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近年、ディスプレイは高臨場感を求めて急速な発展を見せている。 具体的に言えばそれは大画面・高精細化の流れであり、 プラズマディスプレイ(PDP)の好調な売れ行きがそれを端的に表している。 画面が大きくなれば、それに見合った精細度が求められることになる訳で、この意味で、 PDPと親和性が高く、PDPの魅力を一層高めているのがハイビジョンだ。 以前は「ハイビジョン」と言えば高嶺の花であったが、 近年のデジタル化とデバイスの進歩によって大分低価格化してきた。 今回はハイビジョンの普及について、様々な角度から検証してみたい。 ― ハイビジョンをおさらい ―今さらという感もあるかもしれないが、念のため復習しておこう。ハイビジョンとは高品位TV(Hi-Definition TV)の意味で、 現在の地上波などのNTSC方式よりも高品位な映像ソースを指す。 ところで、最近では映像の規格が5種類定義されているが、まずこれを整理しよう。 D1(525i)= 走査線525本&インターレース D2(525P)= 走査線525本&プログレッシブ D3(1125i)= 走査線1125本&インターレース D4(750P)= 走査線750本&プログレッシブ D5(1125P)= 走査線1125P&プログレッシブ 走査線の数は多ければ多いほど高精細な映像が映し出せることを意味し、 インターレースよりもプログレッシブの方が画面のチラつきが少ないという特徴がある。 なおD5に近づくに従って伝送情報量は多くなる。 D3以上のソースが「ハイビジョン」と名乗ってよいことになっている。 なお画面の画角(アスペクト比)は16:9であることは言うまでもない。 ハイビジョンの魅力は、その豊富な情報量によって生み出される、そこに実在するかのような 錯覚を覚えるリアルさと、ワイドアスペクトによる没入感・視覚の安定感である。 電器店の店頭で、音楽ライブやスポーツ中継等をハイビジョンで一度でも見たことが ある人ならば、その素晴らしさは分かって頂けるはずだ。 ― ハイビジョン放送 ―ハイビジョン(HDTV=Hi-Difinition TV)の歴史自体はそう新しくはなく、東京五輪の年である1964年には既に研究が始まっていた。 1983年に開発されたハイビジョンのための伝送方式「MUSE」では、 当時はまだデジタル伝送技術の進歩が追いつかず、アナログ帯域圧縮方式を用いていた。 MUSEハイビジョンは1989年に実験放送を開始、1997年に本放送を開始したが、 MUSE方式は大容量メモリを必要とするので受像機が高価で、これが大きな問題点だった。 アナログ圧縮を用いたが故の折り返しノイズ、静止物体・動物体で異なる処理をすることに 起因する動きボケにも悩まされ、画質にも問題点があり、あまり普及しなかった。 ハイビジョンが陽の目を見るのは2000年12月に開始されたBSデジタル放送である。 それまでNHKによる放送1チャンネルしかなかったものが、一気に8チャンネルに増加。 専用チューナーは10万円以下で売り出され、デジタル化によって真価を発揮したハイビジョンの 高画質ぶりに、それまで手を出さなかった人達がハイビジョンに魅力を感じ始めた。 そして今年、わが国の放送の主役である地上波のデジタル放送が開始される。 年末に東京・名古屋・大阪の首都圏の近傍辺りに限定して開始されるが、 2007年までには全国で地上波デジタル放送が視聴できるようになる予定だ。 私は2002年1月にBSデジタルチューナーを購入したが、結局1年経たずに手放してしまった。 それは他ならぬ、「放送のメインは地上波だ」と痛感したからである。 日本全国老若男女が見ている地上波放送がもうすぐ見られなくなり、 デジタル放送に変わるということは、これは間違いなく大きな変化であろう。 そして、地上波デジタル放送もBSデジタル放送と同じく、ハイビジョン放送が主軸となる予定で、 具体的には放送の半数以上をハイビジョン番組とすることが検討されている。 放送のメインで、我々の生活に深く根ざした地上波放送のデジタル化は、 ハイビジョンを一気に身近なものにすることが期待される。 ― ハイビジョン受像機 ―
― ハイビジョン録画機器 ―
― ハイビジョンビデオカメラ ―
D4規格は「750/60P」であるから、コマ数が半分で、これはD4規格ではない。 水平走査周波数は750×30=22.5kHzだから、D1の15.75kHz、D2の31.5kHzの中間に相当する。 ただ、525Pとほぼ同じ33.75kHzのD3が一見して明らかにD2よりも高精細であることを考えると、 収録の際に走査線が多い方が有利なのだろう。 ビクターでは、「プログレッシブのCCDの方がコストが安かった」とコメントしている。 ― ま と め ―以上のように、今ハイビジョンは「観る」「録る」「創る」という3つの基盤を固めつつある。これらが相乗効果を生み、今後ハイビジョンの普及に弾みが付く予感が充満している。 3年後には、TV番組はほとんどハイビジョン放送、プラズマディスプレイも安価になり、 ハイビジョンチューナー付きのD−VHS機が当たり前になり、 ビデオカメラも4割がハイビジョンタイプ・・・となっているかもしれない!! これを一層強固にするのは、ハイビジョン録画可能なDVDの普及だろう。 ただこれは既に述べたように3年後では難しいかもしれない。 |