シュノーケリング
戻るトップに戻る
 
■ゆきずりの島
 25Mプールを平泳ぎで25秒かかってようやく泳ぎきるくらいなのだから、ボクは海が得意ではない。暑い東南アジアへ行っても泳ぐつもりはなかった。ただそれまでわりと急ぎ足で旅行してきたためどこかでのんびりするのもいいかと考えた。
 ミツオさんの話によればマレーシア[Malaysia]のコタバル[Kota Bharu]はメシがうまいのだという。そこで長居するつもりだったのだが、宿で蚊の襲撃にあい出ていくことにした(長袖長ズボンに靴下でも眠ることができなかった)。
 ツーリストオフィスでプルフンティアン島[Pulau Perhentian]をすすめられ、成り行きまかせで行くことになった。ネットで調べると知名度が低い割には宿が多く、安いところもあるとのことだった。港で、一番安い10RM(約330円)のドミトリーがあるD’Lagoonを予約し船に乗った(往復オープン40RM)。
 
■空飛ぶ世界
 暑ければ海に入り疲れたら昼寝するという優雅な日々。初めてのシュノーケリングをやってみることにした。シュノーケリングとは簡単にいうと水中めがねと呼吸用のチューブをつけて泳ぐことである。波が緩く雲のない快晴の日を選んだ。海の底まで明るく照らしてくれるから。
 宿のダイニングには色どり豊かな魚の写真が張られている。過剰な期待は失望を招くものなので、1時間泳いでキレイな魚が数匹見つかればもうけもんだろうと思っていた。ところが、海の中は全くの別世界。大きさ・形・色とも様々な魚が人間を恐れることなく泳ぎまわっている。TVでしか見たことのない世界がそこに広がっていた。
 泳ぎが下手なボクでもめがねとチューブがあれば平気で何十分も浮いていることができた。海底から高さ10Mほどのところに泳いでいると空を飛んでいるかのようだ。セガサターンのゲーム『NiGHTS』を思い出させる。楽しくて楽しくて、あとで日焼けで背中が痛くなるのもかまわず3時間も魚を追いかけ泳ぎまわっていた。はじめてのシュノーケリングにここまで心が揺さぶられるとは思ってもいなかった。
 裏のビーチにも行ってみる。サメなど大きな魚が波打ち際の浜から数Mのところを泳いでいる。調子に乗って泳いでいたらクラゲにビシバシと刺されてしまったが、ただ昔のままそこに建っているだけの遺跡よりも自然の動植物の方がボク向きなのだなと実感することができた。実際この島は「沖縄の海に近い」とか「3日前カメが産卵に来た」とかいうくらい、観光客に汚染されず透明度が保たれているのだそうだ。
 
■歌と涙
 その後、インドネシア[Indonesia]のロンボク島[Pulau Lombok]などでシュノーケリングしてみたが初めての衝撃にはかなわなかった。足ひれは歩きづらく泳ぎにくいので借りてもうまく使いこなすことはできなかった。人によっては酸素ボンベもなしに10Mくらいの深さまでは潜れたりするという。コせきなら水泳用めがねだけでどこまでもいつまでも泳いでいられるのだろうなとスイマーをうらやましくも思った。
 正直日本を出てから勢いで旅行してきたものの、東南アジアは頭の中で考えていた予想範囲内のモノでしかなかった。タイ[Thailand]を越えてマレーシア[Malaysia]まで来てようやく予想以上のモノに出会えた。ここまで足を伸ばしてきてよかった。
 2週間の島暮らし最後の夜、宿のスタッフの一人がマレー語で何曲も歌ってくれた。しぶく哀愁が漂う演歌のようにも聞こえた。これでもう帰ってもいいかなと涙が出た。
 
戻るトップに戻る前へ次へ