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KONIGSBURG
お正月は、甥や姪たちと遊んだり、本を読んだり. . . のんびり楽しく過ごしました。
時折、「カニグズバーグをめぐる冒険」は、これからどうなるのかなぁ?
などと考えながら. . . 。
海なのか山なのか、風ぞたよりのしるべなりける. . .
でも、もう一人ではなくて、だから、怖がることはなくて、きっと今年の「冒険」もステキに違いない、と思い.
. . そして、そんなふうに思わせてくださる皆さんに、心から感謝しています。
2004年も、どうぞ、おつき合いください。
先週から、"A Proud Taste for Scarlet and Miniver" (1973年作品。邦題:『誇り高き王妃』)を読み返しています。
この物語の主人公は、歴史上の人物、アキテーヌのエレアノール(1122-1204。フランスとイングランド、二つの国の王妃になった人)。
『エリコの丘から』で、タルラ・バンクヘッドが、タルーラに投影されたのとは違い、"A
Proud Taste・・・" は、史実に基づいたお話です。
今から30数年前、カニグズバーグは、ジャン・アヌイの戯曲「ベケット」(イングランド王ヘンリー二世と、カンタベリー大司教トーマス・ベケットとの友情と確執を描いた作品)の舞台を観て、ヘンリー二世の妻、「若き王妃」と呼ばれる人物の描れ方に疑問を感じ、その女性のことを調べ始めました。ちょっとした調べ物のつもりが、すっかり夢中になってしまったのだそうです。その若き王妃が、アキテーヌ公国のエレアノールでした。
What started as a cursory examination became a passion.
What a woman! What a woman was Eleanor of Aquitaine. (TalkTalk P.95)
昨年10月、私も同じような経験をしました。岩波版『エリコの丘から』のタルーラの言葉遣いに納得がいかず、そのキャラクターのモデル、女優タルラ・バンクヘッドのことを調べたのです。そして思いました。
「うわぁ、なんて人なの! タルラ・バンクヘッドって、なんて素敵な人だったんだろう。」
― What a woman! What a woman was Tallulah Bankhead.
最初は、ザッとのはずだったのに、11月には、なんとバンクヘッドの遺言書まで読んでいました。「知りたい気持ち」が止まらなくなっちゃって、ほとんど熱病というか「恋」に落ちたというか.
. . ハタから見たら、相当に変だっただろうと思います。(笑)
そして、新しい年が来て、また「恋」の予感. . . 。 今、私の中の「知りたがり病」がザワザワしています。
王妃エレアノールの魅力については、カニグズバーグの物語を通じて、十分に知っているつもりです。それなら、他にいったい何を知りたいのか、正直よくわかりません。 もしかしたら、1960年代の終わり頃に、若かりしエレイン・カニグズバーグがエレアノールという女性を見い出した、その軌跡をたどってみたい、ただそれだけなのかもしれなくて、でも、誰かが、私の名を呼んでいるような気がして.
. . なので、とにかく出掛けてみることにしました。三昔前のアメリカへ、中世のヨーロッパへ.
. . 。 "Ta-Dah!"
「恋」という文字を多用するほど、ロマンチック・モードになっているのは、きっと、すでにしてエレアノールや彼女の愛した吟遊詩人たちの魔法に掛かってしまったから.
. . 。 だって私、普段はわりあい "クール & ドライ × ふわふわ"
で、決して情熱的なタイプではないんです。ほんとうに。 ^^
珍しくロマンチック. . . のついでに、私自身へバレンタインの贈り物を。―
2月1日発売予定のカニグズバーグの新作、"The Outcasts of 19 Schuyler Place" を予約注文しました!
(邦題は未定。エレインによれば、この新作の翻訳権も、昨夏岩波書店が獲得したのだそうです。読んでみないとタイトルを決められないので、仮題(試題)も未定ですが、直訳すると、「スカイラー・プレイス19番地のはみだし者たち」という感じでしょうか。)
オリジナルで読まれる方や、英語学習のテキストとしてお考えの方のために、少しだけ書かせてくださいね。それに、こんなふうに騒いでいれば、邦訳を望んでくださる方が増えて、新刊の出版時期が早まる可能性も出てくるかも
. . . 。 ^^
さて、"The Outcasts of 19 Schuyler Place" ですが、
アマゾンjp の WEBカタログには、「ハードカバー、対象: 4-8歳児」とあったので、私は、うかつにもずっと「絵本」だと思っていました。もちろんカニグズバーグの絵本も大好きなのですが、米国のサイトを見たら、対象は9-12歳とあり、あらすじには、"コナーの姉マーガレットが12歳のとき.
. . " と書かれています。
ということは、"Silent to the Bone" (邦題 『13歳の沈黙』)
の主人公、コナー少年の優しいお姉さん、マーガレット・ローズの少女時代の物語で.
. . 「絵本」ではなさそう。
キャベツ畑人形が大流行し、サリー・ライドが米国初の宇宙飛行士になった年の夏、とあるので、1983年.
. . 。そして、またEpiphany(エピファニー)が舞台のようです。
ここで、"Silent to the Bone " の邦訳 『13歳の沈黙』を 読んでみてください、と言えたなら、ほんとうに幸せなのですが. . . 残念です。
実は、この作品の邦訳だけは(町の図書館で、何度か貸し出し中で)未読のままでした。ようやくこの冬休みに読むことができて、そして、呆然.
. . 。 売れ行きも良く、すでに第五刷だと聞いていたので、もしかしたら、と期待していたのですが。
『エリコの丘から』のように土台からまったく違うということはないけれど、日本語の本としては、『ティーパーティーの謎』や『800番への旅』、そして『誇り高き王妃』と同じくらいに問題があり.
. . (と思います). . . 途方に暮れています。
今はまだ、詳しく説明する気持ちになれないのですが、どうか皆さん、これだけは知っていてください。
カニグズバーグの原作には、一縷の乱れもありません。
主人公の二人の少年、ブランウェルとコナーは、日本語版よりも、はるかに素敵で、彼らの好きな「言葉遊び」は知的なものであり、コナーの異母姉のマーガレットは、もっとずっと深みのある女性です。
現代社会が内包する問題に、登場人物それぞれの家族との確執、愛されることへの憧れや衝動を絡め、そのテーマは重く深遠で.
. . だのに、お洒落で粋な推理小説みたいで、そして、さわやかで心温まる物語なのです。
すべては、「日本語が変でも、矛盾があったりしても、それでもなお、すごく面白い」という類の
"傑作" を作り出す、カニグズバーグの罪なのかもしれない. . . けど.
. . 。
新年早々、ひどく悲しくて、そしたら、エレアノールに会いたくなって、(なにしろ、「誇り高き王妃」なので、落ちこんだときには、うってつけの人なのです)、そして、また胸がキュン.
. . 。
生きていくのって不思議です。悪いことばかりは続きません。やっぱり、薔薇色の人生かもしれない。少しだけグレーの混じったような
. . . 。
あ、新作の "The Outcasts of 19 Schuyler Place" のことを、お話していたのでした。
えっと、表紙の絵は、薔薇の花みたいで、とっても綺麗。↓ どんな意味を持っているのでしょうか。ヒロインの名、マーガレット・ローズとも関係がありそう.
. . ?
この新作には、オーディオカセット版 があります。ハードカバーの本に三週間ほど先行して、発売されました。
「神様、今年はリスニングの練習をします。絶対にします。だから、買ってもいいですよね?
」という、変な言い訳をしながら、テープも注文しちゃいました。^^
解説によると、カセットテープ 4本で、収録時間は 5時間32分。価格は
2,470円くらい。( 5時間半ということは、やっぱり小説ですね。関係ないけど、こういうのと比べると、日本の語学教材は、割高なものが多いみたい.
. . 。)
Read by Molly Ringwald とあるので、朗読は、ジョン・ヒューズ監督の「ブレックファスト・クラブ」や「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角
」などで、青春映画のアイドルと言われた女優の モリー・リングウォルド が担当しているようです。
聴いてみないと判らないことも多いし、私の英語の力では、聴いても解らないことの方が圧倒的に多いに決まっているのに、それでも届く日が待ち遠しい.
. . 。^^
近いうちに、新作のすがすがしい読後感や聴後感 ? を、そして、王妃エレアノールにまつわる楽しい逸話なども、ご報告できるといいなと思っています。
もちろん「邦訳」についても、考えていきます。美しい日本語で書かれた本が一冊でも多くなることを祈りながら.
. . 。
でも、(ここからは小声で. . . ) いつか、カニグズバーグ作品の中の素敵な言葉を集めて、小さなアンソロジーのようなWEBページを、プリントアウトして切り抜いたら、絵はがきや本の栞になるようなページなども、作りたいなぁ.
. . 。 そんな他愛のないことが、私の夢だったりします。
とにかく、今月は、12世紀へ行ってまいります。
皆さんの夢も、一つ一つ叶っていきますように. . . ♪
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Tallulah says, "If you must complain in public, either be amusing or outrageous."