ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN



第60話   一企業反乱戦争―atomic storm―
 「目標まであと2万、そろそろ第一次攻撃部隊が砲撃を食らったポイントだ」  「なあ、ラグさんよぉ・・・そこに再び輸送機で突入するのは馬鹿の所行じゃないのか?」  ノアが当然の疑問を発した。  そう、彼等は輸送機でやってきたのだ。  「安心しろ、こいつなら1、2発の核ミサイルにも耐えられる特殊装甲を使用してある、   距離が5千になったら降下、そこからはACで歩いていってくれ」  「・・・わかった、信用してるぜ」  正直なところ、彼等は核爆弾に耐えられるとは思ってはいなかったが。  時は2時間ほどさかのぼる。  「ここ・・・俺達のACのハンガーじゃん、ここでどうするんだ?ACの他には何もないぞ」  「安心しろ、ちゃんとある」  そういってラグは瓦礫の下にあったボタンを押した。  その途端、一瞬だけハンガーが揺れた。  「うわっ・・・とっと・・・」  「な、何これ?」  床かが割れて階段が現れた、その先に何か大きな明かりが見えた。  「見ての通り、隠し通路だ、地下に『MTC−130』がある」  「MTC?聞いたことがないな・・・CMT(重装備MT)の間違いじゃないのか?」  「・・・C−130って知ってるか?」  ラグはそういって五人を見回す、誰も知らないようだ。  「大破壊以前の大型輸送機の1つだ、MTCというのはMuscle Tracer Carrier・・・   いわゆるMT型の輸送機だ、逆の意味じゃない、利点は・・・まあいろいろある。、   と、いってもたまたま見つけたC−130を元に俺が改造したんだが・・・」  と、言ったところで4人の不安ばった表情が見て取れた。  「ああ、それと当然のことだが整備は完璧だから安心しろ」  そう言ってみたがやはりまだ彼らは不安だったようだ。  さらに殆どのパーツが手製という事実を知って彼等は一層不安を募らせた、  しかしそれが不満に繋がらないのはこれまで彼が異様に有能だったからである。  レイヴンズネスト崩壊以後、その後釜を狙う輩は数多く存在する。  それは当時のネストとは比較にならないほど規模が小さく、  ミッションを主体に仕事をしていたレイヴン達は困窮した者が数多くいる。  しかし、その中で彼は確実に仕事を取ってきた。  もちろんそれは彼等が優秀だと言うこともあるが、  彼のマネージメント能力無くしては、彼等も困窮する大多数のレイヴンの仲間入りをしていたことだろう。  「さて、じゃあ出撃しよう、装備は何か変更するか?」  「私はこのままいくわ」  ミリアムとカリナが最初に言う。  「お前達は?」  「・・・俺もこのままでいく」  ジオもそう言った。  「俺は・・・右肩のチェインガンを爆雷に変更する」  ノアはそう言った。  「・・・作戦領域はアリーナじゃないぞ?」  ラグはそう言った。  爆雷、重量が異様に重く、扱いにくい。  ACの武装としては失敗作かと思われたが、  とある天才レイヴンが画期的使用法―全弾を直接相手にぶつけるという―を使用して以来、  幾人もの愛用者を生み出している、 もちろんのことだが、扱いが難しいままな事に変わりなく、完全に成功させられるレイヴンは数少ない。  そして成功したとしても、ダメージを与えられるのが一体だけなため、アリーナ向けである事は言うまでもない。  「もちろん承知の上だ、ただ・・・嫌な予感がするんだ、対AC用武装も必要だと思ってな」  「そうか、わかった、輸送機に積んでおくから準備しておいてくれ」  「了解」  「Mrルシード、機体の調整が完了しました」  何も言わずに整備員に近づくルシード。  「どうしました?」  「アセンブルを変更したい、肩のロケットをステルスに換装しておいてくれ」  「・・・わかりました、しかしそうすると防空網に穴が開く可能性がありますが・・・」  「無人機があるだろう」  「しかしそれだけでは・・・」  「・・・有人機に換装してロケットを積んでおけ、敵が接近するまではそれに乗っておく」  「わ、わかりました」  この作戦においてルシードはほぼ完全に現場を任されていた。  勿論、ただの1レイヴンに現場の全権を任すなど通常はあり得ない。  だがだからこそこういった無茶な事も言えるのだ。  (無人機を有人機に換装することは技術的に難しいことではないが時間がかかるため、通常は聞き入れられない)  残り278時間、夜明け前、現在位置、ラサシティー  「で、作戦の詳しい打ち合わせをしておきたい、出来ればすぐに」  「はいはい、どうするの?」  ミューアは聞いた。  「我々がMTCで正面から攻撃をしかける、その前に、ミューアには背面から攻撃をしかけて貰う」  「正面からいく気なの?貴方達」  その作戦には彼女は驚いた、その無謀さにではない。  全然詳しくも難しくもないからだ。  「だからその前に囮としてしっかり働いて貰うんだ、あの輸送機じゃこっそり近づくのは多分無理だからな」  「わかったけど・・・誰も死なないでよ、五人とも」  「ほう・・・人並みに心配するんだ?『笑う雌豹』も」  「どーせ私は血も涙もない悪魔ですよーだ、その悪魔だって死んで欲しくない人、死んで欲しい人がいるの、わかる?」  「勿論、その程度のことを理解する心はもっているぞ」  「だったらいいのよ、じゃあ始めましょ、早い方がいいから・・・攻撃開始は今日の日が沈む頃」  「わかった、じゃあ・・・1時間後にこちらも行動を開始する」  「こちら西側、異常なし」  「こちら東、同じく異常なし」  「こちら山頂部!敵だ!敵部隊と思われるA・・・」  「山頂部に敵発見の報告有り、破壊された模様」  「Mrルシード、出撃してください」  「拒否する」  「な・・・ふざけないでください、現に敵が」  「そいつらは囮だ、第3から第6までの部隊を送ればいい」  勿論、敵が単機だとは彼は考えもしなかった。  「りょ、了解、こちら司令部、こちら司令部、本部で待機中の第3から第6までの部隊は山頂部から来る敵を迎撃してください」  「思ったより抵抗がなかったわね・・・それにあのマント、ホントにステルスの効果があったみたいね・・・」  そう言いながらレーダー施設を残らず破壊してゆくミューア。  「よし・・・これで基地のレーダーは全部ね、あっ、反応?・・・思ったよりも少ないわね」  彼女は軽くACの腰を屈め、マントを拾い、再び肩に装着すると、敵部隊に飛び込んでいった。  「ん?」  気付いたときにはもう遅かった。  真上からACが斬りかかってきたのだ。  「1つ!」  一瞬のことで、MT部隊が体勢を整える前に7機を一瞬で叩きつぶす。  「これで・・・8つね」  背部からの76ミリ機関砲を、まるで背後に目がついているかの如く回避し、  反転する勢いでそのままMTを切り裂く。  「これで9機」  まるで狩りを楽しむ豹のように、彼女は戦場を舞った。  「こちら第6部隊!第4、第5部隊がやられた!救援を頼む!救援を!うわーっ!」  「くそっ!ロケット弾を正面から撃ち込めば!」  「あらあら・・・正面からの砲撃なんて当たると思ってるの?」  砲撃の瞬間、まるで消えたかのように背後を取られ、切り裂かれた。  「さて・・・カリンちゃん達もそろそろ来るかな?・・・」  「来たか・・・予想通りだな」  「どうしました?Mrルシード」  「敵だ」  「え?」  「地平線の側に発見した」  そう言うが早いがルシードのMTはロケット弾を構えた。  通常、人間が見える半径は数キロと言われている。  それは地球が丸く、それ以上は地球の丸さに隠れてしまうからだ。  だが彼はMTに乗り、さらに山の中腹にいた。  彼から見える半径はとても大きかった。  「ね・・・ラグ」  「どうした?」  「何でこんなに低空侵入なのー?」  「当然、見つかりにくくするためだ」  「でもこの揺れ・・・尋常じゃないぞ」  青ざめ始めた顔でジオが言った。  相当気持ちの悪い思いをしているらしい。  「まぁしょうがないだろう、今日が初フライトなんだから」  「・・・おいおい」  壁の手すりに手を掛けながらノアが言う。  「整備は完璧って言ってなかったか?」  「整備はな、だが、フライト経験は無いんだよ、こいつはな」  「ラグ!ロケット弾よ!接触まで後約200!」  ミリアムが叫んだ。  「そうなのか?わかった、全員ACに乗り込め!」  「わかった、ラグは?」  「安心しろ、お前らが輸送機から降りたら脱出するから」  直撃弾が輸送機を揺らす。  「OK、じゃあ頼む」  そして4人が操縦席から出ていった。  「さて・・・と、今の衝撃からして・・・耐えられるのは5〜6発だな、   そこで射出しないと俺が死ぬ・・・まだ、『死ぬわけにはいかない』からな」  「ラグ、ハッチ開放急いでくれ」  「ラグだ、悪いが輸送機のどっかが壊れたようだ、自力でハッチをこじ開けろ」  そう言って反応を待たずに通信を切る。  その直後『緊急射出』と書かれた赤いボタンを押した。  「初フライトが最終飛行か、運がないね・・・」  直後、輸送機からAC、それにMTが飛び降りた。  そのMTは、操縦席だった。  余剰装甲と、飛行パーツを分離し、MTとなったのだ  「・・・!」  MTからルシードが飛び降りる。  「どうしました?」  「ACに乗り換える」  「何かあったのですか?」  「輸送機は一つだが墜とせなかった、もうすぐ、AC3機以上が来る」  地平線の彼方、僅かな影の動き、彼はそれだけでAC3機の影を見た。  「たかが3機ならMT1個中隊で十分です、あなたは休憩していて下さい」  「そう言うわけにはいかない」  ルシードは直感的に悟った。  相手は並みの存在ではないと。  ――――核ミサイル発射予定時刻まで、あと263時間
第60話 完

第61話へ 第59話へ 戻る
皆様、春の陽気漂う中、暖かくなったり寒くなったりで体壊してませんか? さて、第60話の完成です、atomic storm、直訳して「核の嵐」 まあまだ穏やかですが、嵐の前の静けさという言葉もあります。 前哨戦は一応の引き分けですね。 輸送機は被弾しつつもACの輸送に成功しました。 さて、これからどうなるかにご期待下さい<こればっか。 次回の更新もできるだけはやめにするつもりです。 天才レイヴン・・・名前も出してませんが本人に許可とってなかったりします(^^) 何か言われたらちょっと困るかも。 に、しても制限時間長いなぁ・・・