Tallulah says, "If you must complain in public, either be amusing or outrageous."
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7. あたたかなライン


* ウッディの友人のマヌエロ少年が、困っているマックスに手助けを申し出る場面があります。(原文、P.66)

  「心配すんな、マックス。」と言って、マヌエロは、自分が手伝えることの内容を具体的に説明します。「ウッディからじかに教わったんだよ。」と、父親と離れて暮らしていたマックスには辛いかもしれないことも言います。そのときマヌエロは、ちょっとの間話をやめて考えています。それから、別の案を提示します。
"・・・Woody taught me hisself." He thought a minute and then added, "Unless ・・・"

  岩波少年文庫の『800番への旅』では、このマヌエロのせりふは一続きで、「マヌエロは、ほんの少し考え、そしてつけ加えた」にあたる文がありません。(P.102)
  マヌエロの優しさや思慮深さを知る手がかりになる部分だけに、抜けているのはとても残念。
  こういう箇所って、音楽でいうと、休符のところに曲想や奏法の記号が書かれているような感じかな、と思います。一呼吸おいて、息を合わせて. . . 。

  テキサス州リオグランデの谷で、父親のメロン畑を手伝うメキシコ系の少年. . . 。マヌエロの話し方は、そして声はどんなだろう?  なんて、いろいろ想像してみます。^^


* マヌエロの hisself は、とくにアメリカ南部で話される方言で、himselfのことです。詳しくは → Hisself




* 「たぶん、ラクダがきらいなだけなんじゃないの。」
「おまえだったら、そういうことも理解できるんじゃないか。」お父さんが言った。(P.67)
"Maybe they just don't like camels."
"I guess you could understand that," he said. (p.44)

  災難に遭った後、互いになぐさめ合っている父子の会話です。マックスがラクダを好きでないことは了解事項だから、たぶん笑いながら、肩をすくめるとか、ウインクしながらのやりとりで、そんなとき、ウッディが「理解」なんて言うかなぁ. . . 。

* 「(やつらは、)ラクダを好きじゃないってだけかもしれないよ。」
「おまえなら、そんなことも分かるんだろうさ。」と、父さんは言った。


  他にも、同じような場面で、重要、習慣、次回、朝食、といった硬い感じの言葉が唐突に混じるのですが、話し言葉だし、とくに朴訥なウッディには、大切、しきたり、この次、朝飯、などと言ってほしい. . . 。



* ・・・ぼくはそのブーツを買った。まあ、マラテスタさんとはくだらないことは気にせずにパーッと使うって約束したわけだし、ブーツ自体は、高い点はべつとしてもくだらないもののようにはみえなかったし。ぼくは自分のその考えをお父さんに話した。
  お父さんはぼくの考えに賛成してくれなかった。「かっこよくて、値段の高いブーツを買うことがくだらないんじゃないんだ。くだらないのは、それを人に話すことなんだ。」
ぼくは、お父さんが何を言いたいのかわかった。(P.132)


  マックスが何を言いたいのか、わかりません。
  マラテスタさんは、"Spend it foolishly," 「馬鹿みたいに(くだらないことに)使いなさい」と言って、マックスにお小遣いをくれたのです。上の文では、「くだらない」という言葉の使い方が途中でねじれているし、なぜマックスがその高価なブーツを買ったのか、説明になっていません。

・・・And so I bought them. After all, I had promised Mr. Malatesta to spend the fifty dollars foolishly, and boots didn't seem foolish unless they were expensive, and I explained my thinking to Father.
  He didn't agree. "To buy fancy and expensive boots is not foolish, but talking about it is."
  I understood what he meant.(P.86)


  マックスは、「こんなに高い買い物、馬鹿みたいかな。だけど、すごく気に入ったんだから惜しくはないよね?」と、自身の選択が正しかったことを納得しようとしています。
  子どもが決心するまで、さりげなく後押ししてきた父親のウッディは、マックスが言い訳を必要とすることや、その言い訳自体のおかしさを指摘はしても、マックスの決定については認めています。「もちろんそれでいい」と。
  だからこそマックスは、ウッディの言わんとすることをスッと理解するのでしょう。

* ぼくはブーツを買った。何といっても、この50ドルは馬鹿げた使い方をするって、マラテスタさんと約束したんだしね。まあ、値段がばか高いことを別にしたら、ブーツはちっとも馬鹿みたいには見えなかったけど。 それでぼくは、その考えを説明してみた。
  父さんは賛成しなかった。「しゃれた高いブーツを買うなぁ、馬鹿げてなんかないさ。ただ、それを人に話しちゃあ、馬鹿だけどな。」
ぼくにも、父さんの言いたいことがわかった。


  このシーンも、とても温かい. . . ♪


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やみぃの屋根裏部屋
Yummy's Attic



* Hisself

Chiefly Southern & South Midland U.S. Himself.
Speakers of some vernacular American dialects, particularly in the South, may use the possessive reflexive form hisself instead of himself (as in He cut hisself shaving) and theirselves or theirself for themselves (as in They found theirselves alone). These forms reflect the tendency of speakers of vernacular dialects to regularize irregular patterns found in the corresponding standard variety.

Hisself is a Substandard form of the reflexive and emphatic pronoun himself. It occurs almost exclusively in speech and is used as a shibboleth against all inadvertent users except very small children.

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