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ハイビジョンが普及している。近年の液晶・PDPブームの中で、 液晶・PDPという「モノ」の普及に目が行きがちだが、 そのほとんどにデジタルチューナーが乗っかっており、 ハイビジョンの普及も同時進行で進んでいるのである。 2004年も後半に入り、地上デジタル視聴可能な地域も広がっている。 アンテナ取り付けが必要なBSではなく、単に視聴機をリプレイスするだけで ハイビジョンが見られる地上波のデジタル化は、 全国にあまねくハイビジョン文化を根付かせることになる。 ハイビジョンの定義や歴史については過去に本コーナーで述べたことが あるのでそちらを参照して欲しい。(ハイビジョン時代到来の予感) ハイビジョンの素晴らしさは誰もが認めるところであったが、 普及に弾みがつくにはBSデジタルの開始を待たねばならなかった。 実験放送の開始から10年以上の歳月がかかったことになる。 臨場感や感動が味わえるハイビジョンの普及によって、 生活や心がより豊かになると期待あるいは確信している。
ハイビジョン放送は、水平1920×垂直1080画素の約200万画素である。 本来であれば、これをそのまま映し出すものがハイビジョンTVである べきだし、そうであるのが自然な考え方という感じがするが、 現在の液晶・PDPの画素構成は1368×768のXGAタイプが主流と なっている(PDPは1024×768というものもある)。 画素数は約100万画素、そう、放送で送られてきているリソースの 半分しか、現在のディスプレイは表現できていないのだ。 半分のリソースを捨てていると言ってもよい。 しかしそんな状況でも、店頭では「ハイビジョンTV」と謳っている。 これはおかしいのでは?と思ってしまうが、電機業界では 「垂直解像度が650本以上あればハイビジョンを十分表現できる」 という理由から、ハイビジョンTVの定義を上記のように定めている。 しかし、送られてきているリソースを全部使って表示した方が当然 キレイに映るに決まっているわけで、AV業界ではフルHD化の流れが 最近急速に立ち上がってきた。
液晶ディスプレイ市場の巨人シャープが8月に発売したフルHD液晶TV。 「業界初」「業界最大」がつかないのは、寸でのところでサムスンが 称号を持っていったからだ。サムスンはフルHDの46型液晶を6月に 発売している。しかし、日本ではブランド力の差は明らかで、 事実上シャープがフルHD&最大サイズの液晶市場を独占している。 しかも、100万近い値段にも関わらず、生産が間に合わないほどの 売れ行きだというから、シャープブランドの勢いはすごいものだ。 画質は、32型の画質をそのまま大きくした感じで、46型でも粗さは 感じられない。コントラスト感の高い映像が楽しめる。
業界初のフルHD液晶プロジェクターで、今年5月に発売されている。 厳密にはソニーの「QUALIA004」が2003年8月に発売されているが、 販売形態が特殊で、受注生産のみということから、民生用としては ふさわしくないと見る向きが多い。 本機はビクターが数年前から取り組んでいる反射型液晶素子「D−ILA」 を用いている。画素の高密度化が容易であり、高精細化・小型化の両方に有利。 実際、QUALIA004とは体積・重量で大きなアドバンテージがある。 画質は素晴らしいの一語。映画のフィルムそのものという感じがするし、 発色もすばらしかった。大画面でこそフルHD化のパフォーマンスが 発揮されるという感じがした。
ハイビジョン記録を行えるビデオカメラというと、ビクターが 2003年1月に発売した「GR−HD1」があるが、30フレームの720P というフォーマットで、業界が定義する“ハイビジョン”ではあったが、 60フレーム/1080iの正規ハイビジョンと比べ差があったのは否めなかった。 本機はこの60フレーム/1080iで録画可能な初のビデオカメラだ。 DVテープにMPEG2を用いてハイビジョン信号を記録する 共通規格「HDV」に準拠し、水平が1440画素にとどまるものの、 垂直1080本の60フレームで60分の記録が行える。 画質は、まさにスタジオ収録したハイビジョンそのもの、といった趣。 しかし筐体もまさにスタジオレベル、大きく重いのはちょっと残念。
上で紹介してきたように、今年に入り「フルHD」商品が投入され、 今後も高級機種から次第にフルHD化が進むのが業界の流れだと思われる。 2〜3年後には、売れ筋の32型液晶くらいまでは全てフルHDになってるんじゃ ないの〜という気すらする。 さて、そうなると「フルHD」の次は一体何が来るのだろうか。 メーカーは早くもそれを模索し始めている。 さらなる高解像度化がその一つだ。 上は解像度の種類の図である。ワイド画面では、フルHDの上に 4096×2160画素の「4K2K」というサイズが規定されている。 現行ハイビジョンの実に4倍、800万画素のシステムである。
この4K2K、既に研究段階では実用の域に達しており、 ハリウッドもデジタルシネマとして使用するという噂である。 投写機は早くから高解像度のD−ILA素子を手掛けていたビクターが 提供していたが、最近になって同じく反射型LCOS系のSXRDという 独自デバイスを擁してソニーも4K2Kに参入している。 4K2Kの映像は、まさに「その場にいる」感覚だ。ただただ素晴らしい。 300インチ(だったか?)が眼前に広がると、なんというか没頭してしまう。 フルHDの次として、浮上するもう1つは、やはり「立体テレビ」だ。 立体視テレビは古くて新しいテーマであり、今まで様々な研究が行われ、 そして今も進行中である。電機の展示会では毎年必ず立体テレビに関する 発表があるし、今までに市場投入された商品もあった。
フルHDの次、についてちょっと考えると、上で述べた2つの道が浮かぶ。 しかし、普及するか?という点ではどちらも疑問符がつく。 4K2Kは、デジカメがどんどん高解像度化して行っている流れから すると自然に思えるが、実はそうとも言い切れない。 人間の視力と、画面サイズと、画面との距離を考えると、 「○○インチの画面を○メートルから見る前提では、これ以上高解像度化しても 視聴者には判別できない」というゾーンが必ず存在する。 例えば、28インチの画面を4メートル離れて見たら、DVDと ハイビジョンでも大差ないように見える。 逆に、ハイビジョンは例えば「4メートルから見る前提では100インチにしても 滑らかな映像が保てる」ということも言える。 つまり、画面と3〜5メートルの距離を置いて見るためのテレビとしては、 4K2Kは明らかなオーバースペックであり、200インチ以上に拡大しないと その恩恵は受けられないということなのだ。 これでは普及するのは一部のマニアだけとなるのは明白だ。 また立体テレビであるが、昔からメガネをかけて見るタイプは エンターテイメント施設なんかで体験したことがあったが、 「自然」とは遠い感覚で、私なんかは酔ってしまったほどだ。 最近ではメガネなしでも立体に見える方式も複数登場しているが、 解像度が異様に低かったり、頭を動かすと不連続点が見えたり、 どれもパフォーマンスが高いとはお世辞にも言えないものばかりだ。 立体の映像ソースを放送やパッケージで伝送する方法もどうするのか など、立体テレビ実現へのハードルはまだまだ高い。 となると、「フルHDディスプレイ」というのは、家庭用としては 一つの到達点という感じがしてくる。 もちろん、表示デバイスとしては色んな工夫がなされていくと思う。 実際、LEDバックライトを使ったり、CPUを搭載して複雑な映像処理をしたり、 SEDという新種のディスプレイが立ち上がったりしており、 「映像ソースをよりキレイに見せる」ための努力は今後も続くと思うが、 映像ソースとしてはハイビジョンがしばらくの間君臨するのではと思う。 |