『低俗霊狩り』    

 奥瀬サキのマンガ。
 主人公の流香魔魅は、普段はアダルトビデオのレビュアーとして糊口をしのいでいるが、本業は除霊師、しかも「低俗な」霊を専門に扱っている。…という設定からわかるとおり、連載開始当初はエッチでオカルトなコメディでした。主人公の服装は黒ずくめ&肩パットの80sスタイル、絵柄も江口寿史、大伴克洋、天野喜孝、といった80年代の匂いがプンプンするものだったのです。
 ところが掲載誌が変わり、間もかなり空いたらしく、途中から絵柄ががらりと変わります。今の奥瀬サキのあの「都市」が顔を出し、物語も殺伐としたシリアスなものになっています。なかでも最終話「Phantom of the Railway」は傑作。「鬼気迫る」とはこれのことです。事故死した少年の霊がJR中央線の車両に憑く話ですが、電車の車内に力士(相撲取り)が出てきて襲ってきたり、電車の中に電車が走っていたりと、もう無茶苦茶です。これは褒めているのです。

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『低俗霊DAYDREAM』    

 奥瀬サキ原作、目黒三吉画のマンガ。少年エース連載。絵はもろにエロマンガですが、軽薄な下ネタのノリや格闘技へのこだわりなど、内容は完全に奥瀬サキのペースです。手が遅い絵の部分を目黒三吉にまかせたという形でしょうか。
 「口寄せ」能力者にしてSM女王、崔樹深小姫が次々と心霊事件を解決していく。『低俗霊狩り』との話のつながりは不明です。題名に反して「低俗霊」は全然登場しません。作品全体が低俗なだけです。
 マンガに限らず、普通の連載作品はだんだんキャラクターの個性や相互の人間関係の描写の比重が高くなっていくものです。作家は「登場人物が一人歩きする」などと偉そうに言いますが、面白いプロットを作る努力を怠っている場合がほとんどでしょう。ところがこの作品の場合、最初は軽薄なキャラ描写が大半でしたが、だんだんシリアスなプロットの描写が増してきました。これは実は『低俗霊狩り』と同様の現象です。絵柄も(とりあえず背景とかは)奥瀬サキ作品に近づいてきているように見えます。この事態が今後さらに進行して名作となるかと思うと楽しみですが、逆にそろそろ破綻しそうな予感もします。

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『ティーン・バンパイア』    
I Was a Teenage Vampire

 高校生ジェレミーは配達バイトで訪れた美女に誘惑されて咬まれ、吸血鬼となった。しかしお間抜けハンターたちは親友ラルフのことを吸血鬼だと勘違いし、彼を追いかけるのだった。…最後は吸血鬼万歳で終わってしまう御目出度さ。憧れの女の子と恋人同士になったし僕は人間界で暮らして行くよ、というのですが、おまえら本当にそれでいいのか?と突っ込まずにいられません。

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『テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる』    
Teenage Hooker Became Killing Machine in DaeHakRoh

 ナム・ギウン監督。インディーズアート系映画と分類するのは好意的過ぎ。ただの電線系ゴミ自主映画です。ビデオで画質も低劣。
 ソウルはテハンノ(大学路)で客をとっていた女子高生が担任の教師に見つかり、最高級コースを無料サービスすることで見逃してもらう。実は彼女は教師のことを愛しており、妊娠したと直感して一人喜んでいたが、教師は殺し屋3人兄弟を雇って彼女をバラしてしまった。死体は謎の男に拾われ、謎の老婆にミシンで縫合され復活。彼女は不死身の殺し屋としての役目を与えられる。そして殺し屋と教師に復讐する。

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『デモンズ』    
Demons / Demoni

 駄作シリーズ第1弾。ランベルト・バーヴァ監督。ダリオ・アルジェント製作。
 ノストラダムスの墓を暴いた若者が次々と吸血鬼(デーモンと呼ばれる)化し、悪魔の復活に関する予言が成就する。…という内容の映画の試写会に来た観客が、なぜか映画館に閉じ込められ、映画の内容と同様に吸血鬼化していく。ようやく脱出しても、世界には吸血鬼が溢れかえっていた。
 前半、最初の吸血鬼が登場するまでの部分はそこそこの迫力、イタリア風味が良い感じですが、後半はどうしようもなくつまらない映画になります。音楽が好きな人はまだ楽しめるかもしれませんが。思うに、複数の人物の行動を細切れに描写していく方法が大失敗で、特に劇場の外の人物を出してしまうことで緊張感が大幅に減退していると思います。
 この作品では、モンスターの生態は詳しく語られません。デーモンというよりはアンデッドなのですが、もしかしたらやばい病気に感染しただけで、死んでないのかもしれません。倒し方もよくわかりません。牙が生えているので吸血鬼だと思いますが、人の血を吸うわけではありません。なのでゾンビにも近いのですが、肉を食うわけでもなく、単に人を殺して回るのです。仮面をかぶった人が最初の吸血鬼になるという設定は『ジョジョの奇妙な冒険』にもあります。

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『デモンズ2』    
Demons 2 / Demoni 2

 シリーズ第2弾。ランベルト・バーヴァ監督。ダリオ・アルジェント製作。
 吸血鬼映画(前作と同じ世界観)を映していたテレビ(受像機)から吸血鬼が出てきて人を襲う。人々はなぜかマンションに閉じ込められ、次々と吸血鬼化していく。
 前作以上につまらない作品。楽しめる要素を探すのがかなり困難です。後半の地下駐車場での乱闘シーンぐらいでしょうか。相変わらずモンスターの正体は曖昧ですが、今回は吸血鬼の体内からグレムリンのような妖怪が生まれてきます。

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『デモンズ3』    
the Church / la Chiesa

 ミケーレ・ソアビ監督、ダリオ・アルジェント製作。ゴブリンの音楽が良。
 中世にチュートン騎士団が異端者を殺戮して埋め、悪魔を封ずるために上に聖堂を建てた。現代、ひょんなことから封印が解かれ、教会内に閉じ込められた人々が次々と死に、あるいは悪魔の僕となっていく。
 今回は聖堂そのものが人を殺していくので、吸血鬼は登場しません。封印が解かれた際には悪魔と僕を外の世界に出さないよう、人を閉じ込めて殺す仕掛けが最初から組み込まれた建築なのです。そのかわり終盤には、悪魔の本体でしょうか、蠢く人の死体がアルチンボルド的に集合した化け物が登場します。チュートン騎士団が悪者扱いされていたり、悪魔がバフォメット風の山羊面だったりというあたりは、さすがイタリア人の作ったお話だと思いました。

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『デモンズ4』    
the Sect / la Setta

 ミケーレ・ソアビ監督、ダリオ・アルジェント製作。シリーズ4作目にして「人々が一ヶ所に閉じ込められる」という共通点がなくなりました。
 小学校教師ミリアムはサタンを奉ずる悪魔崇拝者たちに狙われ、悪魔の子供を産まされる。…支離滅裂で何の意味があるのかわからないシーンも多いですが、それゆえに怖いです。
 どういう理屈かはわかりませんが、悪魔崇拝者たちのうち一部の者は、死んでも死体さえ残っていればまた生き返れるようです。

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『デモンズ5』    
Black Sabbath / la Maschera del Demonio

 ランベルト・バーヴァが監督に返り咲いた5作目。つまらなさも極限に近いです。
 クレバスに落ちたスキーヤーたちが発見した死体の顔から仮面を取ってしまい、魔女アニバスの封印が解かれる。豪雪で廃村に閉じ込められたスキーヤーたちは、魔女に憑依されて狂っていく。…アニバスは死体ながら、人々に憑依したり幻覚を見せたりすることができます。また、あっさり殺された最初の犠牲者は、物語中盤でふらふら歩き出します。

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『デモンズ6 最終戦争』    
the Black Cat / il Gatto Nero

 『サスペリア』のリメイク映画を作ろうとしているスタッフを襲う怪奇現象。実は主人公の魔女レヴァナは実在の人物で、主演女優アンの肉体を奪って転生しようとしているのだ。
 魔女レヴァナというクリーチャーの出来が最低。ドリアンで作ったお面のようです。死んだ人間が喋るシーンがありますが、この「悪魔崇拝者=アンデッド」というのがシリーズの共通点かもしれません。
 監督はルイジ・コッツィ。作りが雑で完成度が低いのが残念ですが、次に何が起こるか見当がつかないスーパー面白映画です。何も考えずに行き当たりばったりで書いた話かと思えばさにあらず。噂によると原案はダリア・ニコロディで、『サスペリア』『インフェルノ』の続編として書かれたらしく、タイトルも"DE PROFUNDIS"といったそうです。それがなぜか公式にはエドガー・アラン・ポーの『黒猫』が原作だということになり、あまつさえ有名無実『デモンズ』シリーズに組み入れられてしまいました。邦題の「最終戦争」がこれまた謎。

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『デモンズ’95』    
Cemetery Man / Dellamorte Dellamore

 ミケーレ・ソアビ監督。ルパート・エヴェレット主演。退廃と諧謔、幻想的な映像。ゾンビ映画の新境地を開いた佳作という評価ですが、こういうものはアメリカでは作れないでしょうし、イタリアではホラー映画は作れなくなっているそうなので、後続の作品がありません。ただ、一時は引退したとされたミケーレ・ソアビがまた監督業に復帰しているということなので、この路線で新たな展開があるかもしれません。
 原作(ティツィアーノ・スクラヴィ原作のコミック)を読んだことがないので断言できませんが、意味深なテーマがあるようでいて実は全くない、呆然とするほどくだらないエピソードの積み重ねはおそらくソアビ独自の味付けだと思います。
 その墓地に埋められた死者は、なぜか死後1週間でゾンビ(リターナーと呼ばれる)になって復活する。墓守フランチェスコと助手のナギは夜な夜なゾンビの頭をかち割って暮らしていた。フランチェスコはゾンビ美女とセックス中に咬まれ、死神に命ぜられるままに生者を殺し始める。果たしてこれは現実か、身体のゾンビ化にともなう幻覚か。

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『デモンズ2001』    
the Irreputable Truth of Demons

 なぜかニュージーランド映画。でもつまらなさはシリーズに準じています。グレン・スタンドリング監督。途中幽霊およびゾンビとして言及される存在は登場しますが、話全体が現実か虚構かわからぬ仕上がりだし、主役は悪魔崇拝セクトとレッサーデーモンたちなので、非アンデッド作品としておきました。
 なぜか悪魔崇拝者に追われる宗教学者(トルシエ似)。身近な者が次々と殺され、彼は犯人に仕立て上げられる。果たしてこれはデーモンの仕業か、それとも薬物による幻覚か? 彼が追われる真の理由とは?

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『デモンズ2002』    
Witchhouse 2: Blood Coven

 さすがはJ.R.ブックウォルター監督。「ブレアウィッチ、俺ならこう撮る!」という意気込みで、出来上がったのがこれ。それでも他のブックウォルター作品に比べると格段にまともだというのがまた悲しいところです。もちろん天下の駄作『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と比較すれば数倍面白いのですが、予算は十倍以上かかってるでしょう。
 巨大モール建設中の森から二百年前の死体が発掘された。処刑された魔女リリスである。リリスは発掘調査中のスパロー教授の身体をのっとり、村人に復讐すべく仲間の魔女を次々と復活させる。
 リリスは教授の傷口に入った骨の粉から再生。他の魔女は、遺骨から抽出されたDNAを生きた人間に注射して再生。でも二百年の間にDNAが退化していて、魔女たちの力は完全ではありません。…魔女ってすごい。
 ところで、なにがデモンズなんでしょうか? ビデオ映画。

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『デモンズナイト』    
Totem

 リチャード・チェイスン監督。台詞で全てを説明しようとする、拙い映画の見本のような作品。しかも登場人物全員がオカルト的思考法に囚われており、新興宗教の会合かMMRの編集部を覗いているような感じがします。
 謎の声に呼ばれて山小屋に集まった6人の男女。近くの墓地には自分たちの墓標があり、謎のトーテムポールがあった。彼らは森から出ることもできず、悪魔復活の儀式のために互いに殺しあう運命なのである。
 殺された一人がうわごとのように悪魔について説明するほか、終盤には墓穴から死体が蘇ってきます。ゾンビっぽいですが正体は不明。

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『デーモン・ナイト』    
Demon Knight

 アーネスト・ディッカーソン監督。HBO『テイルズ・フロム・ザ・クリプト』の劇場版その1。世間ではわりと評価が高いようですが、むしろ2作目の方が見るべきところがあると思いました。
 悪霊(ビリー・ゼーン)に追われる男ブレイカー(ウィリアム・サドラー)はモーテルに篭城、鍵型の瓶に入ったキリストの血で結界を張る。
 「悪霊」はデーモンの訳ですが、地面から這い出して人を食らい、感染する下級デーモンたちは、どう考えてもゾンビでしょう。見た目もそのまんまです。一方ブレイカーは悪霊と戦う「デーモン・ナイト」で、百年前に先代のナイトから鍵を譲り受け、不死者になったものです。

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