ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN



第67話   一企業反乱戦争―To the end of war―
 「・・・ダメ、解除プログラムも時間延長コマンドも受け付けないわ」  「こっちもそうみたい・・・完全に発射態勢が整ってしまっているみたい」  カリナとミリアムは悩んでいた。  どうすれば発射されずに済むかを。  「方法は1つよ・・・いいかしら?」  そこに現れたのはミューアだった。  「解除プログラムも効かないのなら・・・」  ――爆発まであと25分。  「はぁ・・・はぁ・・・」  荒い息をする男が1人。  「くそっ・・・」  力無くACの操作盤を叩く。  「今日は・・・コントロールできるはずだったのに・・・」  目の前に、バラバラになったACが転がっている。  元は8機だったACは、最早元が何機だったかを判別することは―元が何機かを知らなければ―出来ないだろう。  引き裂かれたACが、まるで墓標のようだった。  強化人間。  望まぬ力。  望んだ力。  力の暴走。  そんな言葉が頭の中に走る。  「冷静になれ・・・俺はジオ・ハーディーだろ・・・」  暴走した後はいつもこうなる。  コントロールできたときは、不思議な高揚感に包まれる。  どちらにしろろくな物ではない。  「ふぅ・・・」  体の中に残った、僅かな『もう1人の自分』の残滓を今の自分の中から追い出す。  そしてさっきから異常を発していたACのランプに目をやる。  「うわ・・・」  通信機異常なし  FCS、左腕破壊、使用不能  左腕に亀裂、電力供給至難  戦闘システムへの移行不能、現在待機モードで起動中。  両脚部、30%で移動可能  ブースター15%で使用可能  「こりゃあ酷いな・・・まぁ、救助を待つしかないだろうな・・・」  歩いて帰ることは難しい、この状態で敵にあったら例えそれが無人のMTだろうと死ぬかもしれないから。  ならば通信アンテナを突きだして、隠れていた方が安全だ。  そう判断し、たまたま生き残っていた通信機を入れっぱなしにして、彼は眠る。  再びもう1人の自分が起き出すことがないように願いながら・・・  「自分の運命だ!」  ルシードが叫ぶ。  「他人の運命がどうあろうと知ったことか!」  ブレードとブレードがぶつかり合い、重量の軽いノアの機体が吹き飛ばされる。  両者の距離が開く。  その瞬間をルシードは見逃さない。  「つあっ!」  ノアのコックピットが揺らぐ。  「な・・・」  ルシードは驚愕した。  コックピットを狙ったはずが外した、否、外されたことに。  吹き飛ばされた瞬間。  ノアは迷わず持っていたマシンガンを投げつけたのだ。  それが腕に当たり、狙いが僅かにそれた。  「へっ・・・まだやられてたまるかよ・・・例え死んだって」  再び一気に距離を詰める。  「お前の目を覚ましてやるぜ!」  再びブレードとブレードがぶつかり合う。  「何がお前はそこまでさせる・・・」  死を賭しての行動、それはかつて彼も行ったことだ。  だがそれは、あくまで自分のため、自らの仇のためである。  今までに、今回を含めて三度しか―しかも二度は敵として―出会った者のために何故そこまで出来るのか、それが分からなかった。  「絆だよ・・・」  「きずな?」  「そうだ・・・人は・・・たった1人では生きていけないんだ!」  「俺も、お前もだ!」  他者から見れば、それは恐らく数十の手がACから出ているように見えるかもしれない。  もしかしたら、既に腕が見えなくなっているのかもしれない。  2人は、最早ACの限界速度を超えた戦闘をしていた。  「お前が真に孤独だというのなら・・・」  互いが互いの突きの一撃を交わす。  「誰か1人を思い出してみろ!」  目の前に移ったのは、彼の妹。  兄と呼ばれた、一瞬の想い出。  顔は思い出せなかったけれど、懐かしい、あの笑顔。  「誰か1人でも思い出せれば、それは孤独じゃないんだ!」  もう一度、今度はわざと吹き飛ばされる。  「う、うるさい!黙れ!」  狙撃。  それをまさに紙一重で回避する。  僅かに、エネルギー熱がACの装甲を焦がす。  「お前は、孤独じゃないんだ!」  大上段で構えたままノアは飛び込んだ。  それを真横に薙ぎながらルシードも飛び込む。
『『誰だよ?吼えてるのは俺か?』』
 「うあああああああ!」
『俺は、何を求めているんだ?』
 「ああああああああ!」
『そうだ・・・求めていたのは・・・』
 両者が両者とも、相手のブレードを避けて切り込んだ。  ノアの一撃は、ACの重量を支える四脚の前面を切断する。  ルシードの一撃は、ブレードを持つ左腕部を切り裂く。
『守らなくても・・・いいものだったんだ・・・』 『守るべき者は・・・この手に取り戻せばいいんだ・・・』
 左腕部が爆発を起こし、左腕部が本体から脱落する。  前脚部を失い、バランスを崩し、飛び込んだ勢いのまま一回転し、仰向けに倒れ込む。  静寂が、訪れた。
第67話 完

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はい、67話です。 現在の所週一更新に成功してますがこれからどうなるかは不明なんで^^ サブタイトル『To the end of war』訳はそのまま『終戦へ』 次回はこのシナリオのラストになると思います。 狂気の核弾頭。 笑い声 守らなくて良い物 そして放たれる砲弾。 68話、お楽しみに。