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§ヴァレンタイン当日の朝、既に家の前に女の子が待っていたフランツ。
囲まれるのが当然といった調子で、女の子たちと一緒に電車に乗り込んできました。
サファイアは、昨夜寝られない位ドキドキしてたので、そんな彼の様子が面白くありません。
えい!と車両を移っちゃいました。
…もう、知らない!チョコレートなんてあげない!嫌い!だいッ嫌い!フランツの馬鹿!…。
と心の中でフランツを罵っていると
「お姉さん、おはようございます!」
チンクがおともだちとにこにこしながら挨拶をするので、
「おはようございます♪良いところで会えたわ。ねぇ、チョコレートいらない?」
とフランツに上げる予定だった、綺麗にラッピングされた包みを取り出します。
小学生だって当然今日が何の日かわかってます。
そーして、その妙にゴージャスな包みが自分宛てではないことも。
大体この車両にいること事態が変だ、と気付いているチンク、
「いいです。もらえないです!」
と思いっきり遠慮。えー、貰っちゃえよ、なんて友人は言ってますが、
断固として受け取れないという態度です。
「どーして?チョコレート嫌いなの?」
「学校に持っていったら叱られます」
「そうなの?」
「そうです。今日、検査があるから、絶対取られちゃいます」
つまらないの…。サファイア不機嫌。そこへチンクの友人の火に油を注ぐ発言が。
「お姉さん、いつものお兄さんにはあげたんですか?」
馬鹿!小声で友人を叱るチンク。でも、サファイアの耳にしっかり届いており
「あのお兄さんね、欲しくないんだって。いっぱい貰ってるから」
と妙に優しげな声で答えます。
うわぁ、絶対怒ってる。。。チンクは友人の肩を押しつつ
「隣りに友だちがいるんで、あっちに行きます」
と退却することにしました。
あーあ、チンクにも振られてしまったわ。サファイア、軽い溜息。
…フランツがもてるのなんて前からだけど、知ってるけど、でも。。。
渡すときの台詞まで考えてたのに…。
‘お友達が買うっていうからお付き合いで買っちゃったの。
厭じゃなかったら、貰って…’
ってあくまでもさりげなく、渡そうって思ってたのに、もう絶対あげない!
フランツのいる車両に背を向けてしまいました。
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フランツは女の子に囲まれていますが、勿論サファイアがいないのには気付いていて
どうしちゃったんだろう???具合でも悪いのかな?昨日は元気だったよな?…
なんて自分が原因だなんて全く気付いてません。
「おい」
いつのまにか、ブラッドが隣に立ってました。
「お姫さまは、どうした?」
小声で囁かれて
「いないんだよ。こんなんじゃ探せないし」
困った顔で言うフランツに
「馬鹿、絶対怒ってるぞ」
「どうして?」
「おまえなぁ」
頭を抱えるブラッド。
「ヴァレンタインディの朝、彼氏が女の子に囲まれてたら、
そりゃあ、気を悪くするに決まってるじゃないか」
「そんなの彼女は承知してるし、
。。。第一、僕は彼氏じゃない…」
苦笑するフランツに
「そんなこと言ってると、俺が攫うぞ」
ブラッド、冗談とも本気ともつかない言葉です。
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§さて、そんな調子で放課後。
お友だちとひとしきりお喋りして、少し気が晴れたサファイア。
いつもより、遅い電車に乗ります。
そーして、なんとなく車内を見回してしまい、
フランツの姿を確認するのがいつのまにか身に付いた自分に吃驚します。
でもそれらしい人影は無し。
きっと今ごろは女の子たちとデートしてるんだわ。。。
サファイア、車窓に流れて行く景色を眺めながらぼんやりと思います。
昨日までドキドキしていた自分が馬鹿みたいで、悲しくなってしまいました。
ホームに降りてすぐ、大切に持っていたチョコレートをゴミ箱に放り込みます。
振り切るように駆け足で改札口へ。するとそこには見覚えある人影が。
「サファイア!随分遅いんだね。どこかで寄り道でもしてたの」
とっても爽やかに笑いかけてくる笑顔を、これがくせものなのよ…。
勿論無視!
「少し、時間有る?お茶でも飲んで行かない?」
フランツが自分の鞄に手を掛けようとするので、さっと身を引いて向き合うサファイア。
「あいにくですが、用事がありますので!」
叩き付けるように言って、早足で通り過ぎようとすると
「待ってよ。それなら、送って行くから」
ぴったり脇に付いてくるのです。
「結構です!」
サファイア、もう無視する!絶対無視する!って心の中で繰り返して、
本当はバスに乗らなきゃいけないんだけど、車内じゃ逃げ場が無いし、歩いちゃえ!
と必死に歩きます。
フランツは男の子だから当然楽々で、サファイアの息が切れてくるころでも
口笛でも吹きそうな感じ。
「もう!付いて来ないで!迷惑なの!さっさと帰って!!」
サファイアが怒鳴るのを、怒った顔も可愛いよなぁ...などと惚けた事を思うフランツでした。
「でも、サファイア、僕に用事があるだろう?」
「ありません!」
「いーや、絶対有るね」
フランツに断言されて、怯むサファイア。
「な、無い…です…」
「有る筈だよ」
「無いって言ったら無いです!」
サファイアがきっぱり言うとフランツ
「それなら、どうして僕は君の従兄に苛めわれちゃったんだろうね???」
って溜息混じりに言うのです。
「プラスチック?
一体何を?どういうこと?」
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今朝、校門で風紀チェックをしていたプラスチックがフランツを呼び止めて
持ちきれないほどたくさんのチョコレートを、すべて没収すると言うのです。
回りの女の子からは非難の声が。
それを抑えて、フランツはプラスチックに抗議します。
「先輩!いくらなんでも横暴です!
女の子の気持ちが篭ってるって言うのに、他の男になんて渡せるわけが無い!」
「サファイアに貰ったのを出すって言うなら、他は免除してやってもいいぞ」
小声で言うプラスチックに訝しがるフランツ。
「貰ってませんよ!」
「嘘を吐くんじゃない!調べは付いているんだ、
サファイアが日曜日に友人と一緒にチョコレートを買ったって」
「…でも、僕は貰ってませんよ。今朝は顔も見てない」
「そんな馬鹿な」
悩んでいるプラスチックに、フランツは、チョコの入った袋を渡します。
「とりあえず、預けておきますよ。
それで先輩の気が済むんなら、ね」
勿論、周りの女の子たちは納得しません。
「どういうこと?私たちのチョコはいらないって言うの?!」
当然の質問にフランツ、
「大切なのは、物じゃなく君たちの気持ちだろう?それは間違いなく受け取ったよ。
どうも有り難う。とても嬉しい。」
と絶品の笑顔で答えて、周囲もそれ以上は何も言えなくなってしまいました。♪♪♪
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「だから、没収されたままなんだよね。
当然、くれた子たちから、一日中責められてるし…非道い目にあってるんだけど。
誰かさんのチョコレートのお陰で」
「そう、沢山貰ったのね。
これ以上増やさなくても良いでしょう?」
ツンと顔を背けるサファイアの正面に立ったフランツ。
「百万の女の子がくれるチョコより、君からのたった一つが欲しい…
って言ったら…?」
フランツの真剣な眼差しに
「また、そんな冗談…」
笑いかけた口を噤むサファイアです。
「持ってるなら焦らさないで。
…お願いだから」
フランツの懇願する口調に、とうとう
「だって。。。捨てちゃったもの。。。」
小さな声で言います。
「何だって!!」
物凄い剣幕のフランツに肩を強く捕まれて、痛いって訴えますが、
許してもらえません。
「いつ?!どこに捨てたって!?
答えて!!!」
「。。。さっき…駅のゴミ箱に…」
最後まで聞かずに、一目散に駆け出すフランツ。
サファイアは一人、ポツンと残されてしまいました。
「捨てちゃったって言ってるのに…」
フランツの小さくなった後姿に溜息を一つ吐いて二人分の鞄を拾います。
「届けに行かなきゃ…ね」
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「だから、チョコレートです!」
駅の改札口、駅員さんと揉めているフランツ。
「ゴミ、回収されてて、見つからないんですよ!
どこに行けば、良いのか教えて下さい!お願いします!!」
「それは、ここではちょっと…。
清掃はそっちの担当がやるからねぇ」
「担当の人がどこにいるか、教えて欲しいってさっきから」
あ〜、もう!!フランツ、埒のあかない会話に切れそうです。
ダッシュで駅に辿り着いて、ホームのゴミ箱を開けるとどれも殆ど中身が無し。
あわてて駅員に尋ねると、落し物&忘れ物と間違われ、さっきからわけのわからない会話を
繰り返すのみです。
「清掃担当までは、ここじゃあ」
「だから!」
胸倉を掴みそうな勢いのフランツの耳に
「フランツ!」
サファイアの声が。
「忘れちゃ駄目でしょ?」
にっこりと、鞄を見せます。
あ、ああ…と差し出した手が汚れているのに気付き、
パンパンと払ってから受け取ると
「ごめん!絶対見つけるから!」
と口早に言います。
そんな…たいしたものじゃ…と言いかけるサファイアを制して
「君の気持ちがゴミになるなんて、僕には耐えられない!」
フランツが辛そうに言うので
「フランツ、
私の気持ちはここにあるわ」
自分の胸に軽く触れて、それでは、駄目?と問い掛けます。
そーして、行きましょう、とフランツを促して、歩き始めます。
フランツ、慌てて(駅員さんに軽く会釈をして、一応ね、礼儀ですから)
後を追い駆けました。
「送るよ!」
と肩を並べたフランツ。本当は肩を抱く、せめて手を繋ぐくらいはしたいのですが
ゴミ箱をあさった所為で汚れているので遠慮します。
「…さっき」
「ん?」
「さっき、肩、思い切り掴まれたところ、とても痛かったんだけど…」
真っ直ぐ前を向いたまま、小さな声で言うサファイアに
「ごめん!そうだよね。悪かった!つい夢中で…ごめん。
まだ痛む?」
どうしたらいいかわからなくて、柄にも無くうろたえちゃうフランツ。
「それに、鞄は置いて行っちゃうし。
見捨てて帰っちゃっても良かったんだけど、ちゃんと届けてあげたのに
お礼も言ってくれてない…と思うの」
「あ、ああ。そうだったっけ。そうかもしれない。
ごめん、否、有難う。あ…と、有難うございました」
焦りつつ頭を下げるとと、サファイアがくすくす笑っていました。
「サファイア?」
サファイア、首を横に振りながら、笑い続けてます。
「…怒ってないの?」
「怒ってます!」
って言いながら、とっても楽しそうに自分を見るので、
「明日、いつもの電車に乗ってくれる?」
と聞いてしまうフランツ。
サファイアも素直にこくんと頷きました。

<<独り言>> |
フランツ、大馬鹿です。その上台詞がタラシ(笑)
結構読み返すと恥ずかし〜んですけど。
まあ、うちのフランツはいつもこんな感じなんですよねぇ。
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