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サバイバーシップ  2
 

心の傷
生き残るとき
キャンサーギフト


* 心の傷   ― Be extra sweet


サバイバーの中には、サポートグループを作って、同じ病気の後輩たちのために働き始める人がいます。医療制度の改革に乗り出す人がいます。
自らの体験を手記や小説にして表現する人たちもいます。

治療中から仲間と励ましあいながらやってきた人は、ずっとその場所に残るかもしれません。本来のアイデンティティーを取り戻すために、グループを離れる人もいるでしょう。

ひとりで克服すると言って、実際にそのとおりにできる人もいます。
病気のことは忘れたいと、最初から、がんに関することには一切関わりを持たない人もいます。


どんな風に自分の経験とつきあっていくかは、ほんとうに自由です。きっと一人一人がそれぞれに一番ふさわしい方法を選んでいくのですよね。

ただ、上記のケースはどれも、― がんという病気はやはり「かなりのもの」である― ということを、図らずも あらわしているように思います。

がんが見つかっても全然へいちゃらだった人は、あえて、誰かの役に、とか、励まし合う、とか、取り戻す、克服する、忘れたい、なんて言わないですものね。


現在はすっかりお元気な方も、かつて心や体が多少なりとも傷ついたという事実は、忘れないでいてください。


病気にまつわる体験がトラウマになって、今、PTSD のしんどい友人が2人 . . . 。
PTSDというのは、"Post-Traumatic Stress Disorder" 「心的外傷後ストレス障害」という心の病気ですが、他にも、術後、何年も経ってから、パニック障害や、うつ症状の出てきた人も少なくありません。


心の傷は目には見えないから、気づきにくいし、つらいんですよね。
これは、がんのサバイバーに限ったことではないけれど . . . 。
さしたる原因もないのに、普段と違う状態になったときには、医師に相談してくださいね。


時々は、ゆっくり休んで、自分自身に、うーんと甘く優しくしてあげること、大切だと思います。とっても大事なことだと思います。

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* 生き残るとき   ― May you feel no guilt for surviving


5年目の検査をすべて無事にクリアした胃がんの M さんが沈んでいました。

ホッとはしたの。だけど、亡くなった友達を思うと、申し訳なくて。私、彼女に泣き言ばかり言って、心配かけどうしで. . . 。C ちゃんの分までしっかり生きなくてはと思うの。でも、私にその資格があるのかしら、って。 なんだか無性に悲しくなってしまって . . . 。(M 35歳)

サバイバーズ・ギルト (Survivor's Guilt - 生存者の罪悪感、生き残ってしまったことへの負いめ) とよばれる感情だと思います。

私は M さんが元気になってくれて、とても嬉しい。ご家族はどんなに嬉しいことでしょう。仲間たちにとっても何よりの励みです。だから、ちゃんと喜んで、盛大にお祝いしなくちゃ、ですよね。

でも、私も . . . 。 1年目のCTスキャンや骨シンチが無事に済んだとき、友人が亡くなったばかりで、自分の幸運を喜ぶことができませんでした。



2001年9月11日、NYCでテロ事件が起きた後、二種類のお祈りのカードを作りました。
一つには、親友が送ってくれた詩を載せて。→ Prayer-2
その詩の次のラインを読んだとき、涙があふれて止まらなくなりました。

      I pray for the injured
      And those who were spared
      May they feel no guilt for surviving

        負傷した人々のために 祈ります
        そして助かった人々のために
        彼らが生き残ることに いかなる罪の意識も感じないように


テロや報復戦争の惨禍で亡くなった人々のこと、ほんとうに悲しく悔しい。
家族や友人の哀しみはいかほどでしょうか。
同じ時、同じ場所で、共に働いていた同僚をなくしたオフィスの人々や消防士さんたちの気持ち . . . 。
そして、アフガニスタンでかろうじて生き残っている人々の気持ち . . . 。


彼らが、生きていくことに 罪悪感を持つことなどありませんように。
(アフガンでは、今はそんなことを感じる余裕さえないと思うけれど。)


どうか、私たちも、生きられることを 後ろめたく思ったりしませんように。
ただ 祈ります . . . 。


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* キャンサーギフト   ―  Cancer's Gift


昨年の誕生日、バラの花束をもらいました。
添えられたカードには、踊るような文字で、

      //   どんなバラも、棘を持っている。
               どの棘も、きれいなバラを持っている。  //

         大好きな 黄色いバラと、大好きな ことわざを
           大好きなやみぃに 贈ります。
              ガンという痛い棘が、あなたを届けてくれました。
                 私のcancer's gift に、お誕生日おめでとう!


A Yellow Rose


キャンサーズギフト . . . がんのくれた贈り物。
患者やサバイバーの間ではポピュラーな言葉です。それにしても、なんて見事なメッセージでしょう。 さすがはアタシのお友だち!!  なんちって。    . . .  ありがとう。


美しい Cancer's gift という言葉。
でも、つむじ曲がり+照れ屋の私は、なかなか使うことができません。

もちろん、がんという病気がきっかけで出逢えたステキな人はすごく多く、病気が教えてくれたこともたくさんです。古くからの友人たちの支えや、周りの人たちの優しさも、考えると一秒で泣いてしまうほど嬉しいし . . .。 (涙)

がんにお礼を言わなくちゃいけないかしら? と 感じることも、多々あります。


    誠実に真摯に、でも、深刻にはならないの。
    何度でも落胆して、だけど、決して絶望はしないんだ. . .


こんなに意志的な想いが、泣き虫で甘ったれの私の中からスッと出てきた時には、自分でも驚きました。こんな不思議なこと、Cancer's gift と考えるしかないか、とも思います。


でもね、病気がきっかけで親しくなれた人たちは、別の場所で、別の逢い方をしても、好きになったに決まっています。それほどに魅力的な人たちだもの。

そして、患者として学んだことはすべて、病気をしなくても、気づかなければいけないことばかりだと思っています。

だから、そうしたいろいろを、Cancer's gift って、言いたくないのです。


病気を持たなかったとしても、私には、素敵な出逢いや、せつない別れがあったでしょう。
毎日一所懸命に生きて、少しずつは賢くなって、今と同じくらいに、楽しく暮らしていたでしょう。
たぶん、きっと。

大切なことに気づくのに、時間は少し余分に掛かったとしても . . . 。

そんな自負みたいなものが、私の中にあるんです。
なぜか、今はまだ知れないけれど . . . 。



「やみぃの屋根裏部屋」は、迷路のようでわかりにくい。患者さんの便利のために、「がんの戸棚」を独立させた方がいい。 ―  時々、ご指摘をいただきます。

確かにそうですね。 でも、単独にはしないの。ゴチャゴチャが好きだし、(笑)
がんの患者(あるいはサバイバー)だということは、私のプロパティの一つだと思うから . . . 。


なーんて、生意気でつむじ曲がりで、何だかなぁ、ですけれど、
これからも、おつきあいください。

With much love . . .  2002年 3月  やみぃ

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きっと誰もが、でこぼこの道を 歩くんです。
歓びをみつけながら、一所懸命に。
誰もが、死んじゃうまでは 生きるんです。
病気であろうとなかろうと。

だから、みーんなに、それぞれのオデュッセイ . . . 。

どうかよい旅を . . . ♪



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I feel like I'm getting my identity back.
Cancer is definitely receding as the way I define myself. -- KJ


Yummy's Attic
Since June 25, 2001


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