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小枝

アルコール依存症のこと、少し Vol. 3
Vol. 2 * Vol.4


─ 2006. 6. 15

 映画「酒とバラの日々」の感想を、mixiの日記に書きました。 
 はじめは、その草稿を書き直して、このコーナーに載せるつもりでしたが、いろいろ考えたり迷ったりした部分もいっしょにお読みいただけたら. . . と、そのままの形で転載することにしました。
 以下、6/2付けの日記。その下に、本題の感想文(5/31)です。
 
 追伸: じつは今、「だ・である」調の "練習" をしています。そのせいで文章の感じが、今までと少し違っているかもしれません。違っていたらうれしい、です♪
 ── やみぃ



 mixi ─ 2006. 6. 02

 先日の「酒とバラの日々」の感想文(下記)は、少しタイトすぎたかもしれない。
 映画じたい、深刻でやりきれない作りなのだし、アルコール(薬物)依存の現実は、まさしくその通りなのだから、仕方がないけれど。じつは、
「あなたのサイトに載せるには、緊張度が高すぎるのでは?」
 というメッセージをいただいて、また迷っている。

「やっぱり、そうよね. . . 」
 いつもの優柔不断、プラス、自分でも、"希望のようなもの"が足りない文章かも、と思っていたから。わたしには、もとから、「事実」だと思ったことをストレートに言いすぎる傾向がある. . . 。
 
 スティーヴン・キングの断酒のいきさつ(『小説作法』* 2)を読んで、安心したように、わたしも、アルコール依存症やその心配がある人たちには、できるだけ明るいメッセージを届けたい。
 でも、アル症についてよく知らない人たち──たとえば、

「一杯だけなら、いいでしょ?」
「いつまで禁酒したら、また飲めるようになるの?」
 なんて訊いてくる人たちには、「いや、そうじゃないんだ」ということを伝えたい. . . 。

 以前、サイトに癌をめぐるあれこれ(「がんの戸棚」)を書いたときにも、そのあたりについては迷いに迷った。

「手術すれば完治するんでしょ?」
 と、誰かれかまわず言うような人たちには、「そんなふうに治るものを"悪性腫瘍"とは呼ばない」と伝えていかなければ、ケアもサポートも、なにも始まらない。でも一方で、わたしの言葉は、「死」について考えたくないタイプの患者さんには、酷なものになってしまう。

 お酒やドラッグをやめて、「立ちなおっている」「ほとんど大丈夫」と言っていい人──やめてから年月が経過していて、安定もしてみえる人──を例に出そうかな?
 アンソニー・ホプキンス、ドリュー・バリモアあたりなら、適切だろうか。ローラ・ボーはどうだろう?

 でも、その場合にも、彼らが病気から抜け出せたのは、「意志」が強かったから、ではないことを、説明しなければならない。精神論では、アル症は解決できないもの。

「やみぃは意志が強いから、大丈夫よ」
 うれしいけれど. . . 病気の理解としては、正確とは言えない。

 さてさて、どうしよう?
「酒とバラの日々」のこと、もう少し考えてみたい。




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◆ 以下、ストーリーの結末や細部にふれています。「映画を観てから」
と思われるかたは、どうかのちほどお読みください♪  




 「酒とバラの日々」──Days of Wine and Roses

──2006. 5. 31

 「酒とバラの日々」を観てみた。

 アルコール依存症の若き営業マン、ジョー(ジャック・レモン)と、彼の気持ちを理解したくてお酒を飲みはじめる妻、カースティン(リー・レミック)の、愛と破滅の物語。

 ──幸福なはずの新婚家庭で、ワインやジンといった名前の「お酒」が、エチルアルコールというただの「薬物」に変わっていく過程が、そして、そのドラッグがすべてを浸食していくさまが、リアルに描かれている。

 わたしは、この映画を'90年ごろに一度観ている。十五年がたって、やはり受けとめ方もずいぶんと変わった。

 妻のカースティンには、冒頭から翳りが見える。
 どう言ったらいいか、Abandoned... Desperate... ──寂しがり屋で過敏で、不安が強い。そして、どこか捨てばちな感じ。ジョーと出会ったときには、すでにチョコレート・アディクトだったりするし、もともと、かなり「アル症体質」なのかもしれない。(*1

 ジョーが夜中に酒屋のドアをたたき壊す気持ちも、カースティンが昼間から泥酔してしまうわけも、いまや、痛いほどよくわかる。^^
 ──わたしも同じ症状だ。もしもいま、数滴でもお酒を口にしたら、わたしは酩酊するまで飲み続けるだろう。ついには、みりんでも消毒薬でも飲むのに違いない。ひたすらエチルアルコールを求めて……。

「やみぃはスリップ(再飲酒)すること、心配しすぎ」
「飲んじゃっても、またやめればいいじゃない?」 

 そんなふうに言ってくれる人たちがいて、とてもうれしい。事実、その通りだし、もし飲んでしまったら、そう考えるしかない。
 でも、「うっかり」だけは、したくない。
 わたしにとって、アルコールは、そこいらの鎮痛剤や麻酔薬を軽くしのぐほどの即効性を持ち、「依存性」という副作用もすさまじい物質なのだから。
 それに、「またやめる」のは、「飲まないでい続ける」よりも、格段に難しいことだ。

 かつてのわたしは、この映画のエンディングを、楽観的に解釈していた。
 アル症だと認めず、街へと去っていくカースティンに明日はないのだとしても、見送るほうのジョーについては、「もう、大丈夫なのね」と思っていた。
 でも、ほんとうは、ジョーの明日だってわからなかったのだ。彼は、再生へ向かって歩みはじめただけ。一度できたショートカットが、なくなることはない。そう思うと、ヘンリー・マンシーニの名曲も、いっそうせつない。





「あなたの場合、これ以上つらいことの多い場所は、避けたほうがいいと思うんだ」
 昨秋、精神科医はそう言って、アル症患者の自助グループに"オフラインで"参加することを禁じた。わたしも、お葬式は、癌や白血病の友人たちのだけで十分だと思った。
 それで、断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)の人たちとは、いまもインターネットをクッションにしておつきあいしている。
 ──主治医の判断は、正しかったと思う。
 訃報の数が、半端じゃなかったのだ。自殺や事故死、内臓疾患によるものなど、その頻度は、わたしの想像をはるかに超えていた。
 自身の病状をしっかり自覚し、精神科や自助グループへ通っている人たちでさえ、ばたばたとスリップし、隔離病棟へとやられていく。出てきたと思ったら、すぐにまた飲んで. . . そして、死んでしまう……。

 メールや掲示板で知らされるだけでもつらいから、彼や彼女の、顔や声、手のぬくもりなんか知っていたら、すごく痛むと思う。心もからだも。
 
「坂道を転げ落ちるように」「家庭崩壊」「何もかもを失う」などという表現は、大げさに響いて好きじゃない。だけど、そんなクリーシェを使うしかないようなアル症者たちの現実……。
 その現実は、『酒とバラの日々』の1962年から、半世紀ちかくがたっても、少しも変わっていない。
 いまこの瞬間にも、たくさんのジョーや、カースティンが生まれている。

「なんてこったい!」
 世の中には、あきらかに、お酒を飲んではいけない人がいる。蜂に刺されて死んでしまう人がいるのと同じだ。それなのに、警告さえほとんどされていない。きっと経済が止まってしまうからなんだろう。





 個人的に、ごく個人的に、アルコール依存症は、「死にいたる病」の中でも、"最悪"の疾病だと思う。
 ──急激に壊れるにせよ、だんだんに狂っていくにせよ、飲みながら死んでいくアル症者には、「生きる歓び」を感じる瞬間は、めったに訪れない。
 アルコールが、彼らの臓器や脳の細胞だけでなく、正当な自己愛や自尊心までこわしてしまうから。死んじゃう前に、死んでいる。
 だから、癌やエイズで死んでいった友人たちの多くが持っていた、ある「光」や「静謐」のようなものを、アル症患者が手にすることは、ひどく難しい。そして、残された家族や周りの人たちにとっても……。

 愛する人をなくした人には、純粋な哀しみや喪失感を感じる「権利」があると思う。(この「純粋な」は、ある種のすがすがしさや透明感をともなう、みたいな意味です)
 だけど、アル症者の死に方は、残された人たちから、その権利を奪う。たいてい、怒りの感情や、無力感、むなしさが、圧倒的になってしまうもの。

 もちろん、誰だってほんとうは、大切な人たちを悲しませたり傷つけたりなんかしたくない、絶対に。だけど、アルコールが、わたしたちの「本来の」思考システムを変えてしまう。別人にしてしまうのだ。
 ──そう、あれほど美しく、いたいけだったカースティンに、最愛の夫と小さな娘までも捨てさせたように……。

 わたしが、「お酒では、死にたくない。死なせたくない」と願うわけも、そのあたりにあったりする。

 アルコール依存症の「治療法」が、一日もはやくみつかることを祈ろう♪







 大きな声は、聞くのも出すのも苦手。
 だから、シュプレヒコールは無理だけど. . .
 でも、飲んではいけない人に、お酒をすすめるような野蛮な人には、
「少なくとも、"未必の殺意"は、認めますね?」
 と言う!!
 . . . かどうかは、場面で決めるとして、そんな人たちとは、
「遊んであげない♪」
 な、雰囲気は、つねに醸し出していけるといいな、と思う。
 できれば、ずっと "飲まないアル中" のはしくれとして。 〃⌒―⌒〃ゞ


Days of Wine and Roses
The lonely night discloses just a passing breeze filled with memories
Of the golden smile that introduced me to
The days of wine and roses and you. . .



 注1) 正確には、「アルコール依存症になりやすい、と言われている、体質・身体的特徴」のこと。  詳しくは、こちらを

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