HK電車でGO!

★.:*: ☆.:*: その4:2001年のホワイト・ディ :*:.★ :*:.☆
  

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 §さて、3月14日。
いつもの時間、いつもの車両に、いつものように乗り込んだフランツ。
「おはようございます♪」
今日も笑顔のサファイアに嬉しくなって、そちらへ…なんだか大荷物です。
「どうしたの?それ???」
首を傾げるサファイアに、今日はホワイト・ディだから、と、ポケットからピンクの小さな包みを
差し出します。
一瞬、考えこんでたようなサファイア、ぎこちなく笑うと
「私に?どうして?」
不審そうに問い掛けます。結局、チョコあげてないし…って呟くと、
「そんなの、気にしないで良いよ!
 僕の事好きだって言ってくれた子には、ちゃんとお返ししないと♪」
能天気に笑うフランツに、サファイア胸がつかえる思いです。

 「私、あなたの事、好きだなんて言ってないわ!」
低い声で、でもはっきりと言うサファイア。
「この前、チョコレートは捨てたけど、君の気持ちは君の胸にあるって…」
言いかけるフランツに、カーッとなって
「私の気持ちが私の胸にあるのは当然でしょう!?
 そんな意味じゃないわ!!勘違いしないで下さい!!!」
サファイアはキッパリと言い切ってしまいます。
「な…」
絶句するフランツ、何か言いかけますが、横を向いて拒絶の表情を浮かべた
サファイアを見て諦めます。

 一瞬の沈黙。

 それを破ったのは、いつものように成り行きを見守っていたブラッドでした。
「フランツ、先、降りるぞ!」
「あ!待った!僕も降りる…けど…」
未練たっぷりの視線をサファイアに送りますが、完璧に無視されてすごすごと降りるフランツ。
‘良いのか?’ブラッドに聞かれますが、返事も出来ません。


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 「相変らず、むかつく奴だな」
そう言うクラスメートの視線の先には、女の子達に囲まれているフランツが。
「毎年の事だろ?僕達なんか小学校からだぜ。いい加減慣れた。な?ブラッド」
苦笑しながら言うケン一、ブラッドが考え込んでることに気付きます。
「どうした?」
「いや。…なんでもない」
そう言いながらも、ブラッドの視線はやっぱりフランツの方を向いています。
ケン一、ちょっと躊躇して、ひそひそと
「気になってる子が、またフランツに惚れてると…いてぇ!」
ブラッド、失礼な台詞に、パンチで答えました。

 休み時間ごとに、入れ替わり立ち代り女の子達が、フランツの許へやってきます。
その度に、笑顔で薄いブルーの包みを渡しているのを見て
「マメだよね?あーいうとこは尊敬するな」
ケン一、更にブラッドに話題を振ってみますが、芳しい返事は返って来ません。
フランツがかなり無理をして笑顔でいることには気付きました。
授業が始まると、上の空で、何度も辛そうな溜息をついてます。
一体何があったんだか???

 お昼休み、やっと答えが出ました。
「…で、シカトされちゃったんだよ」
差し入れのお弁当も殆ど手付かずで、嘆くフランツ。
「それは、怒るだろーが!」
馬鹿か、全く…ケン一、呆れています。
「あ〜?何で〜?」
と尋ねてくるフランツは無視して、ブラッドに
「こいつ、一発殴って良い?」
なんて聞いちゃいます。
「殴っても、目は覚めないと思うけど」
そんなブラッドの返事に
「なんだよ!二人して!!
 僕が気の毒だ、とか思わないのか?」
ムキになるフランツ。
思うわけ無いだろ。ブラッド溜息。
「俺は、今日、本当にお姫さまに同情したぞ」
うんうん、と頷くケン一。
「何故だ!?
 チョコレート捨てられちゃって、結局貰って無いにも拘らず、‘ちゃんと’お返し用意したんだぞ!!」
だから、とケン一、説明を始めました。
「君が好きって言ってくれたから、そのお礼だよって渡そうとしたんだろ?
 僕の気持ちとかならまだしも、お礼って人前で言われて、だよ、怒らないわけ無いだろ?
 あの子はお前のファンの一人とは、訳が違うじゃないか。
 だいたい、ちゃんと好きだって言っても言われてもいないんだろ!
 もう少し、大事にしろよ!」
 考え込むフランツ。ブラッドの方を見ます。
「俺もケン一の意見に賛成だな。女の子、傷つけるようなことするな」
そうか…傷つけちゃったのか…。深深と溜息をつくフランツに
「放課後、謝りに行けよ」
と、苦笑しながら言うブラッド。
ケン一も、早いほうが良いと、アドバイスします。


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 §学校帰りのサファイア、一つ手前の駅で降りました。
プラスチックに迎えに来て欲しいと電話をかけます。
「どうして?そこまで来てるんなら、もう一駅だろう?
 荷物が重くて限界なの?」
なんのかんの言ってもサファイアに甘いプラスチック、すぐに行くって、返事をしました。

‘だって…駅にフランツがいるかもしれないし…’
サファイア、朝の出来事を思い出します。

どうして、あんな人が気になっちゃうんだろう。
あんな…自分がもてて当然だって思ってるような人。
実際もてるから、仕方が無いのかも知れないけど、でも、
私は好きだなんて言ってないんだから…。
親切にしてもらったから、お話するようになっただけだし。
チョコレートだって、皆が買うって言うから、お付き合いで買っただけだし、
別に、本命とかじゃないもの…。別に好きじゃないんだから。
フランツのばか!!!

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 その頃、フランツはヴァレンタインディの時と同じく、駅の改札で待ってます。
なかなか、来ないなぁ。
また、寄り道してるのかなぁ。。。

「フランツ、こんなところでなにしてるんだ?」
何人もの顔見知りが声をかけてきますが笑って受け流して、女の子たちのお誘いも穏便に断って、
ただひたすら待ってます。

 「そろそろ、帰らないか?」
大人しく待ちつづけるフランツをみかねたブラッド、声をかけます。
「すれ違っちゃったんだよ。いくらなんでも、あのお嬢様がこんな時間まで出歩いてるとは思えない」
そう言われて時計を見ると、もう8時です。
「絶対見落とす筈無いのに…」
がっかりするフランツに
「腹減ってない?何か食べて行こうよ」
ケン一もお付き合いで、待っててくれたようです。
「明日の朝会えば良いじゃないか、な」
二人に促され、フランツ、やっと歩き始めました。

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 その翌朝、いつもの時間、いつもの車両に、いつものように乗り込んだフランツ。
サファイアを見つけられません。
‘あれ?何故いないんだろう?’
そうして、次の日も、その翌日も、会うことが出来ません。
「いったいどうしちゃったんだ?」

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 §そんなこんなで、3日め。。。

 学校帰り、お友だちと駅までやって来たサファイア、
ホームにぽつんと立つ、ここ数日、自分が避けてる人影を見つけます。
知らない…関係無いもん…。
無視して離れたところに立っちゃいます。

 「サファイア?どうしたの?」
いつも乗る場所と違うことに不審気なお友だちのヘケート。
ちょっと…と言葉を濁すサファイア。
そこへフランツがこちらに向かって歩いてきます。キッと身構えるサファイアに
「そんなに怖い顔しないで」
淋しそうに微笑いました。

 「どうしてこんなところにいるの!?
 待ち伏せなんてしないで!迷惑だわ!!最低!!!」
サファイアの剣幕にヘケート、おろおろしちゃいます。
ん…そうだね、とフランツ。

 そこへ電車がホームに入って来ました。

 「もう、しない。
 電車の時間も替える。
 だから、君は安心していつもの電車に乗ると良いよ」
それだけだから、とフランツが背を向けると、発車のベルが鳴ります。
「乗らないの?!」
思わず声を掛けてしまうサファイア。フランツ、後ろ手に手を振って歩いて行きます。。
「私、先に行くね!」
へケート、電車に乗り込むと‘ほら、行きなさい’って背の高い後姿を指差します。
躊躇いながらも、サファイアが乗ろうとするので
「月曜日に、ね!」
押し止めた瞬間、扉が閉まり電車は出発しました。

 ホームの端の姿勢の良い立ち姿に、思わず視線が止まってしまいやっぱり、格好良いなと思います。
良く見るといつもより元気が無いみたい。フッと溜息なんか吐いちゃったりして、
ちょっとやつれてる?もしかして自分の所為?
そう思うとサファイア、胸がきゅうっとします。

 数分のち、次の電車がやって来ました。
今度はフランツも乗る様子、サファイアも慌てて乗り込みます。

 一番前の車両、端っこの座席に座るフランツを見つけました。
何度か躊躇ったあと、フランツの前に立ちます。
「お隣り、良いですか?」
かなり勇気を出して言ったのに、ただ‘どうぞ’という返事が返ってきただけでした。

 「あの」
言いかけてその先が続けられないサファイア、俯いてしまいます。
「僕のこと怒ってるんでしょう?
 だから、電車ずらしてるんだよね?」
フランツ、ぽつりと言います。
「友人にも、言われたよ。君の事、大切にしろって…。
 ごめんね、勝手がよくわからなくて、君の事、傷つけちゃったんだね」
サファイア、どう答えたら良いかわかりません。俯いたままです。

「…僕の事、許してくれないかな、
 朝、前みたいに会いたいんだ」
フランツの真剣な声に、こくんと一つ頷いて、やっと顔を上げます。
「月曜日、いつもの電車に乗るから、フランツも、ちゃんと乗ってください」
そう言って恥ずかしそうに笑うサファイアに、うん!と満面の笑顔で答えるフランツでした。
<2001年のホワイト・ディ おしまい♪>



<<独り言>>
これ、一番最初の時〜フランツの受難〜 
(フランツ「ちょっと待て!タイトルからこれかよ!!」 ^^;)

っていうサブタイトルがついてたんですよねぇ。
自業自得と言えばそうなんだけど、やっぱりフランツ可哀相?



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