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◆ ISO 14001規格の概要説明

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4.1 一般要求事項

 組織は、この規格の要求事項に従って、環境マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善し、どのようにしてこれらの要求事項を満たすかを決定すること。

 組織は、その環境マネジメントシステムの適用範囲を定め、文書化すること。

1. トップマネジメントの意思表明

環境マニュアルや手順書などが完成するとあたかも環境マネジメントシステムが確立(構築)されたと錯覚しやすい(そう思いたいですけどね・・・)のですが、あくまでも机上での到達点であって環境マネジメントシステムの完成にはまだまだほど遠いのです。

作成した環境マニュアル、手順書どおりに実際に事が進むのかと言えばそんな簡単なものではありません。自分の組織に浸透するシステムなのかどうか見極め、適切で妥当で有効なシステムに作り上げていかなければなりません。

実はこのことのほうが文書作成よりも非常に難しく、問題が多発することが多いのです。しかも、経営者・役員・部課長を含めた全従業員に責任・権限・役割を分担させながら、全社一丸となって取組まなければならないのですから当然です。

全社・全従業員を総動員するためには、何と言っても最高経営者(例えば、社長など)の天の声が必要です。「みんなでやるぞ!」といったコミットメントとキックオフ宣言は欠かせません(このときの意気込みを継続させることがもっと重要です!)。

ISO 14001認証取得活動に取組むに当たって上層部(経営層および管理職以上)の人たちに経営者向けISO講習会にでも参加してもらい、決意を新たにしてもらうということも場合によっては必要かもしれませんね。

2. 初期環境調査

JIS Q 14001(ISO 14001)の要求事項にはないことですが、環境マネジメントシステムの構築に先立って「初期環境調査(初期環境レビュー)」を実施しておいたほうが後々のことを考えるとよさそうです。 審査機関によっては初期環境調査の実施を求められることがありますし(欧州系審査登録機関)、環境方針、該当する環境関連法規制の特定、環境側面の抽出、過去の環境事故などのタネを撒いてくれるはずです。

JIS Q 14004には初期環境調査において調査することが望まれる項目例が挙げられていますので、それらを参考にするのもよいかと思います。ちなみに当方で調査した項目を次に挙げておきます。

・ 適用範囲内にある事業所のサイト図(建物のマップと施設・設備・排水経路などの配置を書き込んだもの、周辺の状況が分かる地図)
・ 購入材料の一覧
・ 購入先・外注先の一覧
・ 関係のありそうな環境関連法規制の一覧
・ 今までに受付けた顧客や周辺地域からの環境に関する苦情・要望

また、初期環境調査でしっかりやっておけばよかったと今になって思う項目は、

・ 廃棄物(一般、産廃、特管物)の種類と量
・ 行政などへの必要届出の調査(提出済み分を含む)
・ 下水などの水質調査

です。

3. 適用範囲の明確化と文書化

環境マネジメントシステムを具体的にどの領域に対して適用させるのかを決定し、環境マニュアルなどに文書化しておくことが要求されています。適用範囲の文書化は「4.4.4 文書類」でも要求されています。

考慮すべき領域としては大きく分類すると次の4つになると考えられます。

・ 物理的な範囲(立地、敷地、住所など)
・ 活動の範囲
・ 製品およびサービスの範囲
・ 他のマネジメントシステム(例えば、品質、労働安全衛生)とのかかわり

原則として、決められた物理的な範囲(敷地)の中での活動、製品およびサービスを除外することはできず、すべてについて環境管理の対象にしなければなりません。

また、例えば「○○事業所は適用範囲から除く」などのように適用除外がある場合には、それを妥当だと説明できる必要もあります。

適用範囲を決める上で最もあいまいになりやすい(グレーゾーンを生じやすい)のは、「4.3.1 環境側面」における“影響力を及ぼし得る環境側面”のところで影響を及ぼし得る範囲をどのように決めるかという部分です。“影響を及ぼし得る”とは具体的には例えば、

・ 購買先、協力会社
・ 製品の納入後(廃棄後)の行方
・ 離れた場所での工事・建設

などが考えられますが、規格の意図からするとなるべくこれらの間接的で微妙な部分も範囲の中に入れることが望まれます。いずれにしても、これらのグレーゾーンのボーダーラインの線引きは、組織の自主的な判断に委ねられることになります。

4. 質問と回答

質問内容 回答
組織がEMSの適用範囲を定めたら、その理由まで文書化が必要ですか? EMSの適用範囲は文書化が必要ですが、その適用範囲を定めた理由を文書化する必要はありません。しかし、当該EMSを審査登録するための前提条件として、当該EMSの適用範囲が妥当であることが必要です。したがって、その点を審査員は審査上必ず確認します。

5. 関連サイト・書籍など

6. 不適合・改善要望事例と考察

不適合・改善要望事例考察
マニュアルの「1. 適用範囲」から、他システムとのインターフェイスに関する記述が抜け落ちている。 「適用範囲」にシステム的な住み分けに関する記述(労働安全衛生、QMSなどとの関係)が必要だとは思っていなかったため、記述していなかった。

★ヤッスー部長より一言★

組織トップからの天の声と認証取得に向けた意気込みは後々の活動の状況を非常に左右する要因の1つになります。実作業に就く従業員の士気、やる気に大きく影響するからです。当方では明確な意思表示がなされないままに取得活動に入ってしまったため、「今、ISO 9002の活動をやっているんでしょ?」などという声もちらほら出てくるという始末。 これは取りも直さず、環境活動が一部の人間だけで行われてしまっているという実態をも浮き彫りにしています。このような状況に陥らないためにも全従業員に対して環境活動にこれから取組むんだという強い意思を表明し、活動への全員参加を促しましょう。

初期環境調査は審査員が要求しようとしまいとにかかわらず実施しておいたほうがよいと考えます。環境的な状況を常に把握している組織ならば取り立てて実施する必要もないでしょうが、初めてこのような活動に取組む場合には現状がいったいどうなっているのかを把握するためにも是非やっておくべきでしょう。

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