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フルHD時代の波が来た−直視型編
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(2005.9.18/9.25追加) |
当サイトでは今までハイビジョン関連の特集を2回やっている。 2003年1月の「ハイビジョン時代到来の予感」、そして 2004年10月の「フルHD化の流れ、そして・・・」である。 こうして見ると、2、3年の間にハイビジョンがグッと身近に なってきているんだなぁと実感する。 そして、最近俄かに騒がれているのが、ハイビジョンをありのままに 映し出す「フルHD」のディスプレイである。 BSデジタルに加えて地上デジタル放送が普及すると、 ハイビジョン放送がいよいよ多くの人に見られることになるが、 そのハイビジョン放送を表示する装置が今まで力不足だった。 詳しくは上の過去ログをお読みいただきたいが、要は画素情報を間引いて 表示していたのである。フルHDというのは間引きをせずに、 そのままを映し出すディスプレイのことである。 デジカメの例を出すまでもないが、画像において画素数が多いに 越したことはない。しかし、そこには「サイズ」と密接な関係がある。 一般的な写真サイズであるL版にプリントする場合、 200万画素あれば十分精細な写真が出る。800万画素のカメラと 精細感における差異はほとんど出ない。しかし、A4サイズなど 大きくプリントすると、その差は如実に表れてくる。 これと同じく、映像装置においても、一般的な視聴距離を保って見る ことを前提とした場合、30インチ程度ではフルHDの恩恵はあまり 感じられない。50インチ、あるいはそれ以上の大画面になった時に 精細な映像が表現できる、ここにこそフルHDディスプレイの意義がある。 液晶、プラズマなどのテレビの登場によって大画面化が可能に なった近年になって、フルHDが真価を発揮する土壌ができたと言える。
上で述べたように、50型超の大画面でこそフルHDの真価が発揮される と思うので、今回は60型超というゾーンに注目。フルHDディスプレイ は今年から液晶、プラズマ、リアプロの三つ巴の戦いになるが、 これらを比較してみよう。寸法、重量などは据置スタンド使用時のもので、 売価は価格.comなどのネット通販のものである。
液晶テレビの巨人、シャープが誇る「AQUOS」シリーズ最大の65型。 液晶パネルはもちろん三重・亀山工場製だ。 赤色の再現に重きを置いた4波長バックライトの採用で、 人間の目が一番分かりやすい赤色の発色を向上。 HDMI端子も装備し、拡張性にも十分配慮。 省エネが売りの液晶だったが、本機の消費電力は619W。 エアコンがもう1台稼動しているような感じだろうか。 液晶ディスプレイの構造上、常時点灯するバックライトが 65型の面積に敷き詰められるわけで、厳しいのかもしれない。 店頭で一見した感じでは、液晶の良さである明所での コントラスト感が際立った映像だった。 発色も確かに鮮やかで、密度感もあった。 ■A&Vフェスタにて実機を見てきた。 明るい照明の中で展示されていたが、輝度は十分。 画面が全白になるとまぶしさを感じるくらいだ。 明るい環境では液晶らしく黒が締まり、発色も良い。 視野角うんぬんは事実上もう問題にならないだろう。
こちらはプラズマの巨人、松下が満を持して送り出すフルHD「VIERA」だ。 画素の小型化が難しいプラズマではフルHDは難しいとされていたが、 本機では開口率の向上によって発光効率を上げることで 輝度を保ちつつフルHD化に成功したという。 独自のリアルブラック駆動方式で、暗所コントラスト3000:1を実現、 店頭よりも暗い一般家庭の明るさにおけるコントラスト感を向上させている。 HDMI端子も装備し、拡張性にも配慮。 本機の消費電力は745W。プラズマは暗い映像では消費電力が下がるため、 実際には数値よりも若干下がるかもしれないが、やはりエアコン1台 追加という感じ。そして114kgという重量もすごい。 気軽に導入できるというものでもないという気がしてくる。 11月発売のため、実機の映像はまだ拝めていない。 美しさに定評がある松下プラズマのフルHDバージョンということで 期待が持てる。展覧会などで見たら報告する。 ■A&Vフェスタにて実機を見てきた。 明るさを抑えた照明の中で展示されていたが、輝度は家庭用としては及第点。 欲を言えば、あと一歩輝度があがれば「キラッ」というピーク感を 再現できるだろう。セルとセルとの間のギャップも狭く、 プラズマとしては密度感が高い。
リアプロの可能性を信じ、日本で一人気を吐くビクターが送り出す 「BIGスクリーンEXE」のフルHDバージョン。 独自開発したD−ILA素子は89%という高い開口率で、 画素構造が目立たずに滑らかな映像再現が可能だ。 お得意の映像処理も新GENESSAに進化した。 RGBの画素がある液晶・プラズマに対し、RGBを混合して映し出す リアプロは、よりフィルムライクな映像が再現できるとする。 HDMI端子を2系統装備しているのは心強い。 本機の消費電力は217Wと、驚異の省エネだ。 そして重量も47kgと、2人で容易に設置できる範囲。 リアプロの詳細については別記事をご覧いただきたいが、 (「2005年夏、リアプロの夏」) 欠点は厚みと、視野角、使い勝手である。 ただし設置面積という点では液晶・プラズマ・リアプロとも同じで、 画面の位置が10数センチ前進するだけである。 視野角は確かに存在するが、斜めから見た時の画質を問うかどうかは 個人差があるだろう。 11月発売のため、実機の映像はまだ拝めていない。 展覧会などで見たら報告する。 ■A&Vフェスタにて実機を見てきた。 明るい照明の中で展示されていたが、輝度は松下のプラズマと同等。 照明の差を考えればこちらの方が明るいのではないか。 映り込みがない分、見やすさでもこちらが上。 画面に近づいても画素構造はほとんど分からず、滑らかな映像で D−ILA素子の開口率の高さを物語る。 スクリーンの関係で、動くとチラチラが見えるが、 離れてしまえばさほど気にはならなかった。 視野角は水平45度くらいまではOKか。 垂直は狭く、しゃがみ込むと画面上部が暗くなる。
様々な角度から検討すると、3者の中で「これがベスト!」と言うことは難しい。 まず3者の特性、長所・短所を整理しよう。 ■液晶(シャープ) 明るい環境で見るときは液晶が最も適している。 輝度が高いことに加え、映り込みがなく黒が締まって発色も良くなる。 逆に部屋を暗めにして見る場合には、バックライトの光漏れが 避けられず黒が浮いてくる。おそらく映画では少々厳しいだろう。 また、動画ボケの問題は無視できない。65型ともなるとボケの感じ方も 大きくなる。字幕スクロール、サッカー中継などでは顕著になるだろう。 動画ボケは気にし出すと止まらなくなる可能性もある。 そして、3者の中では最も価格が高い。 ■プラズマ(松下) 暗い部屋あるいは照明を抑えめにした環境ではプラズマが最も適している。 常時バックライトが点灯している液晶に対し、必要な時だけ 発光するプラズマは黒の再現が優れている。 上記の環境では黒が締まり良好な発色が得られる。 逆に明るい部屋で見る場合には映り込みが影響して見にくくなるだろう。 動画ボケがないのも長所である。大画面では特に際立つ長所となる。 ■リアプロ(ビクター) 明るさは液晶には及ばないが、映り込みがないため見やすく、 一般的な明るさのリビングであれば十分明るい画面だろう。 D−ILAは反射型液晶で、透過型液晶とは異なるが、黒浮きは存在する。 部屋を暗くして見る時には締まりがなくなるだろう。 素子自体の動画応答性が高いためか、ボケは液晶とプラズマの中間。 視野角が狭い。画面中央に対して水平に3人程度並んで見る分には 問題ないが、それ以上の人数、また画面を見上げるor見下げるような 位置からでは厳しくなる。 他の利点はまず圧倒的な安さ。消費電力も他の1/3という低さだ。 軽量で設置が簡単なのも家庭用としては長所となるだろう。 欠点は本体の厚み。設置面積は液晶・プラズマと変わらないが、 画面位置が前進する。他は電源投入から出画まで30秒程度かかること、 ランプ交換が必要なこと。 以上のように、選ぶ時には実にさまざまなファクターが関係している。 照明環境、動画ボケ、視野角、価格、消費電力、厚み、重量等である。 個々人によって何を重視するかは異なるため、一般論では結論は出ない。 そこで、私の個人的な意見で言わせてもらう。 まず、暗くして大画面を楽しむなら私は液晶プロジェクターを選ぶ。 十分な画質のものが20万円以下で買えるからだ。 だから直視型ディスプレイに求めることは明るい環境できれいに見えること。 ということで液晶、リアプロに絞る。 2者を比べた時に、私は2倍以上の価格差の価値を見出せない。 斜めから見た時の画質は私にとっては重要ではないし、 厚みも設置面積は同じだから気にしない。 それよりも断トツのコストパフォーマンスの高さが際立つ。 ということで、最も「オイシイ」選択はリアプロ、というのを私の結論とする。 |