ビクター AX−D701   定価\99,750 (2005年10月発売、使用期間05年12月〜06年8月)


 デジタル映像・圧縮音声時代に対応した高音質・薄型デジタルアンプ





    主な特徴

 1.独自のデジタルアンプ「DEUS」により薄型ながら150W×7chを確保
 2.ドルビーデジタル等の圧縮音声を高音質化する「CCコンバーター」
 3.HDMI端子装備&ファロージャ製I/Pコンバーターで高画質ビデオ信号も扱える
 4.拍手一発で各チャンネルの音量調整が完了する「スマートサラウンド・セットアップ」
 5.TI製64bit高精度DSPで圧縮信号の高精度デコード、豊かなサラウンド音場を形成
 6.PC内の音楽をアンプで聴けるUSB端子、3Dヘッドホン・サラウンドなど



    音 質   ★★★★

 まず基本的な音質、2チャンネルのストレート再生から。
 マイ・フェイバリット・ディスク、中島美嘉の「Love Addict」。
 ベースの低音がぐんぐん前に出てくる。パワー感を感じる。
 かすれ気味のボーカル、シンバルの粒立ちまで難なく再生。
 インストゥルメンタルではケニーG、JAZZでは上原ひろみ、
 オーケストラではタイタニックのサントラCDなどを聴いてみたが、
 特に得意・不得意も感じられず、どれも十分に再生された。
 
 映画再生。ラストサムライ、ハウルの動く城、仮面の男などを見たが、
 大砲の重低音、セリフの質感とも良く再生され、
 銃声もレスポンスよく再現された。剣の硬質な音もリアル。
 BGMもよく分離して聴こえている。
 パワーの不足を感じることもなく、十分満足できる音だった。
 
 CCコンバータは非圧縮音声用のモード1と圧縮音声用のモード2がある。
 CDをアナログ入力にしてモード1にして聴いてみた。
 う〜ん、差が微妙だ。高音の粒立ちが良くなっているような。
 だがブラインドテストされたら言い当てる自信なし。
 続いてMP3音源やドルビーデジタル音源をモード2にして聴いてみた。
 う〜ん、これまた差が微妙。明らかな差というのは感じられなかった。
 期待していただけに、ちょっと残念。
 
 センターチャンネルの定位を改善する「センターチャンネル・アライメント」
 これは効果が分かりやすい。従来はセンタースピーカー付近からセリフが
 聴こえていたのがスクリーン中央から聴こえるようになる。
 映像と音の一体感を増す機能として常時ONにして使いたい。
 
 ヘッドホンでも立体音場が楽しめるという「3Dヘッドホン」。
 ヘッドホンを挿すと、プログラムはストレートか3Dヘッドホンの2択となる。
 ONにするとセリフが引っ込んで残響がつく感じ。
 音楽では明らかに使えない。映画でも好みが分かれそうだ。



    デザイン   ★★★★

 実物を手にしてみると、予想以上に高級感がある。
 高さ90mm程度のコンパクトな筐体にズッシリ詰め込まれているという印象。
 前面の丸みを帯びたアルミパネルが、手触りが気持ちよい。
 中央ディスプレイの上部のライン状ブルーイルミネーション、
 マルチファンクションノブ、ボリュームノブが青く光っていてカッコよい。
 ディマー明るさは3段階に調整でき、消灯することも可能。
 オーディオアンプの渋さとは異なるが、思わず「ブルーレイ?」と
 言ってしまうような近未来的なカッコ良さがこのモデルの個性だ。



    操作性等   ★★★★

付属のリモコンはフタで半分が隠れるタイプ。
電源、音量、セレクタ、サラウンドモード、
CCコンバータ、メニュー操作という
基本操作だけが露出し、後はフタの中、
使いやすいリモコンだと思う。
何かする度にフタを開けなければならない、
ということは今のところない。
逆にフタの中は細かい機能毎にボタンが割り当て
られていて、これはこれで操作しやすい。
各チャンネルのレベル調整ボタンが独立して
与えられているのはレベル微調整がやりやすい。

ボタンのサイズはもう1回り大きい方が良かった。
全てがゴムのボタンで、クリック感はない。
リモコン自体の高級感というのはない。

本体側は2つのJOGダイヤルが音量とインプット
セレクタ/マルチジョグになる。指一本でクルクル
回すだけで調整できる。軽快な操作感だ。

 入力名に「CD」がない。他の薄型AVアンプもそうだが、
 購買層はCDプレイヤーを持っていないと思っているのだろうか?
 音楽と真剣に向き合おうとCDを聴こうとして、
 「TV」入力を選ばないといけないのは興ざめだ。



    その他   ★★★★

 拍手一発で各チャンネルの音量調整が完了する「スマートサラウンド・
 セットアップ」、拍手をして3秒程度待つと完了する。
 結果がOSDで表示されるのも安心できる。
 他社のように周波数調整までするものではないが、マイクを用意したりする
 必要がなく手軽に行えるのはよい。
 
 本機は「薄型アンプにしては」というエクスキューズが不要なほど
 端子が充実している。7チャンネル分のスピーカー端子はいずれも
 簡易なワンタッチ式ではなくネジ式だし、珍しく同軸デジタル入力も装備、
 マルチチャンネル入力端子まで用意されている。
 映像はHDMI端子、D端子、S端子までフル装備。
 前面にも光デジタル入力、S入力、USBまで含めた端子があり、
 金メッキ処理されているのが驚き。
 USBはPC(2003年製、XPモデル)、iAUDIO M3とも接続が確立された。
 デジタルオーディオが劣化なく再生できるというのは嬉しい。

 本機は発熱がかなりある。そして、本体内部にファンがあるようだ。
 本体を触ると振動が手に伝わってくるし、耳を近づけると小さく「ウ〜ン」という
 唸る音が聞こえる。ファンはないに越したことはないが、
 実際に使用している状況では再生音にマスクされるから大きな問題ではない。
 もっとも、発熱の問題はTX-L55でも見られたことだから、
 デジタルアンプに共通して言えることなのかもしれない。
 性能的に問題になることはないが、ちょっと気になる点ではある。
 
 本機にはファロージャ製のI/P変換が搭載されているのだが、
 これはモニター出力にHDMIを使う時に有効とのこと。
 DVDをD端子・525iで本機に入力しLP−Z4にHDMI端子で接続してチェックした。
 フレーム内補間を行っているようで、甘い映像で鮮鋭感が不足気味だ。



    総 評   ★★★★

 HDMI端子、ファロージャ製I/Pコンバータによって映像の「今」に対応し、
 デジタルオーディオ用のUSB端子、圧縮音声のためのCCコンバータによって
 音声の「今」に対応し、その他では拍手一発の音量調整、使いやすいリモコン、
 全てネジ式のスピーカー端子&5.1ch入力端子など豊富な入力端子、
 各チャンネル150Wを確保しながら7ch分のパワーアンプを搭載、
 これだけの内容を薄型のスマートな筐体に収め、10万円を切る価格・・・
 まさに「充実」、よくやったと褒める以外にないだろう。

 プリメインアンプ「PMA−1500AE」を使ったWアンプ構成にすることになり、
 本機はヤフオクで売却した。




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