『ロストボーイ』    
the Lost Boy

 ジョエル・シューマッカー監督。80年代テイストが爆裂するMTV感覚吸血鬼映画。
 カリフォルニアの小さな町に引っ越してきたマイクとサムの兄弟。マイクが仲間に入った地元の暴走族グループは、実は吸血鬼軍団であった。吸血鬼化していく兄を救うため、弟サムはホラーマンガマニアの友達の援助を求める。ボーイ・ジョージのような吸血鬼のファッションや、全編を流れる80sサウンドが楽しめる青春映画です。人気俳優がいろいろ出ているのも見所です。
 この映画の吸血鬼は、日光を嫌い、夜は人間の姿で遊園地に繰り出します。吸血鬼に血を吸われても、死ぬだけで吸血鬼にはなりません。「親ヴァンパイア」の血を飲むと「子ヴァンパイア」となる、という儀式で増殖します。まだ人の血を吸っていない「子」は、その「親」を倒せば人間に戻れる設定があり、これを根拠にサムは兄を救います。
 作品のテーマは、「大人になることの難しさ」だと思います。古来、男子は成人する直前に家を出て、「若者組」(女子なら「娘組」)などと呼ばれる集団に属してイニシエーションを行いました。この教育システムが機能していない現代都市社会では、「大人になる」ことが困難になっています。映画前半の吸血鬼化の儀式は昔の成人儀礼を模しており、我々の時代がイニシエーションを欠如していること、そしてそれが少年非行を生んでいることを訴えます。実際、80年代は少年非行が大きな問題になった時期で、日本でも「校内暴力」などの言葉がよく言われました。この映画は一人の青年が非行化し、更生する過程を描いているのです。そういう作品で一番難しい青年の心理の表現を、吸血鬼の喩えによって巧みに成し遂げています。吸血鬼集団は非行少年の喩えで、「迷子」というタイトルも非行少年の喩えでしょう。欲を言えば、青年が立派な大人になる部分も描いてほしかったところです。子供である弟の視点が強すぎ、「兄が帰ってきた」という結末で終わってしまいました。
 「若者組」の存在しない現代、青年の教育は専ら親の権限/責任です。この映画は冒頭で、離婚で主人公兄弟には父がいないことを明らかにしています。離婚も当時のアメリカでは大きな問題でした。「若者組」もなければ「父親(機能としての)」もなく、青年は非行に走ります。結局は、偏屈な老人でしかなかった祖父が父親の役割を果たすことで、家族は機能を十全に回復し、青年は家に戻ります。表層は子供たちが吸血鬼を退治するストーリーですが、母や祖父の視点にもウェイトを割くことで、家族ドラマとして優秀な作品になっています。

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ロメロ、ジョージ・A・
Romero, George A.

 アメリカの映画監督。「リビング・デッド3部作」(『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』『ゾンビ』『死霊のえじき』)はゾンビ映画の源流となりました。「ゾンビ3部作」とも言います。

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ローラン、ジャン・
Rollin, Jean

 ハダカの大好きなフランス人。彼の映画はホラーとは名ばかりの気だるい映像の垂れ流しで、裸女はふんだんに登場するものの大してエロくありません。

ジャン・ローラン監督作品(年代順):
 『呪われたレイプ魔』
 『ナチス・ゾンビ』
 『ゾンビ・クィーン』(別題『リビング・デッド・ガール』

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