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2005年12月26日
俎上の魚

 『読む』ことが好きだった。小学校の時分は、教室の後ろにあった本棚の前でしゃがみこんで読んでいて、授業が始まっているのに気付かない。そんなことがよくあった。図書室はお気に入りスポットのひとつで、ある時期は分厚い上下巻の西遊記を読むために通っていた。難しい漢字や語句や言い回しは意味が分からないから目で追っているだけなのだが、夢中で読んでいた。
 物語の中で、傍若無人な孫悟空が御釈迦様と対峙して賭けをする場面がある。孫悟空は自信満々、金斗雲に乗って世界の果てまで飛んで戻ってくる。ところがすべては御釈迦様の掌の上だった。そんなくだり。なかなか面白い場面ではあるけれど、それよりも何かこう、妙な印象があって心に残っている。自意識が過剰な私が教訓としているのか。
 今でも『読む』こと自体は好きだ。ただし文章の塊をパッと見て印象がよろしくないものは殆ど読まない。要するに読書家ではない。我ながら甚だしい食わず嫌いだが、こういった事はカイチョウの日常においては茶飯事である。そのうち何処かから巡ってきて繋がるご縁もあろう。自分など掌の上の金魚。俎上の魚。それでいいのだ。

 さてさて。追い立てられるように晶君のライブを追いかけたこの一年。その印象を絵にすることができて、私にとっては何よりの幸せだ。他の店とは空気が違うので難しかったBIG MOUTHでも、先日やっと描けてきた。ような気がする。今夜は2005年度を締めるライブ。二カ月振りの最強タッグに胸踊る。ざわざわと揺れる自意識と共に初めての場所へ赴く。


 『はっ、こんなところにお手紙が。』

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<傍ら日記より>
●12月22日 下北沢 BIG MOUTH
 1. 俺の骨(未発表曲)
 2. 陽ハ出ズル
 3. (仮)マハラジャ("新"未発表曲)
 4. 白いオツキサマ("新"未発表曲)
 5. 檸檬(未発表曲)
 6. クッキー(未発表曲)


2005年12月12日
空を喰う。

 乗り込んだ車内が余りに空いている。寒風に身をすくめる忘却の日曜日。おらァこれから一体どこ行くんだ? ・・・あぁ、そうじゃった。これから"萌え〜"で名高い電気の街へ行くんじゃあ。おうおう市原悦子か。異空間をプチっと漂流して舞い戻る。今夜は酷く冷えるらしい。一部の隙も無い防寒装備で立ち向かう。防寒レベルはますます鰻が天に昇るがごとく、昨今流行するお洒落とは無縁の世界へと突き抜ける。立てば煙突、座ればカマド、歩く姿はい〜しや〜きいも〜。おいもっ。

 閑話休題。

 ここは地下にもライブハウスがあって、またしても下からドラムの物凄い振動にずっと邪魔された。酷いものだった。この手の振動は繊細な演奏を台無しにする。昨夜はトラブルだらけの水泳大会。ギターも若干ご機嫌斜めのようだった。途中、唄い出しでいきなり声が太く大きくなった。一瞬マイクが切れたのだ。が、切れたかどうかも分からない程の声量。このまま最後までずっと聴いていたいくらいだった。もちろんマイクを通しても、声は気持ち良く胸に響く。そんなこんなの困難の中だったにもかかわらず、この眼には晶君が愉しそうに見えたのだった。
 偶感である。空即是色。
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<傍ら日記より>
●12月11日 
秋葉原 dress cafe
 1. 愛やよ
 2. 集中豪雨(未発表曲)
 3. She was gone
 4. 水溜まりが乾いていく道("新"未発表曲)
 5. 白いオツキサマ("新"未発表曲)
 6. クッキー(未発表曲)


2005年12月6日
ウミの日

 昨日は膿んだままライブへ行った。全ての音が膿んだ部分に酷く染み込んできて、どうにも困難なことになってしまっていた。
 そのわけは分裂していたから。ある事でぐずぐずと足を引っ張り続ける「私」と、きちんと動きたい私とに。私は「私」をなだめようと『全ては気にしなければ問題ないことだよ』と言う。ところが「私」は『ある事』自体が気に入らない。前にも増してぐずり始め、さらに分裂していく。裂けたところはどんどん膿んでくる。きっと家に帰れば何事もなかったかのように収まるんだろう。でもまだ帰れないのだ。晶君のライブがあるから。そんなわけで昨日の私は、膿んだまま晶君の唄に相対したのだった。
 こんな心持ちのせいかも知れないけれど、昨日の声は何だかいつもと違っていたような気がする。こんな膿だらけの日には効き過ぎるのだ。その声と唄は。

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<傍ら日記より>
●12月5日 
渋谷 7th Floor
 1. 隠れ家(未発表曲)
 2. She was gone
 3. クラゲ("新"未発表曲)
 4. 白いオツキサマ("新"未発表曲)
 5. ヨダカの星
 6. 夕暮れ貯金
 7. クッキー(未発表曲)


2005年12月3日
ツキガ変ワル

 暦は2005年最後の月を迎えた。今年のライブはあと数回。昨夜は恵比寿。早々と到着してしまい小一時間ほど余裕があった。どうするか・・・。そういえば中には入った事のないア○レ恵比寿。ここをひやかして回って時間を潰すことにしよう。

 入ってすぐに御茶屋さんがあった。玄米茶、狭山茶、静岡茶、やぶきた茶、屋久島茶・・・・・『屋久島茶』? 一体どんな香りと味がするんだろう。ぼんやり眺めていたら「どうぞ」と一杯の緑茶を差し出された。いただきます。あちち。ゴクリ。お、可愛らしい柄の巾着と小風呂敷発見。ゴクゴク。どうもごちそうさま。これは以前どこぞの御茶屋で買い求めたものにそっくりだなあ・・・もしかして同系列の店かしら。あ、野点セットだ。小さな籠の中に桜色の小振りな茶碗と茶筅と匙、そして抹茶。良く見れば『抹茶は別料金』。それは当然そうだろうなあ・・・

 だいぶ前の事になるが、ネギィ君と陶器市を見に行ったことがあった。沢山のテントの下に沢山の陶器や各地の物産品が並べられており、色も形も様々な陶器を面白く眺めて歩き回った。茶道関連コーナーをしばらく見ていると、近くに居た業者らしきおじさんが話しかけてきた。購入が目的でない我々はどう切り抜けようかと内心兢々。そのうちに抹茶の話になった。おじさんによれば抹茶の味はその金額によって全然違うものらしい。そして、「今回は特別サービス」と言って我々の手の平にひと匙ずつ最高級という抹茶の粉を乗せてくれた。恐る恐る嘗めてみると、驚いたことに苦味はほんの少しだけで、何とも言えない甘味が本当に本当に美味しかった。抹茶は苦いものと思い込んでいた我々だったが、その思い込みはこの一口でひっくり返ってしまった。そのように感想を口にするとおじさんは「そうだろう、そうだろう」と満足気に頷いた。そして「いずれ買ってね」というようなことを口にした。
 その後、おじさんにどんな挨拶をして別れたのか、今となっては思い出せない。しかしいずれ、あの時に味わったような美味しい抹茶を買って、うららかな陽気の日にのんびり野点をする。ひそかな夢だ。下に敷くのは絶対にブルーシートではなく、できれば赤い毛氈がいい。あとは静かで美しい景色と、美味しい和菓子と、それから麗しい音色があれば・・・シアワセだなぁ。

 さてライブだ。この日は最初の最初から噛みっ放しだったそうだが、そんなこんなも含めてとても楽しそうな晶君だった。これは目の前に座っていたノリの良い「53歳のお父さん」のおかげでもある。久し振りの「隠れ家」が嬉しかった。そして26日にはみきさんと共演するという嬉しい告知もあり。最後は12月限定の「クッキー」だ。実に2年ぶり。また聴くことができて本当に嬉しい。なのにどうしてこんなに胸が痛むんだろう。・・・いいやもぅ、帰りの電車で。今回の絵は98.9%が記憶の産物なのだった。

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<傍ら日記より>
●12月2日 
恵比寿 switch
 1. 振り返りもしないで
 2. She was gone
 3. クラゲ("新"未発表曲)
 4. 隠れ家(未発表曲)
 5. 午後の憂鬱
 6. 陽ハ出ズル
 7. クッキー(未発表曲)


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