HK電車でGO!

★.:*: ☆.:*: その2:フランツの敗者復活戦 :*:.★ :*:.☆
     

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§それから数日後の朝。
事故があったのか電車がとても遅れ、また車内は超混雑。
乗り込んだフランツがいつもの癖で車内を見回すと、扉脇で潰れそうになっている
サファイアが。よくよく見ると、彼女はその影にいる工作らしきモノを抱えた小学生
(チンクの友情出演です ^^;)を庇っているのでした。

 しょうがないなぁ。。。と二人分の盾になるフランツ。
サファイアは急に体が楽になったのに驚いて眼を上げると、最近良く見かける男の子が
自分たちを庇ってくれているのです。

 戸惑いつつも口を開こうとするサファイアに
「君一人じゃ大変だろ」
とそっけなく言って横を向くフランツ、本当は顔も体も恋人接近で、
柄にも無くめちゃめちゃ緊張しちゃってるんです。
サファイア、すみませんって小さい声で呟きます。

 そうこうしているうちに、フランツの下車駅が…。
「朝からナンパしてんなよ!」
とクラスメートのブラッドがド突きながら、脇を通って行きます。
でも、電車はまだまだ混んでいて
「ここで降りなくても,良いんですか?」
ってサファイアに聞かれたときには、最後まで面倒を看ると決めていました。
「今更急いでもどうせ遅刻だから」
としか答えませんでしたけれど。

 次はサファイアの番でした。
更に先に行く小学生を気にしていましたが、責任持って送るからとフランツに言われ
「助けて下さってどうも有り難う」
素直に降りることにしました。

 その後小学生も無事に降りて、反対側の電車に乗ったフランツ。
彼女の大きな瞳を思い出すたびに緩む頬を、何度も引き締めて
「何を善人ぶっているんだか」
とうとう電車の窓の自分に苦笑しました。



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§お昼休み
フランツはブラッド、ケン一その他の友人と呑気にお弁当を食べてます。

「フランツ!呼び出しだぞ!」
廊下に出て行くと風紀委員長のプラスチック先輩が…。
何度かお世話に(笑)なってますが、今日は思い当たることは無いなって瞬時に考え
「僕が何か?」
と問い掛けます。プラスチック、一瞬躊躇った後
「サファイアには手を出さないでくれ!」
低い声で言いました。
???とわけがわからないフランツ。
「先輩、サファイアって誰です?」
むっとしたプラスチックがいきなり拳を振り上げるのを、慌てて受け止めて
「思い当たらないことで殴られる趣味は有りませんよ」
フランツが困った顔で言います。
「君の気持ちは良くわかった。
あれは、僕の従妹で一族にとっても大切な子だ。
遊びなら一切近づくな!いいな!忠告したぞ!!!」
プラスチック、吐き捨てるように言うと立ち去りました。

 「いて〜」
フランツ、プラスチックの攻撃を受け止めた掌がジンジンと痺れてます。
「よお、どうした?」
「ブラッド、サファイアって知ってるか?」
「ーん?」
「手を出すなって言われちゃったよ。
誰だかわからなきゃ、どうしようもないよな」
それを聞いてたケン一
「プラスチック先輩の従妹って、音楽学校の生徒だろ。
先輩のとこのグループの会長の孫娘で、超お嬢様なんだって、一部じゃ有名だよ」
音楽学校の生徒で。。。てあの子か!今更気付くフランツ。
そういえば、まだ名前も聞いてなかったな。
「どーするんだ?」
と問いかけるブラッド。
「どーするって。どうもしないよ。
 電車の中で会うだけなんだ。何ができるって言うんだよ!」
フランツ、不機嫌そうに答えました。



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§さて、その翌朝。
定時に乗り込んだフランツ、彼を見付けて笑顔になったサファイアに、視線が釘付けです。
「おはよう!サファイア」
笑顔で言うと
「あ…名前…どうして…?」
頬をうっすらとピンクに染めて首を傾げるサファイア。その顔がとても可愛くてドキドキする
反面、やっぱりそうか…この子が…と苦い気持ちもあって一瞬の沈黙。
そこへ
「昨日、忠告したはずだぞ」
一番聞きたくない声が。

「先輩、どうしたんですか?」
そうです。風紀委員長のプラスチックは、校門の前で生徒をチェックするのが毎朝の
慣例です。だから、この時間会うはずはなかったのに。
「従妹が危険な目に遭いそうだって言うのに、呑気にしていられるか!さっさと離れろ!」
ちぇ〜と思うフランツ。

するとサファイアが苛々した声で聞きます。
「どうして、プラスチックがそんなことを言うの?」
「ああ、君は知らないだろうけど、こいつは危険人物なんだ。
 うちの殆どの女生徒がこいつの餌食になりそうなんだよ
君みたいな子は近寄っちゃいけない。さあ、あっちへ行こう!」

あ〜あ。。。もう、好きなだけ言ってくれよ。。。。
もともと、どうこう出来る相手じゃなかったんだ。さっさと諦めておけば良かった。
せめて好い人のままでいたかったな。
フランツ、プラスチックの言葉を否定できずこっそり溜息を吐きます。

「そんなの知ってるわ!」
サファイアの元気のいい返事にドキッとするフランツ。
「いつも見かける度に、違う女の人と一緒にいるから。」
やっぱり気付かれてたか。先日やその前のあれこれを思い出します。
「だったら…」
たじろぐプラスチック。
「でも昨日助けてもらったの。だから今朝はお礼を言わなきゃって思ったのに。
どうして私がそんな指図を受けなきゃいけないの!」
「僕は君が心配なんだよ」
サファイアの剣幕を宥めるように、あえて優しい声を出すプラスチック。
「もう!放っておいて!」
プンプン怒っているサファイアの顔を、不機嫌そうな顔も可愛いやと眺めていたフランツ。
周囲の注目を浴びていることに気付きます。

「先輩、僕、まだ指一本触れてないですから」
と小声で囁くと、サファイアも
「そうよ、まだあなたのお名前だって存じませんわ。
そちらは私のことご存知なようですけれど」
フランツの言葉を肯定します。
「僕は、フランツ チャーミングと言います」
フランツ・チャーミング……。サファイア、彼の名前を胸に刻み、にっこりと微笑みました。
「昨日は助けてくださって有難う、フランツ」

「サファイア、話すんじゃない!」
プラスチック、そんな好いムードの二人にお邪魔虫です。
「先輩、電車の中で何ができるって言うんです?
せいぜい挨拶するぐらいですよ。
そんなに警戒しなくても大丈夫です」
言いつつ苦笑するフランツ。そこへ
「フランツ、降りないのか?」
ブラッドが脇を通って行きます。
下車駅にいつのまにか着いていました。

フランツもプラスチックの肩を押して
「先輩、早くしないと。
風紀委員長が遅刻だなんて、シャレになりませんって」
と降り掛けます。
「あ…」
サファイアは思わずフランツの腕に手を。気配を感じたフランツ、振り返って
「明日も同じ時間に!」
と囁いて降りていきました。
<フランツの敗者復活戦 おしまい♪>




<<独り言>>
今一サファイアの描写が甘いですね。
フランツもこのときにちゃんと口説いておけば良かったのに。
こんな調子でこの先もウダウダするわけでございます(笑)

フランツ・チャーミングって名前、妙だよね。
でも原作がそうなんだも〜ん。しょーがないじゃん。。。



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