的にレビューし、必要であれば改訂するとよい。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
5.4 計画
5.4.1 品質目標

 トップマネジメントは、組織内のそれぞれの部門及び階層で品質目標が設定されることを確実にすること。その品質目標には、製品要求事項[7.1a)参照]を満たすために必要なものがあれば含めること。品質目標は、その達成度が判定可能で、品質方針との整合性がとれていること。

5.4.2 品質計画

 管理者は、組織の品質計画に責任を持つとよい。
 この計画では、組織の戦略に沿った品質目標及び要求事項を効果的で効率よく満たすために必要なプロセスを定めることに焦点を置くとよい。
 効果的で効率的な計画へのインプットには、次の事項が含まれる。

− 組織の戦略
− 定められた組織の目標
− 明確にされた、顧客、及びその他の利害関係者のニーズと期待
− 法令・規制要求事項の評価
− 製品の出来栄えのデータの評価
− プロセスのパフォーマンスのデータの評価
− それまでの経験から学んだ教訓
− 指示された改善の機会
− 関連するリスクの評価及び緩和のデータ

 組織の品質に関する計画のアウトプットは、次に示すような事項に関して必要な製品実現のプロセス及び支援のプロセスを定めるとよい。

− 組織に必要な技量と知識
− プロセス改善計画を実施するための責任及び権限
− 財務やインフラストラクチャーのような、必要な資源
− 組織のパフォーマンス改善の達成を評価するための基準
− 方法及びツールを含む改善のためのニーズ
− 記録を含む、文書類に対するニーズ

 管理者は、組織のプロセスの有効性と効率とを確実にするために、アウトプットを体系的にレビューするとよい。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
5.4.2 品質マネジメントシステムの計画

 トップマネジメントは、次の事項を確実にすること。

a) 品質目標及び4.1に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画が策定される。
b) 品質マネジメントシステムの変更が計画され、実施される場合には、品質マネジメントシステムが”完全に整っている状態(integrity)”を維持している。

5.5 責任、権限及びコミュニケーション

5.5.1 責任及び権限

 トップマネジメントは、効果的で効率的な品質マネジメントシステムを実施し、維持するために、責任と権限とを定め、伝達するとよい。
 組織内の全ての人々は、品質目標の達成に貢献でき、人々が参画し、意欲及びコミットメントを証明できるように、責任と権限とを与えられるとよい。

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5.5 責任、権限及びコミュニケーション
5.5.1 責任及び権限

 トップマネジメントは、責任及び権限が定められ、組織全体に周知されていることを確実にすること。

5.5.2 管理責任者

 管理責任者は、品質マネジメントシステムの運営管理、監視、評価及び調整を行なうために、トップマネジメントが任命し、権限を与えるとよい。この任命は、品質マネジメントシステムの運用の効果及び効率を高め、改善を更に進めることを目的としている。管理責任者はトップマネジメントに対して報告義務があり、また、品質マネジメントシステムに関連する事項について、顧客及びその他の利害関係者とのコミュニケーションを行なうとよい。

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5.5.2 管理責任者

 トップマネジメントは、管理層の中から管理責任者を任命すること。管理責任者は与えられている他の責任とかかわりなく次に示す責任及び権限を持つこと。

a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスの確立、実施及び維持を確実にする。
b) 品質マネジメントシステムの実施状況及び改善の必要性の有無についてトップマネジメントに報告する。
c) 組織全体にわたって、顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にする。

(参考1.)
管理責任者の責任には、品質マネジメントシステムに関する事項について外部と連絡をとることも含めることができる。

(参考2.)
管理責任者は、上記の責任及び権限を持つ限り、1人である必要はない。

5.5.3 内部コミュニケーション

 組織の管理者は、品質方針、目標及び成果に関する効果的で効率的なコミュニケーションを定め、実施するとよい。このような情報を提供することで、組織内の人々を品質目標の達成に直接参画させること、及び組織のパフォーマンス改善を支援することができる。管理者は、参画を促す手段として、組織内の人々からのフィードパックとコミュニケーションとを積極的に奨励するとよい。
 コミュニケーションのための活動には、例えば、次のものを含む。

− 職場での管理者主導のコミュニケーション
− 成果を求める場合のような、チーム内での簡単な説明及びその他の会議
− 掲示板、社内報/社内誌
− 電子メール、ホームページなどの、視聴覚及び電子的な媒体
− 従業員調査及び提案制度

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5.5.3 内部コミュニケーション

 トップマネジメントは、組織内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にすること。また、品質マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換が行なわれることを確実にすること。

5.6 マネジメントレビュー

5.6.1 一般

 トップマネジメントは、マネジメントレビュー活動を、品質マネジメントシステムの有効性及び効率を検証するだけのものにとどめず、組織全体に拡大したプロセスとし、また、システムの効率を評価するものに展開するとよい。
 マネジメントレビューは、トップマネジメントのリーダーシップの下に活気付けて、開かれた議論を行ない、インプットの評価を行ないながら、新しい着想を交換する場とするとよい。
 マネジメントレビューによって組織の価値を高めるためには、トップマネジメントは、品質マネジメントの原則に基づいた体系的なレビューを通じて、実現のプロセス及び支援のプロセスのパフォーマンスを管理するとよい。
 レビューの頻度は、組織のニーズによって決定するとよい。レビュープロセスへのインプットは、品質マネジメントシステムの有効性及び効率を越えるアウトプットをもたらすべきである。また、レビューからのアウトプットは、組織のパフォーマンス改善を計画するために使用するデータを提供するとよい。

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5.6 マネジメントレビュー
5.6.1 一般

 トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムが、引き続き適切で、妥当で、かつ有効であることを確実にするために、あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムをレビューすること。このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行なうこと。
 マネジメントレビューの結果の記録は維持すること(4.2.4参照)。

5.6.2 レビューへのインプット

 品質マネジメントシステムの有効性とともに効率を評価するためのインプットは、顧客及びその他の利害関係者を考慮するとよい。また、次の事項を含むとよい。

− 品質目標、並びに改善活動に関する状況及び結果
− マネジメントレビューの処置指示事項の状況
− 監査及び組織の自己評価の結果
− 利害関係者の満足に関するフィードバック。これには、利害関係者の関与の程度さえも含む場合がある。
− 市場関連の要素。例えば、技術、研究開発、競合者のパフォーマンスなど
− ベンチマーキング活動の結果
− 供給者のパフォーマンス
− 新しい改善の機会
− プロセス及び製品の不適合管理
− 市場の評価及び戦略
− 戦略的パートナシップ活動の状況
− 品質関連活動の財務上の効果
− 組織に影響する他の要素。例えば、財務、社会または環境の状況、及び法令・規制要求事項の変更

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5.6.2 マネジメントレビューへのインプット

 マネジメントレビューへのインプットには次の情報を含むこと。

a) 監査の結果
b) 顧客からのフィードバック
c) プロセスの実施状況及び製品の適合性
d) 予防処置及び是正処置の状況
e) 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ
f) 品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更
g) 改善のための提案

5.6.3 レビューからのアウトプット

 マネジメントレビューのアウトプットは、マネジメントレビューを品質マネジメントシステムの検証にとどまらず、更に拡大することで、トップマネジメントが改善プロセスへのインプットとして使用できる。トップマネジメントは、このレビューのプロセスを、組織のパフォーマンス改善の機械を見出すための強力なツールとして使用することができる。 マネジメントレビューのスケジュールは、組織の戦略計画の作成という面でタイムリーなデータの提供を容易に行なえるようにするとよい。また、選び出した幾つかのアウトプットを人々に伝達して、マネジメントレビューのプロセスが、組織にとって有益な新規目標につながって行くのかを組織内の人々に示すとよい。
 効率を上げるアウトプットとしては、次のような事項がある。

− 製品及びプロセスのパフォーマンス目標
− 組織のパフォーマンス改善の目標
− 組織の構造及び資源の適切性の評価
− マーケティング、製品、並びに顧客及びその他の利害関係者の満足に関する戦略と率先
− 特定されたリスクに対する損失防止及び緩和の計画
− 組織の将来のニーズに対する戦略的計画に関する情報

 マネジメントレビューが組織にとって継続して有効であり、価値を高めるものであることを確実にするために、記録は、トレーサビリティを備え、かつ、マネジメントレビューのプロセスそのものの評価を促進するようなものとするとよい。

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5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット

 マネジメントレビューからのアウトプットには、次の事項に関する決定及び処置を含むこと。

a) 品質マネジメントシステム及びそのプロセスの有効性の改善
b) 顧客要求事項への適合に必要な製品の改善
c) 資源の必要性

6. 資源の運用管理

6.1 共通の手引

6.1.1 序文

 トップマネジメントは、組織の戦略及び目標の実施、並びに達成に不可欠な資源が明確にされており、利用できることを確実にするとよい。これには、品質マネジメントシステムの運営と改善、及び顧客とその他の利害関係者との満足のための資源を含むとよい。資源には、人々、インフラストラクチャー、作業環境、情報、供給者とパートナ、天然資源、そして財務資源などがあるだろう。

6.1.2 考慮すべき課題

 組織のパフォーマンス改善のための資源については、次のような考慮を払うとよい。

− 機会及び制約に関連して、効果的、効率的及びタイムリーな資源の提供
− 改良された実現及び支援の設備のような有形の資源
− 知的所有権のような無形の資源
− 革新的な継続的改善を助長するための資源及び仕組み
− 組織構造。これにはプロジェクト方式及びマトリクス方式による運営管理の必要性を含む。
− 情報の運用管理及び情報技術
− 重点的訓練、教育及び学習による実力の向上
− 組織の将来の管理者に対するリーダーシップの技量及びあるべき人物像の開発
− 天然資源の使用及び資源の環境への影響
− 将来の資源の必要性に関する計画

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6. 資源の運用管理
6.1 資源の提供

 組織は、次の事項に必要な資源を明確にし、提供すること。

a) 品質マネジメントシステムを実施し、維持する。また、その有効性を継続的に改善する。
b) 顧客満足を、顧客要求事項を満たすことによって向上する。

6.2 人々

6.2.1 人々の参画

 管理者は、人々の参画と支援とを通じて、品質マネジメントシステムを含む組織の有効性及び効率をともに改善するとよい。組織は、そのパフォーマンス改善の目標を達成する助けとして、次のような方法によってその人々の参画と能力開発とを奨励するとよい。

− 実行している教育・訓練及びキャリアプランを提供する。
− 責任及び権限を定める。
− 個人及びチームの目標を設定し、プロセスのパフォーマンスを運営管理し、結果を評価する。
− 目標設定及び意思決定への参画を促進する。
− 表彰し、報奨を与える。
− 開かれた双方向の情報伝達を促進する。
− 人々のニーズを継続的にレビューする。
− 革新を推奨する状況を創出する。
− 効果的なチームワークを確実にする。
− 提案及び意見を伝達する。
− 組織の人々の満足度の測定結果を活用する。
− 人々の入社及び退社の理由を調査する。

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6.2 人的資源
6.2.1 一般

 製品品質に影響がある仕事に従事する要員は、関連する教育、訓練、技能及び経験を判断の根拠として力量があること。

6.2.2 力量、認識及び教育・訓練

6.2.2.1 力量

 管理者は、組織の効果的で効率的な運営に必要な力量が組織の中にあることを確実にするとよい。管理者は、組織の現在及び予測される力量のニーズを、組織に既に存在する力量と比較した分析を考慮するとよい。
 力量に対するニーズを考慮するには、次のような情報源がある。

− 戦略的及び運営上の計画と目標とに関連した将来の需要
− 予測される管理者及び要員の継続性のニーズ
− 組織のプロセス、ツール、及び設備の変更
− 定められた活動を行なう個人の力量の評価
− 組織及びその利害関係者に影響を与える、法令・規制要求事項、並びに標準類

6.2.2.2 認識及び教育・訓練

 教育及び訓練のニーズに対する計画に際しては、組織のプロセスの性質、人々の能力開発の段階及び組織の文化によってもたらされる変化を考慮するとよい。目標は、経験とあいまって、力量を改善する知識と技量とを人々に提供することである。
 教育及び訓練では、要求事項を満たすことの重要性、並びに顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待を強調するとよい。それには、要求事項を満たせなかったときに組織及びその人々に与える結果の重大性を認識する事項も含めるとよい。
 組織目標の達成及びその人々の能力開発を支援するため、教育及び訓練の計画では、次の事項を考慮するとよい。

− 人々の経験
− 言葉には表すことのできない知識
− リーダーシップ及び運営管理の技量
− 計画及び改善のツール
− チームビルディング
− 問題解決
− コミュニケーションの技量
− 文化及び社会生活を営む態度
− 市場知識、並びに顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待
− 創造性及び革新

 人々の参画を促進するために、教育及び訓練は次の事項も含む。

− 組織の将来に向けたビジョン
− 組織の方針及び目標
− 組織の変革及び発展
− 改善プロセスの開始及び実施
− 創造性及び革新から得られる便益
− 社会に対する組織の影響
− 新規採用者に対する導入プログラム
− 既に教育・訓練を受けた人々に対する定期的な教育・訓練の更新プログラム

 教育・訓練計画には、次の事項を含むとよい。

− 目標
− プログラム及び方法
− 必要な資源
− 必要な組織内支援の明確化
− 人々の力量の向上という面からの評価
− 有効性及び組織に対する影響の測定

 実施された教育及び訓練は、将来の教育・訓練の計画を改善していく手段として、組織の有効性及び効率に対する期待と影響という観点から、評価するとよい。

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6.2.2 力量、認識及び教育・訓練

 組織は、次の事項を実施すること。

a) 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
b) 必要な力量が持てるように教育・訓練し、または他の処置をとる。
c) 教育・訓練または他の処置の有効性を評価する。
d) 組織の要員が、自らの活動の持つ意味と重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らどのように貢献できるかを認識することを確実にする。
e) 教育、訓練、技能及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4参照)。

6.3 インフラストラクチャー

 管理者は、利害関係者のニーズと期待とを考慮するとともに、製品の実現に必要なインフラストラクチャーを定めるとよい。インフラストラクチャーには、工場、職場、ツール、設備、支援サービス、情報通信技術、輸送施設などの資源が含まれる。
 効果的で効率的な製品実現を達成するために必要なインフラストラクチャーを定めるプロセスは、次の事項による。

a) 目標、機能、パフォーマンス、アベイラビリティ、コスト、安全、保安、更新などの点から定められたインフラストラクチャーの提供
b) インフラストラクチャーが組織のニーズを満たし続けることを確実にするための維持方法の開発及び実施。これらの方法は、重要性及び使用状況に基づいて、インフラストラクチャーの各要素の維持及び検証の方法と頻度とを考慮したものとするよい。
c) 利害関係者のニーズと期待とに対比してのインフラストラクチャーの評価
d) インフラストラクチャーに関係する、保存、汚染、廃棄物、リサイクルなどのような環境課題の考慮

 管理不能な自然現象がインフラストラクチャーに影響を与えることがある。インフラストラクチャーの計画には、関連するリスクを特定し、緩和することを考慮し、また、利害関係者の利益を保護するための戦略を含めるとよい。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
6.3 インフラストラクチャー

 組織は、製品要求事項への適合を達成する上で必要とされるインフラストラクチャーを明確にし、提供し、かつ、維持すること。インフラストラクチャーには次のようなものがある。

a) 建物、作業場所及び関連するユーティリティー(電気、ガス、水道など)
b) 設備(ハードウェアとソフトウェアとを含む。)
c) 支援業務(輸送、通信など)

(参考)
インフラストラクチャーとは、”<組織>組織の運営のために必要な一連の施設、設備及びサービスに関するシステム”を指す(JIS Q 9000の3.3.3参照)。

6.4 作業環境

 管理者は、組織のパフォーマンスを高めるために、作業環境が人々の意欲、満足、及びパフォーマンスに好ましい影響を与えることを確実にするとよい。
 適切な作業環境を創り出すには、人的要因及び物理的要因を組み合わせた、次の事項を考慮するとよい。

− 組織内の人々の潜在能力を実現させるための参画の度合いをさらに大きくするための、創造的な作業の方法及び機会
− 安全規則及び安全の手引(保護具の使用を含む。)
− 人間工学
− 職場の位置
− 社会的相互作用
− 組織内の人々のための施設
− 熱、湿気、光、気流
− 衛生、清浄、騒音、振動及び汚染

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
6.4 作業環境

 組織は、製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし、運営管理すること。

6.5 情報

 管理者は、データを、情報に変換するための、及び組織の知識を継続的に発展させるための基礎的な資源として扱うべきである。この基礎的資源は事実に基づく決定を行なうのに不可欠であり、また、革新を活気付けることができるものである。
 組織は情報を運用管理するために、次の事項を行なうべきである。

− その情報のニーズを明確にする。
− 内部及び外部の情報源を特定し、利用する。
− 情報を、組織にとって有用な知識に変換する。
− その戦略及び目標を設定し、満たすために、データ、情報及び知識を利用する。
− 適切なセキュリティ及び機密保持を確実にする。
− 情報及び知識の運用管理を改善するために情報を使用することで得られる便益を評価する。

6.6 供給者及びパートナシップ

 管理者は、供給者及びパートナとの関係を確立して、価値を創造するプロセスの有効性と効率とを互いに改善する目的を持って、コミュニケーションを推進し、促進していくとよい。組織が供給者及びパートナと仕事を行なうことによって価値を高めるには、次のように様々な機会がある。

− 供給者及びパートナの数を最適にする。
− 迅速な問題解決を促進し、損失の大きい遅延及び紛争を避けるために、両組織の最も適切な階層での双方向のコミュニケーションを確立する。
− 供給者のプロセスの能力が妥当であるかを確認するのに際して、供給者と協力する。
− 検証の重複を排除するために、供給者の適合製品の引渡し能力を監視する。
− 供給者に対し、パフォーマンスの継続的改善のプログラムを実施し、その他の共同改善活動の開始への参加を奨励する。
− 知識を共有するため、また、適合製品の実現及び引渡しプロセスを効果的で効率よく改善するためには、供給者を組織の設計・開発に参画させる。
− パートナを購買ニーズの明確化及び共同戦略の開発に参画させる。
− 供給者及びパートナの努力と達成とを評価し、表彰し、報奨を与える。

6.7 天然資源

 天然資源の入手可能性については、組織のパフォーマンスに影響を与えることがあることを考慮するとよい。このような天然資源は、組織が直接管理できないことが多いが、組織の成果に対して、著しく良い又は悪い影響を与えることがある。組織は、組織のパフォーマンスに対する悪い影響を予防、またはそれを最小限にするために、これらの天然資源の入手可能性、もしくは代わりを入手することを確実にするための計画、または緊急事態対応計画を用意しておくとよい。

6.8 財務資源

 資源の運用管理には、財務資源のニーズ及び出所を決定するという活動を含めるとよい。財務資源の管理には、計画に対する支出の実績を比較し、必要な処置をとるという活動を含めるとよい。
 管理者は、効果的で効率的な品質マネジメントシステムの実施及び維持に必要な財務資源、及び組織の目標達成に必要な財務資源を計画し、確保し、そして管理するとよい。管理者は、組織のパフォーマンスの改善を支援し、奨励するために、革新的な財務手法の開発も考慮するとよい。
 品質マネジメントシステムの有効性及び効率の改善は組織の財務成績に好影響を及ぼし得る。この例には次の事項がある。

a) 内部的には、プロセスもしくは製品の不具合、または材料と時間との無駄を減らすことによるもの。
b) 外部的には、製品の不具合、保証事項(”guarantees”及び”warranties”)の補償コスト、及び顧客と市場とを失うことによる損失コストを減らすことによるもの。

 このような件についての報告は、非効果的または非効率的な活動を決定し、適切な改善行動を開始するための方法を提供することもできる。
 品質マネジメントシステム及び製品適合のパフォーマンスに関連する活動の財務報告は、マネジメントレビューにおいて利用するとよい。

7. 製品実現

7.1 共通の手引

7.1.1 序文

 トップマネジメントは、組織が利害関係者の満足を得る実現能力を持つために、実現のプロセス、支援のプロセス及び関連するプロセスのネットワークを効果的で効率よく運営することを確実にするとよい。
 実現のプロセスは、製品を生み出すことで、組織の付加価値を高めるものであるが、支援のプロセスも組織にとって必要なものであり、組織の付加価値を間接的に高める。
 どのプロセスも、インプットとアウトプットの両者を持つ、関連活動のつながりまたは単一の活動である。管理者は、プロセスのアウトプットに対する要求事項を定め、それを効果的で効率よく達成するために必要なインプットと活動とを明確にするとよい。
 プロセスの相互関係は、複雑になり、プロセスネットワークとなることがある。管理者は、組織の効果的で効率的な運営を確実にするために、1つのプロセスのアウトプットが1つまたはそれ以上の他のプロセスのインプットになることがあることを認識するとよい。

7.1.2 考慮すべき課題

 プロセスを活動のつながりとして表現できると理解することは、管理者がプロセスのインプットを定める際の助けになる。インプットが定められると、望まれるアウトプットを達成するためのプロセスに必要な活動、行動及び資源を決定できる。
 プロセス及びアウトプットの検証、並びに妥当性確認で得られた結果も、パフォーマンスの継続的改善及び組織全体にわたる卓越性の推進を達成するための、プロセスへのインプットと考えるとよい。組織のプロセスの継続的改善は、品質マネジメントシステムの有効性と効率とを改善し、さらに組織のパフォーマンスを改善する。
 附属書Bは、プロセスの有効性と効率との継続的改善に必要な行動を明確にする助けとなる”継続的改善のためのプロセス”を記述している。
 プロセスは、効果的で効率的な運営を支援するために、必要な程度に文書化を行なうとよい。
 次の事項を支援するために、プロセスに関する文書類を作成するとよい。

− プロセスの著しい特徴の明確化及び伝達
− プロセス運営の教育・訓練
− チーム及び作業グループにおける知識、並びに経験の共有
− プロセスの測定及び監査
− プロセスの分析、レビュー及び改善

 プロセス内部の人々の役割を、次の事項を行なうために評価するとよい。

− 人々の健康と安全とを確実にする。
− 必要な技量があることを確実にする。
− プロセスの調整を支援する。
− プロセスを分析する人々からのインプットに備える。
− 人々が行なう革新を推進する。

 組織のパフォーマンスの継続的な改善を推進する際には、有益な成果を達成するための手段としてのプロセスの有効性及び効率の改善に焦点を合わせるとよい。便益の増加、顧客満足の改善、資源使用の改善及び浪費の削減は、プロセスのより優れた有効性及び効率によって達成される測定可能な結果の例である。

7.1.3 プロセスの運営管理

7.1.3.1 共通

 管理者は、顧客及びその他の利害関係者の要求事項を満足する製品を実現するために、必要なプロセスを明確にするとよい。製品実現を確実にするためには、望まれるアウトプット、プロセスの段階、活動、流れ、管理手段、教育・訓練の必要性、設備、方法、情報、材料、及びその他の資源とともに、関連する支援のプロセスを考慮するとよい。
 プロセスを運営管理するために、次の事項を含む運営計画を定めるとよい。

− インプット及びアウトプットの要求事項(例えば、仕様書及び資源)
− プロセス内の活動
− プロセス及び製品の検証と妥当性確認
− ディペンダビリティを含むプロセスの分析
− リスクの特定、評価及び緩和
− 是正処置及び予防処置
− プロセス改善のための機会と行動
− プロセス及び製品の変更管理

 支援のプロセスの例を、次に示す。

− 情報の運用管理
− 人々の教育・訓練
− 財務関連の活動
− インフラストラクチャー及びサービスの維持
− 産業の安全/防護設備の適用
− マーケティング

7.1.3.2 プロセスのインプット、アウトプット及びレビュー

 プロセスアプローチは、プロセスへのインプットを、アウトプットの検証及び妥当性確認に用いる要求事項を体系的な形とする基礎を提供するように定め、記録することを確実にする。インプットは、組織内部のものまたは外部からのものがあり得る。
 不明瞭なまたは矛盾するインプットの要求事項を解決するには、影響を受ける内部及び外部の関係者との協議を必要とすることがある。まだ完全には評価が終えていない活動から得るインプットは、後で行なうレビュー、検証及び妥当性確認によって評価するとよい。 組織は、そのプロセス内の活動を管理し、監視するための効果的で効率的な計画を作成するために、製品及びプロセスの著しいまたは重大な特徴を明確にするとよい。
 考慮すべきインプットの課題の例には、次の事項を含む。

− 人々の力量
− 文書類
− 設備能力及び監視
− 健康、安全及び作業環境

 合否判定基準を含むインプットの要求事項に対して検証された、プロセスのアウトプットは、顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とを考慮したものとするとよい。検証のために、アウトプットは記録し、インプットの要求事項及び合否判定基準に対して評価するとよい。
 この評価では、プロセスの有効性と効率とに関して必要な是正処置、予防処置または改善の可能性を明確化するとよい。製品の検証は、変動を特定するためにプロセスの中で実施することがある。 組織の管理者は、プロセスが運営計画に沿っていることを確実にするために、プロセスのパフォーマンスに関して定期的なレビューを行なうべきである。
 このレビューの主題の例には、次の事項を含む。

− プロセスの信頼性及び繰り返し性
− 起こり得る不適合の特定及び予防
− 設計・開発のインプット及びアウトプットの妥当性
− インプット及びアウトプットの計画目標との整合性
− 改善の可能性
− 未解決の課題

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7. 製品実現
7.1 製品実現の計画

 組織は、製品実現のために必要なプロセスを計画して、構築すること。製品実現の計画は、品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合性が取れていること(4.1参照)。
 製品実現の計画に当たっては、組織は次の事項について該当するものを明確にすること。

a) 製品に対する品質目標及び要求事項
b) 製品に特有な、プロセス及び文書の確立の必要性、並びに資源の提供の必要性
c) その製品のための検証、妥当性確認、監視、検査及び試験活動、並びに製品合否判定基準
d) 製品実現のプロセス及びその結果としての製品が要求事項を満たしていることを実証するために必要な記録(4.2.4参照)

 この計画のアウトプットは、組織の計画の実行に適した様式であること。

(参考1.)
特定の製品、プロジェクトまたは契約に適用される品質マネジメントシステムのプロセス(製品実現のプロセスを含む。)及び資源を規定する文書を品質計画書と呼ぶことがある。

(参考2.)
組織は、製品実現のプロセスの構築に当たって7.3に規定する要求事項を適用してもよい。

7.1.3.3 製品及びプロセスの妥当性確認、並びに変更

 管理者は、製品の妥当性確認で、製品が顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とを満たしているのを実証することを確実にするとよい。妥当性確認活動には、顧客またはその他の利害関係者が参加するレビューはもちろんのこと、モデル作成、シミュレーション及び試行を含む。
 考慮すべき課題には、次の事項を含む。

− 品質方針及び品質目標
− 設備の能力またはその適格性確認
− 製品の運用条件
− 製品の使用または適用
− 製品の廃棄
− 製品のライフサイクル
− 製品の環境影響
− 材料及びエネルギーを含む天然資源使用の影響

 プロセスの妥当性確認は、プロセスに影響する変化へのタイムリーな対応を確実にするために、適切な間隔で実施するとよい。次の事項に関するプロセスの妥当性確認には、特に注意を払うべきである。

− 高価な製品及び安全性が非常に重要な製品
− 製品の不具合が製品を使用しないと現れない場合
− 再現できないもの
− 製品の検証が不可能な場合

 組織は製品またはプロセスの変化が組織に便益をもたらし、利害関係者のニーズと期待とを満足することを確実にするために、効果的で効率的な変更管理のためのプロセスを実施するとよい。 他のプロセスへの影響、並びに顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待への影響を理解するために、変更を明確にし、記録し、評価し、レビューし、管理するとよい。
 製品の適合性を維持し、是正処置または組織のパフォーマンス改善のための情報を提供するために、製品特性に影響するプロセスのどのような変更も、記録し、伝達するとよい。
 管理を維持するために、変更を開始する宣言者を定めるとよい。
 製品としてのアウトプットは、変更の結果が望まれたとおりのものになっていることを確実にするために、いかなる場合でも関連する変更の後で、妥当性確認を行なうとよい。
 プロセス内の不具合または失敗の予防を計画するために、シミュレーション技法の使用を考慮することもできる。
 プロセス内の起こり得る不具合または失敗の発生の可能性及びその影響を評価するために、リスク評価を行なうとよい。この結果は、特定したリスクを緩和するための予防処置を定め、実施するために使用するとよい。リスク評価のツールの例には、次の事項を含む。

− 故障モード影響解析(FMEA)
− 故障の木解析(FTA)
− 連関図
− シミュレーション技法
− 信頼性予測

7.2 利害関係者に関連するプロセス

 管理者は、顧客及びその他の利害関係者との間で効果的で効率よく情報伝達するために、組織が互いに受け入れ可能なプロセスを定めていることを確実にするとよい。組織は、利害関係者のニーズと期待とについて十分に理解することを確実にし、さらに、それらを組織への要求事項に変換するためのプロセスを実施し、維持するとよい。 これらのプロセスには、適切な情報を特定し、レビューすることを含め、顧客及びその他の利害関係者を積極的に参画させるとよい。
 適切なプロセスの情報の例には、次の事項を含む。

− 顧客またはその他の利害関係者の要求事項
− 産業分野及びエンドユーザーのデータを含む市場調査
− 契約要求事項
− 競合者の分析
− ベンチマーキング
− 法令・規制要求事項によるプロセス

 組織は、顧客またはその他の利害関係者のプロセス要求事項に応じる前に、その要求事項を十分に理解するとよい。この理解及びそれによる影響は、関係者にとって互いに受容可能なものとするとよい。

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7.2 顧客関連のプロセス
7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化

 組織は、次の事項を明確にすること。

a) 顧客が規定した要求事項。これには引渡し及び引渡し後の活動に関する要求事項を含む。
b) 顧客が明示してはいないが、指定された用途または意図された用途が既知である場合、それらの用途に応じた要求事項
c) 製品に関連する法令・規制要求事項
d) 組織が必要と判断する追加要求事項

7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー

 組織は、製品に関連する要求事項をレビューすること。このレビューは、組織が顧客に製品を提供することについてのコミットメント(例 提案書の提出、契約または注文の受諾、契約または注文への変更の受諾)をする前に実施すること。レビューでは次の事項を確実にすること。

a) 製品要求事項が定められている。
b) 契約または注文の要求事項が以前に提示されたものと異なる場合には、それについて解決されている。
c) 組織が、定められた要求事項を満たす能力を持っている。

 このレビューの結果の記録及びそのレビューを受けてとられた処置の記録を維持すること(4.2.4参照)。
 顧客がその要求事項を書面で示さない場合には、組織は顧客要求事項を受諾する前に確認すること。
 製品要求事項が変更された場合には、組織は、関連する文書を修正すること。また、変更後の要求事項が関連する要員に理解されていることを確実にすること。

(参考)
インターネット販売などの状況では、個別の注文に対する正式なレビューの実施は非現実的である。このような場合のレビューでは、カタログや宣伝広告資料などの関連する製品情報をその対象とすることもできる。

7.2.3 顧客とのコミュニケーション

 組織は、次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るための効果的な方法を明確にし、実施すること。

a) 製品情報
b) 引き合い、契約もしくは注文、またはそれらの変更
c) 苦情を含む顧客からのフィードバック

7.3 設計・開発

7.3.1 共通の手引

 トップマネジメントは、組織が、その顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とに効果的で効率よく応えるために、必要な設計・開発のプロセスを定め、実施し、維持していることを確実にするとよい。
 製品及びプロセスの設計・開発を行なうに際して、管理者は、組織が基本的なパフォーマンス及び機能だけではなく、顧客及びその他の利害関係者から期待されている製品及びプロセスのパフォーマンスを満たすことに寄与する要素についても、考慮する能力を持っていることを確実にするとよい。 例えば、組織は、ライフサイクル、安全、健康、試験可能性、利便性、使い勝手の良さ、ディペンダビリティ、耐久性、人間工学、環境、製品の廃棄及び特定したリスクを考慮するとよい。
 管理者は、組織の製品及びプロセスの使用者にとっての、起こり得るリスクを特定し、緩和するための手順を踏むことを確実にすることにも責任がある。製品及びプロセスの不具合または失敗の可能性及び影響を評価するために、リスク評価を行なうとよい。評価の結果は、特定されたリスクを緩和するための予防処置を定め、実施するために使用するとよい。
 設計・開発におけるリスク評価のツールの例には、次の事項を含む。

− 設計の故障モード影響解析(FMEA)
− 故障の木解析(FTA)
− 信頼性予測
− 連関図
− シミュレーション技法

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7.3 設計・開発
7.3.1 設計・開発の計画

 組織は、製品の設計・開発の計画を策定し、管理すること。
 設計・開発の計画において、組織は次の事項を明確にすること。

a) 設計・開発の段階
b) 設計・開発の各段階に適したレビュー、検証及び妥当性確認
c) 設計・開発に関する責任及び権限

 組織は、効果的なコミュニケーションと責任の明確な割当てとを確実にするために、設計・開発に関与するグループ間のインタフェースを運営管理すること。
 設計・開発の進行に応じて、策定した計画を適宜更新すること。

7.3.2 設計・開発のインプット及びアウトプット

 組織は、顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とを満足するために、製品の設計・開発に影響する、プロセスへのインプットを特定し、効果的で効率的なプロセスのパフォーマンスを促進するとよい。組織に対する、これら外部のニーズと期待は、内部のニーズと期待とともに、設計・開発プロセスへのインプットの要求事項に変換するのに適したものとするとよい。
 次に例を示す。

a) 外部からのインプットの例
 − 顧客または市場のニーズと期待
 − その他の利害関係者のニーズと期待
 − 供給者の貢献
 − 製品の頑健な設計・開発を達成するための使用者からのインプット
 − 関連する法令・規制要求事項の変更箇所
 − 国際規格または国内規格
 − 業界の実施規約

b) 内部からのインプットの例
 − 方針及び目標
 − プロセスのアウトプットを受けとる人々を含む組織内の人々のニーズと期待
 − 技術の開発
 − 設計・開発を行なう人々に必要な力量に関する要求事項
 − 過去の経験からのフィードバック情報
 − 現存するプロセス及び製品の記録、並びにデータ
 − 他のプロセスからのアウトプット

c) プロセスまたは製品の安全で適切な機能と維持のためのかぎとなる特性を明確にするインプットの例
 − 運用、設置及び適用
 − 保管、取扱い及び引渡し
 − 物理的パラメータ及び環境
 − 製品の廃棄に関する要求事項

 インプットには、直接の顧客の場合と同じく、エンドユーザーのニーズと期待との評価に基づく製品関連のインプットが重要な場合がある。このようなインプットは、製品を効果的で効率よく検証し、妥当性確認ができるようにまとめるとよい。
 アウトプットには、計画された要求事項に対する検証及び妥当性確認を可能にする情報を含めるとよい。設計・開発のアウトプットの例には、次の事項を含む。

− プロセスのアウトプットに対してインプットを比較したことを実証するデータ
− 合否判定基準を含む製品仕様書
− プロセス仕様書
− 材料仕様書
− 試験仕様書
− 教育・訓練の要求事項
− 使用者及び顧客情報
− 購買要求事項
− 適格性確認試験の報告

 設計・開発のアウトプットは、アウトプットがプロセス及び製品に対する要求事項を効果的で効率よく満たしたことの客観的証拠を提供するために、インプットと対比してレビューするとよい。

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7.3.2 設計・開発へのインプット

 製品要求事項に関連するインプットを明確にし、記録を維持すること(4.2.4参照)。インプットには次の事項を含めること。

a) 機能及び性能に関する要求事項
b) 適用される法令・規制要求事項
c) 適用可能な場合は、以前の類似した設計から得られた情報
d) 設計・開発に不可欠なその他の要求事項

 これらのインプットについては、その適切性をレビューすること。要求事項は、漏れがなく、あいまい(曖昧)ではなく、かつ、相反することがないこと。

7.3.3 設計・開発からのアウトプット

 設計・開発からのアウトプットは、設計・開発へのインプットと対比した検証ができるような様式で提示されること。また、次の段階に進める前に、承認を受けること。
 設計・開発からのアウトプットは次の状態であること。

a) 設計・開発へのインプットで与えられた要求事項を満たす。
b) 購買、製造及びサービス提供に対して適切な情報を提供する。
c) 製品の合否判定基準を含むかまたはそれを参照している。
d) 安全な使用及び適正な使用に不可欠な製品の特性を明確にする。

7.3.3 設計・開発のレビュー

 トップマネジメントは、設計・開発の目標の達成を決定するために行なう体系的なレビューを運営管理し、指揮するために、適切な人々が任命されていることを確実にするとよい。これらのレビューは、設計・開発プロセスの終了時点及び選定した時点において行なってもよい。
 このようなレビューで検討すべき主題の例には、次の事項を含む。

− 設計・開発業務を行なうためのインプットの妥当性
− 計画された設計・開発プロセスの進捗状況
− 検証及び妥当性確認の到達目標の満足
− 製品が使用された場合の、起こり得る危険または故障モードの評価
− 製品のパフォーマンスに関するライフサイクルのデータ
− 設計・開発プロセスの変更及びその影響の管理
− 問題点の特定と修正
− 設計・開発プロセスの改善の機会
− 製品が環境に与える起こり得る影響

 適切な段階で、顧客及びプロセスのアウトプットを受け取る組織内の人々のニーズと期待とを満足するために、組織は、設計・開発プロセスはもちろん、そのアウトプットのレビューも行なうとよい。
 その他の利害関係者のニーズと期待とも同様に考慮するとよい。
 設計・開発プロセスのアウトプットに対する検証活動の例には、次の事項を含む。

− プロセスのアウトプットとインプットの要求事項との比較
− 設計・開発を代替の計算などで比較する方法
− 類似製品と対比した評価
− 特定のインプットの要求事項への適合をチェックするための試験、シミュレーション、または試行
− 過去のプロセス経験から得られた不適合や欠陥などの教訓と対比した評価

 設計・開発プロセスのアウトプットに対する妥当性確認は、顧客、供給者、組織内部の人々、及びその他の利害関係者にうまく受け入れられ、使用されるために重要である。
 影響を受ける関係者が参画すると、実際の使用者が次のような方法でアウトプットを評価することができるようになる。

− 実際の建設、据付けまたは適用に先立って行なうエンジニアリング設計の妥当性確認
− インストールまたは使用に先立って行なうソフトウェアのアウトプットの妥当性確認
− 一般に広く提供するのに先立って行なうサービスの妥当性確認

 設計・開発のアウトプットに対する部分的な妥当性確認は、そのアウトプットを将来適用する際に信頼感を提供するのに必要となる場合がある。
 設計・開発の方法及び決定事項のレビューを可能にするためには、検証及び妥当性確認の活動を通じて十分なデータを生成するとよい。
 方法のレビューには、次の事項を含むとよい。

− プロセス及び製品の改善
− アウトプットの利便性
− プロセス及びレビューの記録の妥当性
− 故障調査活動
− 設計・開発プロセスの将来のニーズ

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7.3.4 設計・開発のレビュー

 設計・開発の適切な段階において、次の事項を目的として、計画されたとおりに(7.3.1参照)体系的なレビューを行なうこと。

a) 設計・開発の結果が要求事項を満たせるかどうかを評価する。
b) 問題を明確にし、必要な処置を提案する。

 レビューへの参加者として、レビューの対象となっている設計・開発段階に関連する部門の代表が含まれていること。このレビューの結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

7.3.5 設計・開発の検証

 設計・開発からのアウトプットが、設計・開発へのインプットで与えられている要求事項を満たしていることを確実にするために、計画されたとおりに(7.3.1参照)検証を実施すること。この検証の結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

7.3.6 設計・開発の妥当性確認

 結果として得られる製品が、指定された用途または意図された用途に応じた要求事項を満たし得ることを確実にするために、計画した方法(7.3.1参照)に従って、設計・開発の妥当性確認を実施すること。実行可能な場合にはいつでも、製品の引渡しまたは提供の前に、妥当性確認を完了すること。妥当性確認の結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること。

7.3.7 設計・開発の変更管理

 設計・開発の変更を明確にし、記録を維持すること。変更に対して、レビュー、検証及び妥当性確認を適宜行ない、その変更を実施する前に承認すること。設計・開発の変更のレビューには、その変更が、製品を構成する要素及び既に引渡されている製品に及ぼす影響の評価を含めること。
 変更のレビューの結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

(参考)
“変更のレビュー”とは、変更に対して適宜行なわれたレビュー、検証及び妥当性確認のことである。

7.4 購買

7.4.1 購買プロセス

 組織のトップマネジメントは、購入製品が、利害関係者のニーズと要求事項とに加えて、組織のニーズと要求事項とを満たすために、購入製品の評価と管理のために、効果的で効率的な購買プロセスが定められ、実施されることを確実にするとよい。
 要求事項の伝達をできるだけ能率的にするために、供給者との電子的なつながりを使用することを考慮するとよい。
 管理者は、組織の効果的で効率的なパフォーマンスを確実なものにするために、購買プロセスで次のような活動が考慮されることを確実にするとよい。

− タイムリーな、効果的で正確なニーズと購入製品仕様書との明確化
− 製品の性能、価格、引渡しを考慮した、購入製品のコスト評価
− 購入製品の検証に対する組織のニーズ及び基準
− 供給者の独自プロセス
− 供給者とパートナとの取決めに対する契約管理の考慮
− 不適合な購入製品に対する保証交換
− 物流の要求事項
− 製品の識別とトレーサビリティ
− 製品の保存
− 記録を含む文書化
− 要求事項から逸脱した購入製品の管理
− 供給者の施設への立入り
− 製品の引渡し、設置または適用の履歴
− 供給者の開発
− 購入製品に関連したリスクの特定と緩和

 供給者のプロセスに対する要求事項と製品仕様書は、供給者の知識を活用するために、供給者も参加させて作成するとよい。組織は、組織の購入プロセスの有効性及び効率を改善するために、供給者の製品に関連する購入プロセスに供給者を参画させることもできる。このようにすることは組織の在庫表を管理し、利用できるようにするのにも役立つ
 組織は、購入製品の仕様書への適合を実証するために、購入製品の検証、コミュニケーション及び不適合への対応の記録に対するニーズを定めるとよい。

7.4.2 供給者を管理するプロセス

 組織は、購買プロセス全体の有効性及び効率を確実にするために、購入資材に関して可能性のある供給源を特定し、現存の供給者またはパートナを育成し、及び要求される製品を提供する実現能力を評価するための、効果的で効率的なプロセスを確立するとよい。
 供給者を管理するプロセスへのインプットの例には、次の事項を含む。

− 関連する経験の評価
− 競合者と比較した供給者のパフォーマンス
− 購入製品の品質、価格、引渡し実績及び問題への対応のレビュー
− 供給者のマネジメントシステムの監視、並びに供給者が要求されれた製品を効果的で効率よく及び期日内に提供するための潜在的な能力の評価
− 顧客満足についての供給者の参照文書及び入手可能なデータのチェック
− 供給及び協力の予定期間全体にわたって、供給者が存続可能であることを確認するための財務評価
− 引き合い、見積り及び入札に対する供給者の対応
− 供給者のサービス、設置及び支援能力、並びに要求事項に対する実績の履歴
− 関連する法令・規制要求事項に関する供給者の認識及びそれらの要求事項の遵守状況
− 所在地及び資源を含む供給者の物流能力
− 供給者に対する社会一般の評判及び地域社会における供給者の地位と役割

 管理者は、供給者に事故があっても、組織のパフォーマンスを維持し、利害関係者の満足を得るために、必要な行動を考慮するとよい。

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7.4 購買
7.4.1 購買プロセス

 組織は、規定された購買要求事項に、購買製品が適合することを確実にすること。供給者及び購買した製品に対する管理の方式と程度は、購買製品が、その後の製品実現のプロセスまたは最終製品に及ぼす影響に応じて定めること。
 組織は、供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として、供給者を評価し、選定すること。選定、評価及び再評価の基準を定めること。評価の結果の記録及び評価によって必要とされた処置があればその記録を維持すること(4.2.4参照)。

7.4.2 購買情報

 購買情報では購買製品に関する情報を明確にし、必要な場合には、次の事項に該当する事項を含めること。

a) 製品、手順、プロセス及び設備の承認に関する要求事項
b) 要員の適格性確認に関する要求事項
c) 品質マネジメントシステムに関する要求事項

 組織は、供給者に伝達する前に、規定した購買要求事項が妥当であることを確実にすること。

7.4.3 購買製品の検証

 組織は、購買製品が、規定した購買要求事項を満たしていることを確実にするために、必要な検査またはその他の活動を定めて、実施すること。
 組織またはその顧客が、供給者先で検証を実施することにした場合には、組織は、その検証の要領及び購買製品のリリース(出荷許可)の方法を購買情報の中に明確にすること。

7.5 製造及びサービス業務

7.5.1 運営及び実現

 トップマネジメントは、要求事項への適合及び利害関係者への便益の提供の両方を達成するために、単に実現のプロセスの管理に留まってない方がよい。これは、次の事項のような、実現のプロセス及び関連する支援のプロセスの有効性と効率との改善を通じて達成できることがある。

− 廃棄物の削減
− 人々の教育・訓練
− 情報の伝達及び記録
− 供給者の能力の育成
− インフラストラクチャーの改善
− 問題発生の防止
− 処理方法及びプロセスの産出高
− 監視方法

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7.5 製造及びサービス提供
7.5.1 製造及びサービス提供の管理

 組織は、サービス提供を計画し、管理された状態で実行すること。管理された状態には、該当する次の状態を含むこと。

a) 製品の特性を述べた情報が利用できる。
b) 必要に応じて、作業手順が利用できる。
c) 適切な設備を使用している。
d) 監視機器及び測定機器が利用でき、使用している。
e) 規定された監視及び測定が実施されている。
f) リリース(次工程への引渡し)、顧客への引渡し及び引渡し後の活動が規定されたとおりに実施されている。

7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認

 製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視または測定で検証することが不可能な場合には、組織は、その製造及びサービス提供に該当するプロセスの妥当性確認を行なうこと。これらのプロセスには、製品が使用され、またはサービスが提供されてからでしか不具合が顕在化しないようなプロセスが含まれる。
 妥当性確認によって、これらのプロセスが計画どおりの結果を出せることを実証すること。
 組織は、これらのプロセスについて、次の事項のうち適用できるものを含んだ手続きを確立すること。

a) プロセスのレビュー及び承認のための明確な基準
b) 設備の承認及び要員の適格性確認
c) 所定の方法及び手順の適用
d) 記録に関する要求事項(4.2.4参照)
e) 妥当性の再確認

7.5.2 識別及びトレーサビリティ

 組織は、改善に使用可能なデータを収集するために、識別及びトレーサビリティに対して、要求事項を越えるプロセスを確立することができる。
 識別及びトレーサビリティの必要性は、次の事項によって生じることがある。

− 構成部品を含む製品の状態
− プロセスの状態と実現能力
− マーケティングなどのパフォーマンスのデータのベンチマーキング
− 製品リコールの実現能力などの契約要求事項
− 関連する法令・規制要求事項
− 意図される使用または適用
− 危険物質
− 特定されたリスクの緩和

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7.5.3 識別及びトレーサビリティ

 必要な場合には、組織は、製品実現の全過程において適切な手段で製品を識別すること。
 組織は、監視及び測定の要求事項に関連して、製品の状態を識別すること。
 トレーサビリティが要求事項となっている場合には、組織は、製品について固有の識別を管理し、記録すること(4.2.4参照)。

(参考)
ある産業分野では、構成管理が識別及びトレーサビリティを維持する手段である。

7.5.3 顧客の所有物

 組織は、所有物の価値を保護するために、顧客及びその他の利害関係者が所有するもので、組織の管理下にある所有物及びその他の資産に関係する責任を明確にするとよい。このような所有物の例には、次の事項がある。

− 製品に含めるために支給される原料または構成要素
− 補修、保全または品質をよくするために支給される製品
− 顧客から直接支給される包装材
− 顧客の資材であって、保管のようなサービス業務で取り扱うもの
− 顧客の所有物の第三者への運搬のような、顧客の代理によって供給されるサービス
− 仕様書、設計図及び顧客の社内情報を含む顧客の知的所有権

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7.5.4 顧客の所有物

 組織は、顧客の所有物について、それが組織の管理下にある間、または組織がそれを使用している間は、注意を払うこと。組織は、使用するためまたは製品に組み込むために提供された顧客の所有物の識別、検証及び保護・防護を実施すること。 顧客の所有物を紛失、損傷した場合または使用には適さないと分かった場合には、顧客に報告し、記録を維持すること(4.2.4参照)。

(参考)
顧客の所有物には知的所有権も含まれる。

7.5.4 製品の保存

 管理者は、製品の組織内部における処理から最終引渡しまでの間、損傷、劣化または誤用を防ぐために製品の取扱い、包装、保管、保存及び引渡しに関するプロセスを定め、実施するとよい。管理者は、購入材料を保護するための効果的で効率的なプロセスを定め、実施する際に、供給者及びパートナを参画させるとよい。
 管理者は、製品の性質から生じる全ての特別な要求事項の必要性を考慮するとよい。特別な要求事項は、ソフトウェア、電子メディア、危険物質、サービス、設置及び適用のために専門の人々を必要とする製品、製品、若しくは材料であって唯一無二のもの、または代わりのないものに関連することがある。
 管理者は、製品の損傷、劣化または誤用を予防するために、製品のライフサイクル全体にわたって、製品を維持するのに必要な資源を明確にするとよい。組織は、製品が、ライフサイクル全体にわたって、意図した使用ができる状態を持続するために必要な資源及び方法について参画している利害関係者に情報を伝えるとよい。

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7.5.5 製品の保存

 組織は、内部処理から指定納入先への引渡しまでの間、製品を適合した状態のまま保存すること。この保存には、識別、取扱い、包装、保管及び保護を含めること。保存は、製品を構成する要素にも適用すること。

(参考)
内部処理とは、組織が運営管理している製品実現のプロセスにおける活動をいう。

7.6 測定及び監視用の機器・道具の管理

 管理者は、顧客及びその他の利害関係者の満足を確実にするために、製品及びプロセスの検証と妥当性確認とに使用する方法及び機器・道具を含めて、効果的で効率的な測定及び監視のプロセスを定めて、実施するとよい。これらのプロセスには、調査、シミュレーション、並びにその他の測定及び監視の活動を含む。
 測定及び監視のプロセスには、得られたデータの信頼性を与えるように、機器・道具の状態を特定する方法とともにこれらが使用に適しており、適切な正確さ及び容認された標準にあわせて維持されていることの確認を含めるとよい。
 組織は、測定及び監視の機器・道具の管理に対する必要性を最小にして、利害関係者のために付加価値を高めるために、プロセスのアウトプットの検証プロセスから生じる起こり得る誤りを排除するための、“フールプルーフ”などのような手段を考慮するとよい。

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7.6 監視機器及び測定機器の管理

 定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために、組織は、実施すべき監視及び測定を明確にすること。また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にすること(7.2.1参照)。
 組織は、監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できることを確実にするプロセスを確立すること。
 測定値の正当性が保証されなければならない場合には、測定機器に関し、次の事項を満たすこと。

a) 定められた間隔または使用前に、国際または国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして校正または検証する。そのような標準が存在しない場合には、校正または検証に用いた標準を記録する。
b) 機器の調整をする、または必要に応じて再調整する。
c) 校正の状態が明確にできる識別をする。
d) 測定した結果が無効になるような操作ができないようにする。
e) 取扱い、保守、保管において、損傷及び劣化しないように保護する。

 さらに、測定機器が要求事項に適合していないことが判明した場合には、組織は、その測定機器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し、記録すること。組織は、その機器及び影響を受けた製品に対して、適切な処置をとること。校正及び検証の結果の記録を維持すること(4.2.4参照)。
 規定要求事項に関わる監視及び測定にコンピュータソフトウェアを使う場合には、そのコンピュータソフトウェアによって意図した監視及び測定ができることを確認すること。この確認は、最初に使用するのに先立って実施すること。また、必要に応じて再確認すること。

(参考)
ISO10012-1(Quality assurance requirements for measuring equipment - Part1:Metrological confirmation system for measuring equipment)及びISO10012-2(Quality assurance for measuring equipment - Part2:Guidelines for control of measurement processes)を参照。

8. 測定、分析及び改善

8.1 共通の手引

8.1.1 序文

 測定データは、事実に基づいて決定を下すために重要である。
 トップマネジメントは、組織のパフォーマンス及び利害関係者の満足を確実にするために、効果的で効率的な測定、データの収集、及びデータの妥当性確認を確実にするとよい。これには、組織の価値を高めることを確実にするために、測定の妥当性及び目的、並びにデータの意図した使用のレビューを含めるとよい。
 組織におけるプロセスのパフォーマンス測定の例には、次の事項を含む。

− その製品の測定と評価
− プロセスの能力
− プロジェクト目標の達成
− 顧客及びその他の利害関係者の満足

 組織は、将来の改善のためのデータを備えるために、パフォーマンス改善の行動を継続的に監視し、実施の記録を残すとよい。
 改善活動から得たデータの分析結果は、組織のパフォーマンス改善のための情報として、マネジメントレビューへのインプットの一部とするとよい。

8.1.2 考慮すべき課題

 測定、分析及び改善には、次の事項を考慮することを含む。

a) 測定データは、組織の便益となるような情報と知識とに変換するとよい。
b) 製品とプロセスの測定、分析及び改善は、組織の適切な優先順位を確立するために使用するとよい。
c) 組織が用いる測定方法は定期的に見直すとよい。また、データは継続的にその正確さ及び完全さを検証するとよい。
d) プロセスの有効性と効率とを改善するためのツールとして、個別のプロセスについてベンチマーキングを行なうとよい。
e) 顧客満足度の測定は、組織のパフォーマンスを評価する上で極めて重要なものとして考慮するとよい。
f) 測定の利用、並びに得た情報の生成及び伝達は、組織にとって不可欠なものであり、パフォーマンスの改善及び利害関係者の参画の基礎とするよい。このような情報は、最新のものであるとよい、また、その目的は明確に定めるとよい。
g) 測定の分析結果から得た情報を適切なツールを用いて伝達するとよい。
h) 情報がタイムリーに、明瞭に理解されているかを決定するために、利害関係者とのコミュニケーションの有効性及び効率を測定するとよい。
i) プロセス及び製品のパフォーマンスの基準が満たされている場合でも、検討対象の本来の特性を更によく理解するためには、パフォーマンスのデータを監視し、分析することが有意義なことがある。
j) 適切な統計的または他の手法を使用することは、プロセス及び測定の変動の両方を理解するのに役立つ。そうすることによって、プロセスと製品のパフォーマンスとを改善することができる。
k) 自己評価は、パフォーマンス改善の機会を定めるとともに、品質マネジメントシステムの成熟度及び組織のパフォーマンスの水準を定期的に評価するために、考慮するとよい(附属書A参照)。

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8. 測定、分析及び改善
8.1 一般

 組織は、次の事項のために必要となる監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施すること。

a) 製品の適合性を実証する。
b) 品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。
c) 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。

 これには、統計的手法を含め、適用可能な方法、及びその使用の程度を決定することを含めること。

8.2 測定及び監視

8.2.1 システムのパフォーマンスの測定及び監視

8.2.1.1 共通

 トップマネジメントは、品質マネジメントシステムのパフォーマンスの改善すべき領域を特定するために、効果的で効率的な方法が使用されることを確実にするとよい。

 この方法の例には、次の事項を含む。

− 顧客及びその他の利害関係者の満足度の調査
− 内部監査
− 財務的な測定
− 自己評価

8.2.1.2 顧客満足度の測定及び監視

 顧客満足度の測定及び監視は、顧客関連情報のレビューに基づいている。そのような情報の収集は、能動的でも受動的でもよい。管理者は、顧客関連の情報源が多数あることを認識するとよい、また、この情報を組織のパフォーマンス改善のために、効果的で効率よく収集し、分析し、活用するプロセスを確立するとよい。 組織は、書面・口頭で入手可能な顧客情報及びエンドユーザー情報の内部・外部の出所を特定するとよい。顧客関連情報の例には、次の事項を含む。

− 顧客調査及び使用者調査
− 製品についての種々の見地のフィードバック
− 顧客要求事項及び契約情報
− 市場のニーズ
− サービス提供のデータ
− 競争に関する情報

 管理者は、顧客満足度の測定を極めて重要なツールとして使用するとよい。顧客満足度のフィードバックを要請し、測定し、監視するための組織のプロセスは、情報を継続的に提供すべきである。
 このプロセスでは、製品の価格及び納期と同様に、要求事項への適合、顧客のニーズと期待とを満たすことを考慮するとよい。
 組織は、将来のニーズを予測するために、顧客満足に関する情報源を確立して利用するとよい。また、顧客と協力するとよい。組織は、“顧客の声”を効果的で効率よく入手するためのプロセスを計画し、確立するとよい。 これらのプロセスの計画は、情報源、収集の頻度を含むデータ収集方法及びデータ分析のレビューを定め、実施するとよい。顧客満足の情報源の例には、次の事項を含む。

− 顧客の苦情
− 顧客との直接のコミュニケーション
− アンケート及び調査
− 外注によるデータの収集及び分析
− 課題検討グループ
− 消費者団体からの報告書
− 各種マスメディアからの報道
− 分野及び業界の調査

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8.2 監視及び測定
8.2.1 顧客満足

 組織は、品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定の1つとして、顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視すること。この情報の入手及び使用の方法を決めること。

8.2.1.3 内部監査

 トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの長所及び短所を評価するための効果的で効率的な内部監査プロセスの確立を確実にするとよい。内部監査プロセスは、指定されたプロセスまたは活動について独立して評価を行なうためのマネジメントツールとして機能を発揮する。 内部監査は組織の有効性と効率とを評価するものであり、内部監査プロセスは、現存する要求事項が満たされていることの客観的証拠を得るために使用する独立したツールを提供する。
 内部監査の結果に対応する改善の処置がとられることを管理者が確実にすることが重要である。内部監査に関する計画は、監査中に得られた指摘及び客観的証拠に基づいて、重点を変えることができるように柔軟にするとよい。監査される領域からの適切なインプットは、その他の利害関係者からのインプットと同様に、内部監査計画の策定に際して考慮するとよい。
 内部監査において考慮すべき主題の例には、次の事項を含む。

− プロセスの効果的で効率的な実施
− 継続的改善の機会
− プロセスの能力
− 統計的手法の効果的で効率的な利用
− 情報技術の利用
− 品質コストのデータの分析
− 資源の効果的で効率的な使用
− プロセス及び製品のパフォーマンスの結果と期待
− パフォーマンス測定の妥当性と正確さ
− 改善の活動
− 利害関係者との関係

 内部監査の報告には、管理者が功を認める機会及び人々の意識を高揚する機会を提供するために、時には優秀なパフォーマンスの実例を含める。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
8.2.2 内部監査

 組織は、品質マネジメントシステムの次の事項が満たされているか否かを明確にするために、あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施すること。

a) 品質マネジメントシステムが、個別製品の実現の計画(7.1参照)に適合しているか、この規格の要求事項に適合しているか、及び組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項に適合しているか。
b) 品質マネジメントシステムが効果的に実施され、維持されているか。

 組織は、監査の対象となるプロセス及び領域の状態と重要性、並びにこれまでの監査結果を考慮して、監査プログラムを策定すること。監査の基準、範囲、頻度及び方法を規定すること。 監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観性及び公平性を確保すること。監査員は自らの仕事は監査しないこと。
 監査の計画及び実施、結果の報告、記録の維持(4.2.4参照)に関する責任、並びに要求事項を“文書化された手順”の中で規定すること。
 監査された領域に責任を持つ管理者は、発見された不適合及びその原因を除去するために遅滞なく処置がとられることを確実にすること。フォローアップには、とられた処置の検証及び検証結果の報告を含めること(8.5.2参照)。

(参考)
JIS Z 9911-1(品質システムの監査の指針−第1部:監査)、JIS Z 9911-2(品質システムの監査の指針−第2部:品質システム監査員の資格基準)及びJIS Z 9911-3(品質システムの監査の指針−第3部:監査プログラムの管理)を参照。

8.2.1.4 財務的測定

 管理者は、プロセスを横断的に比較することが可能な測定法を準備し、また、組織の有効性及び効率の改善を促進するために、プロセスから得るデータを財務情報に変換することを考慮するとよい。
 財務的測定法の例には、次の事項を含む。

− 予防コスト及び評価コストの分析
− 不適合コストの分析
− 内部及び外部での失敗コストの分析
− ライフサイクルコストの分析

8.2.1.5 自己評価

 トップマネジメントは、自己評価を確立し、実施することを考慮するとよい。これは、通常、組織自体の管理者によって実施される慎重な評価行為であり、結果として、組織の有効性及び効率、並びに品質マネジメントシステムの成熟度に関して、管理者が意見を持ち、判断することができるようになる。 これは、組織が、自らのパフォーマンスを外部組織及び世界水準のパフォーマンスと比較してベンチマーキングを行なうことに利用できる。組織の内部監査プロセスは、品質マネジメントシステムの有効性と効率とを評価するものであり、現行の方針、手順または要求事項が満たされていることの客観的証拠を得るために使用される独立した監査であるのに対して、自己評価は組織がパフォーマンス改善の評価を行なう手助けにもなる。
 自己評価の範囲と深さは、組織の目標及び優先順位に関連して計画するとよい。附属書Aに述べた自己評価のアプローチは、組織の品質マネジメントシステムの有効性及び効率の程度を決定することに焦点を合わせている。
 附属書Aに示した自己評価のアプローチを用いた場合の利点のいくつかは、次の事項である。

− 単純で理解しやすい。
− 使いやすい。
− 使用する経営資源に与える影響が最小限である。
− 組織の品質マネジメントシステムのパフォーマンスを向上させるためのインプットを提供する。

 附属書Aは、自己評価の一例に過ぎない。
 自己評価を、内部品質監査または外部品質監査に替わるものと考えない方がよい。
 附属書Aに述べたアプローチを使用すると、組織のパフォーマンス及び品質マネジメントシステムの成熟の程度に関する全体像を、管理者に提供することができる。それはまた、パフォーマンスの改善を必要とする組織の領域を特定し、優先順位を決定する手助けと成るインプットを提供することができる。

8.2.2 プロセスの測定及び監視

 組織は、プロセスのパフォーマンスを評価するために、測定の方法を明確にし、実行するとよい。組織は、これらの測定をプロセスに組込み、プロセスの運営管理の測定に利用するとよい。
 測定は、組織のビジョン及び戦略目標に従って、ブレークスループロジェクトはもちろん、日々の運営の運営管理のために、また、地道なまたは実行している継続的改善に適していると思われるプロセスの評価のためにも利用するとよい。
 プロセスのパフォーマンスの測定は、均衡のとれた仕方で、利害関係者のニーズと期待とをカバーするとよい。例には次の事項を含む。

− 能力
− 反応時間
− サイクルタイムまたは処理量
− ディペンダビリティの測定可能な側面
− 産出高
− 組織の人々の有効性及び効率
− 技術の活用
− 浪費の削減
− コストの配分及び削減

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8.2.3 プロセスの監視及び測定

 組織は、品質マネジメントシステムのプロセスを適切な方法で監視し、適用可能な場合には、測定をすること。これらの方法は、プロセスが計画どおりの結果を達成する能力があることを実証するものであること。計画どおりの結果が達成できない場合には、製品の適合性の保証のために、適宜、修正及び是正処置をとること。

8.2.3 製品の測定及び監視

 組織は、その製品に対する測定要求事項(これには合否判定基準を含む。)を確立し、明示するとよい。製品の測定は、利害関係者の要求事項が達成されていて、実現のプロセスの改善のために使用されていることを検証するために、計画し、実施するとよい。
 組織は、製品が要求事項に適合することを確実にするために、製品の測定方法を選定する場合、また、顧客のニーズと期待とを考慮する場合には、次の事項を考慮するとよい。

a) 測定の形式を決定することになる製品特性の種類、適切な測定手段、要求される正確さ、必要な技量
b) 要求される設備、ソフトウェア及びツール
c) 実現のプロセスのつながりの中での適切な測定点の位置
d) 各点で測定すべき特性、使用する文書類及び合否判定基準
e) 顧客が、選定した製品の特性について、立会いまたは検証のために設定した事項
f) 法令・規制関係当局によって、立会いまたは実施することが要求されている検査または試験
g) 組織が意図する、または顧客若しくは法令・規制関係当局が要求する有資格の第三者機関に依頼すべき次の事項の実施の場所、時期及び方法
 − 型式試験
 − 工程内の検査または試験
 − 製品の検証
 − 製品の妥当性確認
 − 製品の承認
h) 人々、材料、製品、プロセス、及び品質マネジメントシステムの承認
i) 検証及び妥当性確認の活動が完了し、合格していることを確認するための最終検査
j) 製品の測定結果の記録

 組織は、パフォーマンスの改善の機会を考慮するために、製品の測定に用いる方法及び計画された検証記録のレビューを行なうべきである。パフォーマンスの改善のために考慮できる製品の測定記録の代表例には、次の事項を含む。

− 検査及び試験の報告書
− 材料出庫通知
− 製品の合格書式
− 要求がある場合、適合性の証明書

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8.2.4 製品の監視及び測定

 組織は、製品要求事項が満たされていることを検証するために、製品の特性を監視し、測定すること。監視及び測定は、個別製品の実現の計画(7.1参照)に従って、製品実現の適切な段階で実施すること。
 合否判定基準への適合の証拠を維持すること。記録には、製品のリリース(次工程への引渡しまたは出荷)を正式に許可した人を明記すること(4.2.4)。
 個別製品の実現の計画(7.1参照)で決めたことが問題なく完了するまでは、製品のリリース(出荷)及びサービスの提供は行なわないこと。ただし、当該の権限を持つ者が承認したとき、及び該当する場合に顧客が承認したときは、この限りではない。

8.2.4 利害関係者の満足度の測定及び監視

 組織は、資源の配分の均衡を保たせるために、利害関係者(顧客を除く)のニーズに応じるために必要な、組織のプロセスに関連する測定情報を特定するとよい。このような情報には、社会はもちろん、組織内の人々、オーナ及び投資家、供給者、並びにパートナに関係する測定も含めるとよい。
 測定の例には次の事項がある。

a) 組織は、組織内の人々に対して、
 − 人々のニーズと期待とがどれほどよく満たされているかを知るために、人々の意見を調査するとよい。
 − 個人及び集団としてのパフォーマンス、並びに組織の成果に対する貢献を評価するとよい。
b) 組織は、オーナ及び投資家に対して、
 − 定められた目標を達成する組織の能力を評価するとよい。
 − 財務実績を評価するとよい。
 − 外部要因が成果に与える影響を評価するとよい。
 − 実施した行動が寄与した価値を明確にするとよい。
c) 組織は、供給者及びパートナに対して、
 − 組織の購買プロセスに対する供給者及びパートナの満足に関する意見を調査するとよい。
 − 供給者及びパートナのパフォーマンス、並びに組織の購買方針に対する供給者及びパートナの適合状況を監視し、フィードバックを行なうとよい。
 − 購入製品の品質、供給者及びパートナの貢献、並びにこの関係から得た相互の便益を評価するとよい。
d) 組織は、社会に対して、
 − 社会との良好な相互作用を達成するために、その目標に関連する適切なデータを定め、観察するとよい。
 − 組織の行動の有効性及び効率、並びに社会の適切な関係者による、その実績の受けとめ方を定期的に評価するとよい。

8.3 不適合の管理

8.3.1 共通

 トップマネジメントは、不適合のタイムリーな検出及び処置を確実にするために、組織の人々に、プロセスのいかなる段階においても不適合を報告する権限と責任を与えるとよい。また、プロセス及び製品の要求事項の達成を維持するために、不適合に対応する権限を定めるとよい。組織は、誤使用を防ぐために、不適合製品の識別、隔離及び処置を効果的で効率よく管理するとよい。
 不適合は、実際に役立つ限り、経験から学ぶことを支援するために、並びに分析及び改善の活動へのデータを提供するために、その処置とともに、記録するとよい。組織は、製品実現のプロセス及び支援のプロセスの両方の不適合を記録し、管理すべきことを決定してもよい。
 組織は、通常の作業過程で修正された不適合の情報を記録することを考慮することもできる。このようなデータは、プロセスの有効性及び効率の改善にとって価値のある情報を提供することがある。

8.3.2 不適合のレビュー及び処置

 組織の管理者は、特定された不適合のレビュー及び処置に備えて効果的で効率的なプロセスの確立を確実にするとよい。不適合のレビューは、注目すべき発生の傾向または類型が存在するか否かを決定する権限を与えられた人々が行なうとよい。否定的な傾向は、改善を考慮し、また、削減の達成目標及び必要な資源を考慮する場であるマネジメントレビューへのインプットとして考慮するとよい。
 レビューを行なう人々は、不適合の全体的影響を評価できる力量を備えているとよい。また、不適合の処置と適切な是正処置とを定める権限及び資源を与えられるとよい。不適合の処置を容認することは、顧客の契約要求事項、またはその他の利害関係者の要求事項となることがある。

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8.3 不適合製品の管理

 組織は、製品要求事項に適合しない製品が誤って使用されたり、または引き渡されることを防ぐために、それらを識別し、管理することを確実にすること。不適合製品の処理に関する管理及びそれに関連する責任及び権限を“文書化された手順”に規定すること。
 組織は、次のいずれかの方法で、不適合製品を処理すること。

a) 発見された不適合を除去するための処置をとる。
b) 当該の権限を持つ者、及び該当する場合に顧客が、特別採用によって、その使用、リリース(次工程への引渡し)若しくは出荷、または合格と判定することを正式に許可する。
c) 本来の意図された使用または適用ができないような処置をとる。

(参考)
 “c) 本来の意図された使用または適用ができないような処置をとる”とは“廃棄すること”を含む。
 不適合の性質の記録及び、不適合に対してとられた特別採用を含む処置の記録を維持すること(4.2.4参照)。
 不適合製品に修正を施した場合には、要求事項への適合性を実証するための再検証を行なうこと。
 引渡しまたは使用開始後に不適合製品が検出された場合には、組織は、その不適合による影響または起こり得る影響に対して適切な処置をとること。

8.4 データの分析

 意思決定は、この規格に記述されているように、収集した測定結果及び情報から得たデータの分析に基づいて行なうとよい。組織は、この意味において、計画、目標及びその他の定められた到達目標に照らして実績を評価するために、並びに利害関係者に対するできる限りの便益を含む、改善すべき領域を特定するために、その種々の情報源からのデータを分析するとよい。
 事実に基づく意思決定には、次の事項のような効果的で効率的な行動が必要である。

− 妥当な分析方法
− 適切な統計的手法
− 経験と直感とを踏まえて、論理的な分析結果に基づいた意思決定及び行動

 データの分析は、現存するまたは起こり得る問題の根本原因を決定し、それによって、改善のために必要な是正処置及び予防処置に関する決定を導くのに役立つことがある。
 管理者が組織の総合的パフォーマンスを効果的に評価するためには、組織の全ての部分から集まる情報やデータを統合し、分析するとよい。組織の全体的パフォーマンスは、組織の異なる階層に対し、それぞれに適した様式で提示するとよい。この分析の結果は、組織が次の事項を決定するために利用することができる。

− 傾向
− 顧客満足度
− その他の利害関係者の満足度
− 組織のプロセスの有効性及び効率
− 供給者の貢献
− 組織のパフォーマンスの改善目標の成果
− 品質、財務及び市場関連の実績についての経済性の検討
− 組織のパフォーマンスのベンチマーキング
− 競争力

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8.4 データの分析

 組織は、品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するために、また、品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために適切なデータを明確にし、それらのデータを収集し、分析すること。この中には、監視及び測定の結果から得られたデータ及びそれ以外の該当する情報源からのデータを含めること。
 データの分析によって、次の事項に関連する情報を提供すること。

a) 顧客満足(8.2.1参照)
b) 製品要求事項への適合性(7.2.1参照)
c) 予防処置の機会を得ることを含む、プロセスと製品の特性及び傾向
d) 供給者

8.5 改善

8.5.1 共通

 管理者は、問題の発生によって改善の機会が現れるのを待つよりも、組織のプロセスの効果的で効率的な改善を継続的に追求するとよい。改善の方法には、地道で、たゆまぬ継続的改善から戦略的なブレークスルー改善プロジェクトの範囲までがあり得る。組織は改善活動を明確にし、運営管理するためのプロセスを備えておくとよい。 これらの改善は、製品またはプロセスの変更に留まらず、品質マネジメントシステムまたは組織に関わる変更という結果をもたらすことがある。

JIS Q 9001:2000 品質マネジメントシステム−要求事項
8.5 改善
8.5.1 継続的改善

 組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネジメントレビューを通じて、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。

8.5.2 是正処置

 トップマネジメントは、是正処置が改善のためのツールとして使用されることを確実にするとよい。是正処置の計画は、問題の重要性の評価を含むとよい。あわせて運営コスト、不適合のコスト、製品のパフォーマンス、ディペンダビリティ、並びに顧客及びその他の利害関係者の安全と満足のような側面に与えて、起こり得る影響という観点で行なうとよい。 是正処置のプロセスには、関係する部門の人々が参加するとよい。行動をとる場合には、プロセスの有効性及び効率を重要視するとよい。また、望まれる到達目標が達成されることを確実にするために、行動を監視するとよい。是正処置をマネジメントレビューに含めることを考慮するとよい。
 是正処置を追求する場合、組織は情報源を明確にし、是正処置を定めるのに必要な情報を収集するとよい。定められた是正処置は、再発を避けるために不適合の原因の除去に焦点を合わせるとよい。是正処置を考慮するための情報源の例には次の事項を含む。

− 顧客の苦情
− 不適合報告書
− 内部監査報告書
− マネジメントレビューからのアウトプット
− データ分析からのアウトプット
− 満足度の測定からのアウトプット
− 品質マネジメントシステムの該当する記録
− 組織の人々
− プロセスの測定結果
− 自己評価の結果

 不適合の原因を決定するには、個人で行なうまたは是正処置プロジェクトチームに割当てて行なう分析を含む、多くの方法がある。組織は、検討されている問題の影響度と是正処置のための投資を均衡させるとよい。
 組織は、不適合が再発しないことを確実にするための処置の必要性を評価する場合、是正処置プロジェクトに配属される人々に適切な教育・訓練を与えることを考慮するとよい。
 組織は、必要に応じて、是正処置プロセスに根本原因の分析を組み入れるとよい。根本原因の分析結果は、是正処置を定め、開始する前に、試験によって検証するとよい。

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8.5.2 是正処置

 組織は、再発防止のため、不適合の原因を除去する処置をとること。是正処置は、発見された不適合の持つ影響に見合うものであること。
 次の事項に関する要求事項を規定するために“文書化された手順”を確立すること。

a) 不適合(顧客からの苦情を含む)の内容確認
b) 不適合の原因の特定
c) 不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価
d) 必要な処置の決定及び実行
e) とった処置の結果の記録(4.2.4参照)
f) 是正処置において実施した活動のレビュー

(参考)
f)における“是正処置において実施した活動”とは、a)〜e)の一連の活動のことである。

8.5.3 損失防止

 管理者は、プロセス及び製品のパフォーマンスを維持するために、組織にとっての損失の影響の緩和策を計画するとよい。損失防止の計画は、利害関係者の満足を確実にするために、実現及び支援のプロセス、活動、並びに製品に適用可能なものにするとよい。
 効果的で効率的であるためには、損失防止の計画は体系的に行なうとよい。これは、定量的なデータを生成するために、傾向に関する過去のデータの評価、並びに組織及びその製品のパフォーマンスに関する重大性の評価を含んだ妥当な方法から得られるデータに基づくとよい。データは、次の事項から得られる。

− 故障モードと影響解析などのリスク分析のツールの利用
− 顧客のニーズと期待とのレビュー
− 市場分析
− マネジメントレビューのアウトプット
− データ分析からのアウトプット
− 満足度の測定結果
− プロセスの測定結果
− 利害関係者からの情報源を統合するシステム
− 品質マネジメントシステムの該当する記録
− 過去の経験から得た教訓
− 自己評価の結果
− 管理外れに近づいている操作条件の早期警戒情報を提供するプロセス

 このようなデータは、利害関係者のニーズと期待とを満足するために、損失防止、並びに個々のプロセス及び製品に対する適切な順位付けについて、効果的で効率的な計画を開発するための情報を提供するであろう。
 損失防止の計画の有効性と効率とに関する評価の結果は、マネジメントレビューのアウトプットとし、計画の修正のインプットとして利用し、また、改善プロセスのインプットとして利用するとよい。

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8.5.3 予防処置

 組織は、起こり得る不適合が発生することを防止するために、その原因を除去する処置を決めること。予防処置は、起こり得る問題の影響に見合ったものであること。
 次の事項に関する要求事項を規定するために“文書化された手順”を確立すること。

a) 起こり得る不適合及びその原因の特定
b) 不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価
c) 必要な処置の決定及び実施
d) とった処置の結果の記録(4.2.4参照)
e) 予防処置において実施した活動のレビュー

(参考)
e)における“予防処置において実施した活動”とは、a)〜d)の一連の活動のことである。

8.5.4 組織の継続的改善

 管理者は、組織の将来及び利害関係者の満足を確実なものにするのを援助するために、プロセス、活動及び製品のパフォーマンスを改善する機会を積極的に追求することに、人々を参画させる文化を創出するとよい。
 トップマネジメントは、人々を参画させるために、人々に権限を委譲し、人々が組織のパフォーマンスを改善できる機会を特定するための権限を得て、その責任を受け入れる環境を創出するとよい。これは、次の事項のような活動によって達成が可能である。

− 人々、プロジェクト及び組織に対する目標の設定
− 競合者のパフォーマンス及びベストプラクティスに対するベンチマーキング
− 改善達成に対する表彰と報奨
− 管理者のタイムリーな反応を含んだ提案制度

 トップマネジメントは、改善活動のための仕組みを提供するために、実現及び支援のプロセス、並びに活動に適用できる継続的改善のためのプロセスを定めて、実施するとよい。改善プロセスの有効性と効率とを確実にするために、実現及び支援のプロセスについて次の事項のような点を考慮するとよい。

− 有効性(例えば、要求事項を満足するアウトプット)
− 効率(例えば、単位量当たりの資源で、時間及び金銭に換算したもの)
− 外部からの影響(例えば、法令・規制要求事項)
− 潜在的な弱点(例えば、実現能力及び整合性の欠如)
− より良い方法を採用する機会
− 計画された及び計画されていない変更の管理
− 計画された便益の測定

 継続的改善に対するこのようなプロセスは、顧客及びその他の利害関係者の満足度を改善するためのツールとしてはもちろん、組織内部の有効性と効率とを改善するためのツールとして利用するとよい。
 管理者は、組織及びその他の利害関係者が最大の便益を得るように、ブレークスルーの機会と同様に、現存のプロセスに結びついた地道な、実行している活動という形態の改善を支援するよい。
 改善プロセスを支援するインプットの例には、次の事項から得られる情報を含む。

− 妥当性確認のデータ
− プロセスの産出高のデータ
− 試験のデータ
− 自己評価から得られるデータ
− 利害関係者の、明示された要求事項及びフィードバック
− 組織内の人々の経験
− 財務データ
− 製品の出来栄えに関するデータ
− サービス提供のデータ

 管理者は、利害関係者の要求事項を満足して、組織の実現能力を越えないようにするために、製品またはプロセスの変更が、承認され、優先的に扱われ、計画され、必要なものが供給され、管理されることを確実にするとよい。
 組織が変更すべき継続的なプロセス改善を紹介するプロセスを附属書Bに示す。

附属書A(参考) 自己評価のための指針

A.1 序文

 自己評価は、注意深く考慮された一種の評価であり、その結果は、組織の有効性及び効率、並びに品質マネジメントシステムの成熟度に関する意見または判断につながる。自己評価は、通常、組織自体の管理者が実施する。自己評価が意図するところは、改善のための資源をどこへ投資するかという点に関し、組織に対して、事実に基づいた手引きを提供することである。
 自己評価は、また、目標に対する進捗の測定、及びこれらの目標が継続して妥当なものかを再評価することに利用できる。
 品質マネジメントシステムの基準に対して、組織が自己を評価するためのモデルが、現在では数多く存在する。最も広く認められ、用いられているモデルは、国家または地域の品質賞のモデルであり、卓越した組織のモデルとしても引き合いに出されている。
 この附属書に記述してある自己評価のアプローチは、組織の品質マネジメントシステムの相対的な成熟の程度を決定し、改善の主要領域を特定するための、簡単で使いやすいアプローチを提供しようとするものである。
 JIS Q 9004(品質マネジメントシステム−パフォーマンス改善の指針)の自己評価のアプローチの具体的な特徴は、次の事項へ適用できることである。

− 品質マネジメントシステム全体、その一部またはいかなるプロセスにも適用できる。
− 組織全体またはその一部に適用できる。
− 内部の資源を用いて迅速に完了できる。
− トップマネジメントの支援のもとに、組織内の種々の部門からなるチームまたは一個人で完了できる。
− より包括的なマネジメントシステムの自己評価のプロセスのインプットにできる。
− 改善の機会の優先権を明確にし、促進できる。
− 世界クラスのパフォーマンスに向けて、品質マネジメントシステムの成熟を促進できる。

 JIS Q 9004の自己評価のアプローチは、品質マネジメントシステムの成熟度をJIS Q 9004の各主要条項に対して、1(正式なシステムが存在しない)から5(クラス最高のパフォーマンス)の段階で評価できる。この附属書は、JIS Q 9004の各主要条項に対するパフォーマンスを評価するために、組織が行うことができる代表的な質問という形で手引きを提供する。 このアプローチのもう1つの利点は、一定時間内の監視の結果が、組織の成熟度を評価することに利用できることである。
 自己評価へのこのアプローチは、品質マネジメントシステムの内部監査に替わるものではなく、現存する品質賞のモデル利用に替わるものでもない。

A.2 パフォーマンスの成熟度のレベル

 この自己評価のアプローチで用いるパフォーマンスの成熟度のレベルを附属書表A.1に示す。

附属書表A.1 パフォーマンスの成熟度のレベル
成熟度の
レベル
パフォーマンスのレベル 手引
1 正式なアプローチがない。 体系的なアプローチが明確でない、成果がない、不満足な成果、または成果が予測できない。
2 受動的なアプローチ 問題または是正に基づいた体系的なアプローチ。改善の成果に関して最小限のデータがある。
3 安定した正式なシステムアプローチ 体系的なプロセスに基づいたアプローチ、体系的な改善の初期段階。目標に対する適合に関するデータがあり、改善の傾向がみられる。
4 継続的改善を強調している 改善プロセスを用いている。好成果が出ており、改善傾向を持続している。
5 クラス最高のパフォーマンス しっかり統合した改善プロセスがある。クラス最高の、ベンチマーキングの成果が実証されている。

A.3 自己評価の質問項目

 品質賞のモデルには、他の自己評価モデルと同様に、マネジメントシステムのパフォーマンスを評価するため、広い範囲にわたって詳細な基準がある。自己評価は、本体の4.〜8.に基づき、組織の成熟度を評価するための容易なアプローチを提供している。各組織は、本体の4.〜8.に対して、そのニーズにあった質問を作成するとよい。 自己評価のための代表的な質問を次の事項に示す。また、対応する本体の項目番号を括弧内に示す。

質問1. システム及びプロセスの運営管理(4.1)

a) 管理者は、効果的で効率的なプロセスの管理を達成し、結果としてパフォーマンスの改善につながるプロセスアプローチをどのように適用しているか。

質問2. 文書化(4.2)

a) 文書類と記録を、組織のプロセスにおける効果的で効率的な運営を支援するために、どれだけ利用しているか。

質問3. 経営者・管理者の責任−一般指針(5.1)

a) トップマネジメントは、そのリーダーシップ、コミットメント、及び参画をどのように実証しているか。

質問4. 利害関係者のニーズ及び期待(5.2)

a) 組織は、顧客のニーズと期待とをどのようにして継続的に明確にしているか。
b) 組織は、功績を認めること、仕事の満足、力量及び自己啓発に対する人々のニーズをどのようにして明確にしているか。
c) 組織は、その供給者とのパートナシップを確立することによる潜在的な便益をどのように考慮しているか。
d) 組織は、目標設定につながり得る、その他の利害関係者のニーズと期待とをどのように明確にしているか。
e) 組織は、法令・規制要求事項が考慮されていることを、どのように確実にしているか。

質問5. 品質方針(5.3)

a) 品質方針は、顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とが理解されていることを、どれだけ確実にしているか。
b) 品質方針が、目に見えて期待される改善に結びついているか。
c) 品質方針は、組織の将来のビジョンを、どれだけ考慮しているか。

質問6. 計画(5.4)

a) 目標は、品質方針をどれだけ測定可能な到達目標に反映しているか。
b) 目標達成への個人の貢献を保証するために、各階層の管理者に目標がどれだけ展開されているか。
c) 管理者は、目標を達成するために必要な資源が利用できることを、どのように確実にしているか。

質問7. 責任、権限及びコミュニケーション(5.5)

a) トップマネジメントは、責任を確立し、組織内の人々へ伝達することを、どのように確実にしているか。
b) 品質要求事項、品質目標及びそれらの達成に関するコミュニケーションは、どれだけ組織のパフォーマンス改善に寄与しているか。

質問8. マネジメントレビュー(5.6)

a) トップマネジメントは、マネジメントレビューのために有効なインプット情報が利用できることをどのように確実にしているか。
b) マネジメントレビュー活動は、組織のプロセスの有効性と効率とを改善するための情報を、どのように評価しているか。

質問9. 資源の運用管理−共通の手引(6.1)

a) トップマネジメントは、タイムリーな方法で資源を利用できるように、どのように計画しているか。

質問10. 人々(6.2)

a) 管理者は、組織の有効性と効率との改善のために、どのように人々の参画と支援を推進しているか。
b) 管理者は、組織内の人々の力量が、現在及び将来のニーズに対して適切であることを、どのように確実にしているか。

質問11. インフラストラクチャー(6.3)

a) 管理者は、組織の目標達成のためにインフラストラクチャーが適切であることを、どのように確実にしているか。
b) 管理者は、インフラストラクチャーに関係する環境課題をどれだけ考慮しているか。

質問12. 作業環境(6.4)

a) 管理者は、作業環境が組織内の人々の動機付け、満足、能力開発及びパフォーマンスを促進することを、どのように確実にしているか。

質問13. 情報(6.5)

a) 管理者は、事実に基づいた意思決定をするために、適切な情報が容易に利用できることを、どのように確実にしているか。

質問14. 供給者及びパートナシップ

a) 管理者は、購買ニーズ及び共同戦略の明確化に、どのように供給者を参画させているか。
b) 管理者は、供給者とのパートナシップの取決めをどのように推進しているか。

質問15. 天然資源(6.7)

a) 組織は、その実現プロセスに必要な天然資源を利用できることを、どのように確実にしているか。

質問16. 財務資源(6.8)

a) 管理者は、効果的で効率的な品質マネジメントシステムを維持し、組織の目標達成を確実にするために必要な財務資源を、どのように計画、提供、管理及び監視しているか。
b) 管理者は、製品品質とコストとの関連について、組織内の人々が認識することを、どのように確実にしているか。 質問

17. 製品実現−共通の手引(7.1)

a) トップマネジメントは、実現及びサービスのプロセス、並びに関係するプロセスネットワークの効果的で効率的な運用を確実にするためのプロセスアプローチを、どのように適用しているか。

質問18. 利害関係者に関連するプロセス(7.2)

a) 管理者は、顧客のニーズを考慮することを確実にするために、顧客に関連するプロセスを、どのように明確にしているか。
b) 管理者は、利害関係者のニーズと期待とを考慮することを確実にするために、その他の利害関係者に関連するプロセスを、どのように明確にしているか。

質問19. 設計・開発(7.3)

a) トップマネジメントは、組織の顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とに対応することを確実にするために、設計・開発プロセスを、どのように明確にしているか。
b) 設計・開発プロセスは、設計・開発の要求事項の定義及び計画したアウトプットの達成を含めて、実際にどのように運営管理しているか。
c) 設計のレビュー、検証、妥当性確認及び構成管理のような活動は、設計・開発プロセスにおいて、どのように考慮しているか。

質問20. 購買(7.4)

a) トップマネジメントは、購買製品が組織のニーズを満足することを確実にする購買プロセスを、どのように定めているか。
b) 購買プロセスは、どのように運営管理しているか。
c) 組織は、仕様書から受入れに至る間で、購入製品の適合性をどのように確実なものとしているか。

質問21. 製造及びサービス業務(7.5)

a) トップマネジメントは、実現のプロセスへのインプットを顧客及びその他の利害関係者のニーズを考慮することを、どのように確実にしているか。
b) 実現のプロセスは、インプットからアウトプットまでの間で、どのように運営管理しているか。
c) 検証及び妥当性確認のような活動は、実現のプロセスの中でどれだけ考慮されているか。

質問22. 測定及び監視用の機器・道具の管理(7.6)

a) 管理者は、正しいデータを入手し、利用することを確実にするために、測定及び監視の機器・道具を、どのように管理しているか。

質問23. 測定、分析及び改善−共通の手引(8.1)

a) 管理者は、組織のパフォーマンスを利害関係者の満足につなげることを確実にするために、測定、分析及び改善の活動の重要性を、どのように推進しているか。

質問24. 測定及び監視(8.2)

a) 管理者は、改善のための情報を得るために、分析のための顧客関連データの収集することを、どのように確実にしているか。
b) 管理者は、分析及びあり得る改善のために、その他の利害関係者からのデータの収集を、どのように確実にしているか。
c) 組織は、組織の総合的な有効性と効率との改善のために、品質マネジメントシステムの自己評価をどのように利用しているか。

質問25. 不適合の管理(8.3)

a) 組織は、プロセス及び製品の不適合をどのように管理しているか。
b) 組織は、学習した教訓並びにプロセス及び製品の改善のために、どのように不適合を分析しているか。

質問26. データの分析(8.4)

a) 管理者は、パフォーマンスを評価し、改善の領域を明確にするために、どのようにデータを分析しているか。

質問27. 改善(8.5)

a) 管理者は、そのパフォーマンスに影響を与える記録された問題を評価し、除去するために、是正処置をどのように活用しているか。
b) 管理者は損失防止のために、予防処置をどのように活用しているか。
c) 管理者は、組織のパフォーマンスを改善するために、体系的な改善の方法及びツールの使用を、どのように確実にしているか。

A.4 自己評価結果の文書化

 自己評価の質問を様式化するには、パフォーマンスの評価、成熟度の各付け及びあり得る改善行動の記録をする種々の方法がある。1つのアプローチを附属書表A.2に示す。

附属書表A.2 自己評価の結果を記録するための表の例
条項 質問番号 実際のパフォーマンスの観察事項 格付け 改善活動
5.2 4.a) 我々のプロセスは、この項目に関しては世界中の他のどのプロセスよりも優れている。 5 必要なし
5.2 4.b) この項目については、我々はシステムを持っていない。 1 この問題を処理するためにプロセスを構築する必要がある。誰が、いつまでに。

 自己評価は、組織のニーズに応じて柔軟に使うことができる。
 1つのアプローチは、品質マネジメントシステムの一部、または全体に対して自己評価を個人ベースで行って、そこから改善を追及することであろう。もう1つのアプローチは、部門横断的な人々のチームに品質マネジメントシステムの全体または一部を自己評価させ、続いてグループでレビュー及び分析を行い、それから改善の優先順位と行動計画の決定に関して合意することであろう。 組織の中で自己評価を、どれほど効果的で効率よく活用できるかということは、卓越レベルに達することに関心を持っている組織内の個人の想像力及び工夫によってだけ制限を受ける。

A.5 JIS Q 9004がもたらす潜在的な便益と自己評価との連結

 自己評価の結果として、どのような行動をとるべきかを決めるため多くの異なったやり方がある。1つのアプローチは、自己評価のアウトプットを、頑強な品質マネジメントシステムから得られる重要な潜在的な便益とともに考慮することである。 このアプローチでは、組織の最優先のニーズに基づく最良の便益をもたらすであろう改善プロジェクトを、組織が明確にし、開始することができる。このアプローチの利用を促進するために、A.3の質問及びこの規格の特定の条項に関連する潜在的な便益の例を次に示す。
 これらの例を出発点として使用し、各組織に適したリストを作成してもよい。潜在的な便益の例は、次の事項である。

便益1. システム及びプロセスの運営管理(4.1)

 継続的にパフォーマンスを改善する組織を導き、運営するための体系的で目に見えるやり方を提供する。

便益2. 文書化(4.2)

 品質マネジメントシステムの有効性及び効率に関する情報、並びにその支えとなる証拠を提供する。

便益3. 経営者・管理者の責任−一般指針(5.1)

 トップマネジメントの一貫した、目に見える参画を確実にする。

便益4. 利害関係者のニーズ及び期待(5.2)

 品質マネジメントシステムを、効果的で効率的なシステムにするためには、全ての利害関係者のニーズと期待とを、バランスのとれた形で、考慮していることを確実にする。

便益5. 品質方針(5.3)

 全ての利害関係者のニーズが理解されることを確実にし、目に見え、かつ、期待される成果に向けて組織全体を方向付けする。

便益6. 計画(5.4)

 組織全体を通して、重要な領域に対して明確な焦点を合わせるために、品質方針を測定可能な目標及び計画に変換する。
 それまでの経験から学んだ教訓を強調する。

便益7. 責任、権限及びコミュニケーション(5.5)

 組織全体にわたる、整合性のある、包括的なアプローチを準備し、役割及び責任、並びに全ての利害関係者との関連を明らかにする。

便益8. マネジメントレビュー(5.6)

 品質マネジメントシステムの改善に、トップマネジメントを参画させる。計画が達成されているかを評価し、改善のための適切な処置を指示する。

便益9. 資源の運用管理−共通の手引(6.1)

 組織の目標を達成できるように、人々、インフラストラクチャー、作業環境、情報、供給者及びパートナ、天然資源、並びに財務資源に関して資源を十分に利用できることを確実にする。

便益10. 人々(6.2)

 パフォーマンス改善の目標を達成するためには、役割、責任及び到達目標についてより良く理解させ、組織の全ての階層において参画を高める。
 表彰及び報奨を推奨する。

便益11.、12.、13.及び15. インフラストラクチャー(6.3)、作業環境(6.4)、情報(6.5)及び天然資源(6.7)

 人的資源以外の資源の効果的な活用の準備をする。
 目標及び計画の達成を確実にするために、制約及び機会に関する理解を高める。

便益14. 供給者及びパートナシップ(6.6)

 供給者及びその他の組織と相互に便益を得るためにパートナ関係を推進する。

便益16. 財務資源(6.8)

 コストと便益との間の関係をより良く理解させる。
 組織の目標の、効果的で効率的な達成へ向けての改善を推奨する。

便益17. 製品実現−共通の手引(7.1)

 望まれる成果を達成するために、組織の運営を構築する。

便益18. 利害関係者に関連するプロセス(7.2)

 資源及び活動をプロセスとして運営管理することを確実にする。組織全体を通して、全ての利害関係者のニーズと期待とが理解されることを確実にする。

便益19. 設計・開発(7.3)

 顧客及びその他の利害関係者のニーズと期待とに対して効果的で効率よく応えるために設計・開発プロセスを構築する。

便益20. 購買(7.4)

 供給者が、組織の品質方針及び目標に合致していることを確実にする。

便益21. 製造及びサービス業務(7.5)

 顧客のニーズと期待とを満たす製品の製造、サービスの提供、及び支援機能の提供によって、持続した顧客満足を確実にする。

便益22. 測定及び監視用の機器・道具の管理(7.6)

 分析のためのデータの正確さを確実にする。

便益23. 測定、分析及び改善−共通の手引(8.1)

 改善のためのデータの、効果的で効率的な測定、収集及び妥当性確認を確実にする。

便益24. 測定及び監視(8.2)

 プロセス及び製品の測定、並びに監視のための管理された方法を準備する。

便益25. 不適合の管理(8.3)

 製品及びプロセスにおける不適合の効果的な処置を準備する。

便益26. データの分析(8.4)

 事実に基づいた意思決定のための準備をする。

便益27. 改善(8.5)

 組織の有効性及び効率を増大する。傾向に基づいた予防及び改善に焦点を合わせる。

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