ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN



第66話   一企業反乱戦争―limit―
 「ここね・・・」  突然の、無人機の停止に驚かされながらもカリナは最深部、核ミサイル発射装置に辿り着いた。  「そうみたいね」  その後ろからミリアムが言った。  「あら、早いわね」  「無人機が突然止まったから・・・それよりも急がないと」  ACから降り、装置へと走るミリアム。  「どうしたの?」  ゆっくり、周りを警戒しながらカリナは言った。  「兄さんが足止めしてるの、ランカー8機相手に」  「ジオが?」  その言葉を聞き、ミリアムを援護するようにミリアムの後ろを援護する。  「急がないと・・・」  「大丈夫・・・発射停止の方法も・・・伏兵の心配も・・・」  彼女の目に、敵の気配は映らなかった。  全てを見通す、一時は忌み嫌っていた眼が、全てを見通していた。  「これ・・・」  まず最初にカリナが気付いた。  「嘘でしょ?」  そこにはこう表示された。
『ミサイル発射用意完了、発射まであと48分』
 「くぅ・・・やってくれるな」  ジオは呟く。  コックピットには幾つかの赤いランプが点灯している。  異常事態を示す赤いランプが。  既に彼は3機のランカーを葬った。  そしてACは既に限界点が見え始めていた。  「不意を付いて2機、正面から1機・・・ランカー相手ならこれで十分すぎるな・・・」  ふっと目の前が赤く染まる。  頭から出血していたようだった、それを拭うと視界は元に戻った。  「やってくれるじゃないか」  ランカー達も同じ考えだった。  ACにこそ異常はない物の、目の前で3機の同ランクのACがやられたのだ、平静ではいられない。  「さすがトップランカーと言うところか・・・」  「だが・・・もうそろそろ限界みたいだぜ」  狡猾な男が呟く。  「そうだな・・・今なら勝てる」  「行くぞ!」  誰かが叫んだ。  ひょっとしたら、そこにいたランカー全員が叫んだのかもしれない。  同じタイミングで飛び出した。  「へっ・・・ジオ・ハーディー、ホーイックロックスに散る、か・・・上等だ!」  ジオは叫んで飛び出した。  「そんな格好いい死に方は御免だね!」  封印された力を解放して。  「来いよ・・・『バーン・グリフィス』」  未だ忌み嫌う力を解放して。  戦いは尚も続いていた。  互いに無言のまま、ブレードだけの戦い。  火器を撃つ余裕は互いになかった。  火器を持ち上げた瞬間に、それごと斬られてしまうのが分かっていたから。  「何故だ?」  言葉が1つだけ飛び出す。  「何故お前は核の発射に手を貸そうとするんだ!」  「・・・俺に大義や勝敗なんて関係ない」  堰を切ったように言葉が交わされる、それも戦いながら。  「金さえ貰えればそれでいい」  それは、かつて誰かに言った言葉。  「そうだとしても、お前に人の運命を決める権利などあるか!」  ノアは叫んでいた。  「自分の運命を決める権利はある・・・それが他人の運命にどう影響を与えようと・・・」  これも誰かに言った言葉。  「関係、あるんだよ!」  ノアは、気づくと叫んでいた。  ルシードは一瞬だけ、ふっと思う。  だとしたら、頭から離れない妹の叫び声は何なのだろう?  自分が奪ってきた命は何なのだろう?  自分に関係のあることなのだろうか?  一撃、恐ろしい速度。  放った自分さえも確認する余裕のない攻撃。  回避、後方へ飛ぶ。  「なにっ・・・」  左腕へ浅く入った一撃。  「認め、ない・・・」  ルシードは、いつもの冷静な声に戻っていった。  「それを認めたら・・・今までの自分が無くなってしまう」  「自分の運命も、他人あっての運命なんだよ!」  ブレードを振り上げ、再び斬りかかる。  最早ルシードは何も言わない。  あの瞬間を境に、動きが変わった。  一点を攻撃し、相手の機能を停止させるか、パイロットに致命の一撃を与える。  そんな攻撃から、全てを破壊する、そんな動きに変わった。  効率は悪くなるが、その戦法に変化した事への相手のプレッシャーは大きい。  ACがブレードで引き裂かれ、引き裂かれた点を一気に広げて引き裂く。  頭部を持っていたライフルで叩きつぶしそこに真上からブレードを突き込む。  そのなかで多数被弾するが、まるで機械が意志を持ったように動き続ける。  戦意、そんな言葉はどこかに飛んでしまっていた。  「ククク・・・ははははは!」  目の前のACから叫び声が聞こえる、外部マイクを通したであろうその声も、まるで直接聞かされているようであった。  生き残りたい、生きて帰りたい。  彼らは真剣にそう思っていた。  彼は、思う。  そして、彼達は思う。
『ぬくもりを求めているのは誰なのだろう?』
タイムリミットまで、あと30分。
第66話 完

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第66話です。 久々に速い更新ですね、我ながら。 サブタイトル『limit』、意味は『限界』、意訳して『時間の限界』、timelimitとしても良かったんですが・・・ まあこれは趣味なりなんなりと言うことで。 止められないミサイル 暴走するジオ 決着するノア対ルシード そして・・・訪れる静寂 さて、次回をお楽しみに