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4.3.1 環境側面

 組織は、次の事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること。

a) 環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で、活動、製品及びサービスについて組織が管理できる環境側面及び組織が影響を及ぼすことができる環境側面を特定する。その際には、計画された若しくは新規の開発、又は新規の若しくは変更された活動、製品及びサービスも考慮に入れる。
b) 環境に著しい影響を与える又は与える可能性のある側面(すなわち著しい環境側面)を決定する。

 組織は、この情報を文書化し、常に最新のものにしておくこと。

 組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持するうえで、著しい環境側面を確実に考慮に入れること。

1. 環境活動の出発点

環境マネジメントシステムを構築し、効果的に実施していくためには、組織の活動、製品およびサービスが環境とどのように影響し合っているのかを把握し、理解するところから始めなければなりません。それがまさに本条項に規定されている環境側面の特定と著しい環境側面の決定なのです。

ここを手抜きしてしまうと、後に続くすべての活動に悪影響を及ぼしてしまうと言っても過言ではない、極めて重要なステップです。

図 著しい環境側面に関するISO 14001要求事項
図 著しい環境側面に関するISO 14001要求事項

2. 用語の意味

環境側面:
『環境と相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素』

環境への負荷と環境への負荷を生じさせる活動を合わせたもの、つまり、環境に影響を与え得る組織の活動、製品またはサービスにおける環境負荷に関連するものです。 考えやすい例としては、排ガス、廃水といったもの、あるいは電力、騒音といったエネルギー。これらは設備、作業または工程が環境に対して直接影響を与えているのではなく、設備や工程が動いたり、作業を実施することにより発生したもの、または消費したものが環境に影響を与えるので、環境側面として抽出するものは“もの”または“エネルギー”となります(設備、作業または工程そのものが環境側面とはなりません)。

環境影響:
『有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織の環境側面から生じる、環境に対するあらゆる変化』

環境側面の結果として、環境に与える変化をいい、悪い影響、良い影響は問いません。例えば、水質汚濁や大気汚染、天然資源の枯渇などがあります。

環境影響評価:
環境側面の結果としての環境に与える影響の「大・小」を判定することで、環境影響が生じる可能性と影響が生じたときの重大性により判定します。なお、ISO 14001では評価の方法を規定していません。

著しい環境側面:
『著しい環境側面は、著しい環境影響を与えるか又は与える可能性がある』

組織が決めた評価基準に基づき、一定のレベルを超えると評価される環境影響を持つもので、これを環境目的・目標の設定に当たって考慮して施策を進めることにより、環境影響を少しでもよい方向(有害:小さく、有益:促進)に持っていくことが狙いです。

環境負荷:
『人の活動により環境に影響を与えるもので、環境保全に支障を及ぼす原因となる恐れのあるもの』

環境基本法中で用いられている用語であり、企業の場合では、事業活動に必要なエネルギー・原材料・部品および事業活動に伴なって発生する排水や排ガス、あるいは廃棄物や騒音をいいます。

3. 環境負荷、環境側面と環境影響の関係

ex1)自動車の排ガスによる大気汚染

「自動車を運転するという行為」は ・・・(事業活動)
  ⇒ 「運行によりNOxやばいじん(環境負荷)を発生させる」 ・・・(環境側面)
    ⇒ 「大気汚染」を生じさせる ・・・(環境影響)

[ 活動 ⇒ 環境側面 ⇒ 環境影響 ]という因果関係が成立します。
(NOxやばいじん(環境負荷)を発生させること(環境側面)が原因となって、大気汚染を生じさせる(環境影響)という結果を引き起こす)

ex2)環境負荷、環境側面、環境影響

環境負荷環境側面環境影響
洗浄水の排水洗浄水を公共水系に排出水質汚濁
騒音空調機騒音を発生快適性の侵害
廃プラスチック廃プラスチックを排出産業廃棄物処分場の不足

4. 「組織が管理できる」と「組織が影響を及ぼすことができる」

組織が管理できる環境側面=直接的な環境側面:
それによる環境への影響を組織が目的・目標や日常管理などにより直接管理できる。

組織が影響を及ぼすことができる環境側面=間接的な環境側面:
協力会社や購買先、エンドユーザーにおける製品廃棄など、組織が直接手を下すことができない。

このいずれについても確実に考慮しなければなりません。とくに間接的な環境側面を考える場合、その範囲については際限なく広く解釈されることを防ぐために、組織が決定した適用範囲であることが明確に打ち出されています。この点からも適用範囲を適切に決めておくことがとても重要なのです。

5. 環境側面の抽出・環境影響評価フローの例
環境側面の抽出・評価資料

ここで述べるフローはあくまでも1つの方法であり、この方法で実施しなければならないということでは決してありません。この他にもさまざまな考え方・方法があると思いますので、参考事例としてお読みいただくことをあらかじめお断りしておきます。

5.1 環境側面の抽出

1. 作業工程(フローチャート)の作成

まず、環境側面の抽出漏れを防ぐために全体を網羅した作業工程フローを作成します。すでに作業標準書や手順書を作成されているのであればそれを利用すればよいでしょう。この際に気をつけることは部署間の橋渡し的作業や建物の外部にある付帯設備、排水設備などの漏れがないようにするということです。 自分の目だけから見える範囲でこの作業をすると重要なポイントを見逃し、ひいては後々の手続きに重大な支障を及ぼす可能性があるからです。これは環境側面の抽出漏れに直結し、重大な指摘となります。 また、工程、環境側面は将来的なことを考えれば細かく抽出しておいたほうがよいと考えられます。

2. 環境側面の抽出

a) インプット

各工程ごとに使用する材料や設備をまとめ、その中で環境に影響を与え得るものや状況を抽出します。

ex)メーカーからの印刷用紙の受入れ

・ 業者が車で搬入 ⇒ 車に使用するガソリン、受け入れた用紙
・ 積み下ろしに使用するフォークリフトなどの電気
・ 用紙の保管に使用する移動棚の電気
・ 事務処理に使用する紙類

これらをどこまで細かく抽出するか、あるいはどのようにまとめるかの基準を決める必要はあります。

b) アウトプット

各工程や作業において排出されるものの中で環境に影響を与え得るものや状況を抽出します。

ex)メーカーからの印刷用紙の受入れ

・ 車から排出される排気ガス
・ フォークリフトなどから発生する騒音
・ 用紙の保管に使用するパレットの破損による木クズ

環境側面の抽出で注意すべきことは、必ず敷地内のすべての場所に足を運び、直接目で確かめていくことです。見落としていた浄化槽、毒物・劇物保管庫の無施錠や防液(油)堤の亀裂、あるべきオイルパンがない、雨ざらしになった廃棄設備やドラム缶からオイルが洗い流されている現場を発見するかもしれません。 地面が黒ずんでいる部分は、こぼれた(漏れた)オイルで土壌を汚染している痕跡である可能性があります。どんな痕跡・異状にも興味を持つようにしましょう。

敷地内だけではなく、境界線周辺を一巡し、敷地外から見て回ることも必要です。とりわけ工場では、不用意な排水・漏出・廃棄がなされていないか、何か異変に感じるものはないか、を見ます。とくに水周りには注意が必要です。 このように足で稼ぐことによって新たに発見される(見落としていた)環境側面は必ずと言っていいほどあります。机上調査だけではほとんどの場合、抜けが生じてしまいます。

敷地内外の観察は、晴天の場合と雨天の場合とで様相を異にする場合があります。晴れの日に気がつきやすいこと(例えば、晴れなのに雨水用の側溝に水の流れがある)と雨の日に気がつきやすいこと(例えば、水たまりが油膜で光っている)があります。

c) 定常・非定常・緊急の考慮

インプット・アウトプットの環境側面を抽出する際には常に定常状態・非定常状態・緊急状態を考慮するようにしましょう。通常の作業を実施している状態を定常とすると、作業を中断した場合やメンテナンスを行っているような状態は非定常、事故・人為的ミス・天災などで緊急事態が発生している(発生する可能性がある)状態は緊急となります。 それぞれの状態を考慮しながら環境側面を抽出し、非定常状態あるいは緊急時の環境側面には(非)や(緊)などと添え書きしておくと、後の環境影響評価や緊急事態の対応の時に環境側面との相互関係を追うことができ、それぞれの整合性についても比較的簡単に説明できます。

d) 環境側面抽出時の考慮事項

附属書Aには、環境側面として考慮すべき活動、製品およびサービスの要素が例示されています。

・ 大気への放出
・ 水への排出
・ 土地への排出
・ 原材料・天然資源の使用
・ 地方/地域の環境問題
・ エネルギーの使用
・ 放出エネルギー(熱・騒音)
・ 廃棄物・副産物
・ 設計・開発
・ 製造プロセス
・ 包装・輸送
・ 協力会社・購買先
・ 流通、使用、使用後の処理

また、次のような情報源がある場合には、有効活用することによってとても役立つかもしれません。

・ 原材料リスト
・ 溶剤リスト
・ 廃棄物リスト
・ 機械スペック
・ 監視・測定データ
・ 製品仕様書
・ 苦情
・ 事故・緊急事態

e) 「計画された若しくは・・・」

「計画された若しくは・・・考慮に入れる。」は、1996年版の「4.3.4 環境マネジメントプログラム」から2004年版改訂によって本条項に移ってきました。新規活動や変更(新規ビジネス、新製品、製品改良、既存ビジネスの拡大・縮小・変更など)によって変化する環境側面を、洗い出しの段階で随時特定および評価することにより、環境目的・目標、実施計画、運用管理に反映するためと考えられます。この場合、計画から新規活動や変更の実施までの適切な段階で、環境側面を特定、評価することが必要です。

5.2 環境影響を考える

1. 環境側面と環境影響

インプット・アウトプットで抽出した環境側面により発生する結果(環境影響)は何かを考えます。

・ ガソリンの使用・・・資源の枯渇
・ 車からの排気ガスの放出・・・大気汚染
・ 受け入れた用紙の使用・・・資源の枯渇
・ パレットの木クズの発生・・・廃棄物の増加
・ フォークリフトからの騒音の発生・・・騒音公害

以上から分かるように、環境側面は「原因」となる発生・消費した“もの”または“エネルギー”であり、環境影響はその「原因」である“もの”や“エネルギー”から生じる「結果」です。

この抽出作業で一番重要と考えられるのは、工程および環境側面(インプット・アウトプット)の細かさをどこまでにするのかをはっきりとさせることです。 それがしっかりと定まっていないと、部署ごとに抽出レベルのバラツキができてしまい、最悪の場合、収拾がつかなくなります。

2. 場面を想定する(環境側面の取りこぼし防止)

さらに、潜在的な環境影響を及ぼす環境側面を含めて抽出の取りこぼしを防止するために、活動や物品などに対して「購入前」「搬入時」「保管時」「使用時」「排出時」といった場面を想定すると効果的です。 例えば、昔使ったことがあるが現在は使っていない化学製品などは、環境側面抽出時には保管しているだけのために調査から漏れる可能性がありますが、保管しているだけの場合でも緊急時の環境影響の可能性は残ります。 3. 著しい環境側面の決定

環境側面をひととおり洗い出したら、その中から環境影響が著しいと思われる環境側面を決定していきます。規格では著しい環境側面を決定する方法に対しての要求は何もありませんが、当然何らかの方法や基準を設定する必要があります。このときの考え方の根本としては、管理・改善の必要がある環境側面の優先順位を決めることが主目的ですから、絶対的ではなく相対的な考え方が前提となります。

方法・基準を決める際の考慮事項の例は次のとおりです。

・ 環境基準:影響の規模、深刻度・継続時間、環境側面の種類、頻度
・ 適用可能な法的要求事項:許可、規制による排出・放出の制限
・ 内外の利害関係者の関心事:組織の価値、対外的イメージ、騒音、臭気、景観上の劣化

これらの事項を参考にして評価項目を決定し、数値による定量化あるいは高い/普通/低いなどの定性レベルによって著しいとする基準を決めます。

“環境側面を数値的に評価する”という方法が一般的ですが、これはISO 14001が日本に導入された当初、大手企業がロジスティックな評価方法として開発したものが広く使われるようになったためであり、決して唯一の方法ではありません。現に、管理者の多数決で著しい環境側面を決定している組織もあります。

6. 有益な環境側面

有益な環境側面・・・有益な環境影響の要因となる環境側面・・・は、ISO 14001規格の用語の定義「3.13 汚染の予防」と組み合わせて考えると分かりやすいかもしれません。

3.18 汚染の予防(prevention of pollution)
 有害な環境影響(3.7)を低減するために、あらゆる種類の汚染物質又は廃棄物の発生、排出、放出を回避し、低減し、管理するためのプロセス、操作、技法、材料、製品、サービス又はエネルギーを(個別に又は組み合わせて)使用すること。

参考

 汚染の予防には、発生源の低減又は排除、プロセス、製品又はサービスの変更、資源の効率的使用、代替材料及び代替エネルギーの利用、再利用、回収、リサイクル、再生、処理などがある。

具体的には以下のような項目が挙げられます。

・ 環境配慮設計活動(設計・開発):長寿命化、軽量化
・ グリーン購買の推進(購買):再生紙、ペットボトル材を利用した作業服
・ 事務伝票のペーパーレス化(事務作業)
・ 不適合品の削減(品質管理)
・ 環境に配慮した工程の採用:加熱工程の短縮など
・ 効率の良い生産計画の立案(生産管理)
・ 環境配慮商品の販売:リサイクルされた材料を使用した商品販売
・ 環境負荷の低い資源の利用:天然資源の使用率の減少
・ 有害物質の使用抑制・廃止
・ 環境汚染物質の蓄積回避・低減に関する技術、作業の採用
・ 輸送・梱包改善による環境負荷低減
・ 省資源、省エネルギー(reduse、reuse、recycle)
・ 排熱回収装置の設置
・ コージェネレーション
・ 廃棄物の分別、資源化

事務伝票のペーパーレス化について、IT革命(事務所などのIT化)はペーパーレス時代のさきがけとしても一躍有名になりましたが、実はIT化=ペーパーレス化とはいかないようです。 すべてをディスプレイで見るということは現実的ではないですし、紙で保存しておくというのが実は一番安全なのであります。 ということで、IT化によって紙を減らすというのではなく、使用している伝票類のうちでどれが不要であるか、つまり、様式などの改善・効率化を考えるということが一番重要なのです。

また、この内容とも関連しますが、環境活動を長い間続けていると有害な著しい環境側面がどんどん姿を消し、目的・目標とするものがなくなってしまうという事態に陥ってしまうことが往々にしてあります。このような場合には、生産効率や作業効率の改善という有益な環境側面に着目してみましょう。これは環境影響の低減だけでなく、コスト低減などの直接的な経営メリットも生みますので一石二鳥です。

有益な環境側面についてもう一言付け加えておくと、有益な環境側面であると思われているものであっても、実は有害な環境側面が存在していてそれを軽減するための活動である場合があります。 これは目的・目標および実施計画の裏返しであり、環境側面の取りこぼしや環境影響との引当ミスというものに過ぎません。

例えば、植林について考えてみましょう。樹木を大量に伐採する製紙会社が行うものは、樹木の伐採という有害な環境側面を緩和する活動に過ぎません。しかし、樹木の伐採にかかわらない組織が実施する植林は紛れもなく有益な環境側面です。 つまり、本当の意味での有益な環境側面とは、自分たちの有害な環境側面(マイナスの環境影響をもたらしているもの)以外に対する貢献でなければなりません。

7. 文書化し、常に最新の状態に!

特定した環境側面、決定した著しい環境側面およびそれらにかかわる情報は、例えば、リスト形式などでまとめておく(文書化しておく)必要があります。また、これらの情報は状況が変化した場合および歯止め策として定期的に見直し、常に最新の状態にしておかなければなりません。

8. エコオフィスづくりの手法

8.1 初めて使用する木材パルプの使用量の削減

(1)目的
バージン・パルプの使用量を減らすことは、木材資源の節約を通じた森林の保護や二酸化炭素の吸収減の維持につながります。用紙使用量の削減自体は困難であってもバージン・パルプの使用量を削減すれば森林保護、二酸化炭素の吸収源の維持への寄与は図れます。

(2)手法・技術
古紙を利用した再生紙の導入や、既に使用している場合はさらに古紙率の高いものへの転換が考えられます。

●エコマーク製品などの使用
古紙利用率が管理されていて、安心して選択できます。

●白色度の低い用紙の選択
メリットとしては
 ・ 市中回収古紙の利用拡大が容易になる
 ・ 脱墨などの工程に伴う二酸化炭素発生などの環境負荷の低減

●古紙利用の封筒(クラフト紙)
 ・ コンピュータ用の連続用紙の再生紙化
 ・ トイレットペーパー

●紙の使用量、古紙利用率の把握

8.2 電気使用量の削減

(1)目的
電気節約量に見合う量の化石燃料の燃焼削減、すなわち、二酸化炭素などの環境負荷の削減に役立ち、発電所の設置抑制の効果もあります。

(2)手法・技術
省エネルギー型機器や器具の設置、更新、こまめなスイッチ管理の徹底など。

●省エネルギー型のOA機器の導入・更新と適切な使用
既存機器の更新に当たっては、まだ使用できるものまで更新することは廃棄物の増大による新たな環境負荷を招くことになりかねないので、更新時期を考慮した購入が必要。

●省エネルギー型の蛍光灯への切り替えとスイッチの適正管理

●その他、自販機の省エネ化、深夜残業時などの点灯管理など
深夜電力を利用(蓄熱式の給油設置などによる利用など)することが発電所増設に伴う環境負荷を削減する観点からも有益となります。

8.3 廃棄物発生量の削減

(1)目的
廃棄物処理に伴って生じる二酸化炭素を始めとしたさまざまな環境負荷を削減する。廃棄物処理場の延命化、新処分場設置を回避する。

(2)手法・技術
廃棄物を生じさせない(リデュース)、廃棄物を再利用(リユース)、再利用が不可能な場合はリサイクルするという優先順位に従う。

●用紙類の使用量の削減
 ・ 会議用資料や事務手続きの一層の簡素化
 ・ 各種印刷物の規格の統一化を図るとともに、ページ数や部数についても必要最小限となるように見直しを行う。
 ・ 両面印刷、両面コピーの徹底
 ・ 使用済み用紙の裏面使用を図る
 ・ 使用済み封筒の再利用を図る
 ・ A4判化の徹底による文書の一層のスリム化を図る
 ・ 電子メディアなどの利用による情報システムの整備を進め、ペーパーレスシステムの確立を図る

●分別回収の徹底
分別回収ボックスなどによる分別回収の徹底
 (ex. 上質紙/雑紙/新聞紙に区分・・・地域のゴミ分別ルールにより異なる)

●製品などの長期使用
 ・ 机などの事務用品の不具合、更新を予定していない電気製品などの故障の際には修繕に努め、再利用を図る
 ・ 事務用品や電気製品の容器または包装の再利用やリサイクルを図る
 ・ 詰め替え可能な洗剤、文具などを使用する
 ・ 会議などの飲料、弁当などの購入には、リターナブル容器で販売される商品を購入または注文する
 ・ 空き缶や空きパックなどの飲料容器について、適正な回収ルートを設ける
 ・ 庁舎内、社内の販売店における使い捨て容器による販売の自粛を、販売商品の自由性を配慮して呼びかける

●購入時の過剰包装の見直し
簡略で再生利用可能な包装・容器による商品購入の推進

●リサイクルの推進
 ・ 使い捨て製品の使用や購入の抑制を図る
 ・ リサイクルルートの確保などを内容とする各庁舎、各社屋ごとのリサイクル計画を策定し、その確実な実施のための責任者を指名する
 ・ 紙の繊維を切断することにより再生紙原料としての品質が低下するため、シュレッダーの使用は秘密文書の廃棄の場合のみに制限する
 ・ コピー機、プリンター機のトナーカートリッジの回収を進める
 ・ 職員への呼びかけにより、厨房施設から発生する生ゴミの量を抑制する
 ・ 効率的リサイクルの推進を図るため、収集ルートを決め、回収可能量のロットを大きくする

9. 質問と回答

質問内容 回答
組織が定めたEMS適用範囲で、組織が影響を与え得る(間接的に関与できる)環境側面とは、どこまで捉えるべきですか?
(たとえば、供給先、請負業者、輸送業者、購入物品製造メーカーなど)
組織が定めたEMS適用範囲に対し、組織が影響を与え得る(間接的に関与できる)環境側面とは、以下のように考えられます。

@ EMS適用範囲外の組織に対し委託している業務の環境側面。その業務に対し、管理責任(法的要求事項または組織が同意するその他の要求事項に基づく)が自組織にある場合は、環境側面に対し、どう関与すべきかを評価しなければなりません。 また、自ら管理すべきであると判断する場合(たとえば、そのEMS適用範囲外の組織も自組織と一体であると、世間一般から見られている場合など)も、環境側面に対し、どう関与すべきかを評価する必要があるでしょう。 そして、それらの評価結果から、自組織および/または委託先で管理手順を定め、それに基づく管理を実施する必要があります。
A EMS適用範囲外の組織からの購入物品および借用物品の環境側面。それらの物品が、自組織の活動、製品およびサービスの環境側面にどう影響するかを評価しなければなりません。そして、その結果、当該物品の購買または借用から納入に至るまでの間で、環境側面を管理する必要がある場合、管理手順を定め、それに基づく管理を実施する必要があります。
B ユーザーが製品を使用する場合および廃棄する場合の環境側面。ユーザーに対し、製品の適切な取扱い方法および廃棄方法に関する情報を提供するために、製品の持つ環境側面を評価する必要があります。
附属書Aに示されている「環境側面として配慮すべき業務委託先、物品購入先の環境パフォーマンスおよび実施方法」とは、具体的にはどのような意味ですか? たとえば、以下のように考えられます。

@ 業務委託先:委託業務の持つ環境側面の管理能力(管理実績および管理方法)
A 物品購入先:購入物品の持つ環境側面情報(環境リスクなど)
製造業で新たにプラントを設置/解体する際、業者に発注する設置/解体工事についても環境側面の特定・評価は必要ですか? 工事段階の環境側面の特定・評価は必要です。その結果、工事上の管理が必要な環境側面に関する要求事項を発注仕様などで明確にし、受注業者の施行計画およびその管理手順にそれらの要求事項が反映されていればよいと考えます。
購入物品の環境側面に関して、購入品を代理店経由で購入していますが、メーカーまで範囲に含める必要はありますか? 購入物品の環境側面とは、それらの物品が、自組織の活動、製品およびサービスの環境側面にどう影響するかを評価することです。したがって、その情報を代理店から入手できればそれでよいと考えます。
(たとえば、化学品の製品安全データシートMSDSなど)
購入物品が有害物質を含んでいますが、それを有害物質を含まない物品に代替したいと考えてもそれを実施できない理由がある場合は、組織が管理できない物品購入先と位置付けることに問題がありますか?
(たとえば、納期対応不可、単価上問題ありなど)
環境側面の評価は実施し、有害物質を含んでおり、その環境影響をどう考えるのかを評価する必要があります。しかし、その問題点に対し、規格は必ず改善することを求めているのではありません。現状、改善が困難であるならば、その理由を明確にし、その問題に対し、今後どう改善するのか、する必要がないのかを、組織として判断される必要があります。

10. 関連サイト・書籍など

11. 不適合・改善要望事例と考察

不適合・改善要望事例考察
特定した著しい環境側面、外部コミュニケーションの検討結果及び緊急事態の特定結果の関連性が認められない。 緊急事態との関連性について緊急時の環境側面の評価基準・方法を見直し、環境マニュアルを改訂する。
'05年6月に印刷機を1台撤去していたが、「環境側面の洗い出しシート」「環境影響評価表」の見直し、再評価が未実施。 設備の変更(導入・更新・撤去など)と環境活動とが実務レベルではまだ融合されていない。
新しい印刷機の導入時点で環境側面の見直しを実施し、インプットとして鉱物油、アウトプットとして洗浄廃液が特定されていれば、産業廃棄物として処理する手順ができて、水質調査におけるn-Hexの基準値オーバーが回避できたかもしれない。 新しい印刷機の導入に伴って環境側面の洗い出し、再評価は行ったが、それを水質調査におけるn-Hexの上昇傾向にまでは結び付けて考えていなかった。
製品Tでは「滞留在庫による損失の低減」を新たに目標に追加しているが、その目標につながる有益な環境側面として登録されていない。 目標設定が先行してしまい、その理由付けとしての著しい環境側面があるという認識が抜けてしまっている。
製品そのものの環境負荷(市場に出て最終的に処分されるまでに環境に与える影響)も考慮する必要がある(製品のライフサイクルアセスメントの考え方の導入)。 環境側面として製品に対する認識が今までなかった(2004年版では強調されている)。
設備・工程など何らかの変更があった場合には、環境側面・影響評価も変化し得ることを常に意識していただきたい。 設備などの変更と環境活動とが融合していない。
環境側面に関する情報として「環境側面の洗い出しシート」「環境影響評価表」に限定しているような記述を環境マニュアルではしているが、より広くとらえるような記述にしたほうがよい(例えば、初期環境調査結果など)。 環境側面に関する情報としてはこの2つが重要と考えていたが、審査員によれば洗い出し・評価に至るあらゆる情報が該当するということで、限定的な書き方はしないよう指摘を受けた。
マニュアルには「環境側面の見直しを毎年3月に実施する」と決められているが、'01.12.20以降見直しが実施されたことが確認できない。 実際には見直しされ、環境側面には変更がなかったが、見直しをしたこと、その結果変更がなかったことを証明する記録などが存在せず、第三者に対して実証できなかった。
環境マニュアルの環境側面に関する管理手順に従って、情報の最新の維持を確認したところ、印刷機を更新('03.9月実施)したにも関わらず、「環境側面の洗い出しシート」の改訂がされていませんでした。 印刷機の更新によって環境側面に変更がなかったためシートを改訂する必要がないと判断し、見直しをしたという記録もしていなかった。
××グループではマニュアルに従って環境側面が特定されていますが、原材料の保管に関する環境側面が特定されていません。また、緊急時の環境側面に火災を追加することを検討してみて下さい。 ××グループは原材料保管の業務を担っているが、環境側面を特定する際にその部分の業務を考慮していなかったため関連する環境側面が特定されていなかった。
「環境影響評価表」で廃棄物が著しい環境側面に特定されていますが、法的要求事項の欄に○印が入っていません。 特定した環境側面が環境法規制に関わる場合は「環境影響評価表」の法的要求事項の欄に○印をすることになっているが、その手順が理解されていなかったため○印が記入されていなかった。
基準点以下で著しい環境側面に特定された中でコメントのないものがあります。 環境影響評価の結果、基準点以下になった場合でも環境法規制や環境方針に関わる場合は著しい側面にすることができ、コメントを書くことになっているが、そのことが理解されておらずコメントが未記入だった。
コンプレッサーやブロアーが騒音防止法で定めた特定施設に相当するのか確認する必要があります。 騒音規制法で定める特定施設にはどのようなものがあるのか把握していなかった。コンプレッサーでは定格出力が7.5kw以上のものが該当する。
湿し水の廃水が下水道法の適用対象になるのか確認する必要があります。 湿し水廃水をそのまま下水に流していたが、水質調査をしていなかったため、下水道法で定めた水質基準を遵守しているのかどうか分からなかった。
緊急時の著しい環境側面の決定手順が記述されていません(環境マニュアル)。
規格の「環境目的を設定する際に、これらの著しい影響に関連する側面を確実に配慮しなければならない」に関する記述がありません(環境マニュアル)。
規格の「この情報を常に最新のものとしなければならない」に関する記述がありません(環境マニュアル)。

★ヤッスー部長より一言★

コンサルタントや審査員から各部署で最低1つは有益な環境側面を出すようにと言われ苦労しました。これと言って出てくるものがなく、結局、有害な環境側面の緩和手段を有益な側面として挙げざるを得ないという状況でした(有益の厳密な意味合いまでは追求されませんでした)。

上で偉そうなことを書いておきながら活動中に見逃していた側面は、

●建物外側に据付けてあるコンプレッサー
●屋外廃棄物置場
●製版部署の片隅に設置してある流し台

いずれも法にかかわるものばかりなのに管理部署が曖昧であったために漏れてしまっていました。施設・設備の管理者をちゃんと決めていないとこういうことになります。

評価については、点数方式を採用しているところが多いようですが(当方もその中の1つ)、この方法が正しいというわけではありません(手法については規格の中でまったく触れていません)。 管理者が集まって挙手により著しい環境側面を決定する方法を採用しているところもあります。要するに著しいとする根拠、プロセスが審査側に納得してもらえる方法であればよいということです。 ただし、法にかかわる側面は必ず著しい環境側面になるような手順にしておいたほうが、法の遵守という観点から見ても妥当でしょう。現に法に関する側面が著しい環境側面に決定されていないと必ず指摘を受けます。

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