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4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置

 組織は、顕在及び潜在の不適合に対応するための並びに是正処置及び予防処置をとるための手順を確立し、実施し、維持すること。その手順では、次の事項に対する要求事項を定めること。

a) 不適合を特定し、修正し、それらの環境影響を緩和するための処置をとる。
b) 不適合を調査し、原因を特定し、再発を防ぐための処置をとる。
c) 不適合を予防するための処置の必要性を評価し、発生を防ぐために立案された適切な処置を実施する。
d) とられた是正処置及び予防処置の結果を記録する。
e) とられた是正処置及び予防処置の有効性をレビューする。

 とられた処置は、問題の大きさ、及び生じた環境影響に見合ったものであること。

 組織は、いかなる必要な変更も環境マネジメントシステム文書に確実に反映すること。

1. 不適合とは?

「不適合」とはいったい何を指すのでしょう。規格要求事項には不適合とは何ぞやということを定義してはいませんので、組織ごとに“不適合とは!”を定義しておく必要があります。不適合の代表的な例としては次のような項目が挙げられます。

・ 規格要求事項に対する不適合(システム的な欠陥)
・ 外部審査および二者監査による指摘・不適合
・ 法的およびその他の要求事項に対する不適合
・ マネジメントレビューにおける不適合
・ 目的・目標の未達成と実施計画の進捗遅れ
・ 著しい環境側面にかかわる運用基準からの外れ
・ 利害関係者とのコミュニケーションに基づく不適合
・ 内部監査における不適合
・ 監視・測定機器の精度異常(校正基準からの外れ)

これらに限らず不適合の定義は、組織の規模や事業活動、環境に与える影響の大きさなどを考慮して決めていく必要があります。

2. 是正および予防処置

2004年版改訂に伴ってISO 9001:2000との整合がとられ、是正・予防処置がステップで表現されたことにより理解しやすくなりました。1996年版と比較すると、d)およびe)の項目が追加された形となっており、対応が必要です。

組織ごとに定義した不適合が(図らずも)発生してしまった際に、その不適合を取扱い調査する手順を決めておく必要があります。その手順には、誰がどのようにして不適合を見つけ、誰にいつどのように報告(連絡)するのか、その記録はどうするのかをはっきりさせておきます。 そうしなければ不適合が発生してもどう対応すればいいのか分からず指をくわえて見ているだけの状態になってしまいかねません。ですから、不適合に対応するための取っ掛かりを決めておくのです。

是正・予防処置の基本ステップ(a)〜e))は、

1) 不適合内容の確認
2) 応急(緩和)処置の実施
3) 原因の究明
4) 是正・予防処置案の策定と必要性の評価
5) 是正・予防処置の決定と着手
6) とった処置の記録
7) 有効性のレビュー

ですが、

・ 不適合の発見(誰が・どのように)
・ 報告・連絡(誰に・いつ・どのように)
・ 記録

といった、より基本的なことを最もはっきりさせることが是正・予防処置を効果的に機能させる重要なキーとなります。

是正・予防処置は、小さな問題に大掛かりに取組む必要はなく、常に費用対効果を考慮して、その不適合によって生じた(生じ得る)環境影響に釣り合う程度のものでよいとされています。

予防処置の事例はなかなかないものですが、そのアプローチを参考までに挙げておきます。

・ 是正処置案件ごとに不適合情報を水平展開(横展開)し、類推し、潜在的な問題を抽出する。
・ あらゆる問題・情報を種々の切り口から整理・分析し、類推し、潜在的な問題を抽出する。

是正・予防処置の結果、手順などの変更があった場合、関連する手順書などにその変更を反映させて改訂し、関係者にしっかりと教育訓練を実施しましょう。

3. 質問と回答

質問内容 回答
不適合が発生すれば、必ず是正処置の実施が必要ですか? 是正処置とは、再発防止対策のことです。発生した不適合により生ずる問題の影響度から見て、不適合の修正処置で十分と考えられるのであれば、再発防止対策は必要ないかもしれません。
しかし、再発防止すべき不適合であるのであれば、再発防止対策を講じなければならず、さらに必要であれば、類似の不適合の発生を未然に防止する水平展開も検討されることを規格は求めています。
「実施した是正処置および予防処置の有効性を見直す」とは、どういう意味ですか?

e)項の有効性を見直すとはどういう意味ですか?とくに予防処置の場合、有効性を確認するためのテストをやることまで必要ですか?
是正処置および予防処置実施後の効果が、処置案計画時に期待したレベルに達しているか、または、残ったリスクが許容できる範囲かなどの観点から判定するような方法などが考えられます。
テストまでやって有効性を確認する必要があるかどうかは組織の判断によります。
内部監査で、是正および予防処置の有効性をチェックしても問題ありませんか? 是正および予防処置の有効性をチェックする機会は、組織が決められればよいと考えます。
「起こる可能性のある不適合の予防処置」については、どのような対応をすることが求められているのですか?緊急時の環境側面に対する予防処置との関連を説明してください。

「不適合の予防処置の必要性評価」の方法は作成する必要がありますか?
まだ起こっていないがこのまま放置すると不適合が発生する可能性がある場合、そのリスクに見合った予防処置の必要性を判断し、必要ならば実施することを求めています。
予防処置の必要なリスクを発見し、対策の必要性を評価する手順は必要ですが、たとえば、現場パトロール、データ分析、会議などの種々の機会が考えられます。
緊急事態への準備および対応の要求事項は、不測の事態が発生したときに環境影響を最小限にとどめるための処置や発生した被害を復旧する処置を求めており、不適合の予防処置とは意味が異なります。

4. 関連サイト・書籍など

5. 不適合・改善要望事例と考察

不適合・改善要望事例考察
環境マニュアル4.5.3項に、4項目の不適合を定義している。しかし、2008年度に起票された6件の「是正処置報告書」には、上記不適合に該当しない項目が混在していた(例:経費集計ミス、振込口座・名義違い、年賀状同一宛先印刷など)。 EMSに関わる不適合、EMS外(業務上など)の不適合にファイル区分し、管理する。
環境マニュアルの4.5.3の表4.5.3-1には「目的・目標の未達成」は部門長がマネジメントレビューで報告すると定めてある。これに関して、○○品質保証Gのクレーム削減の未達成や○○○○工場のクレーム削減の未達成の事例からすると、その都度、部門長が経営会議で報告する手順の検討が望まれる。 月次報告は進捗管理表で書面上では行われているが、不適合是正処置にまでは結び付いていないので、毎月の経営会議などで是正に結び付ける決め事の整備が必要。
○○品質保証Gのクレーム削減は
  '03年度/112件 '04年度/55件 '05年度/49件
のように推移し、残念ながら10月時点で目標値40件をオーバーしている。早急に「手段・方策」を見直し、適切な対策を講じることが望まれる。
月次の進捗管理表によるチェックが機能しておらず、根本的な対策が打たれていない。
'05.11.4に判明した分離層の水質測定結果でn-Hexの値が法的基準値を超えたことについて、直ちに対策が検討され、基準値オーバーの原因と考えられる廃液については分離層には流さずに産業廃棄物として処理することが決定されているが、基準値オーバーは環境マニュアルに記載された不適合に該当するので、是正・予防処置要求書/報告書の作成が必要。 n-Hexの測定値が基準値を若干上回った程度であったため、重大なこととはとらえずに報告書の作成・発行まではしていなかった。
'05.6.29付の製品Tの内部監査での不適合に対して、是正処置要求書/報告書[A]が作成されているが、原因が根本的原因の特定に至っていない。また、是正処置内容も再発防止策になっていない。 表面的な原因追究と応急処置で済ませる体質があり、ISO事務局・内部監査員もそれを容認していた。
目的・目標として取上げた「残業時間の削減」が6か月以上未達成になっている。マニュアルでは目的・目標の未達成は不適合とされ、@〜Cの是正・予防処置をとることになっているが、とられた処置が確認できない。 目的・目標の未達成を不適合と定義しておきながら、不適合を必要とする判断基準やどのような馬で不適合と判定するのか、細かな決めがなく、機能していなかった。
マニュアルの4.5.3では、内部監査における不適合については是正・予防処置の結果および有効性を確認すると定めているが、'05.1.19の内部監査での軽微な不適合については、その是正処置の結果および有効性の確認の実施が確認できない。 内部監査の取決めとして不適合を重/軽に分類し、軽については是正書を発行しないことにしていたが、これは重/軽にかかわらず不適合に対しては是正をしなければならないということに反する。
2003年度目的・目標管理シートで「表示ミス発生防止」を挙げ活動されていますが、発生時作業者への教育だけで再発防止策が確認できません。是正処置報告書を活用し、原因の除去を実施するようにお勧めします。 不適合に対する是正処置の手順(不適合の特定、応急処置、原因の特定、是正対策の検討・決定、是正対策の実施、効果の確認と標準化)の基本プロセスがあるが、最も重要な原因の特定・是正対策の策定に時間がかけられておらず、応急処置=是正処置になってしまっている。
本社営業部の教育・訓練計画が作成されていないとの内部監査の指摘に対し、原因として「失念していた」と記してありますが、失念への対策(年次または月次計画を立てるなど)が抜けており、再発の可能性があります。 (同上)
'02.7.29の騒音の苦情を受けて、「是正・予防処置要求書/報告書」が発行されていません。 利害関係者からの苦情を受付けた場合、「是正・予防処置要求書/報告書」を総務担当者が発行することになっているのだが、その手順が理解されていなかった。
騒音苦情は「利害関係者とのコミュニケーションによる不適合」に相当しますが、マニュアルで定めた是正処置の指示が出ていません。 周辺地域から騒音の苦情を受けたが、騒音測定をしたところ基準値を超えていたので、法規制不遵守項目として取り上げた。
規格の「不適合を取り扱い調査し、それによって生じるあらゆる影響を緩和する処置をとり」に関する記述がありません(環境マニュアル)。
規格の「顕在及び潜在する不適合の原因を除去するためにとられるあらゆる是正処置又は予防処置は、問題の大きさに対応し、かつ、生じた環境影響に釣り合わなければならない」に関する記述がありません(環境マニュアル)。

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