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8.2.2 内部監査
組織は、品質マネジメントシステムの次の事項が満たされているか否かを明確にするために、あらかじめ定められた間隔で内部監査を実施すること。
a) 品質マネジメントシステムが、個別製品の実現の計画(7.1参照)に適合しているか、この規格の要求事項に適合しているか、及び組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項に適合しているか。
b) 品質マネジメントシステムが効果的に実施され、維持されているか。
組織は、監査の対象となるプロセス及び領域の状態と重要性、並びにこれまでの監査結果を考慮して、監査プログラムを策定すること。監査の基準、範囲、頻度及び方法を規定すること。監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観性及び公平性を確保すること。監査員は自らの仕事は監査しないこと。
監査の計画及び実施、結果の報告、記録の維持(4.4.2参照)に関する責任、並びに要求事項を”文書化された手順”の中で規定すること。
監査された領域に責任を持つ管理者は、発見された不適合及びその原因を除去するために遅滞なく処置がとられることを確実にすること。フォローアップには、とられた処置の検証及び検証結果の報告を含めること(8.5.2参照)。
(参考) JIS Z 9911-1(品質システムの監査の指針−第1部:監査)、JIS Z 9911-2(品質システムの監査の指針−第2部:品質システム監査員の資格基準)及びJIS Z 9911-3(品質システムの監査の指針−第3部:監査プログラムの管理)を参照。
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1. 内部監査とは?
会計監査、顧客監査、・・・監査という言葉は、職場でもニュースでも時折耳にしますが、ISO 9001(ISO 14001もそうですが)を認証取得する上で避けて通れないものの1つがこの内部監査です。
監査(audit):
監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス
(参考)
内部監査は、第一者監査と呼ぶこともある。内部監査は、内部目的のためにその組織自身または代理人によって行われ、その組織の適合を自己宣言するための基礎とすることができる。
とISO 9000:2000では定義されていますが、内部監査とは簡単に言えば、
内部監査:
組織の内部で品質マネジメントシステムに対して「適合性」と「有効性」について異なる部門の人が監査員として相互にチェックし、問題があれば指摘して、より効果的なシステムにする行為
ということになるでしょう。
また、直接の要求事項ではありませんが、監査業務は専門的技能が要求されるので、内部監査員は一般的には「資格」として運営されます。その場合には資格認定基準も設定しておく必要があります。
内部監査員を外部要員で構成する場合においても同様に委託要件を設定しておく必要があるでしょう。
2. 内部監査ではどこまで踏み込むか?
内部監査でどこまでの内容(広さ、深さ)をチェックするか、これはなかなかの曲者ではないかと思います。
最初のうち(認証取得前〜取得後2年ぐらいまで)は「適合性」に重点を置いて規格要求事項すべての裏返しをチェック項目として対象も網羅的に行う形でよいと思います。
しかし、回数を重ねて慣れてきたら徐々に重点を「有効性」に移行していきましょう。品質目標の達成状況や問題点など、組織としての実質的内容を議論する場として活用するのもよいでしょう。
例えば、現場で使用されている始業点検表などのチェックリストが有効に機能しているかをチェック項目そのものにまで踏み込んで確認することも必要になるかもしれません。
「7.1 製品実現の計画」において明確にした、例えば「個別製品に対する品質目標」「製品合否判定基準」「記録」などが個別製品において決められたとおり実施されているかも監査の対象となります。
また、内部監査のやり方として、部署割り(縦割り)で行うことが大半を占めると思いますが、内部監査の効果を狙うならばプロセスとその相互関係を見る(横割り、横断的)形の内部監査も検討すべきでしょう。
3. 内部監査のプログラム・計画
内部監査を実施するに当たってはプログラム、計画を策定することが要求されています。このプログラムと計画についての詳細はISO 19011:2002(JIS Q 19011:2003)に規定してあるのでここでは割愛しますが、内部監査のプログラム・計画として次のような事項を決定しておけばよいと考えます。
・ 監査の区分(定期監査/臨時監査)
・ 監査の目的(不適合の検出を含む適合性・有効性の評価・判定)
・ 監査基準(適用規格:JIS Q 9001:2000、品質マニュアル、手順書、規定など)
・ 監査の範囲(部門/部署、システム、プロセス、製品)
・ 監査の方法(書類監査/実地(現場)監査/全数・抜取りなど)
・ 監査対象部門の責任者、連絡窓口
・ 内部監査員の選定、監査チーム編成
・ 監査日程、時間割、場所
・ 特記事項(重点監査事項、制限事項など)
また、内部監査の計画として年度計画を作成し、この1年間どう監査を実施し、品質マネジメントシステムをよくしていくかということを、監査の目的と結び付けて戦略的に検討することが望ましいです。
4. チェックリストを使用する利点と弊害
内部監査はチェックリストに基づいて行うのが通常と思いますが、チェックリストを使用することによる利点には次のようなことが挙げられます。
・ 効率よく監査でき、監査に要する時間が節約できる
・ 監査項目の見落としがなくなり、監査漏れが防止できる
・ 監査での発見事項や結果を書き留めると、それが記録となる
・ 監査の深さや範囲が維持され、監査の一貫性が確保できる
・ これまでの監査結果(を記録したチェックリスト)と対比しやすい
・ 完了/未了の監査項目を見渡すことにより、内部監査の進捗を確認することができる
一方、生じ得る弊害としては、
・ チェックリストの項目しか質問せず幅の広がりがない
・ 被監査者からの不適合になり得る回答に対して臨機応変に対応できない
・ 毎回同じチェックリストを使用し、内部監査のレベルが向上しない
などが考えられますが、これらはいずれもチェックリストの使い方や内部監査員への教育・訓練によって回避できるものです。チェックリストの使用は弊害よりも利点のほうが大きいと思いますので、チェックリストの使い方を工夫し、内部監査員に対しても十分に教育・訓練を施すことにより有効に活用していきたいものです。
5. 不適合・改善要望事例と考察
不適合・改善要望事例 | 考察 |
内部品質監査の是正状況を確認したところ、軽欠点に関するものに対する是正処置が見えませんでした。 |
是正書は重大な不適合に対して発行し、軽欠点は口頭での是正処置で済ませるという取決めになっていた。 |
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