ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN
第64話 一企業反乱戦争―storm―
「今日はお前と事を荒げるつもりはない・・・通してくれ」
「・・・そう言うわけには行かない」
「そうかい・・・だったら戦うしかないということか」
変化は一瞬だった。
ルシードのACが後方へ下がり、ノアに狙いを定める。
それに対応する形でノアが距離を詰めていく。
その瞬間、無人のMTが両者の間に立ちはだかる。
それに驚いたノアは一瞬動きを止める。
強力なスナイパーライフルの一撃はノアのACの装甲を一撃で貫いた。
だが、その瞬間ノアのACが掻き消えた。
無人MTはその場で立ち止まる。
計算処理中
処理不能
データー解析不能
有視界による索敵開始
ルシードさえも動きが止まっていた。
相手が通常の速度なら、いや、音速を出していて、なおかつコクピット内部の視界が狭いと言っても、
自分ならば相手を見失う事はない、そんな自信があったからだ。
無人のMTが次々と―その表現さえ足りぬほどの速度で―倒された。
そこに立っていたのはノアだった。
「・・・何をした?」
「へっへ〜、知りたいか?」
「・・・できれば」
正直、普段の彼ならば『興味本位』で何かを話すことはない、だが、それは紛れもない『興味本位』の行動だった
「それはな・・・」
一直線にルシードの方へとブーストダッシュで突入する。
「教えてあげないよっ」
ノアの声はどこか弾んでいた。
強敵に遇えた喜びか。
会うことを約束した者同士が再会した事への喜びか・・・恐らくその両方であろう。
「ちいいぃぃ・・・おい、ミリィ!聞こえるか?」
数機の敵機を切り捨てながら、通信機に向かって叫ぶ。
「聞こえるわよ、感度良好!」
同様に通信機に向かって叫ぶ、落ち着いた会話が望める環境ではない。
「見えるか?正面、目標の基地!何かが出てくるぞ!」
「え?あっ・・・AC部隊が出てきたみたい」
一瞬だけ反応が遅れたミリアムの右から迫った敵を、ジオのプラズマライフルが撃ち抜く。
彼女の瞳は相手の姿を見ることなくそれが何かを判別した。
「どの程度数が居るか分かるか?」
「えっと・・・殺気の数からして多分8!」
無数の殺気に囲まれながら、彼女は敵の数を正確に言い当てた。
「分かった・・・」
「どうしたの?兄さん?」
「お前・・・中距離弾道弾の発射解除の方法とか知ってるか?」
「うん、分かるよ?それがどうしたの?」
「オッケー・・・ミリィ、このまま気にせず一気に基地に侵入しろ、俺が活路を開いて足止めをする!」
「え、だって8機は居るだよ?2人だって勝てるかどうかって数よ?」
「勝たなきゃいいんだよ、負けなければ・・・俺が負けるまでにお前が任務を達成すればこっちの勝ちだ」
「・・・時間稼ぎね」
「そう言うこと・・・俺だって一応トップクラスのランカーなんだしな」
「ふふっ・・・そうね、すっかり忘れてたわ、兄さんてば普段だらしないから」
「まぁ、それについては言うなって」
二人とも、清々しい笑顔だった。
「いくぜっ!」
多数の敵機を数秒後に突破し、前方から迫る部隊にミサイルを発射した。
「あらら・・・団体さんのご到着・・・かしら・・・」
近くのAC運搬用の大型エレベーターが作動するのを彼女、カリナは見た。
一瞬だけ、にっこり笑って。
「ちょっと早いけど・・・ご冥福をお祈りしますね」
そう言うとACのバックパックから何かを取り出し、上がってくるエレベーターの穴の中に投げ込んだ。
そして飛び上がり、暗い影の中からACの頭部が見えた瞬間、グレネード弾を発射する。
それに気付いた幾つかの軽量機が飛び上がる・・・
しかしそれは遅かった。
グレネードがエレベーターの床部に―もしくはそこに居たACに―着弾した瞬間、大規模な爆発が起こった。
内部にいたACは勿論、飛び上がった数機の軽量機も後ろの爆発で背面部に多大な損傷を受けた。
あるACは足が丸ごと吹き飛び、コアが直接地面に落ち、潰れた。
あるACは爆発の破片がコアに突き刺さり、パイロットが死亡した。
瞬間的にオブジェと化すAC達がそこにいた。
運良く動いていたエレベーターは残骸を運んできたのだった・・・
「あら・・・真後ろからも・・・」
同じ方法で真後ろのAC部隊も全滅した。
「ふむ・・・無人機は数十時間前のデータで残り約1万・・・相当な数だな・・・
停止コードは・・・ダメか、効果対象は第78小隊・・・もう俺が全滅させてある奴か」
無人MTの解析をしつつ、そこから敵に気付かれぬようにメインコンピューターにハッキングしていくラグが居た。
「出来ればここで核を停止させたいところだが・・・ダメだな、
そこだけはスタンドアロンのコンピューター使ってるようだし・・・」
ハッキングと言っても別に魔法を使うことではない。
それはコンピューターがネット空間という場所に繋がれ始めた頃から今に至るまで変わっていない。
方法は単純、そのコンピューターのユーザーであるとコンピューターに認識させればよいのである。
それはコンピューターがいかに進歩しても変わらない。
「専務の名前は・・・だとするとパスコードは・・・ビンゴ!」
ラグはその成功と同時に安堵と共に不呆れた。
これほどまでにコンピューターが進歩してもなお変わらぬ人の精神とは何なのだろう?
先程のパスコードは専務のイニシャルだった、他に誕生日をパスコードにする者も多い。
専務クラスでさえこうも簡単にパスコードを抜かてしまうのだ。
それが社長に代わっても同じようなことが言える。
これも昔から指摘され、今なお変わることのないことである。
これは人が戦争をやめないのと同じ理屈なのかとつい感慨に耽ってしまう。
戦争の終結、それが彼の望みなのだから。
「まあ今そんなことを考えても仕方がない、な」
そう考えてハッキングを続ける。
それに集中しすぎたためだろうか?
後ろに迫る気配に彼が振り返ることがなかった。
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はい、64話です、何だかんだで更新頻度減ってますね。
サブタイトル、『storm』、意味は『嵐』、まあ意訳すると『激化する嵐』と言った感じです。
さて、後半、少しだけラグについて書かれています。
どうやってたかだか1レイヴンのしかもマネージャーがそんな大それた目的を達成するのか。
少しだけ期待していて下さい。
多分予想通りの展開ですから^^
さて、65話にご期待下さい。