Tallulah says, "If you must complain in public, either be amusing
or outrageous."
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1. 日本語に何が起きているんだろう
もしかして、誤植かな?
1. ハブマイアに引っ越してからは、だれからもボーと呼ばれなかった。お父さん以外は、だれも。(P.11)
After we settled in Havemyer, no one called me Bo. Except Father. (P.7)
2. アスピリンを飲むときは、水を大きなコップいっぱい分かならず飲ませてあげるんだよ。(P.104)
And make sure when he takes aspirin, he takes a big glass of water. (P.68)
3. ぼくが生まれたとき最初にみたものが虹だったということを、お父さんお母さんの両方が縁起のいいことだと思ってきた。(P.11) * 1
Both my parents always regarded it as a good omen that the first thing that Farther saw after I was born was a rainbow. (P.7) (注: 虹を見たのは父親です。)
4. でも、その人たちにはきまってこういうおもしろいことがあるんだ。おれは会議の場所ではどんなだか知らないが、会議以外ではおたがいを結びつけている共通点のことなんか、いっさい話さないのさ。(P.131)
But, here's the funny thing about the people. I've never seen them at their meetings, but they never talk about what it is that unites them when they're not at a meeting. (P.85)
主語が抜けていたり、述語が一致していなかったり. . . 。児童書では、ただちにレッドカードだと思います。
なぞなぞの答え、教えてください
(ラクダの)アーメッドは、お父さんが夕飯を買いに出かけたとたん、腸の中をからっぽにした。ぼくはそれをシャベルですくいあげると会場をぐるっとまわり、さっきなかに入れてくれようとしなかった警備員が立っている入り口まで行った。警備員の前をとおるときは、「バッジは一と二のかたまりの下にありますから。」と言って、そのまま歩き続けた。(P.86)
Ahmed emptied his bowels once while Father went out for our supper. I scooped it up, and circled around the room so that I could walk by the door where the guard who would not let me back in before was posted. As I passed him, I said, "The badge is under lumps one and two," and I walked on by. (P.56)
5. " 一と二" のかたまりって. . . ?
この one and two は、1番: number one (おしっこ)と 2番: number
two(うんち)で、つまり、「(入場許可証の)バッジは、おしっことウンコのかたまりの下にあるよ。」ということではないかと.
. . 。
カニグズバーグへの手紙の中でも、「私が胸をつくる」って? と書きましたが、意味不明のことを活字にしてしまう、その乱暴さがイヤです。 どんなに難しい言葉があったとしても、子どもたちは、辞書で調べたり、誰かにきいたりして、意味を理解することができます。でも、「無意味」では.
. . 。
「一と二」のまま載せるくらいなら、「バッジはこのかたまりの下にあります。」の方が、まだいいような.
. . 。
批評家/翻訳家 の 山形浩生さん から、以下のようなご指摘をいただきました。
> おしっこは流れちまうのでlumpにはなりません。 > これは単に、うんこの山が二つあったんでしょう。 > もっとも、その前の部分(最初にこの警備員とやりあったくだり)を > 読んでないので、断言はできませんが。 |
― そうかぁ、確かにおしっこは流れちゃいますよね。それともウンチと混じって粘土のようとか?
(そもそも、ラクダって、ウンチとおしっこを一緒にするのかしら。)
皆さんはどう思われますか? ぜひご意見をお聞かせください。 →
山形さん、ご連絡ありがとうございました。 (感涙)
お父さんがアーメッドをその洗車室から外に出そうとしてやさしく声をかけていたら、子どもたちを乗せた車が二つ先の洗車室に入った。・・・ 六人の子どもたちは、アーメッドにまけないぐらい怒りまくりながら車に戻っていった。・・・あの子たちの車がエンジンをかけて、こっちにむかって音を立てて走ってきたからだ。(P.64)
Father was cooing to Almed, ready to lead him out of the stall, when a carload of kids pulled into a booth two down from ours. ・・・ (P.42)
6. 誰が、エンジンをかけたのか?
ここでのkids は、車の運転ができる年齢の少年たちです。その訳が、「子ども」「あの子」「男の子たち」など、マックスと同じくらいか、それ以下の年齢の子を連想させるものばかり。読者には、誰が車を運転していたのか最後まで分かりません。 「誰か大人が、悪ガキたちに荷担しているんだ、ひどいヤツ!
」と勘違いさえしそうです。
・・・ その女の人がリリーに話していた。夫(やすらかに眠りたまえ! )といっしょにコンピューターの専門家の大会に出席しようとパキスタンのカラチに着いたら、ホテルの予約記録にまったく書きこまれてなかった。(P.145)
The woman, ・・・, began telling Lilly a story about when she and her husband ―may he rest in peace ― had arrived in Karachi, Pakistan, for a convention of computer specialists and they had had no record of their reservatons. (P.95)
7. 夫(やすらかに眠りたまえ! )といっしょに. . . ?
この文をいきなり読まされて、戸惑わない子どもの読者っているんでしょうか。「今はなき人」とか、「お墓の石に刻まれた」とか、なんでもいいけど説明がほしいな.
. . 。筋には何の関係もないことで、物語への集中を途切れさせるのは、もったいないですし。
私たちの日本語は、いつからこんな風になってしまったのでしょう。
印刷機がまわるまでに、いったい何人の人が、責任を持って原稿を読んだのでしょうか。
でも、ため息ばかりついてないで、とにかく考えなくちゃ。
* 注1 上記のうち、3. 「虹を見たのはお父さん」の箇所は、2002年3月発行のカニグズバーグ作品集
5 に収録された『800番への旅』では修正されています。それ以外は、ハードカバーの立派な全集でもそのままです。
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