ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN
第58話 一企業反乱戦争―THE MAD GAME―
「フゥ・・・」
彼、ジオは自分の住むビルの5階から街を見ていた。
左側にはより大きく立派なビルが。
右側には寂れた街角が佇まいを見せていた。
ここは準市民区画、通常レイヴン達が住む非市民区画の1ランク上に位置する。
もちろん、企業との専属契約を結び、裕福な生活を送る者や、
アリーナの人気者で、市民権を得た者もいるが、それは例外中の例外である・・・
「退屈か?」
振り向くと、自分たちのマネージャー、ラグが立っていた。
「別に?」
「そうは見えなかったぞ、さっきから独り言を何かブツブツ言っていたような気もするが?」
どうやら口に出していたらしい、それに実際退屈だった。
「どうした?何かあったのか?他の連中ならフィルゼリア社主催のアリーナに観戦に行ってるぞ」
「出ないのか?」
ラグが聞いた。
「あったり前だろ?優勝者には10万コームと準市民権、それに企業との専属契約が待ってます、だぜ?」
「企業や財団の手先になる気はないってか?」
「当たり前だろ?あくまで俺達は自分たちのために戦うんだからな、それはずいぶん前に言ったはずだぜ?」
「ああ、それは分かってるさ」
彼は思い出す、2年前のことを
「そうそう、2年前、こんな話をしている時だったかな・・・」
あの話が舞い込んできたのは。
「核弾頭だと!」
「ええ、その通りです」
穏やかに男は応じた。
「何を考えている!核などどうするつもりだ!」
「決まっているでしょう?落とすんですよ、あなた達の地上都市連合にね」
「なっ・・・何が望みだ?」
「そんな大それた事ではありませんよ・・・私の企業」
「復権か?」
男の言葉を遮って、言う。
「いえいえ、私の企業を追い出してくれたあなた方への・・・粛正です」
「な・・・何だと・・・」
「だから、粛正ですよ、企業活動の自由を侵害してくれたあなた方都市連合に対する、ね」
この都市連合は、現在主要メンバーの殆どが嘗てレイヴンズ・ネストの洗礼を受けた者達で構成されている。
目的は、秩序を破壊する者達を排除すること。
以前、ジオ達を狙い、一気に排除したのもその為だ。
だが、目下それは保留となっている。
「だが、それは君達ビルモア財団の力が余りに強くなったためだと以前言っただろう?」
「ええ、私達のオフィスに大量の炸裂弾を撃ち込んだ後でね」
どこまでも一方―ビルモア財団の男―は表情を崩さない。
「ですから我々も実力行使を実行することにしたんですよ、核を使った粛正という形でね」
「貴様!核を使えば我々どころか都市が」
「ええ、ですからゲームをしましょう」
「何だと?」
「場所はホーイックロックスの麓のミサイル基地、そこに我々の核が存在します。
そこに・・・そうですね、360時間以内に辿り着き、停止させたらあなた方都市連合の勝ち。
辿り着けなかったらあなた方の負け、核の炎で都市連合は炎の海、どうです?楽しいでしょう?」
「ま、待て!それが本当だという確証は無い、せめて証拠を!」
「それでは御機嫌よう」
通信は一方的に切られた。
その直後、ホーイックロックス麓の基地映像、そしてそこに納められた大量の核弾頭の映像が送られてきた。
「っ・・・ランカーレイヴンを呼集しろ、ホーイックロックスに進軍する、同時に対空迎撃システムを用意させろ」
だが、この際、『都市からの粛正』を免れたレイヴン4人には、この事は知らされなかった。
同時に、アリーナに登録されていないノーランカーにも。
「社長、よろしいのですか?わざわざ場所を教えてしまっても?」
運良く爆死を免れた当時の常務―現在の社長―とその秘書もその基地にいた。
「いいんだよ、それでこそゲームは面白くなるし・・・それにだからこそ『彼』を雇っているのだろう?」
「・・・そうですね」
1人は、完全に精神の平行を失っていた。
もう1人は、もはや思考力さえも殆ど残っていない、人形だった。
どのような非常識な意見でも、誰かが是とすれば是となるような。
これは一種の笑劇だった。
ただし、最悪の。
残り348時間
呼集したレイヴンの殆どが依頼を受けたことを確認、その数は連合のランカーレイヴンの約2割である。
一部は静観し、さらに一部は逃げ出した。
依頼を受けた彼らは大型特殊輸送機12機により出発した。
残り324時間
「作戦領域に到達、もう少しで敵のレーダー圏です、これから先はACで歩いて・・・」
言葉が途切れる、直後、一機の輸送機が爆発した。
「ヘヴンズスノー、撃墜されました・・・」
「そんなバカな?この輸送機は電波吸収や熱源縮小などでステルス性能は高いんだろう?
それが何だってレーダー圏外から撃たれ・・・うわっ!」
「ドリームパーク、被弾を確認、あっ、爆発しました!」
「バカな?敵はどんなレーダーと砲を持っているというのだ?」
「分かりません、ですがACを早く降ろす準備を・・・」
「エデンズロードの艦橋に直撃弾!」
「エンパイア・プリンス、被弾・・・あっ!爆発しました!」
「ホワイトソウルがエンジンに被弾、乗員の退避を・・・」
「パラダイス・オペラ、撃墜され・・・」
「ファイアボックスの尾翼に被弾、姿勢制御が・・・」
「こちらブルーロード、地上に2機だけACを降ろした、至急離だ・・・」
「クライングスターが地上からの砲撃を・・・これは・・・MTです、ステルスタイプのMT約20機が・・・」
結局、混乱のうちに第一次攻撃部隊は壊滅した。
「お見事ですね」
彼のACに通信が入る。
彼は何も答えない。
「おや、何も言ってはくれないのですか?わたしは貴方の手腕を褒め称えているのですよ?
相手も想像できないでしょうな、まさかレーダーではなく、
地平線から見える影から狙いをつけて撃ったなどという事は」
「そうですか」
一言だけ、賞賛の言葉を肯定も否定もしない。
それが逆に気に入ったようだった。
「はっはっはっはっはっはっはっは!ではこれからもよろしく頼みますよ『Mrルシード』」
通信は途切れた。
数奇な運命は、彼等をどこへ運ぶのであろうか。
第58話 完
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お久しぶりです。
全然更新してなかったメインである小説をようやく更新できました。
新しいストーリーにご期待下さい。
ちなみに、後書きにノアたちがでることが難しくなってしまいました(大学が違うので)
そんなわけで多分これからは一人でやることが多くなると思います。
ちなみに初めてタイトルに英文使ってますが、これは4ceに惚れたからです。
できるだけあんな凄いストーリーを展開できたらと思ってます。
では次回、なるべく早くにお会いしましょう。