三洋 LP−Z4      定価\294,000 (2005年10月発売、06年3月購入)


 高画質・設置性・静粛性を高い次元で融合させた液晶プロジェクターの本命

LP-Z4



    主な特徴

 1.最新のD5テクノロジーを採用した1280×720画素液晶パネル
 2.12bit映像処理エンジン「TopazReal」で滑らかな階調表現
 3.光量制御を行う電動アイリス、コントラストを向上させるランプアイリスの併用で
   最大コントラスト7000:1
 4.左右±1/2画面、上下±1画面のレンズシフト+2倍ズームレンズによる抜群の設置性
 5.動作音僅か22dB、業界最高レベルの静音設計
 6.電動スライド式レンズカバーで確実にレンズを保護
 7.HDMI、D4、RCAコンポーネント、ミニD−subなど豊富な端子



    画 質   ★★★★

 まず明るい。それまで使っていたLP−Z2のランプは大分弱っていたのだろうが、
 何より明るいというのは映像にパワーを与え、コントラスト感が高まる。
 
 肌色が自然だ。緑や赤が不自然に強調されることなく、自然な色合いを見せる。
 LP−Z2ではどうやってもニュートラルな色合いにすることができなかったが、
 Z4ではデフォルトの設定でもかなりニュートラルな色が出ている。
 画質モードは明るい順に「パワフル」「ダイナミック」「ビビッド」「リビング」「ナチュラル」
 映画用には「クリエイティブシネマ」「ピュアシネマ」、計7つ。
 普段見るスタジオ撮りの番組やスポーツなどは「ナチュラル」をベースにして
 少し黒を沈め、色を少し乗せて、シャープネスを少し上げた調整を
 ユーザーイメージとして記憶させて見ている。

 次にDVDをソースにインタレース→プログレッシブ変換(以下I/P変換)性能を見る。
 フレーム間補間を行っていると思われ、解像感が高い。
 文字の輪郭がくっきりするのが明らか。ただしジラジラノイズも少し目立つ。
 縞々のシャツでは補間エラーが見られるが、普段は気にならない。
 
 HDMI端子とD端子を切り換えて見てみたが、
 しかし色合い・色の濃さが少し変わる程度で、解像感に違いはなかった。
 「HDMIはデジタル、D端子はアナログだからHDMIの方がきれい」
 と言って気にするレベルでもないと感じた。
 
 シーンに応じて電動アイリスを制御して時間軸でコントラスト感を稼ぐ
 「リアクトイメージモード」は2つある。普段は制御幅が小さいが静音モードで
 動作する「2」で使っているが、不自然に明るさが変わっていると感じることは
 ほとんどなく、うまく動作していると思う。ファン音も、最も静かなレベルからは
 若干上がるが、それでももともとの静音対策が十分なので気にならない。
 
 最大コントラストは7000:1となっているが、黒浮きは存在する。
 ただこのレベルまで来ると、黒浮きに神経質になる必要もないと個人的には思う。
 アイリスを絞ると黒が沈んでいくが、その分ピーク輝度も落ちていって
 映像にパワー感がなくなるので、無闇に絞るのは考えものである。
 
 通常の視聴位置からでは画素構造はほぼ見えない。視力2.0でもなければ大丈夫だろう。
 
 液晶パネル特有の縦スジだが、ほとんど確認できない。
 メニューで縦スジの見え方を調整できるのだが、今のところ必要ない。
 だがここまで気を使ってくれていることが嬉しい。
 
 ハイビジョン入力。俄然精細感が向上、ハッとするような映像。
 80インチにしても精細感が維持されているのはやはり驚き。
 やはり色は自然。ベースがニュートラルなので、調整も楽だ。


    設置性   ★★★★★

 今や各社が搭載するようになったレンズシフトだが、その先駆者であった
 三洋は最大のシフト幅で意地を見せる。スクリーンの端に本体が置けるのは
 三洋とエプソンだけだ。シフト幅はZ2と同じだが、
 改良点はシフトダイヤルが本体脇に変わったこと、ダイヤル固定スイッチが
 設けられたことだ。映像を見ながら微調整がしやすくなり、
 何かのはずみでポイントを動かしてしまうこともなくなった。
 ユーザーからの意見を反映したのだろうか、しかしこのような
 マイナーな変更点が嬉しい。


    操作性   ★★★★

左が本機に付属するリモコンである。
手の平から少しはみ出す程度の小ぶりなサイズである。
他社のOEMらしく、他社の製品でも同じリモコンを見かける。
Z2ではオリジナルのリモコンだったのだが、
コスト削減の標的とされたのだろうか。
左上はライトアップのボタンで、全てのボタンが光る。
印刷された文字が小さい。だがボタン数も少ないので
位置はすぐ覚えてしまうが。


 上下左右のキー、真ん中の決定は押し間違えることがある。
 他と違うサイズにするとか、一体化してジョグにしてしまうとか
 したほうが分かりやすかっただろう。
 レンズアイリス、入力端子、画質モード、ランプ制御モードなどに
 ボタンが割り当てられているのは良い。
 動作レスポンスなども問題ない。

 メニューGUIが非常に美しい。リモコンのMENUを押すと
 GUIがフェードインでフッと現れ、終了時はフェードアウト。
 ちょっとした贅沢感を感じるポイントである。
 
 電源投入から出画までは20秒程度。Z2からは早くなっている。
 だが出画直後は暗く、1分程度経つと明るさが安定してくる。


    その他   ★★★★★

 本機の騒音レベルは22dB(最小)。脇に置いていても存在を忘れることができる
 くらいだ。ランプコントロールを使うリアクトイメージモードでは
 若干上がって23dBくらいになるが、それでも気にならない。
 動作音が小さいと映像への集中度も高まる。大きなポイントである。

 電動レンズカバーはやはり便利だ。カバーがついているのは三洋だけ、
 Z2では手動だったのがZ4では電動となった。
 電動では開け忘れ・閉め忘れがなく、確実である。
 ただ「ガー」と、いかにも安っぽい音を立てるのはいただけない。
 動作は俊敏なのだが、カバーが開いてもすぐに出画するわけでもないし、
 ここはゆっくりでもいいから静粛に動作した方が高級感が出てよいと思う。
 
 HDMI端子は当然として、コンポーネントをD端子とRCAの両方
 設けているのがすごい。D−subもあり、端子に不満はないだろう。


    デザイン   ★★★

 前作Z2では流線型のような形状、アクリルを使ったレンズカバーと、
 プロジェクターとしてはかなり秀でたデザインだと評価したが、
 Z4では特徴が薄れてしまった。天面のスクエア形状の操作ボタン、
 電源ボタンがミラーを採用しているのは良いが、全体としては
 “ただの箱”的な感じになっているのは否めない。
 直線を活かすでも曲線を活かすでも色で主張するわけでもなく、
 個性が欲しかったところである。


    総 評   ★★★★★

 エプソンのD5パネルを使った液晶プロジェクターは他にもあるが、
 そのパネルを使って、アイリスの時間積分を利用したコントラスト向上という
 トレンドも取り入れながら、高画質を実現している。
 
 だが本機の魅力はそれ以外の、実に様々なポイントでのこだわりである。
 業界最小の動作音、業界最大のレンズシフト・ズーム量、電動スライドドア、
 豊富な入力端子、埃を吹き飛ばすための穴を設け、ブロアーまで付属させる。
 液晶パネルの弱点の一つと言われる縦スジを見えにくくするための調整画面。
 レンズシフトを調整した位置を固定するためのスイッチ。
 Z1から、ユーザーの声一つ一つに耳を傾けて、細かい改良が
 着実に積み重ねられていることを実感できる。

 デザインやリモコンが少し物足りないが、それを差し引いても、
 この価格帯の液晶プロジェクターとしては一つの到達点と言ってもいいのではないだろうか。






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