V - eye
エディが思いつきでAVを斬る!語る!

フルHD化の流れ、そして・・・

(2004.10.16)


   液晶・PDPが売れているさなか、次の流れは「フルHD対応」だ。
   ハイビジョンの実力を真に発揮できるフルHDディスプレイの状況と、
   その後の進化について語ってみる。


    ― ハイビジョンが普及している ―

 ハイビジョンが普及している。近年の液晶・PDPブームの中で、
 液晶・PDPという「モノ」の普及に目が行きがちだが、
 そのほとんどにデジタルチューナーが乗っかっており、
 ハイビジョンの普及も同時進行で進んでいるのである。
 2004年も後半に入り、地上デジタル視聴可能な地域も広がっている。
 アンテナ取り付けが必要なBSではなく、単に視聴機をリプレイスするだけで
 ハイビジョンが見られる地上波のデジタル化は、
 全国にあまねくハイビジョン文化を根付かせることになる。
 
 ハイビジョンの定義や歴史については過去に本コーナーで述べたことが
 あるのでそちらを参照して欲しい。(ハイビジョン時代到来の予感
 ハイビジョンの素晴らしさは誰もが認めるところであったが、
 普及に弾みがつくにはBSデジタルの開始を待たねばならなかった。
 実験放送の開始から10年以上の歳月がかかったことになる。
 
 臨場感や感動が味わえるハイビジョンの普及によって、
 生活や心がより豊かになると期待あるいは確信している。
 
    ― フルHD化の流れ ―

 ハイビジョン放送は、水平1920×垂直1080画素の約200万画素である。
 本来であれば、これをそのまま映し出すものがハイビジョンTVである
 べきだし、そうであるのが自然な考え方という感じがするが、
 現在の液晶・PDPの画素構成は1368×768のXGAタイプが主流と
 なっている(PDPは1024×768というものもある)。
 画素数は約100万画素、そう、放送で送られてきているリソースの
 半分しか、現在のディスプレイは表現できていないのだ。
 半分のリソースを捨てていると言ってもよい。
 
 しかしそんな状況でも、店頭では「ハイビジョンTV」と謳っている。
 これはおかしいのでは?と思ってしまうが、電機業界では
 「垂直解像度が650本以上あればハイビジョンを十分表現できる」
 という理由から、ハイビジョンTVの定義を上記のように定めている。
 
 しかし、送られてきているリソースを全部使って表示した方が当然
 キレイに映るに決まっているわけで、AV業界ではフルHD化の流れが
 最近急速に立ち上がってきた。

    ― フルHD商品の登場 ―

SHARP
LC-45GD1

(定価 997,500円)

業界先駆けのフルHDパネル、かつサイズも最大級の液晶TV
 

 液晶ディスプレイ市場の巨人シャープが8月に発売したフルHD液晶TV。
 「業界初」「業界最大」がつかないのは、寸でのところでサムスンが
 称号を持っていったからだ。サムスンはフルHDの46型液晶を6月に
 発売している。しかし、日本ではブランド力の差は明らかで、
 事実上シャープがフルHD&最大サイズの液晶市場を独占している。
 しかも、100万近い値段にも関わらず、生産が間に合わないほどの
 売れ行きだというから、シャープブランドの勢いはすごいものだ。
 
 画質は、32型の画質をそのまま大きくした感じで、46型でも粗さは
 感じられない。コントラスト感の高い映像が楽しめる。

Victor
DLA-HD2K

(売価 240万円程度)

民生用として初のフルHDプロジェクタ。デバイスは反射型素子のLCOS
 

 業界初のフルHD液晶プロジェクターで、今年5月に発売されている。
 厳密にはソニーの「QUALIA004」が2003年8月に発売されているが、
 販売形態が特殊で、受注生産のみということから、民生用としては
 ふさわしくないと見る向きが多い。
 
 本機はビクターが数年前から取り組んでいる反射型液晶素子「D−ILA」
 を用いている。画素の高密度化が容易であり、高精細化・小型化の両方に有利。
 実際、QUALIA004とは体積・重量で大きなアドバンテージがある。
 
 画質は素晴らしいの一語。映画のフィルムそのものという感じがするし、
 発色もすばらしかった。大画面でこそフルHD化のパフォーマンスが
 発揮されるという感じがした。

SONY
HDR-FX1

(売価 40万円前後)

DVテープにハイビジョン記録を行う「HDV」規格に準拠した業界初の1080i対応ビデオカメラ
 

 ハイビジョン記録を行えるビデオカメラというと、ビクターが
 2003年1月に発売した「GR−HD1」があるが、30フレームの720P
 というフォーマットで、業界が定義する“ハイビジョン”ではあったが、
 60フレーム/1080iの正規ハイビジョンと比べ差があったのは否めなかった。
 
 本機はこの60フレーム/1080iで録画可能な初のビデオカメラだ。
 DVテープにMPEG2を用いてハイビジョン信号を記録する
 共通規格「HDV」に準拠し、水平が1440画素にとどまるものの、
 垂直1080本の60フレームで60分の記録が行える。
 
 画質は、まさにスタジオ収録したハイビジョンそのもの、といった趣。
 しかし筐体もまさにスタジオレベル、大きく重いのはちょっと残念。

    ― フルHDの次・・・? ―

 上で紹介してきたように、今年に入り「フルHD」商品が投入され、
 今後も高級機種から次第にフルHD化が進むのが業界の流れだと思われる。
 2〜3年後には、売れ筋の32型液晶くらいまでは全てフルHDになってるんじゃ
 ないの〜という気すらする。
 
 さて、そうなると「フルHD」の次は一体何が来るのだろうか。
 メーカーは早くもそれを模索し始めている。
 さらなる高解像度化がその一つだ。
 
 

 上は解像度の種類の図である。ワイド画面では、フルHDの上に
 4096×2160画素の「4K2K」というサイズが規定されている。
 現行ハイビジョンの実に4倍、800万画素のシステムである。

Victor
4K2Kスーパープロジェクター


現行ハイビジョンの4倍の800万画素を投写するシステム
 

 この4K2K、既に研究段階では実用の域に達しており、
 ハリウッドもデジタルシネマとして使用するという噂である。
 投写機は早くから高解像度のD−ILA素子を手掛けていたビクターが
 提供していたが、最近になって同じく反射型LCOS系のSXRDという
 独自デバイスを擁してソニーも4K2Kに参入している。
 
 4K2Kの映像は、まさに「その場にいる」感覚だ。ただただ素晴らしい。
 300インチ(だったか?)が眼前に広がると、なんというか没頭してしまう。
 

 フルHDの次として、浮上するもう1つは、やはり「立体テレビ」だ。
 立体視テレビは古くて新しいテーマであり、今まで様々な研究が行われ、
 そして今も進行中である。電機の展示会では毎年必ず立体テレビに関する
 発表があるし、今までに市場投入された商品もあった。

    ― しかし、どうだろう・・・ ―

 フルHDの次、についてちょっと考えると、上で述べた2つの道が浮かぶ。
 しかし、普及するか?という点ではどちらも疑問符がつく。
 
 4K2Kは、デジカメがどんどん高解像度化して行っている流れから
 すると自然に思えるが、実はそうとも言い切れない。
 人間の視力と、画面サイズと、画面との距離を考えると、
 「○○インチの画面を○メートルから見る前提では、これ以上高解像度化しても
 視聴者には判別できない」というゾーンが必ず存在する。
 
 例えば、28インチの画面を4メートル離れて見たら、DVDと
 ハイビジョンでも大差ないように見える。
 逆に、ハイビジョンは例えば「4メートルから見る前提では100インチにしても
 滑らかな映像が保てる」ということも言える。
 つまり、画面と3〜5メートルの距離を置いて見るためのテレビとしては、
 4K2Kは明らかなオーバースペックであり、200インチ以上に拡大しないと
 その恩恵は受けられないということなのだ。
 これでは普及するのは一部のマニアだけとなるのは明白だ。
 
 また立体テレビであるが、昔からメガネをかけて見るタイプは
 エンターテイメント施設なんかで体験したことがあったが、
 「自然」とは遠い感覚で、私なんかは酔ってしまったほどだ。
 最近ではメガネなしでも立体に見える方式も複数登場しているが、
 解像度が異様に低かったり、頭を動かすと不連続点が見えたり、
 どれもパフォーマンスが高いとはお世辞にも言えないものばかりだ。
 立体の映像ソースを放送やパッケージで伝送する方法もどうするのか
 など、立体テレビ実現へのハードルはまだまだ高い。
 
 となると、「フルHDディスプレイ」というのは、家庭用としては
 一つの到達点という感じがしてくる。
 もちろん、表示デバイスとしては色んな工夫がなされていくと思う。
 実際、LEDバックライトを使ったり、CPUを搭載して複雑な映像処理をしたり、
 SEDという新種のディスプレイが立ち上がったりしており、
 「映像ソースをよりキレイに見せる」ための努力は今後も続くと思うが、
 映像ソースとしてはハイビジョンがしばらくの間君臨するのではと思う。