論理哲学論考 1-7 4.1-4.5 4.41-4.46
      
4.46 諸真理条件の可能なグループ全体のうちには、ふたつの極端なケースが存在する。
ひとつのケースでは、当の文は当の諸基本的文の総ての真理可能性について真だ。我々はそうした真理条件はトートロジカルだと言う。
第二のケースでは、当の文は総ての真理可能性について偽だ。つまり、そうした真理条件はコントラディクトリだ。
第一のケースにおける文を我々はトートロジーと呼び、第二のケースではコントラディクションと呼ぶ。
4.461 文はそれが述べることがらを示す。トートロジーとコントラディクションはそれらが何も述べないことを示す。
トートロジーは真理条件をひとつももたない。それは無条件に真なのだから。また、コントラディクションはどんな条件のもとでも真ではない。
トートロジーとコントラディクションは無意味〔sinnlos〕だ。
(そこからふたつの矢印が反対方向に岐れている点のように。)
(例えば、私は、雨が降っているか降っていないかのどちらかであることを諒解していても、当の天気については何も諒解していない。) 〔4.4611
4.462 トートロジーとコントラディクションは現実の像ではない。それらは何の可能な状況も表わさない。トートロジーはあらゆる可能な状況を許容し、コントラディクションはひとつも許容しないのだから。
トートロジーにおいては、世界との一致の条件――表わしの関係〔die darstellenden Beziehungen〕――の総ては互いに帳消しにし合う。そのためトートロジーは世界に対してどんな表わしの関係にもない。
4.463 ひとつの文の全真理条件は、当の文によって事実全般に許容される遊びの範囲を規定する。
(文、像、模型は、ネガティヴな意味では、他の物体の運動の自由を制限する硬い物体のようであり、ポジティヴな意味では、そこに或る物体が在り処をもつような、硬い物質で境界づけられた空間のようだ。)
トートロジーは現実に対して論理的空間全体――無限の――を許容する。コントラディクションは論理的空間全体を充たし、現実に対してひとつの点も許容しない。どちらも、だから、現実を規定することなど到底あり得ない。
4.464 トートロジーの真理性は確実であり、文の真理性は可能、コントラディクションの真理性は不可能だ。
(確実、可能、不可能。ここで我々は、確率論で必要とする例の等級づけの先触れを手にしている。)
4.465 ひとつのトートロジーとひとつの文の論理積は、その文と同じことを述べる。だから、当の積はその文と同一だ。ひとは、シンボルの意味を変えずに、当のシンボルの本質を成すものを変えることはできないのだから。
4.466 諸記号の特定の論理的結びつきには、それらの記号の意義の特定の論理的結びつきが対応する。あらゆる任意の結びつきは、もっぱら結びつけられていない諸記号に対応する。
つまり、あらゆる状況に対して真であるような文は、諸記号の結びつきなどでは全然あり得ない。もしそんなことがあり得たならば、その結びつきには諸対象の特定の結びつきしか対応し得ないだろうから。
(また、諸対象の結びつきで何の論理的結びつきにも対応しないものなど無い。)
トートロジーとコントラディクションは諸記号の結びつきの境界ケース、つまり結びつきの解消だ。 〔4.4661


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