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§とある朝のこと。
「おはよう、サファイア!これ、借りてた本。どうもありがとう」
とフランツが差し出してきたのでしまおうと鞄を開けるサファイア。
と、チラッと見えてしまったのが折りたたみの傘でした
「あれ?今日って雨降るの???」
吃驚した顔のフランツ。
窓の外は晴天、天気予報も降水確率0%って言ってた筈。
サファイアってどちらかと言うと石橋を叩かないタイプな筈なんだけど。
雨が降ったら迎えも来てくれそうだし。
不信気に見てると
「いいの!お気に入りだから持っていたいの!」
なんだか不機嫌そうに鞄のふたを閉じました。
そういう顔をされちゃうとそれ以上何も言えないフランツ、にこにこと誘ってみます。
「本のお礼にお茶しない?帰りに時間取れないかな?」
その笑顔を眺めながら、一昨日の事を思い出すサファイアでした。
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急に降りだした雨に思い切り濡れたサファイアとヘケート。
駆け込んだ電車の中でやっと一息つきます。
「一度学校に戻って傘を取ってくるべきだったかも」
「でも、電車に乗っちゃえばあとは大丈夫!迎えに来てもらうし。
ねぇねぇ、帰りに」
楽しそうに話していると途中で乗ってきた人影が。
「あれ?フランツだ!ね?サファ…」
ヘケート、途中で口を噤んでしまいました。隣の車両に乗ってきたのは、
確かにフランツです。でも、その手にはピンク色の女物の傘が、そして隣には持ち主の
女の子の姿があったからです。
「きっと、傘が無いから」
ヘケートが困りながら言いかけると笑顔で続けるサファイア。
「傘が無いから入れてもらったのよ、きっと。
そんなことよりねぇ」
その妙に元気なのと、わざとフランツのほうを見ない態度は何なのかな?
と心では思っても口には出さないヘケートです。
2駅ほど過ぎたところで、貸す貸さないでちょっとお話をしたようですが、
結局女の子が傘を持って降りて行きました。
「サファイア!ほら、声掛けなさいよ!」
ヘケートが背中を押しますが、傘を持っていないし、ヘケート一人になっちゃうしなんて
ぐずぐずしてる隙にどこから現れたのか(車両のどこかで様子を伺ってたんでしょうね)
やはり学校帰りの女の子が、フランツの前に立ちました。
花柄と思われる綺麗な赤い傘を手に持って。
当然のように手渡された傘を持つフランツ。女の子はその腕に手を掛けていて
傍から見るととてもお似合いのカップルです。
あーらら。と思うヘケート。でもサファイアは何事も無かったように
「入れてくれる人がいて良かったよね?」
とにっこりしました。
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「それで?フランツには何も言ってないわけ!?」
翌朝の学校でその話を聞いたフリーベがサファイアに問い質します。
「何を言うって言うの?」
毅然とした表情で切り返すサファイアに溜息をつくヘケート。
めげないフリーベは
「彼氏が他の女と歩いてたんでしょ?文句の一つや二つあって当然じゃない!?」
更に尋ねますが、鬱陶しそうなサファイアの
「彼氏じゃないもの。別に誰といようと関係ないし」
という返事にとうとうキレてしまいました。
「ばっかじゃないの!!そのうち本当に持っていかれちゃうからね!!」
2人の間で困るヘケート
「フランツに悪気は無いのよ、きっと。別にどうってことない相手だと思うの。
今朝だって普通だったんだもんね?」
と白けた場をとりなします。それを受けたフリーベが溜息をつきました。
「そうなんだよねぇ、あれは強敵。
あの来るもの拒まず、去るもの追わずっていう精神治らないとさ。
はっきり言って女の敵だと思うよ、あたし」
「そんな!敵じゃないもん!!」
思わず言ってしまい、はっ!と口を押さえるサファイア。
まぁまぁ、とヘケートが宥めてくるので余計に恥ずかしくなります。
「とりあえず、アドバイスね。
あの手のタイプは外堀から埋めていかないと。
他の女の子に付け入る隙を与えないように準備は万端にしておくこと…って感じ?」
とくとくと語るフリーベ、うんうんとヘケートは頷いてますが
「別に関係ないってば!」
サファイアは突っぱねちゃったのでした。
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出掛けに玄関で傘立てが目に入ったサファイア。
何度も躊躇って、でも結局鞄に傘を入れてきてしまったのでした。
やっぱり気になってるのかな…。
別にフランツが誰かと一つの傘で歩いていても平気なんだけど。
たぶん。気にしないと思うんだけど…。
うーん、と考え込みます。
「今日、都合が悪いの?今度にしようか?」
フランツの困ったような声に気が付きました。
フランツの下車駅は間近です。
「そんなことない、大丈夫」
サファイア、あわてて答えました。

<<独り言>> |
フランツは絶対悪い…と思う方もいるでしょう。
でも、彼にしてみれば女の子が周りにいて当然なんですよ。
だから相合い傘だってなんてことはないわけです。
これでサファイアが露骨にやきもちを焼けば状況は変わるんでしょうけどね。
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